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小説家・村上龍が各界有名経済人・ビジネスマンと語り合う番組。 いわゆるトーク番組なんだけど、村上氏がバブル時代にパーソナリティをつとめていた「気ままにいい夜」が主に映画監督や小説家、芸能人をゲストに迎えていたのに対して、このカンブリア宮殿のゲストは経済人である。 つまり世の中が不況になって、映画や芸能などのアートにはあまり目を向けず、「稼ぐこと」や「今後の展望」に関心を向けだしたという背景がもたらす現象がこの番組には深く反映されている。 村上龍の書く小説も同じ。 バブル時代は「トパーズ」などの風俗モノが多かったのに、今やこの方、めっきりフリーターやニートの説教役だもんね。 女子高生ブームの時は女子高生を主人公にした小説書いてたし、ひきこもりが話題になった時はひきこもりをテーマにした小説書いてたし、よくいえば時流に敏感な問題意識のある作家、悪く言えば調子がいいってところでしょうか。 この人のエッセイ集に「すべての男は消耗品である」っていうシリーズがあるんだけど、バブルのころと今とでは書いていることがほぼ180度違います。 それでも私が村上氏の作品を読んでしまうかというと、ところどころに「そういえばそうか!」と思わせる一文があるからなのだった。 そういうフレーズがこの番組に出てくるかと思って、放送開始から見ているんだけど正直今ひとつ。 ゲストに迎える財界人がみんな立派な社会人で(業界のトップなんだから当たり前といえば当たり前なんだけど)、意地悪な質問をされても無難な答えしかしないので、番組が盛り上がらない。 まあ、芸能人や小説家と違って、あの人達はバックに組織がついてるから自由なことはいえないんだろうね。 その点を遠慮してか、村上龍もあんまりしゃべらない。「コインロッカー・ベイビーズ」のころみたいなキレまくった意見を吐いたらさぞや面白いだろうと思うんだけど。 あ、でもこれじゃヘタしたら番組放映中止か(笑)。 これじゃふつうのトーク番組で、あまり村上龍らしさは出ていないと思うので、もうひと工夫すべきだと思う。 この番組の司会者経験を経た村上龍の書く小説は面白いかもしれないけど。 私が好きな村上作品です。 「カンブリア宮殿」でもこれくらいのキレっぷりを披露してほしい(笑)。 松田龍平主演で映画にもなりました。昭和歌謡大全集 最新作です。 「カンブリア宮殿」はこの本のテーマを参考に作られた番組なのかなあと思います。盾(シールド)
2006年04月30日
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育児学級にダンナとともに行く。 とは言っても、もちろん行政がやっている育児学級ではない。 だってあれ、開催されるのが平日なんだもん。 なのに夫婦そろってご参加くださいってのはありえないよね。 こういうところがお役所仕事……って感じがする。私は行政の育児学級も行ったんだけど、ダンナ向けに作られた育児用ビデオがとても空しく感じられた。 まあ、行政側からすれば「有給休暇取ればいいでしょ」とか「自営業の人は来られます」といった逃げがうてるんだろうけどさ。 今日行った育児学級は、某子供服メーカーによるもの。 もちろんそのメーカーのベビー用品を売るのが目的で、ちゃっかりベビー用品のカタログを渡されたり、教室で使われるその製品がすべてそのメーカーのものだったりするが、それでもありがたい。 だってダンナに赤ちゃんの入浴法やおしめの換え方を覚えさせたくて参加したんだから。 人にものを教えるってのは、近しい関係だと結構難しい。 なんでかっていうと、こっちはプロじゃないし、それに相手が親しいとついイライラして「どうしてそんなこと分からないの!」ってキレちゃったりするのだ。 昔、私は父に勉強を教わるたびにしまいには殴られて泣かされていたものだが、あれはそういう理由によるものだと思う。 それに私も育児はまったくの素人。 ダンナに誰がレクチャーするの~? ってところだ。 だから連れていったのである。 行政の育児教室より、内容はきめ細かくオムツの換え方をかなり詳しく教えてもらった。 これはきっとそのメーカーの布おむつを売りたかったんだろうけど。 パンツタイプの紙オムツだと一発で換えられるんだけどなあ。 ダンナは真剣に説明に聞き入り、「よし、覚えたぞ!」と言って、休み時間中に私におむつの換え方をレクチャーしていた。 ダンナのこういう嬉しがりなところが愛おしい私である。 その後、赤ちゃん人形を使って沐浴指導。 これが先生はやたらとダンナにばかり教えてくる。他のカップルにも同じ。 どうやらメーカーも、行政側の育児学級に来られないダンナのためにこの育児学級はあると自覚しているらしい。 ダンナは赤ん坊と同じ重さの人形を抱いて、「僕らの赤ちゃんもこんなに重いんだろうなあ」と目を輝かせていた。 ちなみにこの人形、重いことは重いけど、耳たぶまでしっかりできていて×××までちゃんとついていた行政育児学級の人形と違い、リアルさでは今ひとつだった。 これで赤ちゃんのおふろの入れ方はばっちりだ! がんばれ、ダンナ。 それからダンナの妊婦体験。 妊婦が実感している胎児の重さをある装置を使って実感してもらうというやつ。 ダンナは「重い!」とうなっていた。 これでふだんの私の苦労が分かったか~! ついでにつわりも体験させたい。
2006年04月29日
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妊娠31週。 逆子が治っているかどうか検診しに行って参りました。 さて、その結果は。右向き逆子だった赤子が、左向き逆子になっていた。 つまり体を反転させていたわけで、エライ、我が子よ、一応努力したんだね! ってあんた、結局体の向きを変えただけで逆子治ってないよ……。 とがっくりきていたところ、追い打ちをかけるように先生に、「やっぱり治ってないねえ、5パーセントくらいの妊婦さんが治らないんだよねえ」と追い打ちをかけるように言われる。 それからひとしきり、逆子のために何をやったかのトーク。 二時間ウォーキングし、お灸した。お灸のしすぎで足が低温やけどになってしまい、現在はしていない。 毎晩、赤子に「逆子はやめてちょ」とお願いした(←くだらない方法のように思えるが、結構効き目があるととある東洋医学サイトにのっていた。8ケ月の胎児は聴力があるそうである) などの話をしたら、先生に「よくがんばったねえ」と言われる。でも効いていないのである。 それから先生は、おもむろに私の腹を押し始めた。 最近ますます増えた私の脂肪を揉み出してくれて……じゃなくて、骨盤位転移術なるものをやってくれているのである。 これは逆子の治し方として結構有効な方法で、腹の皮膚を通して、胎児のむきを変えてしまうというもの。 直接的方法ですな。 これって、病院によっては「任意書」なるものにサインして行うそうなんだけど、この先生は何も言わずに始めた。これって大丈夫なの? と疑問を抱いている間に、「あと30度くらいで逆子治るよ」と言われる。 だったら最後までやってほしいんですけど……。 あんまりきつくやったら赤ちゃんに何かモンダイが起こるのだろうか。 それから「また1週間後に様子を見せに来てね」と言われ、前々回の検診でもらった逆子治しに有効とされるクスリをもらう。「どうして前回の検診ではいただけなかったんですか?」と質問したら、先生はしばし考えた後、笑顔で、「ああ、忘れてたとのたまわった。 本当に大丈夫なんでしょうか、この病院……。
2006年04月28日
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一陣の風が、凛太郎に吹き付けた。思わず目を閉じる。このまま、風に吹かれてどこかへ飛んで行ってしまいたいような気がした。 そんな自分を凛太郎はしかりつける。駄目だ。逃げてはいけない。(先生が僕のために、信行さんと戦ってくださるんだから……!) 凛太郎は前方にいる秀信の背中を見つめた。その傍らには祥が、そしてその周りには陰陽師たちがいる。さらに彼らを補佐するように、秀信の私的SPたちがいた。黒い背広に身をつつんだ彼らは、衣服の上からでも屈強な肉体の持ち主であることが見て取れる。 だが、今回の戦闘において能力を発揮するのは陰陽師たちであることは事実であった。 一同は息をひそめて、信行の住む屋敷の周りに張り込んでいるのである。広大な敷地を持つ弓削邸の一角に屋敷を作り、信行は配下の手のものとともに住んでいるのであった。「凛太郎、震えてンのか?」 そう言って明が、凛太郎の背中に手を回す。凛太郎は小声で反論した。「やめてよ、こんなところで。みんなが見るだろ」 凛太郎の言葉を無視して、明はささやいた。「無理して陰険眼鏡のお家騒動に首つっこむことないぜ。俺ら二人でトンズラしようや」「そんなことできるわけないだろ! 先生は僕のために戦ってくださってるんだから!」 つづく
2006年04月27日
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凛太郎、晴信、祥は同時に叫んだ。「環喜さま!」「おばあさま!」「環喜さん!」 環喜に庇われた柊子は、ぐったりとした環喜を見て絶叫する。「た、環喜さま! 私のために…」 半狂乱になった柊子を明が押しのける。「どいてろ!」 明は環喜を抱き起こした。口元に息を近づける。「まだ息はある」 明の言葉に、凛太郎は胸を撫で下ろした。明は指先から爪を伸ばし、環喜の傷口にあてた。鬼の特殊能力を生かした応急処置だった。「おばあさま! おばあさま!」 泣きじゃくる晴信の肩を、凛太郎は抱く。嗚咽する晴信に、秀信が式神と戦いながら呼びかける。「晴信、泣くな! そんなことで弓削の巫子がつとまるか! 環喜さまも心配しておられるぞ」「は、はい……」 晴信は気丈に涙を手の甲で拭った。その間にも、式神は容赦なく攻撃を仕掛けてくる。秀信と祥が防戦しているからいいようなものの、もしそれがなければ凛太郎たちはとっくに毒牙にかかっているところだった。 目をこらして、凛太郎は式神を見つめた。粘つくその口からは、トカゲそのものの舌が突き出ていた。それはぬらぬらとした粘液を伴っている。ふと、凛太郎の頭にひらめくものがあった。「先生!」 凛太郎は叫んだ。秀信が目を向ける。「口です。その式神の口を狙ってください。そこに、水の札をたたき込んでください」 祥が困惑した声を上げた。「けれど凛太郎さま。この式神はとかげ。どう見ても、水に属する式神です。そこに同じ水を加えては、攻撃力が増すばかりではないかと……」「そ、それは……」 凛太郎はたじろいだ。たしかに言われてみればそうだ。だが、頭に突如として浮かんだこの直感がそう言っているのだ。 躊躇する凛太郎を秀信はしばし注視してから、背広の胸ポケットに手をやる。「まさか秀信さま……」 祥には答えず、秀信は札を手にして呪文を唱え始めた。その間に、式神は秀信に牙をむく。「危ない、秀信さま!」 秀信を守ろうととっさに身を投げ出した祥を、式神ははねのけた。祥が壁にたたきつけられ、低い悲鳴を上げる。「う、ううっ……」「祥さん!」「祥!」 祥の元へ駆け寄ろうとする凛太郎と晴信を、環喜に治療を施している明が制した。「大丈夫だ。あいつは人間の身の上で式の能力を持つ男だ。これくらいじゃ死なないさ。今お前たちが出て行ったら、かえって足手まといになっちまうぜ。それより、あの陰険眼鏡の出方を見ようぜ」「そ、そんな……」 なおも食い下がろうとする晴信に、凛太郎が呼びかける。「晴信くん。先生を信じよう」「……はい、凛太郎さま」 二人の巫子は、秀信を見守った。 秀信は裂帛の気合いを込めて、式神に札を投げつけた。「ハァーッ!」 札は白い光を放ち、式神の口内に投げ込まれた!「やったかっ?」 明が低くつぶやく。凛太郎と晴信は固唾をのんで行く末を見守った。秀信も頬をこわばらせて式神を見つめる。式神は静止していた。秀信の攻撃が効いたのかもしれない。凛太郎がそう希望を持ち始めた時、ふたたび式神はうなりを上げた。「キィィィィ!」 駄目だったか。一同がそう観念した時、式神はどす黒い粘液を口から吐き出し、やがてどろどろに溶けていく。「……土の式でしたか」 壁に身をもたせかけたまま、祥がつぶやいた。秀信がうなずく。「ああ。とかげの形態を取っているので、てっきり水のものかと思ったが。どうやら凛太郎の巫子としての勘がものを言ったようだな。礼を言うぞ、凛太郎」「そ、そんな礼だなんて……先生」 安堵とともに凛太郎は頬を染める。明はそれを見て、面白くなさそうにあっかんべえをした。 ゆるみかけた表情を秀信は引き締めて、胸ポケットからふたたび札を出した。式神はもう退治されたのではないか。それとも? 凛太郎は不安に思い始める。 泥のように溶けた式神に、秀信は札を投げつけた。途端に式神は、断末魔のような叫びを上げて蒸発した。「あれは……」「式返しですよ」 凛太郎の疑問に、祥が答える。「式を撃退した瞬間に、札を投げつけるのです。するとどんな相手がこちらに攻撃を仕掛けてきたかが分かります」「つまり敵の正体見たり、ってわけか」 明に祥はうなずいた。「はい。今まで攻撃を仕掛けてきた式はすんでのところで取り逃がしてしまっていましたが、このたびは……」「わかったぞ、祥」 秀信が、祥の言葉を遮った。凛太郎たちは息をのんで秀信を見やる。先ほどの札と対になるらしい同じ形の札を見つめながら、秀信が低くつぶやいた。「あの式を放った相手は――信行殿だ」 つづく
2006年04月26日
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病院でやっているマタニティビクスへ行く。 いつもは私一人なのに、今日はめずらしくもう一人いた。 若く見えるので、私と同じ初産だと思っていたらもう三人目だとか。 「産んだら体重すぐ元に戻りますよ」と言われる。 そうだといいけど……。
2006年04月25日
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最近、肩こりがひどいので整体に行く。 肩の関節がおおはばにズレているそうで、「何か変な姿勢でもしましたか?」と訊かれる。 毎晩、おなかが重くて横向きになって寝てるせいだと思う。 横向きになって寝ると、寝返りを打ったときについ不自然な姿勢になってしまうのだ。 待合室で患者さんの70くらいの人に、「いつ出産ですか?」と質問される。 外見ではっきり妊婦さんと分かるほどの体型になったのね、私。 毎晩、これ貼って寝てます。 じんわりしてて気持ちいいです。
2006年04月24日
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産後につけると体型が元に戻ると言うことで、ウェストニッパーについて調べる。 でも帝王切開だったら、ニッパーって当分つけられないのよね……。
2006年04月23日
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お腹が重い。 重くて長時間眠れない……。 胎児がすぐに蹴るので、いつも眠りが浅いです。
2006年04月22日
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赤ちゃんも順調だし、体重も注意されなかった。 けど、あれだけがんばったのにまだ逆子がなおりません……。
2006年04月21日
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その間に畳の上に流れていた血は、一匹の真っ赤なとかげの姿を取っていた。それは最初、小さかったが徐々に大きくなり、部屋の天井に届かんばかりの大きさとなっていた。(これが式の力か……!) 明に守られながら、凛太郎はその様に目を見張るばかりだった。 祥は構えの体勢を取って、秀信を見やる。秀信は眼鏡のブリッジに手をやりつつ、険しい目つきで式神を見やっている。その間にも、式神は環喜に襲いかかりそうになり、かろうじて晴信がそれを防御した。大きく肩で息をつく晴信に、環喜が尋ねる。「大丈夫か、晴信?」「へ、平気です。おばあさま一人を守れなくてどうするんですか。僕も男ですよ」 そう言って晴信は気丈に微笑んで見せたが、疲弊は隠せなかった。病弱なこの巫子は戦闘には向いていないのだ。祥の表情が曇り、焦れたように秀信に尋ねた。「秀信さま、この式の属性をお教えください。でなければ、どういった攻撃を仕掛ければいいか分からなくて……」「それを今、考えているところだ」 即座に秀信が訊ねる。祥は環喜の守りに向かった。式神が跳躍する祥に、噛みつく。腕から血を流しながら、祥が顔をしかめる。それでもどうにか環喜のもとへ祥はたどりつき、その前にかばうようにして立った。 秀信が環喜に呼びかける。「環喜さま、この式は火、水、土のどれに属するのでしょうか?」「そうやな――うちは、これやと思ったんやけど」 そう言って環喜は不敵に笑い、祥の肩越しに懐から出した一枚の札を投げつけた。それは式に衝突するやいなや、炎を上げて炎上する。とかげの姿をした式は、咆哮した。明が快哉を叫ぶ。「やったかっ?」 だが、式神がひるんだのはほんのわずかな間だった。ややあって、また元の勢いを取り戻す。秀信が愕然とつぶやいた。「火の式ではないのか!」 祥が舌打ちする。あらたな札を探すように、環喜がふところに手を入れた時だった。 ふすまが開いた。そこから何も知らない柊子が顔を出す。「環喜さま、どうなさったん……きゃあ!」 式神が柊子に向かって飛びかかった!「危ない、柊子!」 環喜が絶叫した。弱った足腰を振るって、柊子を守ろうと駆け出す。だが、それも及ばず、環喜は畳の上に転倒した。シャアアア……と嘲笑うように式神が牙を剥く。そのまま式神は環喜の背中に噛みついた。その痛みに、環喜が絶叫する。「ぎゃああああ!」 環喜の背中から、鮮血が噴き出した。着ていた白い寝間着が赤く染まっていく。 つづく
2006年04月20日
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逆子を直すにはお灸がいいと病院の先生に言われ、お灸院へ行く。 「お灸はあつくなんかないですよ~」とよく言われてるけど、あれはウソ。 もぐさでやってもらったお灸はマジで熱かった。 途中で何度も「熱い! 熱い!」と叫んでしまうくらい。 お灸院の先生に「自分でせんねん灸でやってもよい」と言われたので、薬局でせんねん灸の一番弱いやつを買う。これでいいと言われたのだ。 けど、効き目はあまり感じない。 ほとんど熱くなくてこれでいいのか? と思うほど。 一番ハードなにんにくきゅうを買う。 これもいうほど熱くない。 と思ってやっていたら、なんと火ぶくれができてしまった。 しばらくお灸は休むつもり。 逆子なおってるかなあ。
2006年04月19日
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腐女子で、主婦で、妊娠中の私としてはなかなか複雑な気持ちになる映画でした。 最初は友情から始まった思いが恋愛になるというのはBLものの王道なんですが、それを現実的に描くとこうなってしまうという……。 主人公二人を「同性愛者なのに結婚するなよ~」の一言で片づけてしまうこともできませんが、あのそれぞれの奥さんがかわいそうなのもまた事実。 私が一番気の毒だと思ったのは、イニスの娘です。 母親にはうとんじられ、かといって父親の愛情も十分には得られず……。 彼女には幸せになってほしいと思いました。 ラストのイニスの一言が重い映画です。
2006年04月18日
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犯人を示す手がかりは、いまだ見つかっていない。 けれどその後、凛太郎にいくつかの式神が放たれた。もちろんそれはすべて明によって撃退されたが、もっとも凛太郎に精神的ダメージを負わせたのは、凛太郎が明に気を与えている時――二人が交わっている時に突如、式神が襲ってきたことである。明の拳を震われ、シーツに赤い血を流して事切れたあのとかげの式神の姿を、凛太郎は一生忘れることはできないだろう。おそらく式を放った人物は、凛太郎と明が情交している時を狙ってそういったいやがらせを仕掛けてきたのではないか。緊張を強いられる日々を送るうち、いつしか凛太郎はそんな被害妄想にも似た思いにとらわれるようになっていた。 そんな凛太郎の気持ちを知ってか知らずか、こうして明は凛太郎を散歩に連れ出したのである。 二人は、広々とした弓削の庭園を歩いた。躑躅や野薔薇が咲き乱れ、庭園はうららかな空気につつまれている。 整えられた庭の風景に、凛太郎が久々に心和ませていると、突如として明が凛太郎の手を強く引いた。 いきなり大股で歩き出す明に、凛太郎は抵抗の声を上げる。「どうしたんだよ、明」「したくなった」 振り返って、いたずらっぽい笑みを浮かべながら明は答える。「えっ?」「したくなったんだよ、お前と。ここんとこ、お前やらせてくれないじゃねェか。陰険眼鏡の見張りもずっと俺らに張り付いてるから、二人っきりになる暇もなかなかねェ。だから、ここでさ」 白い歯を見せて頬を寄せてくる明に、凛太郎は頬を熱くした。「嫌だ! 誰かに見られたらどうするんだよ? だいたい式神がまた襲ってくるかも……」「だ~いじょうぶだって。あんなへなちょこ、また俺が撃退してやらァ」 今にも明が凛太郎をその場で押し倒しそうになった時、凛太郎は靴音を二つ聞いた。「どうしたんです、お二人とも。お散歩ですか?」 祥の涼しげな声に、凛太郎はあわてて明を突き飛ばした。「人の恋路を邪魔すンじゃねェぞ、てめェら」 明が頬をふくらませる。凛太郎はそんな明をつねりながら、秀信と祥に向けてお辞儀した。「え、ええ、そんなところです」「見張りの者はどうした?」 辺りを見回しながら、秀信が首をかしげた。「たしかつけておいたはずだが」「あんなもんに四六時中つきまとわれてたら、息が詰まるっつーの!」 舌を出す明を、またしても凛太郎はつねる。「痛ェ、何すンだよ、凛太郎」「明は黙ってろ!」 言い合いを始めそうになった二人を取りなすように、祥が微笑んだ。「たしかにお二人とも、たまには見張りなしで遊びたい時もあるでしょう。それに明さまがいらっしゃれば、凛太郎さまの身の安全も守られるでしょうし」「そうだ、そうだ! あんたよく分かってンじゃねェか」 ふむふむとうなずく明を尻目に、凛太郎は秀信に尋ねた。「先生は、祥さんと何をしていらっしゃるのですか?」「私か? 私は……」 かすかに秀信は、秀麗な眉をひそめた。同じく祥も、沈痛なおももちになる。「環喜さまの見舞いに参上するところだ」 凛太郎と明は、二人して沈痛な面持ちになった。 秀信に導かれて、凛太郎たちは環喜が療養している離れに向かった。秀信が一声かけると、環喜の身の回りの世話をしている柊子という少女が出てきた。「はい、ただいま――よく来てくださいました、秀信さま」 低頭する柊子の脇から、ひょっこりと小さな顔が出てくる。晴信だった。祥が目を丸くする。「晴信さま、こちらにいらっしゃったのですか?」「うん。僕、おばあさまの看病がしたかったんだ」 こくり、と晴信はうなずいた。凛太郎の顔を見て、丸い頬をほころばせ「ようこそ、いらっしゃいました、凛太郎さま」と声をかける。そんな晴信に、秀信は眉をひそめた。「晴信、お前、体は大丈夫なのか? 無理をしてはまた熱が……」「そうなのです。私も晴信さまにお手伝いしていただく必要はないと申し上げたのですが……」 胸に手をあてて、すまなさそうに柊子が言う。秀信に叱られるのかと心配になったのだろう。あどけない頬を晴信がこわばらせた。凛太郎は晴信に微笑みかける。「晴信くんは環喜さんが心配になったんだろう? やっぱり大切な人は、自分が看病してあげたいよね」「は、はい! 凛太郎さま」 助け船を出された晴信は、パッと顔を輝かせた。晴信の喜び様を見て、秀信の表情も和む。それを見て取った祥は、「それでは環喜さまのもとに参りましょうか」と歩みを進めた。明、祥、晴信が一足先に行った後、秀信が柊子に訊ねる。「どうなのだ? 環喜さまのご様子は?」「一進一退といったところです。なかなか熱が下がられなくて……。なにぶんお年ですから、快復力が弱っておられるのでしょう」「そうか……」 秀信の怜悧な顔に影がさす。凛太郎は胸が痛くなる思いで、それを見つめた。 環喜が床に伏したのは、首都を鈴薙が襲来したしばし後のことだった。晴信を連れて、庭を散歩している最中、突如として倒れたのである。医者を呼ぶと、高齢ゆえの衰弱――老衰だろうと診断された。 それにしても今まで元気だった環喜がいきなり病の床に伏すのはおかしい。秀信つきの陰陽師たちの中にそう考える者も少なくなかった。彼らはまことしやかに噂した。秀信と凛太郎の味方をした環喜を、呪殺しようとしている者がいるのだと。その噂を聞いて、凛太郎は自分のせいで環喜の命が狙われているのかと胸を痛めた。 だが、一応その推測は、単なる噂だと秀信によって認定された。環喜の身辺には、式が放たれた形跡など発見されなかったからである。環喜の不調は、高齢と突然相次いだ鈴薙の襲撃に対応したためだという理由づけとなったのだった。 柊子に案内されて、秀信と凛太郎は環喜の伏している寝室へと向かう。「環喜さま、秀信さま、凛太郎さまがおいでになりました」「入ってもらいや」 比較的元気そうな環喜の返事が返ってきた後、膝をついて、柊子がふすまを開けた。 凛太郎は目を見張った。布団が敷かれている畳の上に、見事な椿が生けられていたからである。きっとほのかがこれを見たら、目を輝かせるだろう。しばらく会っていないクラスメイトのことを懐かしく思い出しつつ、凛太郎は訊ねた。「どうしたんですか、これ?」「朝起きたら、玄関の前に置いてあったんや。きっとこの屋敷の誰かがうちのために生けてくれたんやろうな。ありがたいことやわ。気分が華やぐからな」「本当に綺麗ですよね、おばあさま!」 はずんだ声で、晴信があいづちを打つ。明や祥までもが、濃い紅色の椿に目を細めていた。その美しさは、まさに命の輝きだった。 柊子がお茶とまんじゅうを出し、一同はなごんだ雰囲気の中、しばし談笑した。少し堅い面持ちになって、凛太郎が問う。「環喜さん、具合はいかがですか?」「心配することないわ、ほら、もうぴんぴんしとる」 ひらひらと環喜は凛太郎の顔の前で手を振った。床に伏しているとは思えないほどの元気な仕草だった。「もううちは寝てる必要はないと言うとるのにな、周りがうるそうてかなわん。うちはあんたみたいな綺麗な子ォと話してる方が、よっぽど滋養になるのになあ」 そう言って立ち上がろうとする環喜を、布団に柊子が押し戻した。「いけません、環喜さま。お体にさわります」「もううるさいわ。放っといてや」 環喜がべぇっと舌を出した。その少女のような仕草に、一同が笑いさざめく。 環喜もいっしょになって笑った。愛らしい笑顔だった。 だが、環喜の双眸が急に険しくなった。「伏せや」「えっ?」 凛太郎が問うた時だった。 突如として、畳が鮮血に染まった。その血は、生けられた椿から流れ落ちていた。「何だよ、これ!」 叫ぶ明に、祥が答える。「式です! 明さま、凛太郎さまを!」「言われなくても分かってるぜ!」 明は凛太郎を横抱きにして、血の届かない範囲へ飛び退く。明に抱かれたまま、凛太郎は環喜を見やった。「明、環喜さんは……」「大丈夫や。うちは自分の身ィくらい自分で守れるわ!」 環喜は軽口を叩いたものの、その表情にはいつものゆとりはなかった。 つづく
2006年04月16日
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歌も音楽も脚本も一級品。 だけど30年くらい前の映画を、今劇場でリバイバルでもないのに観ているような不思議な映画。 そのあたりを好きになれるかなれないかで評価が分かれる映画だと思います。
2006年04月15日
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29週目。 8ヶ月もこれで1週過ぎたことになる。 今日、産婦人科に行ったのは検診のためでなく、逆子が治ってるかどうか見てもらうため。 だから体重は量らなくて済んだ。 今週は花見に行って、花見だんごやら何やら食べて体重がまたしても増えたので(あまりにも増えていくため、だんだんショックが麻痺している私)、計量されなくて良かったなあ。 でも、結局来週は検診だから体重計るハメになるんだけどね。 それなりに運動しているので減っているといいなあ。 逆子だけど、治ってなかった。 あいかわらず定位置の横子のまま。 先生が赤子の位置を直そうとしても、動きやしない。 さわりにくい位置に寝てるんだって。 あと90度回転すれば、ちゃんと定位置になるんだけど。 お灸も毎日してるんだけど、効果なかったみたい。 やっぱりせんねん灸ソフトでやったのがよくなかったんだろうか。 ちなみにせんねん灸ソフトというのは、一番熱が弱いせんねん灸のこと。 針灸院に行って、「自分でやるならこれで大丈夫ですよ」って言われて買ったんだけど、全然熱くない。 針灸院の先生にもぐさでやってもらった時は、「熱い!」って叫ぶほどだったのに、こっちは「本当に効いてるの、これ」っていう感じ。 燃え尽きるのも早いし、やっぱり一番ハードなにんにく灸にすれば良かったかなあ。 べつに熱いのが好きってわけじゃないんだけど。 先生に帝王切開について訊ねたところ、そんなに大変ってわけじゃないらしい。 麻酔の効き具合が人によって違うから、あまり効かない体質の人はしんどいらしいけど、それはやってみないと分からないそうだ。 つまり無痛分娩と同じ。 周りに帝王切開した経産婦さんもたくさんいるし、みんな楽だったって言ってるからそれもいいかも……という気もしてきた。 でもだったら、あんなに無痛分娩にするか自然分娩にするか悩んだのはいったい何だったんだろう。 これだったら、自然分娩主義のおいしいフランス料理が出る病院にしとけばよかった……。 でも帝王切開ってやったら、ごはんしばらく食べられないんだよね。 あんまり食事は関係ないかも。 逆子で弱ってるかもしれないということで、赤ちゃんの心音を調べてもらう。 ものすごく元気でした。 腹を蹴った時、心電図のモニターがボコッと鳴るのが面白かった。
2006年04月14日
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妊娠8ヶ月もそろそろ2週目。 予定日を訊かれて答えると、「もうすぐですね」といわれるようになった。 つまり妊娠後期に入ったということである。 私は「シアーズ博士のマタニティブック」という本を愛読している。 アメリカで有名な産婦人科医で、奥さんは看護婦、そんでもって子供が8人いて、その子供たちをすべて自分で取り上げたという「育児出産一筋、本当にすきだったんですねえ(何が?)」というような人である。 さすがいろんな妊婦さんをみているだけあって、書いてあることもそんじょそこらのマタニティブックとは訳が違う。「妊婦は妊娠後期になると物忘れが激しくなる」「過去の追憶に浸りやすくなる」「突然、メルヘンな気分に浸ったかと思うと落ち込んだりする」という指摘がまことにありがたい本なのだ。 だってまさにいまの自分がそうなんだから。 その本の「妊娠8ヶ月」の項目のところにこんなことが書いてあった。「長時間眠れなくなる。なぜならおなかの赤ちゃんが重くなるから」「昼寝せずにはいられなくなる」 これはまさに~! だった。 最近、私は明け方ごろに目が覚める。 その時、決まってみる夢があって、それはダンナが笑顔で私のおなかに石をのせているという夢である。 おなかが重くてたまらない私は、「お願い、やめて、やめてよっ!」と懇願しているのだが、ダンナは笑顔で、「いいじゃないか、いいじゃないか」と私のおなかに石を乗せ続けるのだった。 そこいらで目が覚めるんだけど、そういう時は99パーセントの確率で私は仰向けに寝ている。 つまり胎児が重くて目が覚めてるってこと。 現在、赤ちゃんは大きなペットボトルくらいのサイズと重さがあるから、たしかにその重圧をもろにくらうと目が覚めますわな。 シアーズ博士によると、あおむけになっておなかの上に紙をのせると、紙が時々動いて赤ちゃんがどんな姿勢でいるかわかるらしい。それを予想して産婦人科医に絵で描いてみせて当たっているか試してみましょう、ってシアーズさんはいってるんだけど、そんな悠長なことに付き合ってくれる産婦人科医ってなかなかいないと思う。 話を元に戻すと、赤ちゃんはそれだけ育ってるってわけだ。 さらにシアーズ博士はこう話を続ける。「そろそろ妊婦生活も疲れてきたでしょうが、映画をゆっくり見られるのも、好きなことができるのもこれが最後のチャンスだと思って満喫しましょう」 そうよ。 そうなのよ。 私もそう思って、妊娠前期から好きなことをやろうと心がけてきたのよ。 でもできないのよ~! なぜかというと、妊娠前期はつわり、中期はまあまあすきなことができたとして、後期になってから眠くてたまらない。 しかも細切れにしか眠れないから、いつも頭がボ~ッとしている。おなかが重いから長時間座ってるのがつらくて、映画を映画館で見るのがしんどい。それどころかゲームをやるのすらつらい。 シアーズさんはそこらへんをわかってるのかねえ? やっぱりオトコだからわかんないのだろうか。 それとも、妊婦さんによっては違うのだろうか。 ともあれ、おなか重いです……。 いろいろ書きましたが、これは本当におすすめのマタニティブックです。シアーズ博士夫妻のマタニティブック【送料無料】 シアーズ博士夫妻のマタ...
2006年04月13日
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「凛太郎さま、どこへ行かれるのですか?」 自室から一歩出ようとしただけで、凛太郎はそう呼び止められた。ともに部屋から出ようとしていた明が嘆息する。自分たちの護衛である年若い陰陽師に、明は軽いがしっかりした口調で抗議する。「あのよォ、俺と凛太郎ちゃんが二人でちょっとそこらをぶらつくだけで、どうしてお前に報告しなきゃいけないわけ?」 陰陽師はやや考えた様子を見せてから、生真面目な調子で反論した。「お言葉ですが、明様。私は秀信様からお二人の警護を司るように命じられているのです。ですから……」「俺の警護だとォ?」 憮然として、明は額に手を当てた。おのれを指さしながら、陰陽師に顔を近づける。「俺はな、凛太郎ちゃんに呪をかけられた鬼なんだよ。千年前から、凛太郎ちゃんを守るために生きてンの。そんな俺をお前が警護するって? 笑わせるにも程があるぜ」「しかし、明様。最近、明様はお体の調子がすぐれないようですから……」 そこまで言ってから、陰陽師は口元をハッと押さえた。明の顔色が見る見るうちに変わったからだった。「失礼しました」 すっかり青ざめて低頭する。陽気な鬼は、いつになく余裕のない表情をしていた。二人を取りなすように、凛太郎は間に入る。「あなたの心遣いは嬉しいです。ですが、たまには僕たちを自由にさせていただけないでしょうか。遠くには行きませんから」「ですが、やはり私がついていかなければ……」 そこまで言ってから、陰陽師は口をつぐんだ。不機嫌をあらわにした明が、迫力あるまなざしでにらみつけていたからだった。 明を引っ張るようにして、凛太郎は部屋の外に出る。「それじゃあ、行ってきます……」 いつも傍らに、秀信の手による護衛がついている。 凛太郎のこんな生活が始まったのは、秀信の車が爆破されたあの事件以来だった。 幸い、明と祥のおかげで凛太郎と秀信は怪我ひとつなかった。だが、何者かが車に爆弾を仕掛けた事実は明らかだった。犯人を追おうにも、肝心の車が爆破されているので手がかりはないのも同じだった。 犯人は誰か。秀信も祥も、そして凛太郎も口には出さなかったが思い当たる人物は一人だった。 弓削信行である。妾腹の子である秀信を元から気に入っていなかったことはもとより、凛太郎の一件でさらにそれがこじれたのは言うまでもなかった。環喜が凛太郎に味方したのも信行は気に入らなかったに違いない。 それに加えて、鈴薙と凛太郎の関係が露見したことで、信行以外の人物――弓削家以外の政治家や官僚たちが凛太郎や秀信を良く思わなかった可能性もなくはなかった。いくら凛太郎本人が反省しようと、この騒動の一要因を作ったのは凛太郎だからである。それを擁護する秀信が敵視するのも無理はなかった。 つづく
2006年04月12日
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ようやく見ることができました。 まず、全国大会の始まりから。 あれ、リョーマがいない? そうか、アニプリの最終回からちゃんと続けてるんだ。 これはアニプリの正式な続編だということですね。 こういうOVA化だと、テレビアニメのことはなかった場合にされちゃうことも多いんですがアニプリに関してはそういうことはないんですね。 アニプリ大好きなので、とっても嬉しいです。 そこで比嘉中登場。 沖縄弁ってこうやって発音するのか~、と感心することしきり。 沖縄出身の人に言わせると、今の若者であれほどキツい沖縄弁が話せる人はそうそういないそうですが 比嘉中が六角をいぢめると、帰国したリョーマ登場。 それからはだいたい原作と同じでした。 比嘉中との試合は、翌日に持ち越されたけどね。 そこからリョーマと試合する大石という展開はアニメオリジナルなのですが、原作ではほとんど目立たない大石がここまで活躍してくれるとなんだか嬉しいです。 大石の責任感の強さがよく出ていて、見ていて納得できました。 作画も綺麗だし、早く2話目が見たいな~。 第一巻です。 待望の第二巻です。 早くも予約受付中! 今なら初回特典あり!初回特典などの特典も満載。バンダイビジュアル テニスの王子様 Original Video Animation ...初回特典などの特典も満載。バンダイビ...
2006年04月11日
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「先生……」 凛太郎は感極まる思いで、秀信の言葉を聞いた。ここまで秀信が自分のことを信頼してくれているとは。 明は苦々しい表情をし、晴信と環喜は少し驚いた様子だった。祥のみが冷めた風情で秀信を見つめている。 吉原たち政治家や官僚は、固唾をのんで秀信を見つめていた。眼鏡のブリッジを上げて一呼吸してから、秀信は言葉を続けた。「ですから私は、弓削の陰陽師として凛太郎を支えていきたいと思います。それに異論はございませんか、皆さん?」 形勢を立て直そうと信行がした時、環喜が張りのある声で答えた。「あらへんで。うちは秀信の意見に賛成や。なあ、晴信!」「は、はい! おばあさま」 環喜に笑顔で晴信がうなずく。次第に、吉原たちの意見も変わり出した。「環喜さまと晴信くんがそうおっしゃるのなら……」「たしかに鈴薙を封印する剣を所有しているのは、あの少年だけだしなあ」 場の空気が一気に変わったのを見て取って、祥が立ち上がった。「これにて、本日の鈴薙対策会議は終了とさせていただきます!」 吉原たちが弓削邸を去った後、凛太郎は秀信に誘われて夕食に行くことになった。「たまには、外食するのもいい気分転換になるだろう?」 秀信は眼鏡の奥にある目にめずらしく微笑を浮かべて言った。「良いレストランにご案内します」 祥がうやうやしく、高級外車のドアを開ける。「へっ、どうせどっかの年上の女にでも連れていってもらって知ったレストランじゃねぇの? お前は陰で女遊びしてるようなタイプだからな。さすが陰険眼鏡の部下だけあるよ」 明が憎まれ口を叩くと、芝居かかった仕草で祥が眉を上げる。「お嫌でしたら、あなたはご同行なさらなくてよろしいのですよ、明様?」「お、俺は……凛太郎が心配だからついてくぜ」 憮然として明が言い返して、凛太郎が咎めた。「どうだか。明は単に豪華な夕食が食べたいんじゃないの?」「な、何だと、凛太郎! 俺はお前をだな……」 憤慨する明を尻目に、凛太郎は秀信に向き直って深く頭を下げる。「先生、さっきは本当にありがとうございました!」「凛太郎さま……」「凛太郎……」 祥は、凛太郎が真剣に頭を下げる様を感じ入ったように見つめる。明のまなざしは、複雑な色を浮かべていた。 何かを深く考えているように目をすがめてから、秀信は優しく言葉をかけた。「頭を上げろ、凛太郎」「いいえ! 僕は先生にお礼を申し上げたいんです。こんな……こんな僕をかばってくださるなんて」 顔をうつむけた凛太郎の声は潤んでいた、秀信は凛太郎の頭を抱くようにして、上を向かせる。二人の視線が交わり合い、凛太郎の頬が朱に染まった。秀信があたたかく呼びかける。「私は、私の本心をあの場で語ったまでだ。だから礼など言う必要はない」「先生……先生、僕、がんばります! きっと、きっと今度こそ鈴薙を倒してみせます!」 胸を熱くして、凛太郎は叫んだ。今度こそ、自分の弱さに負けない。鈴薙に魅入られない。そう誓った。 そんな凛太郎には、明の心配そうな面差しなど目に入らなかった。 凛太郎と秀信がしばし見つめ合うのを見届けてから、祥が口を開く。「それでは、来るべき戦いに向けて今夜は腹ごしらえと行きましょうか」「そうだな」 秀信が車に目を向けると、凛太郎は照れたように笑って目頭に手をやった。「そうですね。僕もお腹空きました」 凛太郎が車に乗り込もうとした時、明の目が鋭く光った。「危ねェ、凛太郎。伏せろ!」「えっ?」 凛太郎が呆然としている間に、明は凛太郎の体を横抱きにして車から飛び退き、地面に押し倒す。祥も何かを感じ取ったように、秀信の体をかばって跳躍した。「な、何だよ、明……」 地面に体を強く打ち付けた凛太郎は、次の瞬間、自分から顔を地面に伏せていた。 一同が乗ろうとしていた車が、爆発炎上したからだった。 つづく
2006年04月08日
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久しぶりの妊娠日記です。 余談だけど、楽天さんまたシステム変えましたね。 以前より高機能になったんだろうけど、なんか使いにくいような…… 説明書読めば済むんでしょうが、読むのがめんどくさい私なのでした。 楽天さんのやることって、なんだか堅物な優等生って感じがします。 一生懸命がんばってるんだけど、ちょっと応用が利かないという……。 間借りしてる身で言うべきことじゃないでしょうか? それで本題。 今日、28週目最初の検診に行ってきたんですが、 逆子になってしまいましただよ。 以前からずっと、逆子だと言われてたんですが、今回で確定。 これから4週間の間に治らなければ、帝王切開になります。 このブログでも書いた通り、私はさんざん無痛分娩にするか、自然分娩にするか考えたんですが、帝王切開だったら悩んだ意味ないやんけ。 これだったら最初に見学したフランス料理や懐石料理が入院中に出る産婦人科にしておけば良かった……。 あそこは無痛分娩や和痛分娩はいっさいやらないからやめたんだけど、設備ももっときれいだったので。 などと後ろ向きな回想に浸っていても仕方ないので、話を先に進めます。 私の赤子は逆子だった、というより正確に言うと横子だった。 ? と思ったあなた、「横子」なんて単語を検索してみても出てきません。これは私の造語だからです。 つまり私の赤ちゃんは、胎内で体を横にして寝ているんですねえ。 超音波画像でその光景を見た時、我が子ながら器用な子だなあ……と思ってしまいました。 先生によると、逆子だったらうまくいけば自然分娩できるかもしれないけれど、横子だと絶対に帝王切開しなければならないそうです。 そこで私は考えた。 前回の検診で「逆子かもしれない」と言われた私は、逆子にお灸が効くと聞いて、自分でお灸してみました。 とは言っても、火を使うホンモノのお灸ではなく、カイロタイプのお灸です。それを一ヶ月続けてみて、この結果。 ということは、赤子は90度回転したのではないか。 お灸もちょっと効いてたってこと? 先生に相談したところ、逆子体操をしっかりやることと、できればお灸をもっとやった方がいいと言われました。 帰宅してさっそく近所の針灸院に予約を取りました。 針灸院なんて行くのは初めてなので、今からどきどきしてます。
2006年04月07日
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マヤと真澄さんがラブラブだった。 あわよくばラブシーンも見たかったんだけどなあ。 原作が簡潔してないんでこんなもんでしょうか。 森川さんの真澄さん、かっこよかったよ~。
2006年04月06日
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森光子見たさに観ました。 「放浪記」でも良かったんだけど、スケジュールが合わなかったので。 伝説の漫才師、ミス・ワカナの15歳から36歳までの生涯を描いた舞台なんだけど、森光子が15歳に見える。 かなり後ろの席で観たから、アップで観たらやっぱり無理はあるんだろうけど話し方や仕草であそこまで「らしく」させてしまうのはやっぱり大女優です。 思わず「ガラスの仮面」をほうふつとしてしまいました。 赤木春恵も貫禄たっぷりでした。
2006年04月05日
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原作読んだことなかったんですが、これってなんちゃって時代劇だったんですね。 「サムライチャンブルー」を思い出しました。 主人公の声が好きです。
2006年04月04日
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アニメ版「学園ヘヴン」第一話です。 さんざん焦らされて始まったわりに、放映されたのがスカイパーフェクトtvということもあり、あまり話題になっていないような気がします。 観られる環境にある方が少ないのではないでしょうか。 かく言う私も、これが第一話のみの無料視聴じゃなかったら見られないのでこれで感想が書けるのはもしかして最後かも。 まあ、後でDVDを買うって手もありますけどね。 正直言うと、アニメ版公式サイトの絵柄を見た時はあまり期待していませんでした。 ゲーム版の氷栗さんの絵とかなり違うからです。 やっぱりヘヴンの魅力の大きな一つは、氷栗さんの絵と切っては切れないと思います。 ああいう少女漫画のやさしいタッチって、なかなかアニメにしにくいんですよね。 それに、公式サイトのあらすじを見ていると、どうもこれは和希ルートっぽいな、と思ったのも要因の一つでした。 なぜかというと、これは本当に私情以外の何者でもないのですが、私は七条さん大プッシュ人間なのです。 だから和希は嫌いじゃないけど、やっぱり七条さんがメインじゃないと……と思っていたわけでありまして。 まあ、和希ルートが真相解明ルートだから、アニメ化にあたって和希ルートがメインになるのは当然のことと言えば当然なんですが。 ここから先はネタばれありなので、嫌な方はご遠慮ください。 さて、本編の視聴。 まずはOPから。 和希と半裸? で抱き合う啓太。だめ押しの和希ルート決定。 曲はゲーム版主題歌といっしょじゃなくて、新曲なんですね。 私はあの主題歌をアニメ版でも採用してもらいたかったんだけどなあ。 アニメは啓太がBL学園へ向かうところから始まります。 そこで視点は和希へ。 転校生としてやってくるであろう啓太の世話をしきりに焼きたがる和希。ここまで二人のラブラブっぷりを強調せんでも……。 そこでBL学園のメンツ紹介。 先生に、王様、中嶋、郁ちゃんに七条さん、篠宮さん、岩井さん、滝くん。 今回は成瀬さんは登場しないみたいです。 アイキャッチではしっかり出てたけど。 七条さんと中嶋のハッキング合戦がしっかり描写されていたり、中嶋が「おしおきだ」とつぶやきながらペンをじっと見ていたりと、ゲーム版をプレイした人ならにやりとする描写がちりばめられています。 意外だったのは、柔道部3人組に因縁をつけられた郁ちゃんを助けたのが中嶋だったこと。 中嶋×郁も悪くなかったりして……。 ここから先がゲームとは大いに違います。 啓太を迎えに、王様がバイクを飛ばすんです。 それでバイクに二人乗りしている間に橋が跳ね上がるわけ。 啓太が王様に見つめられて真っ赤になったり、王様が啓太に「お前、気に入ったぜ」と言ったり、これってもしかして王様×啓太なのかも……と思いきや、エンディングは子供時代の啓太をバックに花束を持ってるクマちゃん。つまりあくまで和希×啓太なわけですね? おそらく毎回こんな感じで、各キャラの啓太へのラブい雰囲気を見せつつ基本はあくまで和希×啓太なんだろうと思います。 思ったより作画もきれいだったし、シナリオも納得がいくものでした。 でも、最後に言わせて。やっぱり七条×啓太が見たかった……。 今回放映されたアニメ版のDVDです。 7月発売で、今予約するとここでしか聴けないCD特典つき!学園ヘヴン Vol.1(初回限定生産) ゲームシナリオ担当者さんによるノベライズ。 和希×啓太ルートです。 アニメではおそらく描写されない二人のラブシーンもいっぱい学園ヘヴン 元祖ゲーム版「学園ヘヴン」です。 これをやらなきゃアニメ版を真に理解したとはいえません。【PS2】学園ヘヴン BOY'S LOVE SCRAMBLE アニメ版主題歌です。PCゲームで大ヒット、ついにアニメ化決定!TVアニメ 学園ヘヴンOPテーマ Sch【アニメ】 アニメ 公式キャラブックです。 氷栗さんのイラストがとにかく美しい! 書き下ろし小説やイラストもあります。ゲーム関連書籍学園ヘヴン公式キャラブック完全版
2006年04月03日
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だが、予測していた痛みはまったくやって来なかった。 乾いた音が、床を響かせた。奈津子が拳銃を投げ捨てる音だった。驚いて、千晴たちは奈津子を見つめる。両手を上げて、奈津子は「ホールドアップ」の姿勢を取っていた。 いつしか奈津子と重文の周りを、警官たちが包囲していた。 その背後から、大津に守られるようにして実里が現れる。「遅せェぞ、実里」 笑いかける才口に、実里は憮然として答えた。「完璧な殺人未遂現行犯の証拠を手に入れたくてね。ぎりぎりまで待つことにしたんだ」 青ざめた重文が、実里に訊ねる。「私たちの薦めに従って、大津とお前は静養に出かけてたんじゃ……」「誰があなたたちの言うことなんか、聞くものか。姉さんの命を奪い、僕や――了まで殺そうとしたあなたたちの言うことなんか」 そう答える実里の肩は震えていた。その華奢な背中にそっと大津が腕を回す。修羅場を乗り越えた安堵を覚えつつ、千晴はそれを見つめた。 不意に、千晴の口はひとりでに動き出した。「危ない、実里!」 同時に、懐からナイフを取り出した奈津子が、実里に襲いかかっていた。警官たちもと入り押さえられない素早さだった。とっさに大津が実里を庇おうとしたが、すでに刃は実里の胸に向けられていた。 その刹那、千晴は窓ガラスに目を向けた。なぜそんなことをするのか自分でも分からなかった。眼球が痛くなるほど、ガラスを凝視する。途端に透き通った破片が宙を舞っていた。千晴の眼力によって――いや、千晴の体を借りた智里の力によって、窓ガラスが割れたのだ。 それは、奈津子に降りかかった。「ぎゃああああ!」 奈津子はすさまじい悲鳴を上げて、床に倒れた。体のあちこちにガラスの破片が突き刺さっていた。奈津子の手から乾いた音を立ててナイフが落ちる。 まだ窮地を脱したことに気づいていないのだろう。大津は実里の体に覆い被さったままだった。実里も、大津の下で体を萎縮させている。 千晴の唇から、智里の言葉が発せられた。「もう大丈夫よ、二人とも」 おそらく話し方で何かを感じ取ったのだろう。実里と大津が顔を上げて、千晴を見つめる。「智里さま?」「姉さん……?」 二人に、千晴の体を借りた智里は微笑んでうなずいた。「ええ。久しぶりね」「姉さん……姉さんっ?」 実里は驚きと怯え、そして喜びが入り交じった様子で、千晴を見つめた。おずおずと手を伸ばす。千晴はそれを握りしめた。憑依した智里による万感の思いが、胸に押し寄せてくる。千晴の頬に熱いものが流れた。「これからは私なしでもしっかりやっていくのよ――それから、大津」「はい、智里さま」 大津は直立して、うやうやしく頭を下げた。大津の肩に手を置いて、千晴は智里の言葉を語っていた。「実里を頼みます」「はい――はい、智里さま。大津は一生、坊ちゃまをお守りいたします」「大津……」 実里は何かにほだされたように大津を見つめた。智里を安心させるかのように、大津は実里の肩を抱く。「こら、主人に対して無礼だぞ!」 実里は憎まれ口を聞いてはいたものの、その表情はどこか潤っていた。千晴に憑依した智里は二人の様子に微笑んでから、才口に向き直る。「了」「また会えて嬉しいぜ、智里さん」「千晴くんのおかげよ」 感謝を込めてそう言ってから、智里はおのれの憑巫である千晴の胸に手をあてる。「この子は意地っ張りで、強がりばかり言っているけれど、とてもいい子だわ――まっすぐで、優しくて……だから危険をかえりみず、私に力を貸してくれた」「ああ……そうだな」 才口は千晴の体を抱きしめた。それとも、本来は智里の体を抱きたかったのだろうか。どちらが本当かは千晴には分からない。ただ分かったのは、才口の抱擁が愛情にあふれたものだったことだ。千晴の中で、智里の思いが渦巻く。ずっと長い間、智里は才口にこうして抱かれたかったのだった。才口の肩口に顔をうずめて、智里は言った。「千晴くんを大事にしてね」「もちろんだ。こいつが嫌だって言っても離れねェ」「ねえ、了」「何だ?」「……キスして」 才口の唇が、千晴に触れた。千晴の中で、智里の魂が歓喜する。その喜びは光の球となって、千晴の内側を駆け巡り、やがて――。 ぼんやりと、千晴はつぶやいた。「智里さん、いっちまった」 その後、奈津子と重文は警察に現行犯逮捕された。二人の悪事は捜査により芋づる式に発覚し、当分刑務所から出られないという。 事件が終わった後、千晴と才口はしばらくの間、若宮家に滞在した。智里に憑依されていたため、千晴の体力が消耗してしまい、療養が必要だったからだ。それを申し出たのは実里からだった。実里は大津とともに、精一杯千晴の世話を焼いてくれた。実里と大津は、千晴に生前における智里の思い出話をしてくれた。笑いながら智里の話ができる日が来るなんて思わなかった、と実里は言った。その傍らにいる大津は、微笑んで実里を見つめていた。 才口と千晴が自宅へ戻る日、実里と大津は見送りに来てくれた。才口のワゴン車に、千晴は乗り込む。ウィンドウをのぞきこみながら、実里が小声で言った。「了と仲良く、ね――くやしいけど、君には負けたよ。僕にはあそこまで、了を守ることなんてできないから」「坊ちゃま、大人になりましたね」「うわっ! いつからそこにいたんだ、大津!」 いつのまにか自分に寄り添っていた大津に、実里が頓狂な声を上げる。「オ、オレはおっさんを守ってなんか……」 頬を熱くして、千晴が口答えしている間に、才口がエンジンをかけた。「じゃあな、実里! 天国の智里さんに恥ずかしくないように大津さんとしっかりやるんだぞ!」「言われなくても分かってるよ!」 手をふる実里と、低頭する大津を残して、才口の車は走り出した。ハンドルを握る才口を横目で見ながら、千晴は語りかける。「おっさん、一つ聞きたいことがあるんだけど……」「何だ?」「おっさんは、オレに智里さんが憑依してるって信じてたの?」「まあ、半々だ」 少し考え込んだ様子を見せてから、才口は答えた。「以前にも話したように、お前の思いこみかもしれないとも思った。でも、それにしちゃ妙につじつまが合うような気もして、お前に発信器をつけて、実里や大津さんと連絡を取ったんだ」「じゃあさ、おっさん……」 意気込んで言いかけて、千晴は口をつぐむ。赤くなってうつむく千晴に、才口がけげんそうに尋ねた。「何だ?」「何でもないよ」「何でもないって表情してねェぞ、お前。言いかけたことはちゃんと言えよ」「な、何でもないったら!」 むきになって怒鳴る千晴に、才口はニヤリと笑った。道端で車を止めて、千晴ににじり寄る。千晴は身をすくめて、才口から逃れようとした。「や、やめろよ、人が見てる……」「見られても俺はかまわねェぜ」 才口は千晴の顔に自分の顔を近づけた。ここまで至近距離で才口を見るのは久しぶりだった。若宮邸では実里たちの目を気にしてか、才口は千晴に手を出してこなかったのだ。才口の男くさい体臭を嗅いで、どうしても千晴はあの夜のことを思い出してしまう。それを見越してか、才口は千晴にさらに接近して、抱きすくめるような格好になった。「や、やめろよ……」「お前さ、気になるんだろ。俺が、智里さんに憑依されたお前を抱いたことをどう思ってるかって。そのことで、これからの俺らの関係が微妙になってくるんじゃないかって心配なんだろ? だってもう、智里さんはいないもんな」「……」 図星をつかれて、気まずく千晴は黙り込む。こわばった千晴の頬を、才口はちょんとつついた。「心配すンなって。俺はお前にずっと惚れてるよ。ほら、こんなふうに」 ひとおもいに千晴は才口にくちづけられた。つつみこむようなキスに、千晴のわだかまりは溶かされていく。「……ったく。何すンだよ」 照れて口元を拭う千晴に、才口は笑いかけた。「なあ、言っちまえよ。俺が好きだって。もう智里さんの助けがなくても言えるだろ? あんなに親身になっておいちゃんのことを庇ってくれたお前ならよ」「な、な……!」 ぎくりとなる千晴に、才口はおどけた様子で千晴の声音を作る。「『頼む――オレは、オレはどうなってもいいから、おっさんは助けてやってくれ! お願いだ!』ってあの晩、若宮の屋敷で言ってくれたじゃねェか。おいちゃん、あの時は感動したね。泣けたね。」 大げさに才口は泣きまねをした。すっかり才口におちょくられた千晴は、ふるふると拳を握りしめる。「お、おっさん……てめェ」 才口に殴りかかろうと、千晴は拳を振り上げた。その手首を才口が掴んで、自分の胸に千晴を抱き寄せる。千晴を抱きしめて、才口はささやいた。千晴は、自分の体がカーッと熱くなっていくのを感じる。「べつに無理しておいちゃんのこと、好きだって言わなくていいぜ」「えっ?」 予想外の言葉に驚いて、千晴は才口を見上げる。才口のあたたかい両手が、千晴の頬をつつんだ。「その分、俺がお前のことを好きだって言うからよ。俺がお前を守るからよ。愛しちゃうからよ。だからお前は、俺のそばにずーっといろよ、千晴。お前にどんな霊が憑依しても、その霊ごとお前を愛してやる」「……おっさん」「了っていつかは、呼んでくれよ」 そう言いつつ、才口は千晴にふたたび唇を近づける。ゆっくりと瞼を閉じて、才口を受け容れようとした刹那、千晴は叫んだ。「あ!」「どうした?」 驚いて、才口は千晴の見つめるおのれの背後を振り返った。呆然と千晴は答える。「そこに……そこに、見えた気がしたんだ。オレの父さんと母さんが。笑って、オレたちを見てた。父さんと母さんの霊見たの、オレ初めてだから……」「そうか」 才口はそう言って、いったん千晴から体を離した。あらたまった様子で、空中に頭を下げる。「どうしたんだよ、おっさん?」「お願いしてるんだよ。千晴を俺にください、幸せにしますから、ってな」「おっさん……」 千晴の頬はゆるんだ。こんなところで生真面目さを見せる才口を可愛いと思った。この男となら、幸せに暮らせるような気がする。醒めない恋に耽る夜を永遠に過ごせるような気がする。 微笑んで、千晴は才口に習って頭を下げていた。「千晴……」 嬉しげな声を漏らす才口の横で、千晴は両親の霊に語りかける。「父さん、母さん。こんな頼りないおっさんだから、オレは支えてやろうと思います。どうか見守っていてください」「こら、生意気言うな!」 才口が口をとがらせて、千晴に襲いかかる。千晴は笑いながらもがいた。「やめてよ! 父さんと母さんが見てるよ!」「だから仲むつまじいところをお見せするんだろうが!」 そう言って、才口は千晴を抱きしめる。千晴も才口の背中に強く手を回した。たとえこの体が消滅しても、才口とは結ばれていたい。いつしか千晴はそう願っている自分に気づいていた。 END
2006年04月01日
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