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新小岩は個人的には都心でもっとも注目している酒場地帯で、一度ハマると通い詰めてしまう性癖のあるぼくですが、こと新小岩に関してはゆるゆると酒場巡りを楽しみたいので、あまり欲張らずに月に一回程度のペースで通っています。そんなわけでこれまで20軒は下らぬであろう酒場に伺っていると思うのですが、それでもまだこの町の酒場の一端に触れたに過ぎぬような気がします。通えば通うほど、その底知れぬ酒場迷宮にのめり込んで抜け出せなくなるのでした。 今回はじめにお邪魔したのは「店長」というお店でした。店名のなんだか投げやりで意気込みの感じられないダメっぽさがどうしてだか新小岩らしいと以前から気になっていたのでした。店主が自分の名前を店名にする場合は、ありきたりですが、こういう風なのは違和感があります。まあ店名にいつまでもこだわっていてもしょうがないので、早速店内へ。どういう理由だかは今となっては思い起こしようがありませんが、なぜか勝手にこのお店を立ち呑み屋だとばかり思い込んでいました。中はちゃんとカウンター席があって奥にはテーブル席もあります。獣医のK氏が一緒なのでテーブル席にしておきます。もとは小上がりだったのでしょう、テーブルの間には小上がりの基礎だけが撤去できなかったのか段差ができています。早速品書きを眺めてビックリ、一見ごくありきたりの店ですがチューハイが200円など肴も含めてまさに立ち呑み価格なのでありました。肴はというと、う~ん味はちょっと改善の余地がありそうですが安いからそれでいいのです。こんなにお得なのにお客さんの入りがボヤボヤですが、女将さんーこの人が店長なんだろうなーは至ってのんびり構えていて、世知辛い雰囲気がないのも悪くないのでした。 新小岩の町を南北に貫く308号線ー通りの名前がわからないーは、これまでも何度となく通っていたのにこんないい雰囲気の店があったなんてちっとも知りませんでした。「竹とんぼ」というお店です。木造のこぢんまりした一軒家で風情という点では申し分のない佇まいを呈しています。これは結構出来上がっていても入っておくべきでしょう。この佇まいに惹かれてかどうかは定かではありませんが、もともと広くはないとはいえ結構な賑わいです。入口付近のカウンター席に席を確保して、他の客席に目をやると年齢層も幅広く、女性客も多い。これは良店を見極めるのに案外有効なようです。と語ってはいますがここがいかほどに素晴らしかったかとかいかようにもてなしてくれたかなどはすっかり脳裏からは消え去ってしまったようで、唯一朧げに記憶するのは、店の方がとても感じ良かったということですが、それすら信用ならないのでした。
2014/10/31
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銀座や日本橋から程近い八丁堀の町で呑むことになりました。同行したのは、場末好みのO氏です。彼はとにかく休むなことなく日本のみならず世界中を精力的に駆け回っていますが、最も好物なのは、日本の場末ではないかと思っています。そんなわけなので羨ましいことに日本各地の場末を気の向くままに散策していて、いろいろと町や酒場の情報を交換することになるのですが、こんな二人だと呑みに行く酒場も限定されてしまいます。ここ八丁堀にやってきたのは先日訪れた際に一軒の立ち呑み屋が双方にとって間違いなく意中の店であることを直感したからでした。 そのお店は戦後闇市のようなワイルドさがそのままの立ち呑み屋さんでした。店は大変な盛況ぶりでかろうじて立ち位置を確保できるほどです。客は常連ばかりですが、一見を目の敵にする一部の悪質酒場とは違って、必要以上とも取れるほどの大歓待を受けてしまいました。あっ、別にサービスが良かったとかそういう話ではなく、すぐに常連の輪の中に加えてくれる、いや引き摺り込まれてしまうのです。お隣のクエン酸をこよなく愛するお姉さん曰く、なんらの躊躇もなく暖簾をくぐるその姿がかっこいいと仰ってくれました。単に図々しいだけなんですけど、逆にそれが好意的に受け入れられたのかもしれません。威勢がよくて下ネタの好きな東向島から店を移したという御主人の奔放な人柄と思わず感嘆させられる確かな腕が善男善女を惹きつけるのに違いありません。屋号は「鮨まさ」、元は寿司屋なので肴の旨さは立ち呑みとは思えぬほど。でも毎晩こんなに盛り上がってばかりだと通い詰めるにはちょっとばかし疲れそうかも。皆さんに暖かい声を掛けてもらい店を後にします。予定通りO氏も大変なご満悦。 ところが次に向かうべき店にまるで目星が立っていません。街灯の疎らな夜道を彷徨っているといい歳のオッサン二人でも不安を感じる程に暗く静まり返っています。日頃は食堂を避けたがるO氏ではありますが、さすがに暗闇をいつまでもふらつくのはウンザリとしたようです。そんなわけでさほど期待もせずにお邪魔したのは「お食事処 櫻」です。外観からは飲食店であることを示す符丁はごく最低限に留まっており、かろうじて商売をしていることがわかる程度です。いささかの不安は店内の程よい混雑と薄汚いながらも程よく寂れた雰囲気で、打って変わって居心地良い物に変わりました。名前は忘れてしまいましたがなんだかトンデモナイシロモノであるかのようななその品は、なんだか大きな魚のアラをフライにしたものでした。食べるのはちょっと面倒ですが、それくらいの方が酒のアテにはちょうど良いのです。自宅で食べやすく調理された肴を前にするとついつい皿洗いや暖かいうちに食べたいという気持ちが前に出てしまい、ついつい食べ過ぎて呻き苦しむという事になりかねないのでした。2階の便所を借りると、座敷も見えますがこれがまたなんとも言えぬ枯れっぷりでそそられますが、まず使われることがなさそうです。後から入ってきたお客さんは昼も夜もここで過ごされているようです。揚げ物がメインなのにスリムな体型で羨ましい。奥さんと思われた方が客の一人一人に礼を述べつつご帰宅されるのを見て、われわれもぼちぼちと引き上げることにしたのでした。
2014/10/30
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三ノ輪の愛すべきモツ焼店が閉店することは、りんらさんに教えられてから残念に思いながらも、ついまだ知らぬ酒場の存在への誘惑に抗えず開店前になんとか2回だけ訪れることが出来ました。もう閉店から随分と日が経ってしまいましたが、この愛すべき店があったことを忘れぬために記しておくことにします。 最後に訪問したのは閉店の前夜でした。いつも以上に職場を早く飛び出して大急ぎで直行しました。ようやく到着してみると店からは明くる日に訪れる出来事がもはや覆されることはないと決まっているにも関わらず、いつもと少しも変わることのない様子で、粛々と酔客へとうまい酒と肴を提供しているようです。店に入ってもそれは変わらず、ただひとつこの一、二週前にやってきた際には、体調を崩されていると伺っていた、優しそうな風貌が印象的なご主人が店に立っていたことです。思い掛けぬことに思わず頬が緩むのですが、常に焼き場に向かいほぼ客には背を向けていたご主人と言葉を交わすのはごく最低限のことだったわけで、こちらとしては何も語りかける言葉の準備もないので、ただひたすらうまいうまいともつ焼を手繰っては、チューハイを呑み干すしかないのでした。それ以外はいつもとまったく変わらないことに、ご主人の意志が変わらず、そしてそれをお客さんたちも受け入れていることを示しているように感じられるのでした。今となっては一声ご主人に掛けておくべきだったかとも思わぬではありませんが、まだ「ほりい」は、ぼくの中では、そこに行くと当たり前のように営業しているように感じられてなりません。 普段と変わらぬ様子の店を後にしてもなんだか実感が湧かず、それならもう一軒立ち寄ることにしました。南千住駅のそば、細い路地にひっそりと店を構える「羽根や」の存在は以前から知っていましたが、これまでお邪魔する機会がありませんでした。というのは全くのデタラメでこぢんまりとコンパクトに座席の配置されたあまり他所とも代わり映えせぬ店内を見てもなお、実は2年ほど前に来ていたことを思い出せずにいたのですから、これはまあ初訪と言っても良いのかもしれません。カウンターの隅っこに席を確保し、焼鳥5本盛りと呑み物をもらうと、お通しには小鉢で煮込みが出てくるのですが、これがかなりのハイレベル、さらに出てきた焼物も価格からは思いもよらぬ旨さで、どうしてここのことを失念していたのかと我が事ながら訝しく思えるほどです。お隣には女性一人客が常連らしく時折店の方と談笑など交わされています。ここはなかなかいいなあと手札の店が増えたことに満足しつつも、やはり「ほりい」に変わる店ではないのだろうな、それはどうしてなのか、ボンヤリと考えてもうまい回答は得られないのでした。
2014/10/29
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いつものことながら財布の中身はスカンピンなので、一軒目となると定番の立ち呑み屋に足を運んでしまうのは止む得ないのですが、そうしてお得に呑んだ気でいると、財布の中身が増えたわけでは全くないにもかかわらず、なんだか気が大きくなって危なげな店にも躊躇なく入ってしまうのは、格安酒場の功罪のひとつと言えましょう。 格安の一軒目は、ますます頑張って勢力を拡大してくれるのを切に願わずにはおられないー普通ならそんなことは間違っても考えないのですがここは特別ー「晩杯屋 大山店」であります。武蔵小杉で産声を上げ、ここが3店舗目だと思いますが、この店の躍進は間違いないものです。ここ大山店も以前このブログで何やら語っていたと思いますが、今回はこのチェーンの存在を知らぬA氏が同伴しているので、彼の意見をご紹介しますかと言ってももとより寡黙な彼のことなので、それほど感想らしきものが聞けることは期待しないでいただきたい。さて、品書きを眺め倒した彼は呑み物は余り安くないねと言いながらも肴の豊富さと、とりわけ魚介の充実には我知らず笑みが溢れてしまっています。マグロぶつやアンキモが150円であるにも関わらず結構旨くて、しかも利用もたっぷりなのだから、思わず「すごいね」の一言も漏れ出てしまうってものです。酒も安くはないと言いながらも、今、まさに目の前に置かれる「でかんしょ」のちっこいジョッキとは比較にならぬ立派さを思うと文句のつけよう筈がありません。あまりA氏に登場いただくこともなく河岸を変えることにしました。 向かったのは、踏切越えてハッピーロードのアーケードを潜ってすぐの店舗の隙間を抜けて入る怪しげな呑み屋街でありました。すでに何度も来ていて、ここでもあれこれ語っていますが、まだ何軒もの未訪店があります。そんな怪しい路地ー内部がぷっくり膨れているのであたかも胎内に帰ったのような安心感がありますーに足を踏み入れても、A氏からこれといった反応は発せられません。心無しか店の灯が数を少なくしていて、寂しく感じられます。まだ知らぬ店が2店舗ほどあって、その向かい合わせの店舗を指して好きな方に入ってみようか、どっちがいいと水を向けると、ぼくでも一人ならしばし躊躇しそうな側を選んだのはちょっと意外でした。「よりみち」というお店で、外見にはどのような店かまるで検討もつかず、本能的にこれはスナックに違いないと確信したものの珍しく自己主張するA氏の意見を即座に受け入れ、お邪魔することにしたのでした。案の定店はスナックというしかない佇まいであって、ママさんも高齢ながらスナックのママさんそのものといった雰囲気を漂わせています。6人が定員すれすれという極小店舗は、それでも狭いながらに結構贅沢かつ派手めに内装されているのでした。ウーロンハイを頼むと緑茶しかないのよね。お通しとしてはなにやら風変わりな野菜炒めにまあこれで充分と思っているとさらに追加で立派な切り身のイワシ刺し身が出された時には真っ当な価格での呑みは諦めようと観念したものです。奥の3席は地元の老人クラブで塞がり、闊達なお喋りにこんな歳になっても上下関係が存在するのだなと、うんざりとしながらも興味深く様子をうかがいました。ママさんから激辛という煎餅を貰いました。確かに辛いものの十分に美味しく賞味できるので平然としてうまいうまいと頂きますが、この反応が彼らには物足りなかったようです。何彼と声を掛けてきたのがピタリと止んでしまいました。ところで勘定のことですが、拍子抜けするようなお手頃価格。年金生活であろう常連からはあまり取れないでしょうから、われわれからという邪推は快く裏切られました。
2014/10/28
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途中数駅を下車したりしながら飯田線に乗り換え本日の目的地、伊那市駅を目指します。伊那市を訪れるきっかけとなったのは酒場放浪記に登場した店を訪れたいが為もありますが、それ以上に番組中のナレーションで人口あたりの呑み屋数が全国一であったことがあるということが語られていて、一体ローカル線の極北とも言われる飯田線の一駅にどんな呑み屋街が広がっているのかをこの目で確認したかったからなのでした。折悪しく強い雨が振り始めたものの、果敢に町に繰り出します。何軒かの喫茶店をハシゴして歩くうちに程なくして伊那北駅に辿り着きます。ここまではほぼ真っ直ぐ飯田線の線路に並行して商店街を歩いてきました。と言うのも雨脚が豪雨と言っても良いほどに激しくなり、とてもじゃないけどだらしなく散策しているような状態ではなかったので、雨避けにアーケードを歩いたのです。ここまでは、この地がかつてそうであったという日本一の称号に見合うほどの呑み屋街は見受けられません。とりあえずは、酒場放浪記に出ている酒場を目当てに動物横丁と呼ばれる一角を訪ねてみることにします。踏切を渡った天竜川と飯田線の線路との狭間の狭いエリアに所狭しと酒場が密集しているのでした。 しばらくは土砂降りの雨など気にも掛けずに、細い路地や抜け道などを探索します。日本一と言うほどには思われぬもののー人口あたりの呑み屋数とのことなのでもとの人口が少ないのでしょうー、主を失いすでに廃墟と化した店舗など数多くの現役時の姿を想像させるに十分な面影を今にとどめていました。この日は夜の高速バスに乗車せねばならず、しかも日曜日であったためこの呑み屋街の真の姿を見ることはできませんでしたが、むしろ夜は一層うらびれて見えたのではないかと想像します。 さて、残り時間も僅かです。そうそうのんびりとしていては伊那の酒場の片鱗にさえ触れることさえ叶わなくなります。ところが案外に開いている酒場が少ないのです。そう言えば動物横丁から伊那北駅に、引き返したあたりで一軒店のオヤジが店先をウロウロしているのを見かけました。しかもスナックっぽい店の多い呑み屋街では、ちゃんとした居酒屋に思われたし、何と言っても長屋呑み処ばかりの中でここは単独の店舗があってさらにはオンボロ掘っ立て小屋というなんでさっき見逃したのかというほどに風情ある佇まい。「葉隠」という店名もイカしてるなあ。さっきまでうろついていたオヤジの姿はありませんがこれは入るの一手です。店内は外から見た以上に狭いのは散らかし放題のためか。据えた匂いも漂い瞬時店の選択を誤ったかと思いますが、今となっては引き返すわけにも行かぬ。店主は埒もない駄洒落混じりのいささか面倒なトークを炸裂し、注文したチューハイはなぜか泡盛となり、馬刺は信州の人は山地が故に兎に角刺し身が好きと言い放ちながら鯨刺しを強烈に勧め、果ては生の蟹をキムチ風に漬け込んだものーその時は直前に同じ料理をテレビで見たばかりなのでその料理名もすぐ出たのですが今は全くダメーがすごい旨いからと頼まぬうちに準備を始めるのでした。すっかり店主のペースに乗せられて、なんだか分からぬうちにこりゃヤバイという酒の進む肴が用意されたら呑まずにはいられないでしょう。すっかりいい気分になってお勘定すると青ざめるような請求が待ち受けていることをその時には全く気付かずにいたのでした。その後、近所の店の兄さんや姉さんたちが入ってきましたが、伊那は余程景気がいいのでしょうか。 シオシオと店を動き、やって来たのは動物横丁。唯一開いていた「すゝ゛め食堂」にお邪魔しました。この横丁、川をすぐ背後に控えるという極めて妙な立地にあって、これまでどの地に行っても見ることのない独特の風景を作り出しています。そんな中でももっとも古めいたこの店がやっていたのは幸運でした。期待を裏切らぬうらびれたムード満点のカウンターに腰を下ろすと、この上なくシンプルでいながら東京ではまず見ることのない品ばかりであることに驚かされます。ローメン、チャーメン、ローサイ、おたぐり、そして多少は馴染があるジンギスカン、レバー焼きがそのすべて。高齢の女性店主はまだまだ元気一杯。いろいろと伺ったお話では、かつて伊那市を拠点に2つのダム建設がありー伊奈川ダム、美和ダムのことでしょうかー、建築労働者が大挙して町に移り住んだのがこの町に酒場が溢れた所以であるとのこと、夜にはひとり寝の侘びしさを癒やすため多くの出稼ぎ者が夜の町に繰り出してそれはそれは大層な賑わいであったとの事です。彼らが去って取り残されたようになった町には、当時そのままに朽ちかけた店舗が放置されることになりました。そんな風情を求めてーわれわれもまさにそうした物見遊山客であるわけですがー、テレビドラマや映画のロケーション地として重用されるようになったのは上田と同様。店内に貼られたポスターの阿部寛, 山口智子, 宮崎あおいらが出演した『ゴーイングマイホーム』なるドラマではこの動物横丁が登場するそうです。ダム工事時代からの現役店は残り少なくなりまだまだ元気に店を開けていただきたいと一言残し店を後にしたのでした。
2014/10/27
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なにかと存分に楽しめた上田を後に、しなの鉄道に乗り込み伊那市に向かいます。まっすぐ伊那市に行ってしまうのももったいないので、とりあえずは、しなの鉄道の起点でもあり、終着でもあるというなんだかややこしい篠ノ井駅に立ち寄ることにしました。 はじめて降り立った篠ノ井駅は、駅の東西が長い自由通路に繋がれたちょっとユニークな構造、地方駅としては贅沢で、設置する理由が今ひとつ判然としないペデストリアンデッキがあってその先に伸びる商店街の侘びしさとは対照的で不思議なその眺めは虚しささえ湛えています。 駅前には人通りもまばらというよりほとんど見られないにも関わらず、何軒もの喫茶店が見られ、これといった魅力は感じられないもののこれらの店にどれほどのお客さんが入るのか訝られます。「喫茶 サン・マロ 第二章」、「エル・アート」、「ヴィラ珈琲館(TEA ROOM VILLA)」などがあっていずれも開店前なのか、お休みなのか、はたまた閉店しているのか、軽い二日酔いを覚ますために朝の一杯を渇望する身には残念な状況です。信越本線の次の列車までもまだまだ時間があるので散策する以外どうすることもありません。 しばらく歩いていると「フクミ喫茶店(喫茶 ふくみ)」、「喫茶 アイ」、そしてとりわけ魅力的に見えるのが「コーヒーショップ あらびあん」ですが、いずれもやっていません。全くもって徒労に終わってしまいましたが、篠ノ井はちょっと遠いだけでなく、再訪するまでに心乱される喫茶店や酒場は見当たらなかったので当分来ることはなさそうです。次に来るときにはこれらの喫茶店はきっとなくなってしまっているのでしょう。 信越本線の上り列車に乗り換えて、飯田線と接続する塩尻駅を目指します。30分弱の中途半端に長い待ちあわせがあり、せっかくだからと町に飛び出します。駅舎の中2階に「喫茶・軽食 MI DO RI(ミドリ)」というクラシックな雰囲気のある喫茶店がやっています。ここへは改めて来るとして、とりあえず駅前を眺めます。観光案内所のような施設に「あかい靴」という店があり、カフェのようなつまらない店かと思いきや案外に重厚なムードもありますが、ここも休み。 「ミドリ」に引き返しました。時間がないのでアイスコーヒーを注文。この日はちょうど台風が接近していたため信越本線もダイヤ乱れが生じて、待合い客でここも大変混雑していました。なかなかいいムードの店で混んでいて活気のあるムードもいいのですが、できればほとんど人のないガランとした状況も味わってみたいと思いました。
2014/10/26
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四ツ木は、立石と八広という酒場のメッカに挟まれ、そういう場所柄もあるので当然のように、世間の認知度が高くなくとも数多の酒場が密集しているものと思い込んでいました。それが過ちであったことを知るのは、初めて訪れた際に散策することで十分知り尽くしたはずでした。それなのに性懲りもなく時折訪れるのは、もしや見過ごしてしまっている一帯があってそこには地元の人たちがひた隠しにする酒場があるのではないかという淡い期待を懐かせる場所だからなのです。 かと言ってそんなにうまく行くわけではないのであって、しばし彷徨ってはみたものの呑み気には勝てずついついこれまで見てみぬふりを続けた「あっ凧」に落ち着くことになったのでした。外見にはどうと言った特徴もないそそられない店ですが、さすがに場末の町というだけあって店内のどこがとうとうまく表現できないものの、散らかっているわけではないのに雑然として奇妙で出鱈目であるようていて恐らくは機転を利かせたつもりらしき座席配置が目に付きます。出されるものはどうってことはないし、店の人もぶっきらぼうでとても愛想がいいとは言えない。でもそんなところが四つ木の酒場らしくてなんだか愉快な気分になるのでした。
2014/10/25
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あまり面白みのない町、大泉学園にやって来ました。何度も冷やかしに来たことのある町で何か新しい出会いなどは、もはや期待できないとは思っているもののここ数年訪ねておらず町歩き、酒場探しの嗅覚だけは歳に反比例するように鋭敏になっているようなので、出合い頭に思い掛けぬ出会いがあって驚愕させられることもあり得ることです。 ところがと言うかやはりと言うべきか、何一つ目新しい何かがあるわけでなく、唯一と言っても過言でない古びた居酒屋、「酒蔵 厚岸」にお邪魔することにしたのでした。実は大泉学園駅に下車するまではすっかり忘れ去っていたのですが、かつて所沢に通っていた頃、いい加減飲んでから途中下車して呑みに来ていたことを思い出したのでした。ここに通っていた頃はーなんて思わせぶりな言い方をするもののそんなには昔のことではありませんー、こういう駅前酒場もそれほど珍しいものではなかったように思われますが、今では希少価値が高まっているのをつくづく感じます。こうした郊外ー大泉学園を郊外と呼ぶのは現在ではいわかんがあります、ベッドタウンと言ったほうが相応しいのかもしれませんーの居酒屋というのは、一見どうというほどもない単に古びているだけのように捉えがちですが、入ってみると驚くほどに広いことが多くて驚かされることがあります。こちらも相席必至の長テーブルに小上がりがぐうっと奥の方まで伸びて、昼間の閑散とした店内で孤独ながらも杯を傾けていると、こよなく優雅に感じられます。同じサービスのランチをいただくにも一杯の酒があることで随分と心に余裕が生まれます。呑むことで店と自分との距離が近づくようです。ふと随分前に亡くなった祖父が、やはりここのように奥行きのある小上がりの一番奥でコンセント付きの銚子で昼間から時間から取り残されたようにゆったりと呑んでいる姿が思い出されるのでした。その古い祖父の家もすでになく、ここは懐かしい思い出を呼び覚ましてくれる店として記憶しておきたいと思うのでした。
2014/10/25
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突如思い立って池袋駅を目指します。いつでも池袋では呑めるのですがなかなかその気にならなりません。そうまでして来たくなったのはちゃんと理由があって、50歳にて酒デビューのオッサンがもっぱら立ち寄り先としているのが、高田馬場と池袋。普段行きつけの酒場を尋ねると、いろいろ言いたくなってしまったらしいのですね。馬場で呑むなら、××だろう。ブクロは、○○に行かんでどうするんだよ、なんて感じで講釈をたれた一軒が池袋、というか雑司ヶ谷のもつ焼の店なのでした。そう言ってから無性に気になるそのお店のこと、このブログでも何度か登場していますが、思い出したように足を運びたくなる一軒なのでした。 ご記憶の方もおられるでしょうが、そう「高松屋」のことです。明治通りを目白方面にひたすら歩いていくとやがて鬼子母神商店街の鳥居があるのでそれをくぐるとすぐに赤提灯が見えてきます。早くも店は常連で賑わっています。久々なのでその顔ぶれにも変化があるようです。ここはネットにもそれなりに情報が出ているのですが、概して評判がいまひとつよろしくない。というのも常連への気安い雰囲気と違ってはじめての客に対しては扱いがぞんざいであると云うのがその理由のようです。ところがぼくはそんな嫌な目には一度もあったことはありません。たしなみ良く店の様子を観察しながらゆっくり呑んで店の流儀を心得さえすれば客も店の方も不快になることなどないはずです。かつては7本でもいけていたここのもつ焼も、年を取って1本減り1本減りして今では、4本でお腹いっぱい。一気に食べることなどとても出来ないほど大振りなので、串から抜いていると、一欠片弾け飛んでしまいました。入口の特等席に着くおばちゃまたちからあらあ大変、でもシャツにびちゃっとならなくて良かったわねえ、初めてお越しなの、と矢継ぎ早のご質問。帰りにはまた来てねとお見送りされました。言われずともきますけど、この一言は嬉しいですね。 明治通りにいつの間にか新しい居酒屋がオープンしています。「ろばた焼 二豊」です。かつてはラーメン屋さんでそれがいつの間にか夜はカラオケもある呑み屋さんとなり、それが気が付くと居酒屋になってつい先頃開店したばかりのようです。大分の酒と肴をメインにしたいかにもな居酒屋さんで、ちょうど折りよく開店サービスで呑み物が普段より安くいただけるようです。ちょっと高級路線に見受けられたのでこの機会を逃しては行かずじまいということにもなりそうです。もともとがさほど広い店ではなかったので、カウンターが大きいのは独り客としては気兼ねがありません。炉端焼というのがカウンターを挟んで店の人とコミュニケートするというスタイルなのでそれは自然な選択だったのかもしれません。りゅうきゅうとかいうアジとかサバなんかを漬けにした大分では定番らしき肴を摘みながら、まだ不慣れな従業員たちの奮闘ぶりを眺めます。客たちもオープンしたての店の雰囲気を楽しんでいるようで、出足はまずまずのようです。ぼく個人としてはやはり想定したよりも高めだったので余程のことがなければまたの利用はなさそうですが、今でもそこそこお客さんが入っていたので健闘はしておられるようです。池袋の駅からはちょっと外れにあるので立地的には分が悪そうですが、長く続くことを期待します。
2014/10/24
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この後、呑む約束があるので手身近に済ませたい場合に立ち呑み屋は本当にありがたい。先日訪れたばかりの小伝馬町でも一軒の古い味のあるお店にお邪魔しましたがまだまだ何軒かの行ってみたい立ち呑みがあるので立ち寄ってみることにしました。 最初の1軒は、「お酒 かくうち」というお店で見たところ新しく綺麗な店舗なので最近開店したばかりのようです。この店、ぼくのこっそり持ち歩いているいずれ行きたいというメモにも記入があって、そこには「かくうち 3号店」とあります。この3号店というのがあまり気に食わないので、どうしてこの店がメモにあるのか自らメモしながらも怪訝な思いがしたものです。そこそこの客が入っています。厨房カウンターそばの止まり木は2名で使うくらいのサイズ。真っ直ぐなカウンターや4人程度でちょうどいいサイズの卓もあって、いろんな場面で使い勝手がありそう。店の方にお酒を頼みながらも肴の品書きがほとんど見当たらない。たこ焼や馬刺の小さなポスターが貼ってありますが隣のオッサンの摘む牛筋の煮込みは濃厚でうまそうだし、正面の兄さんが摘むイカの一夜干や鯨ベーコンもそそられますが、一体どうやって注文するのだ!? 店の方にお聞きするとあっちと指差しますが、何も見えません。まあさほど肴にこだわりもないのでお代わりすると、来店したばかりの客が一目散にぼくの場所からは死角となる方に向かいます。あとを追うと、調理済みの肴がズラリ並んでいました。そうだったのか、今更なのて、安くて旨そうなゲソの煮物をいただきました。おお、なかなかいいじゃない、これだけでサワーの3杯は行けそうです。酒は日本酒の銘柄ものがお得ですが、後は安からず高からず。食い気のある人と一緒なら満足度が高そうです。 さて、次なるお店に移動です。小伝馬町に2店舗、「かくうち」のすぐそばに2号店のある「ちょいと一杯 さかばやし」の1号店に伺います。以前、昼間に見かけていてよさそうな印象がありましたが、実際に入ってみるとこれといった特徴のないごく一般的な立ち呑み屋でした。立ち呑みで風情を求める客などそうはいないでしょうから文句は言いますまい。O氏かちょうど注文待ちしていました。挨拶を視線だけで簡単に交わし、店内を見渡すと日本酒の短冊の品書きやら馬刺のポスターまでさっきの店と多分まるっきり一緒でした。これで合点がいきました。店の名は違っても系列は一緒のようです。店の雰囲気まで違ってるんだから、出すものにも違いを出して欲しいですね。考えることは似ているようでO氏もイカのゲソ煮を取っていたのには、ちょっと愉快になります。小伝馬町の立ち呑みは長居する客も少なく、すっと呑んですっと出ていく方が多いようです。逆に「小伝馬」のような普通の居酒屋となると、だらだら居続けるようです。酒もあまり追加しないで。
2014/10/23
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ある晩、取り立てて目当てがあった訳ではありませんが、西日暮里駅にて下車、日暮里舎人ライナーが高架で付き添う尾竹橋通りに沿って歩いてみることにしました。足立小台駅までは何度となく歩いているので、これといった発見など期待できそうもありませんが、降りてしまった以上は進路変更も面倒です。そう言えばそう歩くまでもなくよさそうな雰囲気の店もあったことを思い出しました。ひとまずそこを目指して歩き始めると何度か見掛けている酒屋さんが妙に気になります。気になってしまったらその場で解消して置かねば必ずや遺恨となります。 そんなわけもあってわざわざ尾竹橋通りを渡って「(有)相模屋酒店」の前に立ちました。店の奥のレジの前で数名のオッチャンたちが狭いスペースに身を寄せ合って呑んでいます。こりゃ、角打ちというより地元の仲間の寄り合いみたいなものかなと適当に自宅用に酒でも買って帰ろうかと思いながらも、オッチャンたちを未練たらしく眺めるとその手にはゆで卵が握られています。角打ちとの確信を得て店の主人に伺うと、ここで呑むとちょっと高くなるけどいい?とのこと、無論構いません。奥に入ってねと、オッチャン掻き分けしてみると、奥にはちゃんと狭いながらもカウンターのある立ち呑みスペースがありました。しかもゆで卵が店の奥さんが食べるって言ってくれるのでした。これは売り物じゃなくて常連へのサービスだったみたい。 「居酒屋 すみだ川」、つい先だっての土曜の昼間にこの辺りを散歩していて見掛けたのがこのお店。煙ったようにモルタル壁の色が鈍色に染まり、寂しげな風情で唯一の商店として灯る明かりを見たくなって訪れたのでした。想像通りの寂寥感に胸ときめかせて引き戸を開くと、途端に既視感に捕らわれます。いつのことだったか、もう何年か前のことだったはずですが、間違いなく一度来ているようです。カウンターの下を女将さんが出入りするようになっているので、せつかくのカウンターが活かせないという、決定的とまでは言えぬもののまことに残念な造りに記憶があったのでした。小上がりもありますがこれまた建物の構造上、使い勝手が悪そうです。そんな訳で先客とぼくは2卓だけのテーブルをそれぞれ独占することになるのでした。お隣は夕食前のひと時をこちらで過ごすのが定番のようです。程なく席を立つと店は女将さんと二人きり。いささか寂しくはありますが、このムードこそもともと求めていたものです。茄子のバター炒めはとびきりシンプルな品ですがしっかり美味しい。つい杯を重ねてしまいました。女将さんもテレビのクイズ番組などをネタに言葉を交わすといつしか打ち解けて気持ちよく酔えるのでした。
2014/10/22
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われながら通俗的なことに恥じらいを感じないわけでもないのですか、見てしまった以上は行かずにはおられぬのがぼくの性分なのだから致し方ありません。やって来たのは清澄白河。近頃ちょくちょく来ていますし、まだまだいくらでも知られざる酒場があるはずですが、ひとまずは手っ取り早く、酒場放浪記で紹介された酒場へと行ってみることにしました。この番組で紹介される店って何度も申しており恐縮なのですが、実際言ってみないことには吉と出るか凶と出るか検討がつかず、実際のところ実際の番組を覚えていることも極めて稀で、番組のホームページを参照して作っているメモ書きに、店の名と場所が記載されている程度なので、気持ちとしては友達から紹介されたという程度、なんていくら言い訳してもミーハーっぷりは誤魔化せそうにありません。でも今晩は一人じゃありません。O氏とS氏という心強いミーハー仲間がいるので、いくらか気が楽です。 そんなこんなでやつてきたのはのらくろーどーで良かったかしらーにある「鳥長」です。ありゃりゃ、店の外に5人程入店待ちの人たちがいますね。店先の焼き場から店主らしきオヤジが、わりぃねぇ、今一組出るからもうちょっとで空くからねなどというものだからうっかり待ってしまったのが運のつき。一組帰るの言葉はどこへやら一向人の出てくる客もなし。結局30分ばかりも待たされて詫びの一言もないのはそりゃなかろうて。これが繁盛店の奢りというものか。これだけ人気があるなら空いたら電話連絡してくれる配慮くらいあっても良さそうなのに。憮然として店に入りますが、売り物の焼鳥だけは貰うにしてもーもう一つの名物鰻には手が出ないー、極力安く済まして引き上げようというのは、口にした訳ではないものの気持ちは一緒だったはず。長いカウンターを進むとひとしきり呑んで食べてをすっかり満足顔のまったり寛ぐ客ばかりがやけに腹立たしく思われもする広い小上がりがあります。極力控えめなオーダーを済ませ、ようやく不快さも和らぎお隣を見たのがいけなかった。贅沢至極にも散々呑んで食ってをしたらしき卓に運ばれたのは、〆の鰻丼です。これが正真正銘の〆らしく酒の追加もありません。われわれの卓に並ぶささやかな肴たちがやけに貧相に思えます。視界さえ卓上に集中すれば運ばれた焼鳥は確かに立派です。焼き加減もジューシーさもさすが人気店と納得しかかりますが値段を考えればまあこんなものかな。悪くありませんがここまで繁盛するもんかいなとやはり釈然とせぬまま店を後にしたのでした。 当然消化不良のわれわれは次こそ意中の酒場を見つけんとやっ気になって歩きました。やがてここはまるで聞いたことのない店だけど間違いなさそうだという「松屋」というもつ焼屋に行き着きました。結論から言うとここは大正解、これほどまでに素敵な店を知らずにいたとは、まだまだいくらもいい酒場があるのだなあと今後の酒場巡りに一挙に光明が刺したかに感じてしまうのだから現金なものです。外観も枯れた風情で魅力的ですが、中に入ってその興奮はさらに高まります。まっすぐ奥に伸びるカウンターがいい。カウンター席にまして素晴らしいのが、奥の座敷の眺めです。どこがどうという説明する余裕はありませんがその景色はまさに田舎のばあさんの家のようです。暑い夏の夕暮れに野球でも眺めながらビールを呑むのに最高に思われます。高齢の女性お二方でやっています。年齢に似ず炒め物をするときの鍋振りは力強いことこの上なし。余計なことはほとんど口にしませんが仕切りに店の雰囲気に感心するわれわれにはにかみつつ古くて奥行きが長いのよとちょっと嬉しそうに語られました。肴も上々。店に入ってすぐに入れ替わった若者2名以外お客もなく、どうしてこんないい店が空いているのか不思議でならないのでした。
2014/10/21
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まだまだ上田の夜は終わりません。上田の呑み屋街はうねうねと迷路のように入り組んでいて、日中も随分散策に時間をかけましたが、やはり日が暮れてからのほうが昼間よりずっと明るく華やいで感じられます。まあ、前回までの様子をご記憶であればお分かりの通り、スッカリ出来上がったわれわれはどこへ向かうのやら。 向かった先は「季節料理 治作」です。この店がどの場所にあったかなど今では思い出すことは困難です。たまたま目に留まったので入ったまでですが店内にはこうした店らしからぬ大きな島になったテーブルが置かれ、ぐるりと輪になって客たちがテーブルを囲めるようになっています。ところがお客さんは一人もおらず、われわれ二人でこの大きいテーブルをあてがわれたところで、貴族の食卓のように優雅で贅沢な感じとは程遠く侘びしさが際立つばかりてす。せっかくなので馬刺しでもいただこうかと伺うと、鯨のいいのがありますよと、女将さんは馬刺などこの世にないものとばかりに話題をとにかく鯨の方に引き寄せます。相手をするのも面倒なのでかほどしつこく勧めるならばと鯨刺しを所望、なんで山国に来て海のものをと思わぬでもありませんが、まあ普通に美味しかったから良しとしましょう。それにしてもよその店はどこも繁盛しているのにこの晩訪れる店はどうも上田の方々にはあまり好まれていないようで、上田の古びた町並みや店を有難がるのは旅行者の身勝手に過ぎず、実際暮らす方たちにとっては必ずしも愛すべき対象とは捉えられていないのかもしれません。 ここでしばしS氏とは別れて別行動となります。駅前に「明治屋」という居酒屋があって気になっていたので独りブラブラと上田駅に向けて歩き出しました。ところがすでに店は閉店準備中らしく暖簾はしまわれ、灯りも店の奥でぼんやりと持っているばかりです。かくなる上は、小腹の好きを感じたので、当地名物の肉うどんでも食そう、駅前のこぢんまりした商店街にそれを主力とした店を見かけたはずと歩きますがすでにとき遅く、駅前は客の引き始める時間になったようです。それでもロータリーに面する店舗は終電ギリギリまで呑もうという呑兵衛のために店を開けています。 そんな飲食店ビルに地下があるので潜ってみることにしました。地下の呑み屋街を見るとつい覗いてみたくなります。そんな一軒に「ろばた焼 幸村」というのがあって、店先に置かれた陳列棚肉うどんを見つけました。表では帰路を急ぐ人波が目だったのに、店内にはまだ多くの客が陽気に呑んでいます。上り下りの電車の終電時間に開きでもあるのでしょうか。こんな活気ある中で独り黙ってそんな様子を観察しながら呑むのも悪くないものです。運ばれた肉うどんの具は、馬肉とのこと、筋張ったそれは甘辛く炊かれていて、じっと味わえば馬肉特有の臭みと言えなくもない風味があって、これをアテに酒を呑むのも悪くありませんが、うどんに入るとややくどい感じで肉だけ別皿に盛って出してくれればいいのにとわがままな感想に耽るのでした。 S氏から駅前に到着の報が入ったので、とりわけ賑々しい「ゴールデン酒場 おさけや 上田駅前店」という店の前で待ち合わせ、そのままこの店でこの夜を〆ることにしました。それにしてもすぐのホテルに帰るばかりのわれわれはいくら呑んでいてもさほどのことはありませんが、彼らは帰りの心配など気にする素振りもなく、元気一杯です。とにかくこの今では主流となりつつある昭和レトロ風酒場、都心では見向きもしませんがこうして地方都市で呑んでみると、席感が近いことで、地元の人たちの訛り混じりの会話を盗み聞きできるもってこいのチャンスです。ただしこの夜のわれわれはすっかりできあがっており、翌朝の落ち合う時間を決めるのがやっとなのでした。
2014/10/20
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まだ上田の喫茶店巡りは続きます。それにしても何度も繰り返して恐縮ですが、この町の喫茶店の軒数の多さと多様さは、驚愕という言葉が大袈裟にならないと感じられるほどです。さて夜まで残された時間はあとわずかばかりです。翌朝は早い時間に起床して次なる地に向かわねばなりませんので、翌朝の喫茶店巡りは期待できません。 何度か通り過ぎていた路地に山小屋風の構えの喫茶店があるのでお邪魔することにしました。「珈琲 木の実」です。店内もナチュラルな風合いを残したロッジの談話室といった、裕福な知人の別荘を訪れたかのようなくつろぎを感じられます。背もたれのぐっとせり出した木製のチェアで香り高いコーヒーを飲むと腰を上げるのが惜しくなります。しかもこのおいしい淹れたてコーヒーがコーヒーショップ並みの数十年来の据え置き価格でいただけるなんてなんという羨ましいこと。 続いては町外れの車道沿いという趣があるとは言い難い場所に草木に身を隠すように目立たぬ様子で「珈琲 故郷」は佇んでいました。そっと身をもぐりこませた店内は照明が薄ぼんやりと灯されるだけのかなりの暗さのため、店の奥に女性客があることにもしばらくは気づけぬほど。やがて視界が朧気ながらも装飾品などの輪郭を捉えだすとその古さに驚かされます。メニューらしきものはないのでコーヒーを頼むと、ゆで卵やかっぱえびせんなどなどがサービスされます。こんなサービスをずっと続けてこられたのでしょうか。上演中の小劇場の舞台裏のような暗く静まり返った空間でひととき時間を忘れてぼんやり物思いにふけるのでした。帰り際に店のおばあさんに以前学生さんだった頃いらっしゃってたのという問いに咄嗟に本当のことは言えず、随分久し振りにお邪魔しました、お変わりなくて嬉しいです、と答えてしまいました。いつかまた訪れた時には、学生じゃありませんでしたが、ご無沙汰してしまいました、また来る時までお元気でと言えればいいです。 メインとなる商店街を歩いていると、高校生らしき集団が群がる店があり、店先で大判焼を買い食いしているようです。「食事・喫茶 富士アイス」がそのお店で、店内でもいただけるようです。ショーケースではクリームソーダに中華そばなど賑やかに飾られていて目に楽しい。店の中は観光地によくあるデコラ張りのテーブルに細い四本足の赤くて丸いビニール張りの座面を持つ椅子が置かれ、まあ典型的な古くからやっている大衆食堂のそれなのでした。若者たちもせっかくだからいずれ消え去る運命を愛おしんだらいいのにと思わぬでもありませんが、若い頃から回顧的なのもどんなものかと思い直すのでした。 そんなこんなで上田の駆け足の喫茶店巡りは終了。今回伺えなかった店を備忘として残しておきます。
2014/10/19
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八丁堀の老舗有名居酒屋に思い切って行ってみることにしました。思い切ってというのは、場所柄もあるのか、テレビなんかでこの店が紹介しているのを見ると小金を持ってる塾年サラリーマンが多くはびこっているようだったからです。小金のない単なるおっさんに過ぎないぼくにはやや敷居が高く感じられるのは致し方ないものとお察しください。 訪れたのは「かく山」です。薄暗い路地にポツンとある古びた構えの店で、都心の情緒といったものを漂わせ、いかにも呑兵衛ごころをそそる訳ですが、構えの古さが価格の廉価に反映されないのもまたこうした風情ある都心の酒場の常であります。気を緩めぬよう店に入ると幸いにもまだそれほどの客は入っていません。入口付近のカウンター席に収まりとりあえずのビールを頼むと品書きをじっと眺めます。黒板には季節のお勧めの品が書き連ねられていますが、ぼくの懐具合ではいささが荷が重い。そんな訳で焼鳥をお願いしたのですが、これが正解。鉄串に刺された肉のサイズはまさにバーベキューのように大振りで、その大きめサイズがもたらすのか、肉はすこしもぱさつかず汁気をたっぷり含んで旨いのでした。このサイズでこの味なら焼鳥としては強気な価格設定にも首肯できます。そうこうするうちに店内はほぼ席が塞がっており、2階にも次々と客が吸い込まれてなるほどこの繁盛にも納得なのでした。
2014/10/18
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井荻駅にやって来ました。毎度同じことを語っていますが、西武新宿線はさほど遠くないのにも関わらず、ウイークポイントとなっている沿線です。 最近の新宿線散歩で徐々にわかってきたのはこの沿線には、古い店舗が案外現役なこと。沿線の発展はせいぜいが戦後以降のことなのでしょうが、それが逆に幸いしているのでしょうか、むしろ初代が開店当時の佇まいをそのままに留めているようです。線路沿いをぶらぶら歩いていると、見逃せないオンボロ佇まいの「中華料理 鈴や」がありました。まったく空腹ではないのですが、中華料理店なら餃子はあるに違いありません。勇んで店に入ると先客1名。店主夫婦と愉快に話し込んています。使い込まれたカウンターは飴色というよりはもっとずっと辛い思い出も染み込ませていそうな深みがあります。出てきた餃子は出しておけばいいという市販の100円餃子みたいなのが多い昨今の中華店とは一線を画す美味しさ。休日の昼間、静かな古い中華料理店で餃子を肴にビールを頂く喜びといったら。つい日本酒にまで進んでしまいます。
2014/10/18
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森下の町っていうのは、東京の下町を象徴する地名の一つであると思うのですが実際範囲を地名の森下に限定すると至ってとりとめのない、これと言って東京下町を印象付けるだけの何があるわけでもないありふれた住宅街というのが正直なところ。何軒か高名かつ人気も高い居酒屋があったりもするわけですがそれほどのものとも思われません。そういう印象は今回も拭えぬ結果となるわけですが、唯一収穫だったのは思っていたよりは場末の匂いも留めていることが感じ取れたことです。なお、この夜はA氏とT氏が一緒です。まあ、あまり文中では顔を出すこともないとは思いますが念のため。 と、長々前置きを書いたが最初にお邪魔したのが「陸中」というお店、入ってみてぞくり、なんと貧乏人の酒呑みには鬼門である寿司屋だったようです。入ったからにはしょうがない、適当に安く済まして引き上げようという方向で行くことを二人と目配せします。刺し身の三点盛りがお手頃なのでお願いすると、中トロなどの値が張るいくつかのネタ以外から好きなものを選べとのこと。あっ、〆鯖切らしてるなど結局選んだんだか選ばされたんだかよく分からぬまま注文を済ませ、待つことしばし。いずれもちんまりと2切れづつなので2人は一切れづつトレードしていましたがぼくは大人しくトリ貝をつまみました。刺し身以外も今日はそれはできないと、出せるものを言い当てるほうが難しいくらい。恐らく客の入りが悪いー実際オヂサン一人がいただけーから仕入れは控えめにして、ネタが限られるから客はつまみたいものをつまめず不満が溜まるという悪循環にはまり込んでいるように感じられます。いや、もうそれなりに長くやってるお店のようだから、ひたすら食虫植物のように、愚かな客がごくまれにはまり込むのをじっと待っていればいいと思っているのかもしれません。とにかく客に出せない品があるなら掲示しないでいただきたい、単に短冊を剥がすだけなんだから。 太平洋側の「陸中」から、次いで日本海側の秋田に店を替えました。「秋田料理 藤」です。かねてから注目していた相当に老朽化のレベルの高い飲食店長屋の一軒で、なかなか夜に森下に来る機会がなかったものですから、ようやく念願が叶いました。こうした外見のインパクトの強い店は、往々にして入ってみるとなんでもないことが多いので、過度の期待は控えるよう心掛けてはいるものの、どうしてもはやる気持ちを抑えることができません。入るとおおよそ予想したとおりの女将さん一人だけ、だから一人でも切り盛れる程度の10席程度のカウンターだけのお店です。壁や天井はしっかりと年季に応じてくたびれていて、新しい店では出せない哀愁が漂っています。女将さんも他の客も無言でわれわれの口も否が応でも重くなります。でもその沈黙がけして嫌ということではなく、むしろ清々ささえ感じるほどに心地よいのでした。
2014/10/17
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つい先達できたばかりですが、気になる酒場があったので早速の再訪です。その店というのがこの間お邪魔したお店の徒歩十秒圏内と来ては、もしかすると業平橋は、ぼくの好みの酒場が集中しているのではなかろうか。 「焼とり みゆき」は、先日お邪魔した「三好弥」のお隣さん。しょんぼりとあまり客のなさそうな雰囲気でしたが間違いありませんでした。入ると8席ほどのカウンターにはバランスの良い配置でオヤジたちが座っています。このバランスを乱すのはちょっと勇気が必要ですが、すっかり図々しくなったぼくにとっては申し訳ないの一言で押し通す図太さが身に付いているのでした。焼鳥屋なのでパッとももとつくねと緑茶ハイを注文。少ししてレンジのチーンが聞こえてもさして気にはなりません。実際食べてみると冷凍物の臭みも感じられずにまずまずの味。それにしても女将さんは我慢強いなあ。あれだけの罵詈雑言を聞き流すのだからな。それこそオヤジさんはすごい、一言も発することもないだけでなく、表情ひとつ変えないのだから。 次は「多か美」にお邪魔しました。看板は、近頃変えられたようで、おしなり君やらいうキャラクターまで書き込まれていてなんか気乗りしませんが、先日お邪魔してちょっといい印象だった「多か将」の筋の店らしいので立ち寄ってみたいと思ったのでした。おしなりセットは980円、その内容は写真を参照してください。とてもとてもぼくには食いきれませんでした。で別に物は全然悪くないのです、って言うか刺身は美味しかったと言ってもいい。ところでなぜたかここは有名人もちょくちょく訪れるようなのです。のうした話題で気に止まったのは、田畑智子のこと。初めての来店時のお話をされていました。はじめて屋形船を楽しんだその帰りに立ち寄られたようです。酒もタバコも凄いとのことでデビュー当時の彼女のことを素晴しい女優だと感じたぼくにとっては耳を覆いたくなるーなんてナイーヴさはもはや持ち合わせていないにせよー話題がひっきりなしで、聞きたかないと思いつつもついつい耳をそばだててしまうのでした。 それにしても、この界隈のオヤジたちの会話がたまたまそうだっただけかもしれませんが、もうとにかく女への呪詛ばかりを語っている。男に荷物を持たせるなど許せん、この間ぶん殴ってやった、息子だけどね。特に大阪の女は酷いもんだ、あいつらは腐ってる。その割にオッパイパブには異常な執着を見せるのが不可解なのですが、とにかくどうやらランパブは嫌いらしい。なのにその後の言い草は「ええねんけど、あいつら×首黒いのばっかりやねん、だからピン×ロ嫌いやねん」だってさ。 最後の最後に嬉しい話。「多か美」の女将さんは界隈のことを業平と言ったし、近い駅はと尋ねると業平橋の駅よと教えてくれるのでした。そんな愚かなオヤジやオババたちが多いにもかかわらず、店は悪くない、どうしてここまで空いてんのかなあ。
2014/10/16
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今でも現役で営業している喫茶店がそれなりに残っている新富町は、昼間歩き回ることはあっても夜はうら寂しくてあまりやって来ることはありませんでした。昔話になりますが銀座通りの老朽化したビルに一室に映画の16ミリフイルムを貸出する零細企業があって、それだけてはさすがに採算が取れないらしくせいぜいが10名入るかどうかの狭い部屋で、どういう訳だかやけに豪奢なソファで、映画マニアであれば垂涎すること必死のトンデモない珍品が土曜日だけ上映されていて、ぼくもしばしば通ったものですが、その際利用するのが新富町駅でした。ともあれ最初に向かったのは酒場放浪記で見た老朽化したビルにあるというこちらもまた古い居酒屋でした。ちなみにこの夜は、50歳まではほぼ下戸と言ってよかったのに、突如として大虎へと華麗なる変貌を遂げたーさらには冷え切りきっていた夫婦仲がこの変身により一転円満へと結実するとはーK氏が一緒です。 ところが現地に到着しても店の灯りらしきものはまったく視界を捉えず、しばらく眺め歩いてやはりこのビルしか考えられないという、暗がりの中でも目を奪われるビルの一階をその店と認めるしかなさそうです。「居酒屋 北海道」が求めた店で、そのガラス張りの空き店舗をしげと眺めるにつけ、痛恨の念が高まるばかりなのでした。 やむを得ず付近をぶらつくと「焼鳥 さかえや」というこちらもいくらか年季を積んでいそうな一軒の焼き鳥店に行き着きました。この界隈は、町の形成され方が独特で、店舗がひとつのビルや通りに集約されることは少なく、案外多い民家や町工場などに転々としているため、孤立感が高く、それが暗闇に赤提灯という呑兵衛泣かせの哀愁をたたえているようです。競合店を減らすことで、利益を等分しようという地域の飲食業組合辺りの戦略かもしれません。ところで、こちらのお店、入ってみると思ったよりは小奇麗で、改修の手が入っていることは明らかです。それでも穏やかな表情を浮かべる店主夫婦の高齢ぶりは、格別におじいちゃんっ子、おばあちゃんっ子ではなかったぼくの気持ちも和ませてくれます。焼鳥以外には奴やトマト程度しかなく、その焼鳥もやや火力の弱さを感じますが、それがむしろ夫婦の優しさを感じさせるようです。入口付近のテーブル席にはいくらか喧しいサラリーマンのグループがいますが、奥のカウンターには一人客だけがいて、どなたももう50代にはなっているように見受けられました。言葉は交わさぬものの、一時のおじいちゃんっ子、おばあちゃんっ子気分に浸っているのかもしれません。 似たような渋い焼鳥屋さんが程近い場所にありました。「鳥福」というお店です。こちらは構えの大きさに比すると、いくらか手狭に思える店内の様子は、さっきの店が合理的な計算に基づいた座席配置をしていたことを思うと、こちらは席が埋まることなど想定していないような座敷を基本としているのは鰻屋でもあるからでしょうか。都心の店というより郊外な町外れのお店という印象です。こちらのご夫婦は旦那の姿は見えませんが、先の店がほんわかしていたためもあり配膳を受け持つ夫人の応対は幾分かドライな感じを受けました。カウンターがいい感じなのでホントはそちらが良かったのですが、訳ありげなカップルがいたので遠慮して座敷に上がります。隣ではオッサングループが8名ほどでほどぼど盛り上がり、こちらもオッサン2人、隠微に盛り上がりました。いろいろ意見はありますが、やはり呑むなら一人か二人というのがぼくの性格には合っているようです。特筆すべき肴があるようではなさそうですが、オッサンの頼んだ川えびの唐揚げは身もむっちりとして持て余すほど。われわれはこれにお新香など2品を持て余すほどなのに、お隣のどう見ても年長のオッサンたちは驚くべき食欲で次々とハードな肴を平らげるのでした。隣の食欲の旺盛さに当てられたわれわれはすごすごと退散します。手作りらしき素敵なコースターを所望すると女将さんは嬉しそうに綺麗なものを選んで手渡してくれたのでした。
2014/10/15
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入曽という駅があることをいい加減な鉄道好きでしかなかったぼくなどは今回訪れてみて初めて知ったわけですが、もったいぶるまでもなくその正体を明かしてしまうと、西武新宿線の3駅先にある都心からは三十分もあれば行けてしまう程度の、精々がベッドタウンと言ってよいほどに近い町なのですが、この認知度の低さはどうしたものでしょう。試みに職場の人たちに調査を試みたところ10名ほどに聞いてみて、なんとなく聞いたことがあると埼玉の町であると答えたのが1名だけ、それも路線は全く的はずれなのだから、ほとんど知られぬ町であると言ってもあながち誤りではなさそうです。そんな町に行ってみる気になったのは、そんな秘境めいた町が好きってこと以外には理由などあろうはずもないのでした。 駅前に降り立つとまさに期待を裏切らぬほどの場末っぷりをていしていました。かほど都心から近いにもかかわらずこの裏ぶれっぷりとは、これまで訪れていなかったことにひとしきりの後悔を感じずにはおられません。なにせひと頃は、所沢に通っていた頃があったのですから、ほんの数分と百何十円だかを出せば、この町に来れていたのですから。人気もまばらな駅前をざっと眺めるだけですでに興奮してしまうのですが、おいしい所は後回しにして、まちを一巡りしてみることにしました。ところが駅前の詫びしげな商店街と、線路沿いに立ち並ぶ商店以外にはさほど興趣をそそられるでもなかったので、とりあえずは目に付いた喫茶店を訪ねることにしました。 「純喫茶 コールドンブルー」は、駅の真正面にある低層ビルの二階にあって外見からもよく目立っています。レーザーカラオケの文句に恐る恐る階段を上がり、入り口を見ますがどうもやってなさそう。 線路沿いに進むと「コーヒーショップ スウィング」というこれといった目立つ装飾はないものの、これこそまさにコーヒーショップの原点と言っても良さそうな庶民的でカウンターメインのお店で、女店主と女性客がかしましく歓談する忙しい朝にさっと一息つきたくなるようなお店でした。 すぐそばの「コーヒーハウス メープル」は、一転してぐっと本格派の喫茶店です。広く薄暗い店内にはよく見るペンダントライトが飾られ、椅子は木製のお馴染みのもの。定番でありながらもゆとりある座席配置が独特な開放感をもたらすのに成功しています。店内には隔離された特別室もあって、そこがとてもいい雰囲気です。 駅前の車止め用のスペースの隅っこの三角地に安普請の掘っ立て小屋の酒場がありました。立ち呑み用のエリアと椅子付きのスペースが不思議な隔たりをしていて、2つのお店を繋げたのか、増築を重ねたのか、面白い造りとなっています。「蕾」というお店で、三角の頂点は焼き場となっています。もつ焼の店なのかと思うと実はそれだけでなく中華料理が充実していて悪くないのでした。そう店の方は中国人のご夫婦らしく、座席で呑む目つきと酒癖の悪そうなジイサンがなんだかはっきりとは聞き取れないものの店に余計な因縁を付けるのを旦那はひょうひょうと受け流しています。一方で奥さんは線が細そうですが懸命に接客から調理もこなして立派。帰り際にドキリとするような一言を頂きましたがどういうわけだか失念。なんと言ってくれるのかは実地にてご確認ください。ちなみにこちらは14時の開店です。 15時ちょっと前にお隣の立ち呑みが開店したかと覗きに行くと薄暗がりにオジサンが一人ポツンと腰掛けています。まだですかと伺うと、どうぞ入ってくださいと入れていただけました。開店前の一憩を取られていたようです。「もつ家」というお店です。話が脱線しますが、迂闊なこと帰宅してからこの店をHPで調べるまでまったく知らなかったのですが「もつ家」は、秋津総本店、霞ヶ関駅前店、朝霞東口店、東村山西口店、狭山台店、ひばりヶ丘店、久米川店、狭山ヶ丘店、入間川店、所沢西口店、新所沢店、東久留米店と主に西武線沿線に多くの支店を持つ立呑みチェーンだったのですね。秋津駅前にある(JR武蔵野線の新秋津駅じゃないところが西武線へのこだわりか)店舗には以前お邪魔したことがありましたが、その際は、ひばりヶ丘店がオープンとかいう貼り紙があったような記憶があります。それが何年前のことか記憶に定かではありませんが、そう何年も前のことではないはずなので、ここ数年で一挙に拡張路線に転じたようです。そんなこともあって、入曽駅が最寄りのこの「もつ家」は、同チェーンのHPにある入間川店かと思ったら、どうもそうではないようです。地図を見るとその店舗は入曽駅から歩いて、10分じゃきかないほどの距離があるようですが今回お邪魔した「もつ家」は駅から徒歩1分という至極便利な場所にありますし、第一立呑み屋じゃないのですね(よく目立つ黄色いテント看板には立ち飲みの記載あり)。そんなこんなで、席に付き目の前に飾られた目指しなどを注文します。カウンターにはどうやら店主らしき人物のCDジャケットが貼られ、ここでライブをしたりもしているようです。壁にはこっそりといった控えめな感じに酒場放浪記のステッカーも貼られていて、どうやらこの店主、当人も酒場好きのようです。物腰も柔らかく、丁寧でいてちょっとせっかちな気のいい店主のいるこのお店、ちょっと好きになりました。
2014/10/14
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あんなに気に入ったのであれば、ずっとそこで呑み明かせばいいのにと思わぬでもありませんが、根っから飽きっぽいためやはり一軒に留まるのはそこそこに次なる酒場を目指すのでした。 ちゃんと次のお目当ても昼間の散策時に決めてありました。「かわしま」の程近くにある「やきとり 鳥正(とりせい)」です。店そのものの味わいや年季の入り方では「かわしま」に一歩二歩劣るとはいえ、周りの風景との馴染み方やぽつねんと佇むその寂寥感の深みではこちらに軍配を上げたいと思います。店内に入るとコンパクトながらもカウンターやテーブル席の配置の妙で、多様な表情が楽しめます。柱や仕切板で狭さを逆手に取ったこれ以外の座席配置はないのではないかと思わせられます。こちらもお客の入りは今ひとつで結局店を出るまで一人の客も訪れることのないのは残念なことです。ここも上田らしく焼鳥には美味タレを掛けていただくのですが、先程のように客自らが好みに味付けするやり方ではなく、むっつり押し黙った店主にお任せするやり方らしく、上田流でもいくつかのスタイルがあるようです。「花巻」は、上田らしい猥雑さの中心にあってつい立ち寄りたくなります。ここは外観の正統派の居酒屋然とした佇まいとは大いに印象が違って、入り口を入るとすぐにあるのはスナック風のかうんたーがある薄暗いスペース、その奥はいかにもな純クラシックな和風居酒屋が広がっていて、地元の常連で繁盛しています。われわれが通されたのは、喜ぶべきか憂うべきかスナックスペースでした。ここは居酒屋とスナックの二毛作店なのですね。都内ではまず見掛けないお店で、地方の温泉宿のような合理性は、目新しく感じられます。でも、カウンターに人が不在とあっては格別面白みも、取り柄も見いだせぬのでした。主人のいないスナックにおっさん二人は放り出されたまんまやたらとでかいホッケを持て余して、ぼんやりするしかないのでした。
2014/10/13
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この上田という地方のそれまたJRにまで見放された小都市の魅力は狭いエリアに町が含んでいるべきあらゆる要素がまんべんなく含まれていると同時に風俗店や喫茶店などが町の規模に比してあまりにも過剰供給されているように思われるのです。上田の方たちというのはよっぽど風俗や喫茶を好んているということでしょうか。 呑み屋街の外れ、人通りもほとんどない閑静というよりは静まり切ったというほうが適当な場所に「亜羅琲珈」はありました。ひっそりとした玄関をくぐると幾分散らかり気味ではありますが、正統派のオーソドックスで絞り気味の照明が心地よい空間が広がっていました。せっかくなので一番奥の席に座ることにしました。お客さんは独りもおらず、独り読書に耽ってみたりするとーここはS氏とは別行動で一人で来ましたー、突如ここが日本のどこでもない街角の一軒としか思えなくなるのが喫茶店の面白いところ。居酒屋であればどこかしらに地域性が醸し出されるところが、大きな差異のように思われます。 続いては喫茶店関係のHPで度々見かける「喫茶・お食事 ニュービーナス」にお邪魔しました。それこそ風俗街と呑み屋街の入り乱れるこの界隈でも、とりわけ猥雑な一角の2階にあります。階段を開けてお店に入ると、思った以上に広く、それでいて雑然としており、あまり純喫茶らしさは感じられません。壁面の飾りやパテーションにそれらしさを感じる以外なさそうです。昼に入った食堂で呑んでいたオッサンと再び遭遇します。土曜の昼下がりを呑ませる店を転々としているようです。小腹が空いたのでカレーの小盛り300円也を注文しました。出されたのは通常のカレーの7割程度の盛りはありそうでなかなか立派。しかもサービスと言ってスイカまで出してくれたのでした。そのカレーは、なかなか美味しくて、ぼくの味覚に間違いなければカレーマルシェです。マッシュルームの食感と洋食風のコクのある旨みはそうに違いありません。ルーはちゃんと1袋を使っているらしく、これで300円では採算が合わないのではと心配になるほどです。レトルト(らしい)とはいえ、このサービスの良さにすっかり満足して店を去るのでした。帰り際、店の女主人は、あらもうお帰りになるの、またゆっくりと遊びにいらっしゃってねと、若干沈鬱な店の雰囲気とはギャップを感じるほどに明るく見送ってくれたのでした。 まだまだ続きます。スナックやキャバクラなどの密集するエリアからわずかに外れた場所に「自家焙煎珈琲 コロナ」がありました。こちらの写真がないのは、このお店、この日巡った他店と違って客の入りがとてもよくって撮るのが憚れるほどだったためです。確かに純喫茶としての濃密な個性や面白みには欠けるものの、それが却ってすんなりと店に溶け込める快適さとなっているようです。濃厚な味付けの洋食コースの中のアミューズのようにホッとさせていただけるような店でした。
2014/10/12
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とある豪雨降りしきる夜もかなり深まった裏浅草を歩いていると、以前から一度は行っておきたかった古い洋食店に行き着いていました。もう終バスも迫っているし何よりこの凄まじい雨の中、わざわざ立ち寄るのは無謀であるとも思われましたが、ここでみすみす見過ごすなどぼくらしくもないと、自らの弱気に叱咤します。 180度に向けて店の存在をアピールする今では珍しいアーチ型の暖簾が嬉しい「洋食 大木(大木洋食店)」です。当然のようにお客さんは一人も入っていません。店の主人には申し訳ないがこの静けさがなんとも嬉しいのです。昭和30年初頭開業のこのお店、立川談志をはじめ著名人が訪れていることなど様々な逸話が流布していますが、そんな話はぼくにとってはさほど興味のないこと。主人の愉快な喋りは、ついうかうかすると終バスを逃しそうになるほど愉快です。この時間がもったいないものの冷え切った体を温めるため、熱燗を頼み、肴は親父の喋りで十分と思っていたら突如思い出したように出してくれたお新香が心底から温かい気持ちにさせてくれます。時間すれすれまで話し込んでしまい、危うく終バスを逃すところでした。品書:ビール大(漬物付):600,とんかつ:750,チキンカツ:600,やきにく:750,酢豚/八宝菜:1,300
2014/10/11
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東長崎については、ほんのひと時ではありますがハマって通ったこともあり、その際も書いたと思いますが中華料理屋、そば屋、食堂の豊富さに比して酒場の数が圧倒的に不足しているということで、今になって思うと、ここ東長崎ではどうした経緯からそうなったのかは想像するしかありませんが、そうした飲食店がそのまま酒場になっているものと考えるのが良さそうです。ここでは酒は酒場で呑むものだなんていう自説を押し通そうなんてことは考えないほうが良いのかもしれません。そんなエゴをあくまで守ろうとするならこの町には来てもらわなくて構わないと言われているようでもあります。 そんなこだわりなどまるでない、と言うよりはかなり好みであるぼくは迷うことなく駅前からすぐのチェーンのラーメン店のようでありながら、そのくたびれた造作のいちいちが興味深い「中華 一しん」のぐるりと囲むように設けられたカウンターの一席に収まるのでした。出される料理はチェーンのものとさほど変わらないのでしょうけど、なぜだか一味違って感じられるのが、こうしたなんでもないけどどこか懐かしさを感じさせる店の取り柄といえるでしょうか。もう二度と行くことはないかもしれませんが、不思議と印象に残りました。
2014/10/11
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とある夜、帰宅途中に思い立ってぐっと大回りして護国寺方面を歩いてみることにしました。けして通勤列車とも自宅からも近くはありませんが、歩いてもまあここはさほど面白い地域でもないですし、ましてや夜になると場所によっては真っ暗と言っても言い過ぎてはないくらいに暗い場所もあって、閑静な住宅街という言い方は妥当かつ退屈であることを言い表しているに過ぎなく思われます。 護国寺のある小山の麓に「小柳」という居酒屋さんが随分前からあることは知っていて、多分にこの退屈な土地にあるからこそその古さが際立って見えたということは分かってはいましたが、どうにも気になっていたのです。が、何度か通り過ぎてみても店が開いていたことはなく今では閉まっているものととうに諦めていたのですが、なんとびっくり、この夜店内から灯りが漏れているのが遠目にも確認できました。茗荷谷からの坂を転げ落ちるほどの勢いで駆け下りていくと、やはり営業しているようです。感慨に耽る暇さえ惜しく思われ、慌てて店内に駆け込みました。すると驚くことに極ありきたりのカウンターとテーブルがせいぜい2卓もある程度の普通の店を想像していたのが、なんと立飲みなのでした。恐らく間違いありませんが、以前は想像通りの店だったのを素人の手習いで改装を加えて、なんだか中途半端に立ち呑みっぽくない、どこか不自然で愉快な雰囲気となったのでしょう。それでも酒場が圧倒的に不足している界隈にあっては貴重なのか、それなりにお客さんも入っています。酒の値段は立ち呑みの相場からは安くないと思いますし、肴も手の掛からない簡単なものしかできないようです。でもまあそんなことは些細なこと、とりあえずはこの寂しい町にふらり立ち寄れる店ができたことを喜ぶことにしましょう。
2014/10/10
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副都心とか呼ばれもする池袋から有楽町線でわずかに二駅目のえきであるにもかかわらず、千川駅は酔客の気分をガクンと萎えさせるに違いない町なのでした。夜、駅の出口を出ると大きなスーパーマーケットがある以外には、商店どころか人の姿さえあまり見られぬ暗闇が広がっています。 そんな町のわずかに残された商店、しかも飲食店はさらに限られ、さらに営業しているのは古さに風格さえ感じさせる「博雅」です。数少ない店がこの店でよかったと一安心で暖簾をくぐりました。長テーブルが数列並ぶ店内は、4人掛けテーブルが芸なく並ぶばかりの店が多い中、かつて繁盛していた頃の回転を高めるための工夫の名残りをみるようです。この日の入りは悪く、この時間帯が掻き入れ時なはずなのにと不安を感じずにはおられません。数少ない客の視線はみな入り口に向けられ、対話相手は天井から下がるテレビというのもこういうお店らしくって嫌いじゃありません。値段も味もそこそこなんじゃないかと思われますが、我が家のそばにこういう渋い店がないことを思えば羨ましく思われます。品書:ビール中:550,酒1合:500,ウーロンハイ:400,餃子:400,シュウマイ/オムレツ:450,ラーメン:420
2014/10/10
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高島平駅の南側には、言わずとしれた巨大団地がまさに聳え立っていて見物なのですが、夜になると暗さを引き立てるばかりの巨大な墓石群の様相となります。その逆側にはささやかながらも商店街があって、中には数軒の居酒屋さんや喫茶店もあります。そんな店に通う多くは巨大団地の住民らしく、目立つのはやはり高齢者となります。 さて、お邪魔したのは、「百楽 本店」です。角を曲がってすぐに支店があって、そちらはテーブル席がメインのようで、爺さまたちが揃いも揃って満面の笑みをたたえて呑みに興じています。一方で本店の方は、広い大きなつの字のようなカウンターを備える、まさに大衆酒場というに似つかわしい体裁を備えています。まさかこんな都心を外れた住宅街にこれ程に貫禄すら漂わす酒場があろうとは思ってもみませんでした。あまりの興奮でしかと記憶はせぬものの、酒も肴もほぼ呑みたい食べたいと思うものが揃っていて、一瞬、高島平に住むのも悪くないなと思い掛けますが、周囲で呑む老人たちのいなくなった時のことを考えるとその考えも一時の気の迷いとして脳裏から振り払うしかありませんでした。
2014/10/09
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大山駅前の胃袋のような呑み屋街の存在は、何度かここてもお伝えしており、ぼくが独りで興奮しているだけのようで恐縮しますが、それでもやっぱり独りであってもつぶやき続けたい程の愛着を感じています。そんなこともあってここには折に触れ足が向いてしまうのですが、そんなある日、これまでなかったはずの一軒の居酒屋があることに気付きました。 串揚げを店のお勧めとしている「まんぷくや」というのが新しいーらしいー居酒屋の屋号です。当然ながら居抜きであるため、若干の手が入っているらしくそれなりに清潔な印象とはなっています。しかしながら店の造りはというと、この狭さでは客席を拡張するわけにはいかなかったのでしょう。カウンターに4、5名がやっとの程度のお店で、しかも変形した土地に建っているのか、そのカウンターも鈎型にクランクしてしまっています。なんともユニークです。さて、店内の様子と凛々しく、しっかり者風な女主人のことは記憶に鮮明なのに対し、酒と肴の記憶はさっぱり蘇ってきません。きっと店と主人の雰囲気こそがこの店の見どころなのでしょう、と言っておいて己の覚えの悪さを棚上げすることにします。
2014/10/09
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さて、到着した時点ではうら寂しいほどに商店が開いておらず、人の影すらほとんど見受けられなかったのに、夕方前になると1店、2店と続々と店のシャッターが上げられ、わずか30分前とは打って変わった様子となります。とは言え活気があるというには程遠く、多少駅前の商店街とも呼べぬほどの通りに人の往来が見られるようになる程度です。 そんな通りの1店は、軒先で焼き鳥を焼く惣菜店で焼き場の裏手には各種の惣菜がガラスケースの陳列棚に並びます。仕切りの先には飲食できる一角があるので、店のおばちゃんに聞くと中での飲食も大丈夫とのこと。「食料品の店 浅野(浅野商店)」もまた午後3時30分頃が開店のようです。奥はテーブル席が5卓ほどあり案外ゆったりとした配置となっています。おばちゃんにウーロンハイと焼鳥5本の盛り合わせを注文、串はどれでもいいかねとの問にお任せしますとお答えしました。ちっとも洗練されてませんが、甘過ぎもなく辛過ぎもなく、でもしっかり味の濃い焼鳥は若干小振りなもののなぜか癖になるようなときどき食べたくなるような味です。タイプは違いますが国技館サービスの焼鳥とその辺は近いかもしれません。人っ子一人来るではなく、店頭で焼き鳥を注文する人、予約する人たちとおばちゃんの会話を肴についくつろいでしまい酒が進みました。 新しい大きなマンションの一階にある「本多政晴商店」も開店前にはシャッターが閉まっています。曜日によって4時30分もしくは5時の開店となるようです。この日は4時半の開店です。店の前には開店待ちのお客さんが一人います。開店を待ちきれない客のいる店は悪いはずはないはず。シャッターが開くと想像していなかった光景が広がります、って言うといささか大袈裟ですが意表を突かれたことには違いありません。というのも酒の小売りはしていないらしく、広い店内に所狭しと張り巡らされたそのカウンターは、渋谷の例の立ち呑み店に負けず劣らずの大きさです。結局見届けることは出来ませんでしたが、この角打ちにびっしりと客の入るさまを思い浮かべるとゾクゾクさせられます。それにしてもこんな真新しい高級感さえ感じさせるマンションの1階にこれほどまでの呑ん兵衛スペースが広がっているとは驚愕を感じずにはいられません。酒も肴も角打ちの基準を超えて充実していたことは記憶にありますが、何よりこの異様なほどに拡張した角打ちスペースに瞠目し、他の記憶は曖昧なのでした。--- ここからは別の日のお話。どこぞやで呑んだあと、花月園前に辿り着いていました。夕方の賑わいからは一転、夜の花月園前はお寒いのでした。一軒ちょっと味のある居酒屋がありました。「季節の味処 増喜」というお店。まあこれが他の町にあったなら見過ごしていたかもしれない程度にごくごくありふれていますが、居酒屋らしい店の少ない界隈では貴重な店のようで、ほとんどカウンター席は埋まっています。まあせいぜいが5、6席程度しかありませんけど。その日はO氏と一緒だったのですが、この人何度か言ってるかもしれませんがカラオケが大嫌い。こうした土地のこういう店ではカラオケはどうしても欠かせないようです。われわれが郷に従ったかといえばそんなこともなく、ちょっと気の利いた肴を摘みに、夜の花月園前はちょっと退屈だなと思わざるを得ないのでした。
2014/10/08
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最近、アド街で花月園前駅ー念のためお断りしておくと京浜急行電鉄の各駅停車のみ停車する小さな駅ですーが特集されてしまったので、今になってこうして報告するとマスコミに踊らされているようでなんだか気乗りしないのですが、このブログが一応は個人的な備忘録としての役割を捨てていない以上は残しておくのもありだろうと開き直ることにしました。大体においてすべてのテレビ番組をフォローできているわけでもないし、自分だけはすごい酒場に出会ったと自己満足に酔ってみたりしても、前夜にどこかのテレビ番組で放映されているかもしれのだから気にしていたってしょうがない。などとグズグズ言い訳していてもご覧頂いている方には迷惑至極に違いないので遅まきながら最初のお店から報告します。 ところが日中からやっていると思っていた数軒あるらしき角打ちは、時間差で営業を開始するようです。しょうがないのでしばらく散歩して時間を潰すことにします。すると折よく「コーヒーショップ ココ」なる喫茶店あり。ここもまたアド街で紹介されてしまうわけですが、そんなことはどうでもいい。駅はずれのもしかすると国道駅が最寄りという立地にあるまことに地元密着ののんびりした喫茶店でありました。これといって奇を衒っていたりするわけではないのに、どうしても隠しきれぬ歴史が気持ちを緩めてくれます。高齢でも元気なママさんが韓国ドラマにかぶりつく姿を眺めながら、この土地の角打ちもこんな緩い空気に満たされているのだろうと期待が高まります。 まずは、午後3時に開店の「江戸屋 斉藤商店」にお邪魔しました。開店まではシャッターも閉ざされ、本当に営業するのか、いささか不安を感じます。一応小売もやっているようですがほとんど倉庫のような店内の奥にはテーブルが置かれ、これまでほとんど経験したことのない奇妙な雰囲気です。角打ち稼業がメインとなっているようです。そんなこともあって、刺身があったり、10月からは煮込みもあるようでなかなか本格的です。母娘でやってるお店なこともあってかぼくに続いて入ってこられたのは、30歳そこそこの女性客でした。一応は男のぼくがいても、ぼくなどいないかのような様子できわどい話を赤裸々に語り、耳が痛いのなんのって。こちらは相撲中継に見入っているふりでもするしかないのでした。でも店の方が席を立つと女性客から視線を浴びせられているように感じるのはやっぱり図々しいかなあ。 30分ちょっと滞在して、次にお邪魔したのは「相模屋岸酒店」てす。外見には個人商店としては規模も大きく、厳しい経営状況と聞く酒販業としては店舗も古びてなくこざっぱりしていて、端的に味気なく思われます。しかし土地からというのが適当なのかはともかくとして、ここはしっかり小売の営業もしていますが、独立した立ち飲みスペースがあります。ガラス戸には午後3時30分から営業との貼り紙がありました。開店時間を10分ほど過ぎてからお邪魔するとすでに5名のオヤジたちが賑々しく語りかつ呑むのでした。細長いスペースの奥には手作りの肴が盛り付けられた小皿が並び、ここで酒と肴を見繕うようです。両壁面には奥行きのないカウンターが設けられています。場所を確保して店の雰囲気を味わいつつ、人々の様子を眺めます。長老たちはビールケースに腰を下ろし、720ml瓶の焼酎をカウンターにある自由に使える氷と水で割り、本当に呑んでいるのかと訝しく思うほどに遅々としたペースの呑みで一杯呑むのに30分、もしくはもっと掛かってもおかしくない程に感じられます。腰を下ろした彼らは、店が閉まるまでここに居続けるのでしょうか。その姿を思うとなんだかたまらなく物悲しく思われるのでした。
2014/10/07
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東北の旅を終えて、そう経ってもいないのに今度は長野を旅することにしました。そうは言ってもそうそうお金も続かぬし、時間もそうは避けない。そんなわけで初日は上田、翌日は伊奈に向かう予定です。前者は喫茶店巡り、後者が居酒屋巡りに主眼を置いてのプランですが、いかなる事になるかは行ってみなければば分かりません。 というわけで正午過ぎに上田駅前に到着。早速、喫茶店詣でを済ますと、激しい空腹を訴えるS氏のご意見を採用、通りがかりで見掛けていた細い路地にある一軒の食堂に立ち寄ったのでした。 店は「相生食堂」と言います。地方の小都市でたまに目にするこうした古ぼけた飾り付けの微塵もない無骨な店舗も間違いなく希少なものとなりつつあるのでしょう。テーブル席だけの外観同様簡素な店内にはお客さんは2人だけです。いずれも何枚かの開いたお皿にビール瓶が置かれています。土曜日の昼下りに旅先という特別な状況でもあるまいになんとも優雅なことです。肉そばなんていうこの土地の名物もありましたが、われわれは酒の肴になりそうなもっと肉肉しい品を所望しました。すがれた静かな食堂でゆっくりとビールをいただくのは格別な旨さがありますが、別に店内から風景が見えるわけでもないのに枯れた町であるという事実がより一層旅情を奮い立たせてくれて、渋味を増してくれるようです。店のご夫婦もお元気でまだまだこれからも長く商売を続けてくれそうです。 喫茶店を何軒も巡るうちにやがて夕暮れ時になりました。さて気分一転、そろそろ酒場時間に突入です。上田の町の規模から考えると不可解なほどに広くて、店舗も数多く、しかもほとんど現役らしいことにこの町の呑み屋街の底知れぬ面白さと危険さを感じたのです。そんな日中の散策の際にもっとも目を引かれたのが「かわしま」といういかにもぼくが好む今にも朽ち果てんばかりの木造家屋のお店です。外観ばかりでなく店内も開店当初からほとんど手が入っていないのではないでしょうか。オヤジさんは寡黙で、親密に話すのは容易ではなさそう、大体が古い造りのお店らしく厨房は店の奥にあり、調理する間は声を掛ける隙もありません。そんな訳で後から調べた情報ですが、こちらなんと昭和20年の創業という情報を見ました。ざっと70年近い歴史のある店なんですね、さすがに、開店当時の佇まいということはないのでしょうか。もうこれだけて十分満足出来るのですが、焼き鳥もうまい。上田の焼鳥はこの後にも見かけることになりますが、美味タレーウマタレと読むーというのを焼き上がった串に好みでかけて食べるのが流儀のようです。この後お独りだけお客さんが入ったーけして常連というわけでなく、最近訪れてハマってしまったらしいーのですが、その方などはお任せで当たり前のように10本を注文しました。その気持ち分からぬでもありません、それくらい美味かったのでした。こうした酒場には、地元の高齢の常連が付き物ですが全く入らないのが不安です。ぜひこの古い酒場を盛り立てる一助となればいいとこの報告を書いています。
2014/10/06
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かねてから純喫茶の宝庫として定評のある長野県の上田市に立ち寄るチャンスを探っていました。昨年の松本と長野を経由しての新潟行きの際にもその機会を模索しはしたのですが、日程や経路、そして予算などさまざまな要因が上田立ち寄りのチャンスをぼくから奪って行きます。勿論特に予算さえ譲歩すれば、上田は都心からもさほど遠くはないことは分かっています。はっきり言うと新幹線のために消して潤沢なわけでもない予算を費やすことは極力避けたかったのです。それはともかくとして、池袋発の朝早い高速バスに乗り込み、意気揚々と出発したのでした。バスからの眺めはあまり面白いものではなく、なのて割愛。昼時に上田駅前に到着です。今回もまたS氏が一緒です。 早速ホテルを確認しに駅そばの飲食店の立ち並ぶ小路を歩いていると、事前にチェックしてあった「喫茶 能登屋」が閉店しています。もぬけの殻になった様がガラス越しに見えていて、それがたまらなくうら寂しいのでした。急速に不安を感じたのでホテルも位置だけ確認すると、町に歩きだしたのでした。 今回の最大のお目当ての店をいきなり訪ねてしまうのはもったいない気もしますが、もし閉まっていたらという不安を振り払うため、そうてうかうかしている間に営業が終了してしまいやしないかという焦りもあり一目散に向かいました。「甲州屋喫茶室」は、ちゃんと営業していました。上田の市街地に伸びる目抜き通りの一等地、交差点の角地にあるお店です。店内は、格別に華美な装飾が施されているわけでもありませんが、今では再現することができなかろうというモダンで古風という矛盾したセンスに痺れます。過剰な飾り付けは強烈な印象のもたらすカタルシスを与えてくれますが、毎日だと食傷してしまいます。リラックスするための喫茶店で緊張ばかりしているのは、虚しくもあります。こうしたシックな喫茶店でくつろぐと、自分が上田の住民であるかのような錯覚に陥りそうになります。 S氏の摂食欲求を満たすと再び喫茶店巡りを再開します。高速バスの車窓から視界を通り過ぎ、やはり行きたいと思わずにいられなかった「coffee room Wataryo」に向います。外からは暗くいくらかの緊張漂うお店かと想像しましたが店内は至って明るく、調度などはピカピカで清掃も行き届いているためか、期待するほどの純喫茶度には及びませんでした。無論それが悪いというわけでは必ずしもなくて、広く開放感のあるところなど奥様方のサロンとしての役割などにうってつけに思われました。 上田の町外れにある「アド」は、建物は改装されていますが店内はかつての雰囲気そのままに留めています。お客さんはむしろ繁華街から外れていることが幸いしてか、そこそこの入りです。でも喫茶店の充実した上田の町では存在感が薄くなるのも致し方ないところでしょうか。すぐそばの観光地化された、どうでしょ情緒あるでしょと誇らしげにアピールする通りで、やはりそのムードを崩さぬよう営業するリノベーション喫茶に比べるとずっと愛着を覚えます。
2014/10/05
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上井草駅にははじめてやって来ました。西武新宿線は、わが家からは距離は近いのですが、乗り継ぎを考えると距離に比して運賃が馬鹿らしいほどに高く感じられるという理由であまり歩かずにいたのでした。そうとばかり言っていても運賃が安くなるわけでもないので休日の昼下がり、思い切って出かけることにしました。自宅を出てからふと思い立ち、改めて地図を眺めてみると自宅からも便のいい西武池袋線の石神井公園駅からでもせいぜい2km程のようです。憑き物が落ちたように新宿線への抵抗も消え失せました。というわけで向かうは上井草駅方面です。規模は小さいものの、味のある町並みが残されています。 駅のそばには「コーヒーとサンドイッチの店 カリーナ」がありました。ああ、ここ知ってる、お土産にサンドイッチを購入、脇にある喫茶コーナーに入ってみました。カウンターに6席だけの慎ましいお店ですが、コーヒーは休みなく訪れるサンドイッチを求める客たちの対応に追われながらも、キッチリとサイフォンで淹れてくれます。朝は5時50分からの営業と、出勤前に朝食にサンドイッチとコーヒー、ついでにランチをテイクアウトするなんてお客さんもいらっしゃるのでは。 そんな駅の真正面の地下に「いろり すずむら」があります。休日の夕暮れ前ののんびりとした一時に店を開けていてくれるとはありがたいことです。階段を降りて扉を開けると枯れた民芸調の店内です。開店したばかりの店が民芸調の造作である場合、その薄っぺらさばかりが目立つわざとらしい雰囲気に嫌悪を感じることも多いのですが、こちらのように使い込まれることによって角が落ちてくると途端に魅力的に感じられるのは不思議なことです。この時間帯には地元の野球チームの打ち上げなんかの現場に出くわすことがしばしばあるものですが、この日は30歳前後の学友の集まりのようで、やかましさは大差ありません。それでも彼らは奥の座敷、手前の離れた場所にあるカウンターまではそう声も響いてきません。大量のあら煮280円を啄みながら呑むとついつい酒が進みすぎてしまいます。満足してお勘定すると、やけに元気でマイペースな店のばあさんが電卓を叩くのですが、弾き出された数字と請求する金額が明らかに違ってます。んっ、おかしいんでないのという表情をしてみせると、目が悪くてごめんねだって、これは良くないね。
2014/10/04
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有楽町っていう町はちょくちょく出掛けるのに何だか呑むって気分にはなかなかならないのです。その気分お分かりいただける方も多いと思います。なぜって高架下などそれなりに味のある店もあるのですが、総じて値段が高いのが一点、その割には旨くもなく、量も少ない、うっかり呑みすぎると大衆酒場にあるまじき勘定書きを突きつけられかねないのです。しかもそんな店であっても客でびっしり埋まっていたりして、ここらの店をありがたがるのなら、10分歩いて新橋で呑めばいいのにと思ったりするものでした。ホントのところは有楽町の客が新橋に流れたらその隙に、ぼくが訪れようという魂胆なのでした。 そんなわけで有楽町嫌いをいつまてもお聞かせするのは心苦しいので早速この日伺ったお店のことを報告です。「泰明庵」は数寄屋橋の裏手、モダンな建築で知られる泰明小学校のすぐ最寄りにあります。屋号から推測できる通り蕎麦屋さんで、日頃のぼくの照準からはそれていますが、こちらは豊富な日本酒とそれに合わせた新鮮な魚介を中心とした酒肴の品揃えの充実ぶりがつとに知られた存在であり、蕎麦屋らしく昼間でもさほどの気兼ねなしに呑めるのが重宝です。とは言ってもその時は空腹が最高潮に達していたため呑みは後回し、先にビールと盛りにて腹ごしらえです。昼下がりと言うには遅い時間でしたがまだ店内はかなりの入りで、2階席に案内されます。ご婦人客が思いの外多いのも不思議な印象です。OLとサラリーマンのグループは当たり構わず助平かつ下品極まる会話に興じ、食事を終えてなお長々と逗留しており誠に目ざわりなのでした。
2014/10/04
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先日、どういう理由だったかはすっかり失念してしまいましたが、たまたま休みだったので、かつて通い詰めた新橋文化劇場ーどちらかと言えば新橋ロマンに頻繁に足を運んだのですがーが、閉館となると聞き、久しぶりに足を運んで、ジョン・カサヴェテスとピーター・フォークの共演が嬉しい幻の映画を楽しむとともにスクリーン脇の便所やらとの別れを惜しんだのです。しんみりした気分に陥っても腹は空くもの。くうふくをみたし、かつ気分を上げるために一杯やれる店はないものかと新橋を散策しようと歩き出すと、迷うまでもなくお誂え向きの店を見つけたのでした。 「なんどき屋」なる24時間営業のお店で、牛丼が主力商品のようです。なので牛丼とチューハイを注文します。でもそれ以外にも酒の肴が大変充実していて昼呑みにもバッチリです。カウンターの奥には4人掛けのテーブル席も2卓あってそこでは若い女性4名が、これが昼日中とは思えぬほどの大盛り上がり。大したものです。続いて入ってきた若いサラリーマン2名も当たり前のように酒と肴を注文していて、牛丼なぞ食べているぼくはまるで変人のようです。糸こんにゃくのたくさん入った具はチェーン店のものとはまったく別物の家庭の味を感じさせるツユダクなので、具材で酒をいただき、飯はツユだけでサラサラかき込めます。昼酒向けの一軒として記憶しておきます。
2014/10/03
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路線バスをある程度駆使できるようになったので、墨田区辺りの便の良くない場所でも下手に気合を入れずに出向くようになりました。以前だとわざわざここまで来たのだからと、正体を失ってなお呑み続けるの無謀に陥ることしばしだったわけですが、通いなれてみると東向島なんかもけして遠くないもんだと、余裕をもって呑めるようになったようです。この余裕はどこから来るかというと、東向島と通いなれた南千住が案外近いことが判明したからです。その気になれば15分も歩けば着いちゃうので、そう考えるとこれまで行き帰りの道中についてうだうだと悩んでいた自分が愚かに思われます。 そんなこんなでつい先達でも東向島を訪れたわけですが、この夜お邪魔したのは「丸福酒場」でした。先日書込いただいた数週間前にはじめて伺ったのでした。何がいいって店名に店の主人の心意気が感じられる点です。今時、あえて昭和風を演出するために酒場を標榜する店が増えていますが、その実体は酒場という硬派な響きが喚起させるイメージからは程遠い軟弱な従業員がヘラヘラチャラチャラする店が多くうんざりしていたのに対し、こちらは若いのに無駄口など叩くことなくプロの酒場のオヤジに徹しているのがとてもいい。客たちもそれを範としているのか無駄に雄叫び上げるような輩もおらず、大人にとって居心地良い店でした。先日も書いたとおり値段も安く、肴も気が利いていて近場にあればいいなあと、冒頭の発言とは矛盾したことを呟きたくなるのです。
2014/10/03
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あまり下車したくない、いや何度か降りたこともありますが再開発の進む愛想の欠片もない町という印象ばかりが先立ってしまう立川の町ですが、正直じっくりと散策するのはー実際は仕事絡みなので時間制限があったのですけどー、はじめてのような気がします。悪い印象が前提なのでこれ以上悪くなりようがないのは心強いことです。到着後すぐに用件を済ますまで、少し時間があります。すぐにちょっと良さそうな喫茶店が見つかったのでまず一軒、仕事を終えて呑み会が始まるまでもう一軒、喫茶店によることができたのはついていました。 最初は「コーヒー&パスタ ロビン」です。真鍮フレームに茶色の合皮クッションのスツールが整然かつズラリと並んでいて地味ではありますが結構好きなタイプの喫茶店でした。リラックスできる洋風食堂の趣でした。 次は、駅前のペデストリアンデッキの先、階段を降りた目の前のビルの地下に「珈琲 はなや」はあります。緑のテント看板が目には眩いものの一瞥しただけで古いお店であることは明らかです。店内もオールドファッションで落ち着けます。コーヒーはいい値段ですがこの雰囲気を求めてか、なかなかの入りです。再開発の波にも晒されず、頑張り抜いていることに頭が下がるのです。 呑み会までまだ間があるので酒場放浪記でも紹介されたらしき昭和20年開店という古いバーを訪ねてみることにしました。駅北側の都心よりの線路沿いはかろうじて昔からやっている古いお店が健在のようです。ところが探せど見つからず、観念して、どこかのなにがしかのお店の呼び込みのをする娘さんに聞くとビル飲食店まで案内してくれて、店名が列記されている看板を示してくれました。礼を述べて確かに「スタンドバー 潮」とあるのを確認、果たしていかなる地下飲食街かと胸踊らせて階段を降りると、そこはいきなりのチェーン店らしきお店の入り口となっています。他に階段を探しますが見当たりません。どうやら地下の飲食店街はそっくりと一軒のチェーン居酒屋に取って代わられてしまったようです。 時間も過ぎてしまったので会場である「大衆酒場 あま利」を目指します。ここも先の2店の最寄りであるため迷うまでもなく到着します。大衆酒場という触れ込みにもかかわらず、店はまったくそれらしき雰囲気はなくこざっぱりした和食店のようです。1階は塞がっていたため、地下に案内されます。地下は靴を脱いでの小上がり席となっています。なんか失敗したなあと思いますが、もう一軒、目星を付けておいた居酒屋が満席でとても入れそうにありませんので、仕様がありません。まあ金曜日ではこんなものでしょうか。8名のグループなのに予約もしなかったのは、急なこととはいえ、無鉄砲でした。酒は人数が人数なので焼酎をボトルで注文します。若者が酒も世話をすることになりますが、今時の多くの若輩はこうした作業をけして厭う訳ではありませんが、焼酎が多すぎたり少なすぎたり、何度かお替りを繰り返しても、加減を覚えられず叱責されたりしています。ぼくは無論自分で注ぎます。いつもお前ばかり濃い目に作るンだよなと嫌味の一つや二つはいつものこと。いろいろかったるいことではありますが、たまには賑やかに呑むのも悪くありません。 予定外に長居して皆いい具合に酔っ払ってしまいました。ぼくもご多分にもれぬわけですが、せっかく遠路はるばるやって来た立川でこのまま引き上げるのはもったいないというものです。初めお邪魔するつもりだった「玉河」を再び覗いてみました。いい時間だし、一人ということもありすんなり入ることができました。かなりのオオバコで活気に満ち満ちています。掻き分け掻き分けしてようやく店の奥のカウンターに辿り着いたのは、結構酔っ払っていたためでしょうか。正直ここで何を頂いたのやら記憶にないのですが背中越しに喧騒を感じながら独り酔い潰れるのも何だか愉快に思えるのでした。
2014/10/02
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すっかり探索尽くした感のある三河島ですが、あまり変化のなさそうなこの町にもわずかづつではありますが変わるところもあります。というか、その変化の様を見慣れてしまってごく当たり前のように受け止めていますが、駅の周辺には寂れた商店街があるばかりで小さな一軒家ばかりが目立つ駅の目の前に巨大マンションが建設中なのです。今となってはこの広大な敷地にかつて何があったのかを思い出しようもありません。さて、駅前の商店街をブラブラと新三河島駅方面に歩いていくと、ここは以前からありました、餃子を前面に押し出した中華料理店に入ってみることにしました。 店の名は「餃子の点点」とどこででも見掛けそうなもので、チェーン店だと思っていましたがどうやらそういうわけではなさそうです。この界隈は都内に上野を始め数カ所ある韓国人街をなしていて、韓国料理店や食材店、焼肉屋なんかも点在していますが、共通するのは装飾に無頓着な殺風景な店内の様子です。これは三河島に限らず、多くの韓国料理店で見られ、それが独特なムードをもたらすと同時に、その町ならではという個性を希薄にしているようです。そこが同じく地域性が希薄でありながらも得意な個性の発露の場でもある純喫茶との大きな違いでしょうか。ともあれこんな土地柄なのでこの中華料理店もそれに習い淡白な内装です。テーブル席が全てふさがっているのは30代前後のことごとく男性ばかりのグループー会社の繋がりばかりではない謎の集団ーが居たという事もあったのでしょうがいずれ人気店のようです。確かに餃子など安くてまずまず旨いし、案外安い酒場のないこの近辺では便利に使えそうです。強面の店主も従業員も中国の方のようですが感じは良かったです。 さらに進むと韓国食材店なども入る闇市から続いていると思われるマーケットがありますが、この脇にいつからこんな店ができていたのでしょうか。特に看板は見当たりませんが赤提灯に「もつ焼 臣家」とありました。細長く奥に深い造りでまさに酒場向きのお店です。カウンターの奥にはテーブル席だか小上がりがあるらしく店主のお子さんが遊んでいます。店はうるさくない程度に昭和テイストのグッズが飾られたりしていて、その控えめなところは好感が持てます。そんな訳で店主は若いのでさほど期待せずにもつ焼きを数串頼んで味だめしです。値段は一串120円〜だったと思います。思ったより早く焼き上がったそれは串に大振りの肉がしっかり刺されていて、臭みがまるでなくすこぶる旨いのでした。これはちょっとした驚きです。無性にもつ焼きが食べたくなった時、ここは手軽に立ち寄れる候補の一軒として覚えておくことにします。
2014/10/01
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