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「おお、鬼才じゃ!鬼才じゃ!」 てな気分に加えて、 ギリシア といえば、ぼくの中では、ほとんど伝説化している、 あの二人の国 じゃないかと、ますます盛り上がるのですね。
「Z、彼は生きている」 の名文句。大学生になって初めて見た洋画のような気がしますね(笑)。
二人目は言わずと知れた、(誰にい?) 『旅芸人の記録』
の テオ・アンゲロプロス
。40年前の学生時代に見て以来、ボクのなかでは サイコー傑作
の監督です。
まあ、思い出語りはさておき、 「女王陛下のお気に入り」
です
。
この手の歴史ものを観るときには、一応予習をすることにしているのですが、してよかったのか悪かったのかはなかなか難しいですね。
映画の邦題に使われている 女王陛下
が、 ステュアート朝
の最後で、 グレート・ブリテン
の初代の アン女王
ですね。幼なじみの サラ・ジェニングス
まかせなの愚かな政治家であり、17回も身ごもりながら、ただの一人も成人することがなかった不幸な母であり、乗馬が大好きだったにもかかわらず、ブランデーの飲みすぎのための肥満のせいで、歩くこともままならない晩年だった 女王
だった。このくらいまでが予備知識です。
映画はその 女王(オリビア・コールマン)
をめぐって、二人の女、 サラ(レイチェル・ワイズ)
と アビゲイル(エマ・ストーン)
のだまし合いのおもむきで展開しますが、 サラ
の失脚、 アビゲイル
の勝利で終わるかに見えるのですが、
アビゲイル
が、この気まぐれな権力者の寵愛をいつまで受け続けられるのか。怪しいことおびただしい。
と 、まあ、権力をめぐる嫉妬と憎悪の劇の幕は閉じるわけです。
史実としてはその通りなのだろうけれど、さて、映画が描きたかったことはそういうお話だったのだろうかというのが、見終えてわかったようなわからなかったような結末ですね。
十七世紀の王宮の艶笑譚だという見方もあるかもしれませんね。しかし、まあ、残念ながら、ぼくには、こういうグロテスクで生ぐさい人間関係を笑う余裕はありませんでしたね。
映画は 女王の部屋
で飼われる 十七匹のウサギ
を描くことで、 「おんな」
である切なく愚かで不安な 女王
の姿を映し出している趣て、それが、 王としての権力
の姿をとるときの傲慢さに、独特の色合いを添えている印象でした。
ウサギを飼っているのが王なのか、ウサギそのものが王なのか。
「おんな」
に対して、 女王であるアン
がみせるコンプレックス、文字どおり複雑な心理の正体が、王宮で籠に入れて飼われているウサギの姿で暗示されていたのではあるまいかという印象です。
このタイプの 「小心」な権力
は 「騙す」
のは構わないのでしょうね、しかし 「脅す」
のは、御法度なのですね。 サラ
は、まず、そこをしくじったというわけです。
とか、なんとか、あれこれ考えていて、最後のシーンでした。 女王
が、今度は アビゲイル
の 「いつわり」
に気づいて癇癪を爆発させ、仁王立ちのままひざまづいている アビゲイル
に向かって 「めまいがする」
と叫び、髪の毛を鷲掴みにつかむんです。
で、ボンヤリとかすんだウサギの群れへとシーンが変わり、映画は終わります。
「ホラ、ヤッパリそうやん。ああ、ホントに、めまいがするわ。ウサギ小屋の女王が世界を鷲掴みしている。」
思わず、声に出していいそうでしたね。 鬼才ランティモス
というより、 奇才
の印象の強い映画でした。
元町商店街を歩いていると「元町映画館」の前でモギリをやっている、お友達のおねーさんと出会った。
「どこ行ってたんですか?」
「シネ・リーブル、女王陛下のあれ、みてきた。」
「どうでした?」
「正直くたびれた。あんまり好みちゃうかも。でも、有名なカントクなんやろ?」
「ああ、『ロブスター』とかね。『ジュリアン』よかったですよ、ラストカット。あした『ともしび』観ます。」
「ああ、ぼくもそうしょうかな。」
神戸駅まで歩いて、漸く、ちょっと元気になりました(笑)。
監督 ヨルゴス・ランティモスYorgos Lanthimos
製作 セシ・デンプシー エド・ギニー リー・マジデイ
ヨルゴス・ランティモス
脚本 デボラ・デイビス トニー・マクナマラ
撮影 ロビー・ライアン
美術 フィオナ・クロンビー
衣装 サンディ・パウエル
キャスト
オリビア・コールマン(アン女王)
エマ・ストーン(アビゲイル・ヒル)
レイチェル・ワイズ(サラ・チャーチル)
ニコラス・ホルト(ロバート・ハーリー)
ジョー・アルウィン(サミュエル・マシャム)
原題「The Favourite」
2018年 アイルランド・イギリス・アメリカ合作 120分
ヨルゴス・ランティモス「哀れなるものた… 2024.01.31