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そうすると、「あった、あった。」となるわけです。この教材の場合は 山口昌伴「水の道具誌」 (
岩波新書
)
ですね
。
目次をひらいてを見ると、 「如露」、「鹿おどし」、「水琴窟」、「金魚鉢」、「蓑」、「和傘」、「手拭」、「雑巾」、「砥石」、「束子」、「浮子」、「爪革」、「川戸」、「龍口」、「金盥」、「龍吐水」、「馬尻」
。
高校生諸君には読み仮名テストになりそうなラインアップですが、水とかかわる日常生活のさまざまな道具の名前がずらりと並んでいます。読み方もわからないのですから、いったいどんな道具なのか見当がつかないものもあるかもしれません。それは、まぁ本書を読んでいただかないとしようがないですネ。
さっそく「鹿おどし」のページを読んでみます。第 1
章「水を楽しむ」の中の数ページ。道具の研究者が、現物をじっと観察し、調べ上げた薀蓄が語られています。
鹿おどしをじっと見つめてみる。水がだんだん削ぎ口まで溜まってくる。重心が前に移ってくる。だんだんだんダン!全体が身じろぎしたかに見えて次の瞬間、削ぎ口がサッと下がって水がザッと出てサッとはね上がる勢い余って尻が据え石を叩いてコーン、その瞬間は目にも留まらぬすばやさ、風流とは違うなにかが働いているとしか思えない。 どうです、書き方がいいでしょう。日用品の研究なんて、地道以外のなにものでもない仕事だと思うのですが、この書き方をみて、このおじさん、タダモノじゃないねと思うのはボクだけでしょうか。
ところで、 「鹿おどし」 についての薀蓄はどうかというと、こんな感じです。
誰も居ない田や畑の作物を鳥獣の食害から守るには、人がいると見せる案山子のように視覚的な威しもあったが、音を鳴らして威す方が効果的で、雀おどし、鳴子などがあって鹿おどしもその工夫の一つだった。鹿も猿も居ない茶庭に仕掛けるのは、人の心の安逸に流れるのを威す、禅門修業の精神覚醒の装置だった。 ぼくにはどこかの禅寺で「カアーツ!」と両手で捧げ持っていて振り下ろす、あれは何というのでしょう。「杓」でいいのでしょうか。ともかくあれを振り下ろしている住職さんの代わりに、「カアーン」と音をさせる道具が「鹿おどし」だったという理由で「僧都」といいますというほうが面白いのですが、そうではないようですね。道具にはそれぞれ縁起というものがあるのです。ナルホド。
鹿おどし、僧都ともいい添水とも書いた。昔、巧妙な智恵や、高度な技術をお坊様の功に帰すことが多かった。弘法大師がその代表格だったが、鹿おどしは玄賓僧都。僧都は僧正に次ぐくらいの身分で、玄賓僧都はまず案山子の発明者とされ、やがて雀おどし、鳴子も玄賓の発明とされて僧都と呼ばれ、鹿おどしもやっぱり玄賓僧都ご発明に帰した。
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