~さわやかに香る風~

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「まぁ、そういうことやな…」
 ニージョは神妙な顔つきになり頷いた。
「そう…思ったより動きが早いわね…」
 マジョンナも表情を暗くし、顎をさする。
 巧達三人は訳がわからず交互に二人を見つめたが、彼らは黙ってしまい話が途切れてしまった。
 その沈黙を巧が恐る恐る破る。
「始まったって…どういうことなんですか?」
 声を掛けられると、マジョンナはちらっと巧へと視線を移した後、姿勢を直した。
「世界を、独立させる動きよ…。もしかしたら、ミック達はこっちの世界にはもう来れないかもしれない」

 巧が頭を抱えると、マジョンナは大きく頷いた。
「でしょうね。仕方ないわ、少しかかるけど、分かりやすく最初から話すわね。まぁ、今日はその為に来てもらったんだし、ちょうどいいわ」
 と、話し始めようとしたところを、ニージョが飛び上がって止めた。
「姐さん!そんなことより、早く手を打った方がええんとちゃうか?」
 しかし、マジョンナは目を閉じて首を横に振った。
「そうだけど、この子達からしたら、まだ昨日の今日よ?これからもっとわからないことも出てくると思う。もしかしたらこの子達の力が必要かもしれないのよ。その為には、事情をわかっておいてもらわないと。それに、ミック達ならきっと大丈夫よ。もちろん、あの子達をなんとかする手立ては打つつもりだけれど、それは話をしてからにさせてちょうだい。それでいいかしら、ニージョ?」
 マジョンナの真剣な表情に、ニージョも焦る気持ちを抑えて頷くしかなかった。
 マジョンナもそれを確認して頷き返す。
「さて…、最初からとは言ったものの、どこが最初かもわからないくらいだけど」
 指でこめかみを押さえるマジョンナ。どんな話が始まるのだろうと、巧達三人は固唾を飲んだ。
「あなた達がどこまで知っているか知らないけど、今私達のいるこの世界と、鏡の向こうのもう一つの世界、二つの世界のバランスが崩れてきているの」

「その話、ミックから聞いたような気がする…」
「私も聞いてたよ。バランスが崩れてきてるって…」
 と、希色も頷いた。
「あら、少しは聞いてたのね。まぁ、あなた達からしたら世界がもう一つあるってこと自体、考えられないことなんでしょうけれど。そのバランスが崩れて双方の世界の行き来ができるようになって…今私がここにいることもその証拠なのよ」
 「それから…」とマジョンナは巧へと視線を移した。

 そこまで聞いて、巧が慌てて問う。
「じゃ、じゃあ、鏡で自分を見ることができてるっていうのは、同じ動きをしてる証拠になるんですか?だとしたら、ミックは自分で思うとおりに動いてますよね…これっていったいどういうことなんですか!?」
 マジョンナは髪を耳にかけつつ、少し困った顔になった。
「う~ん、最初の質問に関しては、確証は持てないけど、恐らくそうね。ミックに関してだけれど…彼は特別なのよ。あの子は、私が生み出したものだから…」
「マジョンナさんが?…どういうことなんですか?」
 今度は希色が問いかける。
「うん…、ミック、そしてロッキーも、向こうの世界を守るために、私が魔法で作り出した存在なの。つまりミックは、ここにいる巧と、鏡の向こうの巧とは別の、新しく生み出された第三の巧、ということになるのよ。だから、彼は本来いるはずのない存在として、自由に世界を行き来しても問題ないの」
「魔法!?…なんかますますゲームみたいな話になってきたなぁ」
 隣で亮介がぼやいたが、巧はそんなことは耳に入ってないようで、マジョンナをじっと見つめて言った。
「第三の…。マジョンナさん、あなたはいったい…」
「姐さんはな、特別も特別なんや」
 答えたのはニージョだった。
「姐さんは、鏡の向こうにしか存在せぇへん、世界を見守るガーディアン…まぁ神様みたいなもんやな」
「ニージョ…それは言いすぎよ」
 マジョンナが苦笑いをしたが、ニージョは首を横に振り、自慢げにその小さな腕を組んだ。
「わいに言葉与えて喋れるようにしてくれたんも姐さんなんやで。他にも色んなことができるんや…」
 と、説明を続けようとしたニージョの口の前に、マジョンナがサッと指を当てた。
「ニージョ、その先は言わなくてもいいわ。できるっていってもやってはいけないことばかりなのよ。本当はあなたにしたことも、生物の秩序を崩しかねないことだし…。それにね、今は、そういうことができなくなってきてるのよ」
「えぇっ!?」
 巧達が驚くより先に、ニージョが声を上げた。
「姐さん、それはわいも聞いてへんで…!」
「えぇ、今初めて言ったもの」
 軽く返すマジョンナに対し、
「でも、さっきは花を魔法で…」
 と、希色が疑問をぶつけたが、マジョンナは首を頷くか傾げるかの角度に曲げた。
「あれくらいの、割と簡単なことはまだできるわ。でも、ミクタを生み出すようなことはできなくなってきてるみたいね…やっぱり、異変が起きてきているせいなのかもしれないわね」
 困惑した顔の皆に対して、マジョンナは自分を奮い立たせる意味も込めて続けた。
「とにかく、この状況をなんとかしないと、鏡の向こうだけじゃなくて、こっちの世界まで影響を受けかねないわ。まだ力が使えるうちに手を打たなきゃ」
 そこへ、黙って話を頭で整理していた巧が、さらにマジョンナに問いかける。
「マジョンナさん…、この異変っていうのは、誰かが起こしてるものなんですか?力が使えなくなってきているのも、どこに原因があるのかつかまないと…」
「そう、問題はそれよ。これは私の推測だけど、私以外のガーディアンが絡んでいるのかもしれないわ」
「ガーディアンって…つまり、先生みたいな世界守ってる人ってこと?」
 亮介が確認すると、マジョンナは頷いた。
「えぇまぁ、そうよ。亮介…だったかしら?私のことはマジョンナで結構よ」
 突然呼び名のことを言われたので、亮介は慌てて頷いた。マジョンナはそれに構わず続ける。
「でも原因は何かはまだわからないわ。それをはっきりさせるためにも、どうしても鏡の向こうに行かなくちゃならない。ミック達のこともあるしね」
「そうか…向こうから戻って来れないなら、こっちからってことか…。でも、どうやって?」
 巧の問いかけに、ニージョが思い出したように声を出した。
「そうや!それで話が初めに戻るんやけどな、あの鏡が必要なんや!」

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最終更新日  2006.09.17 01:03:10
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