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2014.12.25
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カテゴリ: 小説
美人な従妹のアドリーヌに嫉妬してきたぶさいくな独身年増のリズベット(従妹ベット)が愛人の男を親戚に略奪されてしまったので復讐するためにユロ男爵の愛人ヴァレリーと結託してユロ男爵から金を巻き上げてユロ家を貧乏にする話。

●あらすじ
好色な参議院議員かつ陸軍局局長ユロ・デルヴィー男爵(エクトール)に愛人ジョゼファを横取りされた元香水商人の金持ちでぶセレスタン・クルヴェル(50)が復讐のために美人のアドリーヌ・ユロ夫人(アドーリヌ・フィシェル、48)に求愛して、娘のオルタンス・ユロ嬢(21)を結婚させたければ自分の援助を受け入れろと迫るもののユロ夫人は断る。そのときユロ夫人の従妹のリズベット・フィシェル(略して従妹ベット、43)はぶさいくでわがままで頑固でださくて酸っぱい臭いがする独身で、ユロ家から援助をうけつつも縁談を断って細々と飾り紐細工の女工で自活していて、密かに亡命ポーランド人の恋人ヴェンセスラス・スタインボック伯爵(29)と数年間同棲して母親のような愛情で貯金を全部使って彫刻家になるための援助していたのに、いよいよ彫刻家として頭角を現したときに彼に惚れたオルタンスに略奪されてしまう。ユロ男爵の部下の役人のジャン=ポール=スタニラフ・マルネフの妻ヴァレリー・マルネフ夫人(ヴァレリー・フォルタン、23)はユロ男爵の愛人で、リズベットがユロ男爵の親戚と知って友人になって情報を交換するようになり、リズペットはオルタンスの裏切りを知る。オルタンスが結婚して、リズベットは生活の保障をしてもらう。
数年後にヴァレリーはサロンの中心人物になってユロ男爵とクルヴェルの援助で金持ちになっていて、リズペットはユロ元帥と結婚することで自分を庇護していたユロ家の庇護者になって立場を逆転して復讐する計画をたて、ヴァレリーを利用してユロ男爵に金を使わせてアドリーヌを貧乏にして、名声を得て怠け者になったヴェンセスラスをヴァレリーに恋するように仕向けてオルタンスを苦しめる。ヴァレリーは元恋人のブラジル人富豪青年アンリ・モンテス・デ・モンテジャノス男爵と再会して結婚するためにユロ男爵とクルヴェルを利用して、ヴァレリーは夫マルネフと共謀してユロ男爵を脅して夫を課長に昇進させる。国費を使い込んだユロ男爵は急遽20万フランが必要になり、アドリーヌはクルヴェルに助けを求めて身を売ろうとするものの貞淑に目覚める。リズベットと結婚したユロ元帥はアドリーヌの窮状を救うべく20万フランを都合して死んでしまい、家族に見捨てられたユロ男爵は元愛人ジョゼファを頼り、偽名で暮らして行方不明になる。ヴァレリーはクルヴェルと結婚することになり、ユロ男爵の息子ヴィクトランは怪しげな老婆にヴァレリーへの復讐を依頼すると、老婆はモンテス男爵をけしかけてヴァレリーとクルヴェルを伝染病にかからせて、ヴァレリーは死の間際に後悔してユロ家に財産を返して死ぬ。金持ちになったアドリーヌは慈善事業をしているうちに少女を囲っていたユロ男爵を見つけて家に連れ戻すものの、ユロ男爵はでぶな料理女をたらしこんで、アドリーヌの死後に結婚式をあげて終わり。

三人称で語り手が読者に向かって説明する形式。主に登場人物の会話で場面が展開して、合間に作者目線の長い説明(静的な描写)が入り、心理描写はほとんどしないという極端なやり方。語り手が全面に出ていて、読者への呼びかけもあり、作者が自分が生きた同時代を書くというスタンスをとることで一定のリアリティを確保しつつ自由な語りができているのはよいものの、語りの自由さが逆に物語をわかりにくくしてしまっている欠点となっている。
『従妹ベット』というタイトルの割にはリズベットが出てくる場面は全体の1~2割ほどしかなく、ユロ男爵を中心に物語が進んでいてリズベットは復讐計画の立案者ながら主役というより脇役のような扱いで、タイトルや構成がよくない。リズペットはせっかく個性的なキャラ付けがされているのにあまり物語に登場しないで裏でこそこそしているだけで、リズベットの復讐の物語として始まったのにヴァレリーの死でユロ家が幸福になる大団円の終わりになっていて、リズベットの復讐計画が忘れ去られたまま物語が終わっていてプロットの着地点がおかしい。物語にほとんど登場しないリズベットがなぜタイトルになっているのかも意味不明。心理描写がないのでリズベットの復讐心がどれほどのものだったのかわからないのもよくない。作者はリズベットの復讐をテーマに書き始めたのかもしれないものの、途中で主人公をヴァレリーに変えたかのようにリズベットが忘れ去られてしまっている。悪女は不幸な死に方をして貞淑な女が幸福になるという宗教道徳に沿った紋切り型の終わり方になるのもつまらない。
それから説明が長い割に、登場人物が誰が誰やらどういう関係なのやらわかりにくいのがよくない。最初にユロ・デルヴィー男爵として説明されたのに、後になってエクトールと名前を呼ばれていて、ユロ男爵のフルネームがはっきりしないのがもやもやする。登場人物もリズベット、従妹ベット、フィシェル嬢と様々な呼び方で書かれていて、呼称が統一されていないのもわかりにくい。ユロ男爵、ユロ伯爵(ユロ男爵の兄=ユロ中将、ユロ老将軍、ユロ元帥、フォルゼム伯爵)、息子のユロ(ユロ男爵の息子=ヴィクトラン・ユロ、弁護士ユロ・デルヴィー)、ユロ三世(ユロ男爵の孫)といったユロ家の親戚をみんなユロ○○で呼ぶのも人間関係がわかりにくい。そのほかにも脇役が大勢いて一読しただけでは人間関係の把握が難しくなっている。本来なら作者の方で情報を整理して読者に提示するべきなのに、読者が人間関係の情報を整理しないといけなくて面倒くさくて読者への配慮が足りない。ストーリーそのものはぶさいく女の復讐というシンプルなものなのに、人間関係のわかりにくさが物語をわかりにくくして面白さを損ねている。長編小説で人間関係を取り違えるとストーリーを誤解してしまうので、この不必要な人間関係のわかりにくさが欠点となる。
好色なユロ男爵と男を手玉に取る強欲な娼婦ヴァレリーの破滅の話として読めばそこそこ面白いものの、リズベットの復讐の話として読むと推敲不十分な失敗作のような完成度。訳者のあとがきを読むと、バルザックは多額の負債があってプロットを練る十分な時間がないまま無理やり小説を完成させたらしく、完成度が高くないのにはそういう事情があったらしい。

★★★☆☆






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最終更新日  2014.12.26 02:01:42
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