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「さよなら、太陽も海も信ずるに足りない」いったい、少年は、何に別れを告げたくてこんな言葉を天井に貼ったのでしょうね。あれから 45年 たったのですが、よく分からないのです。
「死んだ男」 鮎川信夫 文学研究者の証言によれば、詩の中で 「 M よ」 と呼びかけられている 「死んだ男」 とは作者 鮎川信夫 の親友 森川義信 。 森川 は昭和17年ビルマの戦線で戦病死した 「荒地」 の詩人です。この詩はいったい何時頃書かれたのか、おそらく戦後すぐのことであったろうと思います。 「荒地詩集1951」(国文社) に載せられています。
たとえば霧や
あらゆる階段の跫音のなかから、遺言執行人がぼんやりと姿を現す。
──これがすべての始まりである
遠い昨日・・・・
M よ、君は暗い酒場の椅子の上で、
歪んだ顔をもてあましたり、
手紙の封筒を裏返すようなことがあった。
「実際は、影も、形もない?」
──たしかに死にそこなってみれば、そのとおりであった
昨日のひややかな青空が
剃刀の刃にいつまでも残っている、
だが私は、時の流れのどの邊で
君を見失ったのか忘れてしまった。
黄金時代──
活字の置き換えや神様ごっこ──
「それが私たちの古い処方箋だった」と呟いて・・・・
いつも季節は秋だった、昨日も今日も、
「淋しさの中に落葉がふる」
その声は人影へ、そして街へ
黒い鉛の道を歩みつづけてきたのだった。
埋葬の日は、言葉もなく
立ち会うものもなかった、
憤激も悲哀も、不平の柔弱な椅子もなかった、
君はただ重たい靴の中に足をつつ込んで静かに横たわつたのだ。
「さよなら、太陽も海も信ずるに足りない」
M よ、地下に眠る M よ!
君の胸の傷口は今でもまだ痛むか。
確かに暗い。でも、この国の現代詩、特に戦後のそれは、おおむね暗くて、難解だから気にしてもしょうがないですね。
フレーズが一つ気に入ったら、何度も繰り返して口ずさむ。詩や歌を理解する鉄則は、それしかない。そう、思い込んできました。一発でいいなと思う詩より、ある時、気になり始めた詩のほうが長持ちすると、そんなふうに詩を読んできました。
この詩集には
「石の中に眼がある 憂愁と倦怠に閉ざされた眼がある」
で始まる 田村隆一
の詩 「皇帝」
もあります。いづれまた案内しようと思っているのですが、いつになることやらです。(S)
初稿2005
・ 1
・
13改稿2019・10・30
追記2019・10・30
「荒地」派
というふうに、何だか政治党派の分派のように呼ばれていたらしいのですが、僕が学生だった頃には、すでに個人詩集や、全集のようなものまであるメジャーな詩人たちでした。その頃、お世話になった 思潮社
の 「現代詩人文庫」
というシリーズの一桁のラインナップに名を連ねている詩人たちでした。
不思議なもので、ひとりで徘徊していると、ふと 「 石の中に眼がある
、か?」
と口をついて出るのですが、それが誰のことばだったかわかりません。帰宅して、ネットで調べると、すぐヒットします。便利な時代になったとつくづく思いますが、繰り返し口ずさむ人は減ったかもしれませんね。
追記2022・06・16
どなたかわかりませんが、古い投稿記事を読んでくださった方がいらっしゃることに気づいて、記事を見直すと、意味不明の文章で焦りました。
とりあえず、修繕しましたが、 荒地の詩人
の詩とか、どこかで案内しようと思っていたことにも気づいて、夏までに好きな詩を投稿しようかなと思いました。その時はよろしく。
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