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菊川駅を後に,続いては西大島駅に向かいます。この時点ですでにすっかり吹雪と言ってもよいようなひどい状況になっていますが,S氏から自宅を出たとの連絡も入り覚悟を決めて次なる喫茶店を目指したのでした。大島と言えば名酒場「ゑびす」のことが真っ先に脳裏に浮かんできますが,まだ昼前のこの時間ではさすがにやってるはずもありません―「ゑびす」と言えば,親戚の方がやっているという四ツ木の「ゑびす」に先日久しぶりに伺ったところ(その日は満席で入れず),かつての店舗は跡形もなく,近所にできたビルの1階ですっかり様変わりして営業を始めていました―。というわけで駅のある新大橋通りの1本南側にある通り,ここには大島四丁目団地という立派な団地があって,その1階には幾棟にも亘って,商店が入っており,懐かしい団地商店街が現役で営業しています。そんな商店街の端っこに喫茶店があるのでした。 「純喫茶 ヤング」と記された看板がどこか安っぽくて、店先には自販機が置かれて雑然としており、また時代に逆行したたばこ売り場は昭和風情を漂わせています。これら通常であれば負の要素でしかないものが独特な情緒を漂わせるのは、本当に歴史を積み重ねてきた老舗にしか出せない味となっています。今、仮にこの店をそっくりそのままコピーすることを試みたとしても、写真で見る限りではかなりの精度で再現できるかもしれませんが、実際その現場にあっては明らかに何かが違って感じられることでしょう。凝った照明に照らし出される奥に深い店内は整然と家具が配置されており、壁面を覆う鏡が店全体を映し出すことでパースペクティブに狂いが生じてめまいがするほどです。コーヒーを飲んで興奮が収まってくるとやがてしっとりと落ち着いた空間に強い親密な気配を感じ始めます。こういう時、大げさではなく時の経過が緩みだすのを意識します。ただし現実の時間はしっかりと経過しており、ここでS氏から連絡が入ります。西大島に到着、待合せの店に入ったとのことです。店を出た数軒先にある鍵付の共同便所をお借りしてから、店内とは対照的に真っ白になった雪の舞い乱れる商店街を引き返すのでした。 西大島駅方面に引き返して向かったのは、「コーヒー店 JUN」です。外観は一見すると武骨で生硬な風情ですが、さにあらず、こちらもまた長い年季を留めた素晴らしいお店でした。「ヤング」がどちらかといえば男性的な硬派でいながらエロティックな表情を漂わせていたのとは対照的に、こちらは木の素材感がバンガローのような印象ながらもどこか女性的なキュートな可愛らしさが基調となっています。やはりこの性差の印象は客層にも表れるようで前者は男性客ばかり、後者は女性客に混じってS氏がいつもながらのぶっきら棒な表情でコーヒーをすすっているのを見るとそのアンバランスな様子に思わず苦笑してしまいます。怪訝な表情を浮かべるS氏をよそにこちらはしっかりと店内を見渡します。大きなRの窓が屋外からの雪明りをしっかり取り込んで明るく店内を照らし出し、店全体が輝いて見えます。ファブリックなど小物を上品かつ繊細に配置しているのもセンスの良さを感じさせます。 と、西大島のこの2軒の純喫茶、驚くばかりの魅力を湛えておりご近所に住んでいたら順繰りに通ってしまうんだろうなあ。他にもすでに店を畳んだらしいお店がありましたが、こちらも行ってみたかったなあ。 さて、S氏と合流した後、本当は大島駅に向けて雪道を歩き、この日の最初の昼食を兼ねた呑みとなったのですが、ここで順路を一部入れ替えて、大島駅の次に向かった瑞江駅の喫茶店に話を移します。 膝ほどまでに達した雪に難渋しつつも目当ての「炭火珈琲の店 壱番館 瑞江店」に辿り着くことができました。東大島駅から先は地上路線となるため無事に到達できるか気掛かりではありましたが、運行に若干の乱れはあるもののとりあえずは動いていました。さて、この喫茶店、入口のサッシ扉が真新しく、外見にはこぎれいなコーヒー専門店といった位の造りに見えますが、店内は正調本格派のシックな空間が広がっています。店の奥はL字に折れてさらに伸びておりかなりの収容力があります。いつもであれば近所の奥様方の集会場と化していることも想像されますが、駅前からやや外れにあり足元もかなりひどいことになってきたせいもあって、客はわれら2名だけでした。 さて、月曜日まで喫茶店の報告で引っ張ってしまいましたが、明日からはいよいよ居酒屋巡りを始動します。
2014/03/31
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住吉で呑んだ翌朝,目覚めると雪がしんしんと降りしきっています。ぼくのスケジュールが急に空きができたので,昨夜S氏と連絡を取って都営新宿線のぶらり散歩を決行することにしていたのでした。都営地下鉄の乗り放題切符を目一杯活用して,あまり利用することのない都営新宿線沿線を堪能しようというのが今回の目的といえば目的でしょうか。まさかこの日の積雪が気象観測記録でも稀有なものとなろうとは出発時には想像もしなかったのでした―ホントはちょっとやばいと思って,中止を申し出ようと思わなくもなかったのですが―。ぼくは気持ちや行動の切り替えが不得手なもので,多少の無理も押し通してしまうのでした。 さて,定期券の範囲内の巣鴨駅にて下車。本当なら都営地下鉄ワンデーパス500円がお買い得なのですが,これは季節が限定されています。やむを得ず700円の都営まるごときっぷを購入,これは都営地下鉄に加えて,都バスに都営荒川線,日暮里・舎人ライナーも1日乗り放題の切符ですが,今回は地下鉄利用がメインです。ここからは都営三田線に乗車してまずは浜町駅に向かうことにしました。途中神保町で都営新宿線に乗り換えます。浜町と言えば明治座,明治座以外はほとんど知らない町です。といってもまったく知らない町という訳ではなくて,通り過ぎる町というのが適当ななんだかあまり面白味のなさそうな町という印象があるばかりです。なにゆえ浜町で下車したか,まあ午前中ということもありますので,ご想像通りお目当ての喫茶店があるのでした。 ますます強まる雪にも負けず駅を出ます。向かったのは「ティールーム じゅん」です。土曜日の朝ということもあって,ただでさえ人通りもまばらなんでしょうが,この大雪が追い打ちをかけて工事現場の人たち以外はとんと人影を見掛けません。こんな日に商売しても客の入りはままならないだろうなと予想はしましたが,案の定,お休みです。もう1軒の「珈琲苑」もやはりお休み。浜町はイカンと早々に見切りをつけて次に向かったのは菊川駅です。 菊川駅は墨田区の駅ですが,ちょうど江東区との境目にあって東京の下町というイメージがありますが,実際のところはさほど下町情緒を感じられるわけではありません。まあ隈なく歩き回ったこともないので言い切るのはやや乱暴ですが,「Cafe カルダン」までのけっこうな距離を歩いただけではそれらしい風景には出逢えませんでした。さて,この「カルダン」というお店,ありがたいことに開いていました。外観は赤と白のコントラストが雪に映えて素敵ですが,店内はどちらかと言うとスナック寄りのお店で,あまり感興が湧くようなお店でもありませんが,ようやく入れたお店ということもあって,有難味はひとしおです。ようやく朝の1杯にありつけようやく人心地着いたのでした。ちなみに新大橋通りの駅からは南西方向にあって,ここは墨田区です。 次なる「coffee チロル」もちゃんと営業していました。店はどうやら建て替えをしているようで,懐古的な趣味の持ち主にとってさほど興趣をそそられる店ではありませんが,店の端々に上品で趣味のよい居心地良い空間にされているのには感心させられました。普段はめったに食べることのない朝食ですが,ホットドックの魅力に負けてついいただいてしまいました。こんな天候なのにお客さんも多く,常連に愛されるよいお店です。で,こちらは江東区のお店。 というわけで菊川はこれまで次は西大島に向かいます。例外的ですがこの流れで次回も喫茶店めぐりの報告とさせていただきます。
2014/03/30
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2月の大雪の前夜,職場の同僚A女史の自家用車に同乗させてもらえることになりました。彼女の自宅は墨田区,ということもあって,ちょっと足を伸ばして住吉に送ってもらえることになったのでした。住吉の町はこのところしばしば通っていて,「栃木屋」や「大衆酒場 高島屋」など渋い酒場がわんさとあって,さすが江東区です。というわけで特に目当てがなくてもきっと面白い酒場があるという確信めいたものを感じながらのお出かけです。 住利公園なる公園の裏手にある大きなマンションの1階に申し訳なさそうに身をちぢこめるようにちんまり収まっている食堂がありました。「さくら食堂」というお店です。それにしてもなんともはや狭いこと,しかもタクシードライバーらしきおっさんたちでびっしり。なんとか2席だけがあるカウンターに着くことができました。特段味のあるお店という訳ではなく,むしろマンション建築に際して,かつてあったであろう店舗を取り壊してこのビルのテナントとなったと思われ,風情もへったくれもないといったほうがいいかもしれません。それでもこうした食堂は店の佇まいに情緒を感じられればそれにこしたことはありませんが,タクシー運転手がメインの客や寡黙ながらも丁寧な対応の店主夫婦といった人が織りなす雰囲気でも十分満足できることをこの店で感じました。酒の肴も豊富であまり長々と腰を落ち着けるような系統の店ではありませんが,ひとときほどよい喧騒に包まれて酒を楽しむことができました。品書:サワー:300,酒1合:350,冷奴/枝豆:100,刺身三点:450,まぐろぶつ/ウインナ炒め:350,ニラ玉炒め:250 続いては,「大衆酒処 たなべ衛」にお邪魔しました。新しいお店のようですが,正統派の店構えで店主の心意気を示すかのようです。カウンター席に着き,一息つくとお隣のオヤジさんがしきりとこちらのほうを気にしだしました。酒と肴をとりあえず注文し終えたのを見計らってのようにこちらにお喋りを仕掛けてきます。まあぼくもヒマな身なのでお相手することにしました。けっこういい具合にできあがっていたようで,まったく手つかずの鳥の唐揚げをたべてよと差し向けてくれます。ぼくはこうした好意は積極的にお受けすることにしているので有り難く頂戴します。こんなにボリュームあるなんて思わなかったんだよね,見ただけでお腹いっぱいになっちゃったという言葉通り,確かに食べごたえ十分。さて,杯を重ねるごとにオヤジの声もボリュームアップ。オヤジにこの辺に渋い呑み屋はないかねと尋ねると,何を勘違いしたのか錦糸町のキャバレーやらスナックの情報を盛大に自慢し始めます。時折混ざり込む下ネタに店の主人は露骨に嫌な顔をしています。しかも携帯でそれらの店のおねえちゃんに電話して,出てみなと言われておねえちゃんとお喋りさせられたりして,おねえちゃんも何が何だかわからなかったみたい。フロアー係の可愛いお姉さんは気の毒そうな視線をぼくに向けてごめんなさいねといった表情を浮かべてくれますが,ぼくは案外楽しんでいますし,素敵なお姉さんともコミュニケーションをとれてうれしいんですけどね。オヤジが一杯御馳走するといって聞かないので,またまたありがたくも一杯だけねといただくことにしたのでした。お勘定の際お姉さんと店主には丁重にお詫びしていただけました。品書:ビール中:500,ホッピー:450(中:200),酎ハイ:380,酒大:700,串焼:13-~,えいひれ/ししゃも/メンチかつ:380,ハムカツ/ポテトフライ/もつ煮込/自家製厚揚:280
2014/03/29
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またもや池袋にやって来ました。この夜はご無沙汰振りにお気に入りのもつ焼屋さんに出向くつもりです。賑わいが度を越す池袋駅からサンシャイン通りまでの道を歩くのはうんざりなので,この夜は東池袋駅から歩くことにしました。それにしてもいつ来てもこの界隈は沈み込んでいて歩いていて心ときめかせてくれるような何ものかに出逢うということがありません。都内でも有数のくたびれ具合が魅力の豊島区役所も,新庁舎を建設中で東池袋駅はにわかの巨大ビルラッシュとなっています。サンシャインのみがにょっきりと巨大な墓石のようにそびえる孤立した様が池袋らしくて,雑司ケ谷霊園から眺めてもちょっとした感興を呼び起こしてくれたものですが,新宿東口と化していくのは愉快ではありません。 ともあれ,そのサンシャインから近い寂しい通りに「ぶくろ酒場」はあります。池袋駅からも東池袋駅からもわざわざ出向くにはちょっと遠く感じられる場所にあって,馴染みはそばの会社のサラリーマンたちのようです。ごく平凡ながら長いカウンターと広いテーブル席のスペースがあって,大衆居酒屋らしい体裁は十分すぎるほど整っています。店名の軽っぽさから今時ありがちなモダンなお店を想像していましたのでちょっと意外でした。恐らく居抜か代替わりがあったのでしょう。厨房には若い男性がおられ,もしかするとこの人が後を継いだのかもしれません。肴も酒もいずれも手ごろな値段で,ちょくちょくやって来る割にはこれといって馴染みになる店も少ない池袋では安心して利用できる良心的なお店に感じられます。ただちょうどいたグループが,お客さんが同じ会社の人たちで必要以上の騒ぎっぷりで辟易とさせられました。店が悪いのではなくて,あくまでも客たちのマナーの問題です。とはいえ,空いていて広い店なら騒ぎたくなるのも無理はないんですけどね。さて,あまりに騒々しいし,次なるお店では立派なもつ焼をいただかなくてはならないので手短に店を出ることにしました。 さて,そこからがちょっと遠いのです。東池袋駅は有楽町線の駅だけではなく,都営荒川線と接続しており,荒川線の沿線はかつては民家が線路に迫るように建っていたのですが,今では更地となって舗装され,すっかり味気なくなっています。そんな寂しい夜道を進み,鬼子母神電停を通過,雑司ケ谷電停の踏切前を右折すると商店街になっているのですが,店舗もまばらです。そんな寂れ果てた商店街を明治通りに向かって進むと「高松屋」があります。ネットの口コミなどを読むと評価は真っ二つに分かれて,どちらかと言えば排他的な店のスタイルを非難するようなコメントも見受けられますが,ぼくにとってはここはまさしく名店です。当たり前のようですがつくづく店の好き嫌いというのは人によってさまざまなのだなあと改めて思います。で,ここは何度か報告しているので今さらあれこれごちゃごちゃ書くことはありません。常連の顔触れは以前と違っているようにも感じられますが,それはこちらが思い出したようにしか通っていないからかもしれません。しかし,店の喧嘩ばかりする父子はまったく変わっておらず安心しました(こちらの二代目の兄さんは休日などに池袋の街中でばったりあったりするとにこやかに挨拶してくれるのでした)。酒(凍結酒もあり),焼酎割数種,瓶ビール(はじめて訪れてビールを頼むとサッポロ,キリン,アサヒどれにしますと問われます)のシンプルな酒類ももつ焼6種に一応裏メニューのアブラに厚揚,ピーマン,しいたけ,トマト位のやはりシンプルな肴もまるで変わりありません。これにお通しの塩豆が加わればあとはもう何もいらないのでした。タレも気になりますが,やはり塩にしておきます。こちらのニンニクを醤油に付け込んだ特製たれをしっかり付けて食べるのがここの流儀。ああ,こうして書いている間にもまた行きたくなってきました。今晩寄ることにしましょうか。
2014/03/28
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赤羽の居酒屋,それもOK横丁からも外れた裏通りの酒場で呑むと時折見掛けるのが清野とおるのまんが『東京都北区赤羽』です。東京都の外れ北区の最大の繁華街である赤羽を舞台に著者を模したらしき主人公が,赤羽の他の町とはまったく異なる特異な生態をもつ住民や個性的なお店を訪ね歩きびっくりするというエッセイ風のまんがで,一頃脚光を浴びていたようです。ぼくはたまたま訪ねたお店の一軒がこのまんがに取り上げたことがあるということで,やはりここには清野とおるの本がずらりと並んでいたのでした。せっかくなのでぱらぱらとページを繰るとこれがなかなか面白く読みふけったものでした。で,そこで紹介されていてちょっと気になる店があったので,出向くことにしました。随分と期間が空いてしまったのはそこではふぐが出されるというのです。しかも価格標記がないとあっては警戒せざるを得ません。たまたま臨時収入があったので出かけることにしたのでした。同行したのはいつも懐具合に余裕が見られるO氏でした。 やって来たのは「関西料理 和也」です。赤羽のアーケード商店街の裏手の通りは,かつて喫茶店だったらしき店が昼間からがんがん大音量でカラオケ音を響かせているような怪しげなスナックが点在しているのですが,そんなさらに奥の細道にひっそりと赤提灯が灯っています。その先には長く急峻な階段が伸びていて,これはさすがによっぽどのことがなければ入ってみようとは思わないはずです。そんな薄暗い階段を上がり,思い切って扉を開けるとそこは窮屈なくらいのこぢんまりした落ち着いた空間だったのでした。カウンター4,5席に小上りだけに見えますが,実は奥には思いがけず広い座敷があることを知ったのは便所をお借りした時です。小上りに掛けるとすぐにお通しが出されたので,ひとまずビールを注文します。何品か小鉢が届いたので,焼酎に切り替えたところボトルがお得よと瓶で出てきました。いやいやこれほどはいらないと女将さんに訴えるものの,大丈夫よと聞く耳なし。そうこうするうちにふぐ刺が出され,厨房ではオヤジさんがすでにふぐ鍋の準備をまもなく終えんとしています。なんたること,今さらに価格がわからぬ不安にさらされます。そんな揺れる心をそ知らぬふりで,清野とおるの話題を持ち出したところ,お二人乗りに乗って,ご機嫌に漫画家さんのエピソードやらNHKの取材の話やらをお聞かせくださいました。もとよりいい雰囲気の店だったので焼酎のボトルはあっという間に空になり,大満腹で店を出たのでした。 「和也」を出て,さらに危うさの増した町をふらついているとまたもや雑居ビルの2階に居酒屋らしきものを見掛けてしまいました。看板によると「越路」というお店のようです。こんな怪しげな店をハシゴしるのも一興であろうと迷うことなく店に吸い込まれてしまったのが過ちの始まりだとはふたりともこの時には思ってもいなかったのでした。その店は女将さん独りでやっていて,L字のカウンター10席ほどの小さなお店。お客さんもわれわれが入るとほぼいっぱいになりました。お隣の90歳にならんとする(ことを後で知った)ばあさんと若者2名がしきりにSとMについて激論を交わしています。そんな渦中にうっかり飛び込んだぼくはどうしてだかこのばあさんに気に入られてしまいます。この方,毎夜のようにこちらにやって来てはさして呑み食いすることもなくお喋りに興じているらしいのですが,ちゃきちゃき系の女将さんも慣れたもの,なんだか10代の若者が交わしそうな他愛ない喋りに加わってくれます。このお店でなにを食べたとかどれだけ呑んだとかは実はどうでもよくて,こうしたざっくばらんな呑みを楽しみたいなら悪くなさそうです。ところで先ほどのばあさん,テナントビルのオーナーらしくて,その1階の店がとてもいい,女のコも可愛いとしきりに誘いを掛けてくるものだからついホイホイとご一緒する羽目になったのでした。この後,O氏とぼくの身に試練が降りかかるのですが,それはここではお話しする気に慣れませんので割愛させていただきます。
2014/03/27
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酒呑みの嗅覚をもってしてもどうにも手に負えないのが都営荒川線の向原電停界隈です。何度訪れてもこれといった酒場どころか、チェーン店の居酒屋すらままならぬということではいくら嗅覚にちょっとだけ自負があったとしてもいたしかたないのかもしれません。というわけでどうしてそんな場所に行ったのだと言われてもなんとも答えようがなく、JRの大塚駅で下車してぶらぶらしているうちに寒さにまいって立ち寄った中華料理店がたまたま向原にあったということなのでした。 「中華料理 千葉家」はかつての豊島区立中央図書館に初めて行った頃にはとっくに営業していたので、創業後随分な歳月を経ていることは間違いなさそうです。交差点の角地で老朽化した店舗があるもんだとはかねてから当然知っていたのですが、なかなかお邪魔する機会もなく今に至っておりました。ここ数年、酒場巡りの余波から古い食堂やら中華料理店を居酒屋遣いすることに抵抗がなくなってきたことで、町を歩きながら目に留まる機会や素養も育まれたようです。昔から古書店や古道具屋、おもちゃ屋などを眺めるのが好きでしたが、最近はパン屋やそば屋、寿司屋なども含めてどうも食い気ばかりに気がとられるのはよくない傾向です。と話が脱線しましたが、この「千葉家」も豊島区では古い中華料理店の一軒です。特に池袋を中心に古い店舗が町から姿を消して行くのはさびしいものです。この場合多くはチェーン系の中華料理店なんかに様変わりするのですが、大塚の場合は、中国人などが経営する本場の味わいの中華料理店にとってかわられることが多いようで、これはチェーン系よりはいくらかマシとは言えますがやはり残念なことです。で,肝心の「千葉家」について一向に触れられていませんが,広々とした店内は心地よく,家族経営の店の方も親切,お客さんも3世代の家族連れがいてとても楽しげと古くてもなかなか気持ちのいいお店なのでした。 さて,続いては面倒なので「東池袋小町食堂」と,いかにも今時のチェーン系食堂風のお店にお邪魔してみました。近頃地名に食堂をくっ付けた系列店はそこかしこで見掛けますが,こちらは「小町食堂」となっているのだけが違いという感じ。帰りにもらったポイントカードを眺めると新川,御徒町,幡ヶ谷,錦糸町,大森,西新宿とそれこそ都内各地に店舗を構えているようです。入口でお盆を手にしてショーケースに並ぶ好みの惣菜をピックアップ,温めた方がいいものはチンしてもらうというお馴染みのシステム。幼少時に関西方面で暮らした頃は一膳飯屋がそこいらにあって,ここで食事をするのが楽しくて仕方なかったものですが,今でもその当時の性癖には変わりはなさそうです。ちょこちょこっと好みの惣菜を肴に呑むのは楽しいものです。居酒屋のような大皿ではなく独りでもちょうどよいサイズが出されるのも重宝です。ここではちょっと古くなった揚げ物を玉子でとじて出してくれるのがお得なメニューとして用意されていて,卵とじには目がないものとしてはついつい手が伸びてしまいます。まあこういう店ですから他のお客さんとの交流など期待すべくもありませんし,サラリーマンが夕食までのつなぎに食事するのを眺めながらの呑みは多少の優越感はあるものの物寂しくはあります。
2014/03/26
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先日、府中に在住の職場の同僚M氏が珍しく自動車で出勤しました。このM氏、これまでも何度か登場しているかもしれませんが、総重量130Kgほどもある巨漢であります。いつもは職場の最寄駅からその巨体に鞭打って自転車を疾駆させ、一年を通して変わることのない夥しいまでの汗を滴らせた恐ろしいほどの形相で姿を見せるのですが、この日は若干汗ばむ程度の爽やかさでありました。目にした瞬間、府中まで同乗させてもらうことを決めたのでした。普段なら唐突な申し出を嫌がるのですがなぜかこの日は快く了承してくれました。というわけで余計な話をしてしまいましたが、この夜はちょっと遠出して府中に向かったのでした。せっかく府中に行くのであれば、府中近郊のどの駅からも遠いという古い酒場の前で降ろしてもらうことにしました。 「吉田類の酒場放浪記」でも紹介された「仲よし」です。東京農工大学という東京こそ冠されるもののローカル度の極めて高めの大学キャンパスのそばにあるという郊外のそれまた外れという場所に立地するためもあって、はるばる2時間かけてやってきたものの辺りは車通りがある以外はうらさびしいばかりです。通りを進むと程なく酒場に行き着きました。一体ここから府中駅まではどれほどの距離があるのだろうかと不安を感じつつも来てしまった以上はぐずぐず悩んでも仕方ない、暖簾をくぐります。店内は木の柵で2つのスペースに分けられたようになっています。とは言っても座敷のほうは明かりが消されており、ここが使われるほどには客の入りがないのでしょう。というか後でこそ娘さんだかお孫さんが手伝いに来ましたが、すでに8時をとっくに回ったこの時間はまだばあちゃんが独りで取り仕切っています。農工大の学生さんらしき男女混合グループも店の雰囲気を壊さぬよう気遣ってか、大声も出さず静かに呑んでいるのはけっこうなことです。後はいかにも常連風の爺さんがいるだけ。場末の地の薄暗くひっそりと静まり返って呑む酒はどういうわけだか格別うまく感じられます。お勧めのじゃがいも入り煮込みに続いてはやはりじゃがいもがたんと入ったホワイトシチューなんともいも尽くしでありますが、これがうまい。後ろ髪を惹かれますが、そうそうくつろいではいられません。またいつかこの腰の曲がったばあさんと再会できる機会はあるのだろうかと、やや悲観的な気分のまま店を後にします。 実はこの夜はもう一人極度の躁鬱を患う若者Kくんも一緒だったのでした。同じ自動車に同乗していたにもかかわらず、あまりにも時間が掛かったことがストレスになったのかほとんど無言のままにここまで来たのでした。「仲よし」を出てようやく発した言葉が帰り方が分からないから府中本町駅まで連れて行ってもらいたいとのことでした。キレそうになっているのが手に取るようにわかったので、あと数軒ハシゴしたい気持ちを抑えてやむを得ず府中本町駅に直行することにしました。府中駅に向けてひたすら東へ東へと歩きます。やがて府中刑務所を通過しますが、いつもならじっくりと観察するところですが、足早に通過、ようやく京王線の高架が見えてきました。ところで久しぶりの府中と書きましたが、実は2カ月ほど前にも来ていたのでした。その際、駅東口と伊勢丹の間にある猥雑な繁華街が徐々に店をたたんでいるのを寂しく思ったばかりですが、その撤去・解体工事は驚くべき速さで進行していて、周囲は養生されてもはや立ち入ることもできなくなってしまっていました。遠くない将来にそうなるであろうことは予想せざるをえませんでしたが、まだなんとか間に合うと思ったのが誤りでした。 軽く打ちひしがれたままJR武蔵野線と南武線の接続駅、府中本町駅に隣接するラウンド1そばまでK氏を見送って、すぐさま駅に向かう緩くカーブする道沿いにある「もつ焼 きりや」にお邪魔しました。けっこう大きなバラック風のあばら家の数軒酒場が軒を連ねているその一軒です。せいぜい3畳ほどの窮屈なスペースにはコの字のカウンターのみ10席ほど。ガタイのいい女性客が独り呑んでいますが、店の女店主と言葉を交わすということもなく店は静寂に包まれています。ぼくも酒と軽い肴を一品注文するとお通しを出されるときにどうぞの一言があったきり沈黙が店を支配します。府中競馬場の利用客も多そうな立地なので騒がしいことも覚悟していたのですが、競馬客が多いときにはこの酒場も女主人も今回とはまったく異なる表情を示すのでしょうか。背の高いカウンターの配膳台の先にある女主人の表情はまったく窺われることもなく、この雰囲気は面影をまるで留めぬ府中駅前を目にしたぼくにとっては、感傷気分を盛り上げるのに御誂え向きのように思えたのでした。
2014/03/25
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長々と続いた八千代台・勝田台の飲み/呑み歩きの報告はすでに終えたものの、その翌日、大神宮下駅のそばにぜひとも訪れたい酒場があったのでその店のことを報告しておきます。さんざん呑んで八千代台にて宿泊、翌朝はなんとか二日酔いになることもなく出張先に向かい、暮れなずむ頃にようやく仕事を終えて慌てて大神宮下駅に向かったのでした。この日は冷え込みがきつく、さすがにくたびれていたので早々に帰宅するべきなのでしょうが、ネットで見掛けたとある酒場の誘惑はそれに勝ったのでした。 そのお店は「さゆり」。京成船橋駅のお隣の大神宮下駅にて下車、改札を出たら南に向かい千葉街道を船橋方面にしばし進み、船橋橋を渡り、ひたすら千葉港目指します。深々と冷え込む暗い夜道を歩きながら我ながら呆れてしまいそうになりもしますが、やがて「クラブ さゆり」と書かれた看板らしきものを見つけた瞬間、歓喜に包まれるのでした。先客はお二人、もうすぐ店を閉めるところだったようです。そういうわけで写真など取ってる余裕もなく早々に焼鳥を注文して、できることなら熱燗をもらいたいところですが、事前情報で生ビールとウーロンハイしかないことを確認していたので、寒いけれど生ビールをもらいました。それにしてもここは居酒屋と言っていいのでしょうか、扱っているのは焼鳥と飲み物だけ、しかも酒屋で買った酒を持ち込んでもいいとのこと。しかも広い駐車場のような民家のはじっこの小屋がお店なのでした。このお店を紹介するHP(http://myfuna.net/reg/press/navi/2012/08/12153016.html)では客たちは好き勝手に庭先のテーブルや椅子に散らばっていますが、客も引けて寒さも深まる時間帯にあっては、先客2名に倣ってぼくも焼場の前で呑むのでした。そうしてごく短い時間ではあるもののここで過ごした時間はやはり酒場の時間そのものなのでした。でもこの店はあくまでもご近所に勤める方や住んでる人たちのための社交場であって、よそ者が足を踏み込むのは控えめにしたほうがいいのだろうなあと少し後悔もしたのでした。 さて、いくらなんでも呑み足りないので大神宮前の周辺を散策してみました。何軒か居酒屋がありますが選択肢はあまりないようです。しからばとお邪魔することにしたのは「さゆり」に向かう際に通過してそのこぢんまりした佇まいが気に掛かっていた「さん亭」です。店舗そのものは新しそうですが、道路に面していてガラス越しに店内も覗けていて、こんな店であればやばいこともなさそうに思われます。ああ、この雰囲気は居酒屋というよりはラーメン屋さんのようです。もとは本当にラーメン屋だったのかもしれません。カウンター8席ほどの外見通りの狭い居酒屋はもし自分がこの駅の利用者だったなら帰宅時には覗いて帰らないわけにはいかない気がします。この時は意識していませんでしたが、思い返すとつい餃子を注文していたのはこの店の雰囲気にラーメン店の面影を無意識に想起していたからかもしれません。ごくごくありふれた肴ばかりですが、こうしたものが帰りがけに一杯引っ掛けるにはちょうどよいのです。先客2名もお店の方たちもご夫婦のようでありながら、どうも会話を聞いている限りそう単純な組み合わせではなさそうです。客の女性が酔っ払って(?)腕を骨折したとかで不自由だねえとかなんとか相槌をこちらに求めてこられたので、ぼくもとっておきの頭骨神経麻痺のことを披露したらえらく感心(!)してくれて、しばし楽しく歓談とあいなったのでした。
2014/03/24
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埼玉の久喜市はその存在は知ってはいて、かつて1度くらいは下車したこともあったかもしれませんがまったく町の印象がないので出かけてみることにしました。知っていることといえば、塩味のつぶし小豆を餅でくるんだ塩あんびんというのがあることや、提灯祭りが知られているという程度のもの。朝目覚めていい天気だったので突如思い立って出かけることにしたので、慌てて調べたのは何軒かの喫茶店の情報だけ。手元に地図もないのでおおよその位置を頭に叩き込んでとりあえず向かうことにしたのでした。 到着したJRの久喜駅で西口側から散策をスタートすることにしたのでした。ともあれはるばる―といっても都心から50Km圏の町なのでぜんぜん通勤圏内ですね―やって来たので、ひとまず喫茶店を目指すことにします。駅前には大きな商業ビルが建っていますがわざわざ久喜まで来てここに立ち寄ることもなさそうです。駅前通りの裏手になんだか良さそうな商店街があります。この商店街を進んですぐの建物の2階に目星を付けておいた喫茶店があります。 階段の先を見上げると木扉の正統派の雰囲気でぐっと気分が上がります。「珀欧亭」という店名にも格調があります。店内も期待に違わぬ王道の造りとなっており、店の奥はソファとなっていて、窓側には瀟洒なテーブルとチェアという組み合わせです。いきなりまったりとくつろいでしまうとこの先歩き回るのが嫌になってしまいそうなので、窓側を選択。寡黙な典型的な喫茶店のマスターが醸し出すいくらか緊張感を孕みながらも穏やかに静けさが感じられる店内で気分のよいひとときを送らせてもらえました。ランチにはちょっと早めの時間でしたが、大学入学を決めたらしい下宿先を探しに来たと思しき父子が控えめに下見した物件について語り合っています。その会話をかたずを呑んで聞き耳立てている2人組大学生風もいて、もうすぐ春が来るんだなあとうれしく思うのでした。 さて、この通りがメインストリートのようなので、お楽しみは後にとっておくことにしました。駅前通りを歩くとなかなか歴史を感じさせる寺社があり、今でこそ町に人の姿はまばらになっていますがかつては賑わったのでしょう。JAの産直野菜を扱う施設で散歩中に見掛けたこんにゃく屋さんのこんにゃくなんかを買い求めます。こうしたおいしくて安い野菜や惣菜を扱う店を覗くのもこうした郊外への散歩の愉しみです。 ここで早くも一休み駅前通りに置き看板の出されていた「珈琲 パウエル」へと向かいます。飲食店の長屋の一軒がこの喫茶店。どうやらジャズ喫茶のようです。ジャズ系の喫茶店は正直あまり得意ではありません。内装が淡白であまり面白みがないことが多いのがその理由の第一ですが、くつろぎの場であるはずの喫茶店においてジャズ喫茶というカテゴリーの店はどうしても緊張感を強いられている気になってしまうのでした。それでも立ち寄ることにしたのは久喜に次来る機会は当分先のことになるであろうと思ったから。店内は案の定と言っては失礼ですが、シンプルなものでした。ご主人はいかにもジャズ好きな風貌のクールな感じの方でした。その奥さんは和装できっちり決めています。さて、このお店の特筆すべき点は出されるコーヒーの驚くべき味わいにあります。喫茶店においてもぼくはそのコーヒーの味について、とやかく言えるほどに違いが分かる男ではありませんが、こちらのコーヒーはこれまでに味わった中でも最高峰に思われました。銀座8丁目の「カフェ・ド・ランブル」や山谷の「バッハ」、そして先般お邪魔したばかりの足利の「Cafe de FURUKAWA」に勝るとも劣らぬその味には心底満足しました。
2014/03/23
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昨今の押上はスカイツリーばかりがもてはやされていますが,その足元には昔と変わらぬ古びた町並みや建物も残っています。そんな中でもかねてから注目していたオンボロ店舗が魅力的な2軒にお邪魔することができました。 まずは暖簾分けで都内各地の多くの店舗を構える「ときわ食堂」にお伺いしました。数ある「ときわ食堂」の中でもとりわけ老舗感というよりオンボロっぽさが際立っているお店です。店に入ると想像以上に昔ながらの大衆酒場の風情が横溢しています。壁にある鏡には雷門,花川戸の「ときわ食堂」からの贈呈されたもののようです。老夫婦がやっているお店で仲睦まじいやり取りが気分を和ませてくれます。野菜炒めとお酒を注文しました。が,レンジでチンしたお燗酒を届けてくれると椅子に腰かけてなにやら笑顔を浮かべて物言いたげにじっとこちらを見つめています。どうやら注文が聞き入れられていなかったようです。山芋の千切をサービスしてくれたんで箸休めには事欠きませんけど。せっかくなので突然食べたくなった玉子焼きを注文します。驚くほどの速さでぱぱっと届けられた玉子焼きは適当に溶いて焼いただけなのにどうしてだかとてもおいしかったのでした。ついお酒を追加してしまうのでした。追加のお酒を運んで来てくれたとき,どうしたきっかけで思い出したのかそういえば野菜炒め頼まれたんでしたねとおっしゃったのでした。 放射状に道が分岐する三角地の頂点にある古い店舗がどことなく安倍夜郎のユニークな漫画『深夜食堂』を思わせなくもない「家庭料理 さわ」にお邪魔しました。店に入るとお客さんがいないばかりでなく,店の方もおられないようです。大きな声で何度か呼びかけると表情一つ変えずにおばあさんが出てきました。話を伺うと店の構えは古いものの店を始めてからまだ19年とのことです。テレビや雑誌の取材があったのよとのこと。2階に住みこんでいるのかと尋ねたところ,毎日小村井から通って来てるのよ,ですって。で,ひったくりに会っちゃったのよ,それからは毎晩タクシーで帰ってるのよ。近頃めっきりお酒が弱くなってねえ,以前はこのくらいの時間(18時30分)から呑み始めてたんだけど近頃は家に帰るちょっと前から2杯位,焼酎の水割りを呑んだら一杯とのことでした。肴の種類は少ないのですが,お通しは小松菜のおひたしなんかの簡単ではありますが,心のこもった手料理で,お願いしたソーセージ炒めは量もたっぷり,いかにもビタミン不足に思われたのか野菜もたくさん添えてくれたのでした。
2014/03/22
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いよいよ八千代台のハシゴも佳境に入りました。北口から南口に移動します。線路沿いに船橋方面にずんずんと進みます。今晩宿泊するホテルを横目にさらに進むとぽつぽつと居酒屋から明かりが漏れています。どうもスナックっぽいなあという店は候補から外しながら慎重に店を選びます。その結果,最終候補に残ったのはごくありふれたやきとり店です。八千代台で最後に入る店としてはかなり穏当な店を選んだものと今となっては忸怩たる思いを禁じ得ないわけですが,もはや過ぎ去ったこと,致し方ありません。 さて,最後の店と割り切ってお邪魔したので,一気に疲労が出たのか,それとも単に酔っ払って当たり前なのか定かではありませんが,記憶がぼんやりとしています。店の名は「花金」とあり,これがカウンターだけのお店とはいえ,かろうじて1席が空くほどの盛況ぶり。迷惑そうな視線を感じながらもこれほどまでの繁盛ぶりの理由を見届けようと狭い店の奥に空く空席を壁に這うようにして向かうのでした。それにしても店の方もそうですが,お客さんも女性が多いのが特徴です。焼きを担当の若い主人とも楽しそうに語られていて,どこかしらバーに近いムードです。そのお喋りがいささか度を越しているように感じられ,店の人と客との一線を越えて,あまりにも節度を欠いているように感じられました。もとより1回行っただけでその酒場の本当の魅力がすべて分かるはずもなく,仮に自分がこの常連さんの立場であれば,楽しいというのも分からぬでもないのですがひどく残念な気分になったことは確かです。常連さんにも一見にも等しく気持ちよく酔える酒場というのはなかなか稀有なものなのでしょうね。これだけこぼしていながら今さら申し開きするようで恐縮ですが,酒も肴もよかったように記憶します。 ちょっと気分が棘棘しくなってしまったので,もう1軒だけ寄り道することにします。ホテル周辺を巡回しますが,ちょっと危なげなお店があるばかり,渦巻の範囲が広がって駅前通りを越えてしまいます。いつまでもこうしてはおられないので,観念して目に留まった「我楽食堂」なる居酒屋に入ることにしました。都内で近頃増殖している安価なチェーン系の食堂と思って店に入ったら,全然違ってチェーン系の居酒屋のようなお店です。各テーブルがきっちりとパーテーションで区切られたプライバシー重視の空間になっています。といっても広い店内客はぼく独りだけ。これはなんともさびしくて虚しいです。土曜の夜というのにこうガラガラとはなんともはや。店の心配はどうでもいいのですが,自分の気持ちが虚ろになっていくので不安を覚え始めてしまいます。あまり長く独り留まると精神衛生上よろしくなかろうと判断し,不自然に思われない程度に呑んでから店を出ました。この夜たまたま入りが悪かったものと考えたいものです。 と八千代台ではここぞという酒場に巡り合えぬままホテルにすごすごと引き返すことになったのでした。勝田台にはまだ多くの良店がありそうですし,八千代台にもきっと自分無期の酒場があるものと信じていつかまた再訪したいものです。
2014/03/21
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まだまだ魅力尽きせぬ勝田台ではありますが,八千代台でも呑んでみたいですし,なにより翌日は朝が早いのでそろそろホテルの近くに移動しておいた方がよさそうです。八千代台駅に到着するとすぐにホテルにチェックイン。さほど訳ありとも思われぬ若干設備の古臭いホテルの一室にて一憩します。このまままったりとくつろいでしまっては腰が据わってしまうので,気力を振り絞って町に繰り出しのでした。 南口側はホテルから近いのでまずは北口側に行ってみることにしました。ぽつぽつと居酒屋らしき灯りは見えますが,呑み屋街が形成されてはいなさそうです。うら寂しい様子に惹かれて「鳥せん」にお邪魔してみることにしました。店に入ると天井の高い広いお店で案外小奇麗です。拍子抜けしてしまいましたが,とりあえずはカウンターに着きます。先客は2名だけ,ご夫婦のようです。店の方もご夫婦のようで感じがいいというよりは調子のいい感じの方達でした。みなさん親しいようで楽しげにお喋りをされていますが,こちらはどうも居心地が悪いのでした。時折ご主人が声を掛けてきてくれるのも親切だとは分かっていても煩わしく思えてしまいます。どうもこのお店とは相性があまりよくないようです。焼鳥数本をつまんで(味についてはノーコメント),チューハイ2杯で早めに店を出たのでした。 さらに北口側を歩き回りますが,やはりこれといったお店が見当たらないので南口に移動しようと駅の階段に向かったところ線路沿いの長屋風の建物の一軒が「居酒屋 咲」というお店でした。ちょっと雰囲気のあるお店なので早速入ってみることにします。狭い店内ですが,効率よく大小さまざまなテーブルが置かれているところは,どこか最近あまり見かけなくなった都市部の駅前食堂のような感じです。先客1名,女性店主と2名でのんびりと会話を交わしています。とりあえずカウンターに腰掛け,短冊の品書きを見るとチャンジャやチヂミなどの韓国系の肴が豊富です。女将さんは韓国の方なんでしょうかね。当然キープされた焼酎の銘柄は真露なのでした。お通しは純和風の煮奴でしたか。豆腐とさつま揚げがあっさりと煮付けられています。先客のオヤジさんは独りでは多すぎるほどの肴を並べて女将さん相手にとめどもなくお喋りを続けています。女将さんが肴の準備を始めるとお喋り相手としてぼくを見定めたらしくしきりと話し掛けてきます。まあこちらとしても暇を持て余している身ですから,どうでもいいようなことを受け答えしているうちになんだか妙に元気になってしまって,いても経ってもいられなくなり南口の酒場探索へと向かったのでした。
2014/03/20
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ぼくにとってかつて池袋東口と言えば映画館の町を意味しました。今は亡き人生横丁がそう呼ばれるようになった人生坐こそ知らぬ世代ですが,文芸坐をはじめ池袋日勝文化やACT SEIGEIシアターなどには随分と世話になり,人生のある時点における2割程度の時間はここで過ごしたと言っても大袈裟ではないかもしれません。とある事情―もったいぶるほどのものではありませんが―から映画を見ることを自らに禁じて久しくなりますが,文芸坐は新文芸坐としてかろうじて持堪えているものの他館はその痕跡すら留めていません。ぼくはこの風俗店が密集する界隈にほとんど魅力を感じなくなっているのでした。それでも時折,何らかの変化があるのを期待して訪れてみるのです。 ひとしきり周辺を歩いてみますが,さほどの変化はなさそうです。さっさと呑みたくてうずうずしてきたので,スタートは「立ち飲み 小島」にしました。随分ご無沙汰してしまいましたが,それでも数年振りなので,新文芸坐に最後に訪れたよりも後のことになります。黄色い大きな看板は以前とまるで変わりません。タイ料理を出す立飲み店で,そこそこの広さがあってどうということもありませんが,ホッとできる空間です。先客は3名,いずれも肴なしに酒だけ呑んでいます。きっとここに立ち寄るのが日課になっているんでしょう。それほどまでにリラックスして,店の恐らくタイ出身の方とも親しいご様子です。久しぶりなので注文や支払いのスタイルを周囲を素早く観察します。立呑みの定番のキャッシュオンでした。 文芸坐がまだまだ元気だったころから,池袋でずっと変わらず営業している数少ないお店のひとつが「北海から来た男 池袋本店」です。この界隈では老舗であった「長嶋球場 いか太郎」もいつの間にやら店を畳んでしまった今となっては貴重なお店です。であるにも関わらず,なんたることか「北海から来た男」にお邪魔したのは実はこれが初めて。新大塚にも支店らしきお店があることは前々から知っていましたけど,なかなか足を運べなかったのは店名のいかめしさにうまく乗れなかったからです。この夜もたまたま通りがかった際に店先の品書きに思ったより安いハイボールの記載があることに気付かねばまたもや通り過ぎるのみとなっていたはずです。いかにも炉端焼き屋さんらしい北国の古民家風の造りはあまりわざとらしさを感じず思いがけずもいい感じです。カチンコチンの氷下魚を木槌でゴチンゴチンとしばき倒しているのを見ると,ついつい手が伸びます。しゃぶりしゃぶりしながらハイボールをやるのはなかなかオツです。ところでこちらのお店,独りで呑むにはちょっと辛い。場所柄もあるのでしょうか,妙齢の男女ペアが客席の大部分を占め,独り身はなんだか虚しさを感じるのでした。
2014/03/19
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いつもは常磐線各駅停車の駅から徒歩で向かう北綾瀬駅ですが,この日は横着してはじめて東京メトロ千代田線の支線に揺られてやって来ました。どん詰まりの終端駅であればもっと場末な印象があってしかるべきですが,残念ながら東京23区に限定しても最北端は日暮里・舎人ライナーの見沼親水公園駅がずっと北に位置しており,足立区のほぼ真ん中の場所にあるのですから場末感が希薄でもしょうがありません。しかも駅前は足立区の中央を横切る環七通りに面していて風情が湧きようもありません。環七を渡ると綾瀬警察署があります。警察署をはじめ役所のある場所には居酒屋や喫茶店はつきもののはずですが,ここはその原則から外れるようです。いっそのこと気に入っている「又兵衛」か「丸福」にでも行ってみる気にもなったのですが,せっかく電車で来たのに歩き回るのではもったいないということでなんとか酒を呑めそうな中華料理店に入ることにしたのでした。 そのお店は「中華 めんくい」です。改札を出て右方向に50歩程度の至近にあるのは確かに便利です。とは言ってもお店はまるで個性の感じられないお店であまり面白味はありません。駅前というのに空いている,というか空っぽなのにはちょっと不安も感じます。もとは大きなお店だったようですが,数年前に改築して規模も縮小されたようです。どうりできれいなわけです。それにしても昔は近隣には何もなかったでしょうから,きっと大いに繁盛したのでしょう。そうして想像を膨らませていると注文した餃子を待つ間もさほど退屈はせずに済みました。そうこうするうちに仕事帰りのご婦人や学生風の青年などが入ってこられ,たまたま客が切れたタイミングだったのかと思い直す余裕も出ます。さて,届けられた餃子は見るからに大粒でしかも焼き加減が絶妙,思わず熱いことを顧みず齧り付くとこれがなかなかのおいしさなのでした。これ位の量と味があればきっと警察署の人たちが宿直前なんか食べにやって来るんだろうなと自分以外が警官だらけの様子を思い浮かべてしまうのでした。 流れに乗って次も駅近のお店,でも2軒目はなんとしても居酒屋に入りたい。でお邪魔したのは駅とくっついた施設の2階にある「うまいもの処 ほまれ」にお邪魔しました。以前はなんか別の居酒屋だったような,調べてみるとつい最近までは「やるき茶屋」だったようです。多少は内装をいじっているようですが,基本的にはグループ客向けにパーテーションで区切られた造りとなっています。こちらも誰一人としてお客さんが入っていないですね。場所柄,警察署の人たちなどこの町で働く少数の人たちを除くと,都心に勤務する住民が仕事帰りによる程度なんだろうなと思うことにしたものの,先日訪れた「又兵衛」はもっと早い時間なのに入りがよかったことを考えるとどうもこのチェーン店の雰囲気をそのままに個人経営的なサービスを提供せんとするこのお店は苦戦しているようです。実際,独り虚しく呑んでいる間も客はなく,従業員たちも所在無げにこちらの注文が入るのをいまかいまかと待ち構えているように感じられます。どうにもいたたまれなくなり,これはたっぷりと盛り付けられた野菜不足対策用のサラダを急ぎ摂取して店を去ることにしたのでした。
2014/03/18
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さて「角一」を存分に堪能したので,八千代台に移動しようかと駅に向かったところ,「菊富士 2号店」を見掛けてしまったのでした。これが本店とは違ってまさに好みのスタイルのお店です。勝田台に来る機会もそうはないので立ち寄らせてもらうことにしました。ところが,大いに繁盛していてすぐには入れそうにありません。しばらく時間を潰さねばなりません。 とまさにそういう時間潰しにお誂えの立飲み店を見つけました。「立ち呑み 豚-TON-」というお店のようです。ガラス越しに見える店内は木製のカウンターを含めていずこもピカピカです。最近開店したばかりのようで若い男性店主と女性のお二人で始められたようです。お客さんは一人もおらず,さっと呑んで帰るには若干のプレッシャーを覚悟せねばなりません。店名にあるようにもつ焼をメインにしたお店ですが,あくまでちょい呑みのつもりなので,酢モツを注文。味付けが数種類あって,さっぱりと梅風味のものをもらってみました。格別味わい深いわけでもありませんが,東京近郊ではあまり見掛けないものでメニュー開発に工夫を感じます。まあ単に店主が酢モツの本場という福岡辺りのご出身というだけかもしれません。ぼんやり外を行き交う通行人を眺めていると,通り掛かる人たちもこちらをちらりと人によってはじっくりと眺めていって開店したばかりでやはり物珍しいようです。そんな風の多くが眺めては立ち去る中で独りのご老体が入店してきました。これをきっかけにこちらはお勘定を済ませます。 さて,目当ての「菊富士 2号店」の様子はどうでしょうか。こちらも全面ガラス張りの構えで店内はよく見通せます。どうやら空席もあるようです。本店がテーブル席がメインでいくらか高級路線(といってもあくまで2号店との比較によります)なのに対して,こちらは複雑に入り組んだカウンターのみのお店で,お通しもありません。独りのみなら断然2号店が重宝です。カウンターの中を行き来する店員さんたちはおばちゃんばかり,本店ではいかにも料理人といった男性とアルバイトらしき20歳そこそこの女のコばかりなのとは対照的です。これはどちらがよいかは一概には決めかねるところですが,大衆的な雰囲気は圧倒的に勝っています。カウンターには大皿がずらりと並び,指さすとすぐに盛り付けてくれる手軽さも魅力的。そんな気楽さもあってか,店のおばちゃんたちのちょっかいを出すオヤジなんかもいたりしますが,おばちゃんたちもわきまえたもので適当にあしらっています。このオヤジ,しつこく粘ったものの相手にされていないことを悟ると思い腰を上げて勘定をするのですが,その金額がなんと5,000円近いのでした。一体この庶民価格の店でどれだけ呑み食いしたんでしょう。個人的には2号店を押しますが,本店ともに用途によって使い分けできるさすがの人気店なのでした。こうなると俄然,同じチェーンの韓国居酒屋も気になるところですが,八千代台も気になるので後ろ髪を惹かれつつ京成線に乗り込んだのでした。
2014/03/17
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これ以上ぶらついていてもあまり収穫がなさそうなので,この夜宿泊予定のビジネスホテルの場所を確認しておくことにしました。駅前のアーケード商店街の通りはけっこう健全な印象ですが,ホテルのある裏手に入ると唐突に怪しげな雰囲気となります。これといった目立つ目印があるわけではありませんが,スナックなどがちらほらあって,裏風俗店もまじっていそうです。そんな怪しげな場所にホテルは立地しており,その近くには喫茶店もありました。 「軽食喫茶 ちわき」というお店。なんだかちょっとよさそうな雰囲気です。ただし外見には渋い喫茶店でもこの場所にあることからスナック風な店であることも覚悟しておくにしくはありません。当たりか外れか,腹をくくって扉を開けることにします。スナックっぽさはあまり感じられませんが,さほど純喫茶らしい装飾も施されておらずちょっと肩透かしです。先客に水商売風のおばちゃま2名がいて,こちらの女主人と陽気に会話されています。このおばちゃんたちは夜になるとこの近辺の夜のお店に生息してるんだろうな,くわばらくわばら。やがておばちゃんたちが帰っていくと打って変わって静寂に包まれます。薄暗いカフェ風の店にいつまでもいることに気詰まりを感じたので,そろそろ勝田台に移動することにしました。 多くのJRの駅に当てはまることでことさらに勝田台駅が特殊だとかいう訳ではありませんが,勝田台駅の北口と南口ではまったく異なった印象を受けます。まず下車したのは北口側,そしてこちらは閑散としたさびしい風景が広がっています。車通りも少ない駅前を歩くとそのロータリーの端の方に喫茶店がありました。 まさに駅前喫茶という好立地にある「Coffee shop サボイア」です。ボーダー柄のテント庇の下には正統派の喫茶店らしいウッディなファサードが施されています。店の正面から視野を広げると無骨なコンクリート建築とその対比にギャップが愉快です。立地がいいからといっても人通りもまばらなため,店内には先客は1名のみで女性店主と水商売の話題で盛り上がるのは「ちわき」と同様です。店内も山小屋風のオーソドックスな内装となっており,奇を衒ったところはないのですが,十分に普段使いの喫茶店として使いやすい店のように感じられました。ところで,ぼちぼち夕闇も迫って来たので南口を散策した後に飲酒タイムとします。 ところで,勝田台で見掛けたその他の喫茶店。いずれも休みもしくはカラオケが鳴り響いていた(ほとんどこっち)のでパスしました。
2014/03/16
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古い酒場が好きで,いくら良心的なお店であったとしても開店したばかりの酒場はどうしても心の底からの満足を感じることはありません。そんな己の趣向は十分わかっているはずなのに,見慣れた町を見渡す視線の一点に既知の風景とは異なる部分を知覚し,それが酒場(喫茶店などの場合もある)であることを認識してしまうといてもたってもいられなくなります。これがさほど自分の生活に縁のない場所での出来事であったなら,当然ながら視界に入る多くは差別化されることもなく,特段気にも留めぬ風景の一部として通り過ぎていくだけのはずです。馴染みのある土地ほどちょっとした変化を認知しやすいのは当然ですが,それだけではなく,他の町だと視線から逃れていくはずの酒場であっても,日常生活を活性化する違和感として強く意識に浮上してくるのでした。 そんなわけで馴染みの地である田端をぶらぶらと何事かを求めてぶらぶら歩いていると,何やら男女2名が飲食店というよりは図書館とかの公共施設のような立派な建物のエントランスで張り紙をしています。以前は「レストラン アレックス」というお店だったような。お隣にはカラオケ屋さんがありますね。店内は居酒屋さんというよりは庶民的なレストランという感じ。そのためか,奥で団体が飲み会をしている一方で,単身赴任風のおじさんや豊かそうなアジア系留学生などもいて,彼らは飲酒はせず定食らしきものを食べています。お通しにまぐろの山掛けとはなんとも贅沢な。チューハイはオープン記念とやらで半額,大変お安くまったりとした時を過ごすことができました。ところで,この施設,かなり大きいのでその正体を帰ってから確かめたところ「家具完備、食事付サービス利用可能なフルサポート賃貸マンション」とのこと。なるほど食事付の余技として住民以外も利用可能な飲食店を併設したんでしょうね。あっ,お店の名前は「たま膳」というそうです。 続いて向かったのは庶民的な風情の大衆割烹風のお店「新川」です。店先では数種類の惣菜が販売されており,仕事帰りのサラリーマンや近所の主婦が買い求めています。気さくで元気のよい女将さんが出迎えてくれました。生ビールのサーバが中途で終わってしまい泡だらけになってしまった1杯目はサービスしてくれました。随分久しぶりに訪れたので当然女将さんに覚えられてはいません。なんていうことのないお店ではありますが,手入れも行き届き清潔感が保たれ気持ちの良い空間となっています。はじめ4名連れのグループ客がいただけですが,しばらくすると2階で宴会があるようでてんでばらばらにやって来る客たちもおり,この界隈では小宴会用の店として重宝されているようです。こういう店では確かに座敷で鍋でもつつくというのが渋い呑み方かもしれません。
2014/03/14
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久しぶりの茗荷谷で呑むことにしました。茗荷谷はかつて半年間ほど,毎日のように行き来していました。当時の印象はこれといった面白い酒場がまるでない土地だなあというもので,それもこれもお茶の水女子大学や跡見学園といった酒場のある風景とはそぐうはずもないような,女性ばかりの町であるという思い込みもあったのでしょう。女子大とは言ってもその管理・運営には多くの男たちが関与していることには思いを馳せることはなかったのです。先日,大塚駅から有楽町線の護国寺駅に向けて歩いたのですが,存外近い印象があって,それであれば茗荷谷駅までだってそれほどの距離ではなかろうと判断し,大塚駅に到着するや早々に茗荷谷駅に向けて歩き出したのでした。これといった商店や飲食店もまばらな春日通りをとにかくまっすぐに進むばかりです。それでも20分ほどで茗荷谷駅に到着します。池袋駅で丸ノ内線に乗り換えるより,きっと早くてしかも交通費も節約できて一石二鳥,いや運動になるので三鳥とそれだけのことで気分が明るくなっていたのでした。 ところが,最初に入ったのは酒場とはかなり異質なお店でした。「どんぶり太郎 茗荷谷店」です。かつては(そして今でも看板にはそう標記されていますが)「牛丼太郎」として都内各所(Wikipediaでは中村橋店,高田馬場店,新宿店,高円寺店,中延店,神保町店,大久保店,中野店,蓮沼店,野方店,西新宿店があったようです)に店舗を拡大していましたが,破産後の店舗を減らし,現在では代々木店と茗荷谷店が「どんぶり太郎」と改名して営業を続けています。代々木店は何度か入るべきか入らざるべきかと煩悶の末,結局これが初めての入店となります。店のガラス越しに券売機を眺めたところ,発泡酒のボタンが目に飛び込んできたので,ついフラッと店に入っていたのでした。代々木店は立ち食いだったように記憶しますが,ここは広いカウンターにずらりと椅子が並んでいます。ひさびさの牛皿を肴にビールもどきを呑みます。大量の紅ショウガを散らして食べる牛皿は「吉野屋」のケチ臭い量とは違って,これだけでも満足のボリュームでした。しかしちょっと惜しいのは味付けが濃すぎること,ここでは紅ショウガは控えめにしてつまむのが適当でした。 春日通りを渡り次なる酒場を物色します。ここには都内指折りの和菓子の名店「一幸庵」があって,以前はちょくちょく買い求めたものですが,近頃めっきり和菓子から遠ざかっていることもありますが,和菓子を脳裏に浮かべると喉の渇きがさらに増してきました。「タンタ・ローバ」というイタリア料理店も気に入ってたまの贅沢で通っていましたが,今はどうしているのでしょうか。などなど先を急ぎつつも界隈の思い出を辿っていると,「和来路」というお店にぶつかりました。うっかり失念していましたが「吉田類の酒場放浪記」に搭乗していたようです。かつてはガレージのような安普請の店舗だったらしいことをネット情報で知りましたが,今ではすっかり改装されて端然たる構えの立派な居酒屋となっています。とは言ってもこの店の主人は居酒屋というものをよく知っているようで,酒場好きの意に沿うような店内となっています。座席のヴァラエティーやカウンターに並ぶ肴の数々には目を奪われます。店の方も目配りのよく利いているらしき主人に加え,他の若いスタッフたちも客とは一定の距離を置いてはいながらも明るく楽しそうに応対されているのが好印象。客は女の町らしく女性が多く,男性客の数を上回っているのが目立ちました。さらに客層は大学関係の方が多いようで,お喋りの内容は詳細は省かせていただくもののかなり際どい話題が交わされていました。こんな至近の店でそんな話題で盛り上がるというものどうかなと思いながらも楽しく聞かせていただきました。
2014/03/13
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お馴染みの綾瀬にやって来ました。すっかり「串のこたに」の安さをお気に召した上司T氏と他の部署ながらこの上司の一番のお気に入りの若者Iくんを伴っての綾瀬入りなのでした。Iくんは気のいいお調子者でぼくも嫌いではないのですが,もともと若い男は好きではないので仕事以外での付き合いをしたいというほどの間柄ではありません(とはいえ彼は以前ぼくの手下であった頃があり何度か呑みに行ってはいます)。その彼は最近結婚したばかり。なんもお祝をしていなかったので,急遽T氏が御馳走することになったのでした。ぼくは表向きのお祝を気持ちだけで示すつもりです。ところで綾瀬を選択したのにはちょっとした理由があって,彼の新居はここ綾瀬なのでした。なにしろ急なことだったので,まだ新婚さんでお嫁さんからの縛りがきつい彼はあまり遅くなれないのでした。 そういうわけで早速「串のこたに」に向かいます。ぼくはあまり気乗りがしませんでしたが,まあ大丈夫であろうと高を括っています。なんせここは夕方6時を回ったら待たずに入ることはできないでしょうから。まあ案の定の結果となり,Iくんがかねてから行きたがっていた(じゃあ行けばいいじゃないと散々言っている)「大松」に向かいますが,ここもやはり満席。路頭に迷いうろうろしているとうちは安いよとの呼び込みの人の誘いに乗せられ,そのお店に入ることになったのでした。「博多屋台串 山笠」のおっちゃんの誘いでしたが,誘うだけ誘っておいて,その後姿を目にすることはありませんでした。手前がコンパクトサイズのコの字カウンター,奥にはテーブル席がずらりと並んでいます。客の入りもまずまずよさそう。独りでカウンターも悪くない雰囲気です。値段は全般にお手頃ですが,綾瀬ならこの価格帯でなければ勝負にならないだけという考えもあります。肴は値段相応で店の売りになるはずの博多屋台串も盛合せを3名で持て余してしまうほどでした。店の造りや店員さんの応対などいくつかの好ましい要素をもっているにも関わらず多くの客にとって肝心のポイントとなるはずの肴がイマイチなのは残念です。 しっかり呑んで2人は帰途に着きましたが,まだまだ帰るわけにはいきません。といってもしたたか呑んでしまったので,行き先はお決まりの「駅前酒場」です。何軒もの良店がある綾瀬ですが,やはり一軒を選ぶということになるとここになってしまうようです。エンガワなどのちょっと気の利いた肴をドライな酎ハイで流し込みながら,ぼんやりと周囲の善男善女のうれしそうな表情を眺めているとああ,酒場はやはり独りがいいなあとしみじみ感じずにはおられないのでした。
2014/03/12
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日暮里駅東口駅前のロータリーを越えた小規模な呑み屋街と言えば「いづみや」,「豊田屋」ばかりがもてはやされているという印象で,実際これといって足繁く通える酒場が少ないのも事実です。さて今晩はどこで呑もうかしら,S氏と彷徨うのですが,いつもと変わらぬ酒場があるばかりです。かくなるうえは支店を変えて以前からその古寂びた見栄えが魅力を抱いていた中華料理店を目指したのでした。 「栄楽」がその店。典型的な中華料理店の店構えですが,何が中華料理店と特徴づけているのか,恐らくオレンジ色のテントの庇を見ると瞬時に判別してしまうように幼いころから刷り込みされてきているのでしょう。早速入ってみることにします。店の中もまたいかにも古くからやっている中華らしい風情に満たされています。特筆すべきは乱雑に散らかっていることの多い中華店としては例外的と言ってもいいくらいにこざっぱりとしていて,極力余計なものを排除した様子にちょっと感動します。また,暖色系の暖かな照明に癒されます。料理は特別個性が際立つような味ではなく,ごくごくオーソドックスでありながらもとにかくおいしい。特にテイクアウトできる特製ラー油は具沢山で,これでもかという位にたくさんいただいてしまいました。お客さんは少ないもののとぎれることはなく,長く愛されてきたのがしみじみ感じられます。店主と奥さんの暖かい人柄にもほんわかとした気分にさせてもらいました。 さて,次はお向かいにある「酔の助」にお邪魔します。前回ここを訪れたのはいつのことだったか,もう随分前のことだったように記憶します。神保町に本店があって,そちらもどこか懐かしい雰囲気のお店なのできっと系列のお店なのでしょうが,今ではその繋がりも薄くなっているような気がします。かつては水道橋にも店舗がありましたが今では閉店してしまったようです。「酔の助」の各店舗,これといって際立った特色のある居酒屋という訳ではありません。けれども時に訪れたくなるような吸引力があります。思うにそれはこの店が醸す独特の空間―かつては独特ではなくむしろ普遍的であったかもしれない―,それがぼくにとっての居酒屋という場所の原風景に近いものであるからに違いありません。広めのテーブルを相席で知らぬ者同士で囲むというのは,カウンターとはまた趣を異にした楽しさがあるものです。厚揚げ焼や鯖の塩焼きといったどうでもないごく当たり前の居酒屋らしい定番の肴がうれしい。チェーン店であってもこういった古臭いタイプの居酒屋であればたまには通ってもいいかなと再確認したのでした。
2014/03/11
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喫茶篇では,まだ八千代台にてうろうろとしていますが,酒場篇は一足飛びに夕方まで時間を進めることにします。閑散とした勝田台駅北口に対し,南口は駅前に勝田台プライムやらリブレといったショッピング施設や大型の駅前団地が立ち並んでいます。団地の1階は商店が入居しており,ユニークな町並みとなっています。恐らくは昭和43年にこの駅ができて以降,人口が拡大し形成されたのでしょう。こうした大きな施設の裏手はごちゃごちゃとした呑み屋街となっています。西側は一般住宅と飲食店が一緒くたになってなんとも混沌とした様相を呈しています。まだ4時を過ぎたばかりだというのにすでに店の何軒かは営業を開始しています。店をやめてそのまま住居にしたり,放置されているものも多く見受けられます。喫茶店もありますが,そのほとんどはカラオケを提供しているようで,店からは枯れた歌声が響き渡り,この町ができた際に移り住んだ住民が高齢化していることが想像されます。一方東側はスーパーやレンタルビデオ店などもあって,細々とは再整備されつつあるようですが,古くからやっている喫茶店の状況は西口とほぼ同様です。呑み屋街は大きな建物にテナントで入っていたり,ある程度整備されているようですが,多くが老朽化しているように見受けられました。そんな東側の呑み屋でいくらかましに見えて開店している店もあったので入ってみることにします。 「菊富士 本店」です。この界隈を散策した際,2号店と菊富士チェーンと書かれた韓国居酒屋を見掛けました。勝田台を代表する居酒屋の本店のようなので,まずはこの店を皮切りに勝田台を呑み歩くことにしました。外観は大型の大衆食堂のような枯れた味のある構えで期待はいやがうえにも高まります。ところが店内は改装されたように新しく,古ぼけた風情を味わえるのは便所だけにとどまりました。4,5卓ほどしかない狭いカウンターに腰を下ろし,焼酎ハイボールをオーダーすると,氷抜にしますかとの問い掛け。むろん氷抜でお願いします。それにしても氷抜ができるなんて思ってもいなかったので,まず一驚。あなうれしや氷抜きの焼酎ハイボールは梅エキスの入った下町チューハイでありました。さすがに京成線の沿線だと今さらながら納得するのでした。開店間もないせいか,こちらが口開け,お通しの立派なアンキモはすぐに出されたもののカレイの煮付けはしばらく待たせられました。その間,予約の電話が頻繁にかかってきて店の方はその対応に追われています。テーブル席や小上りも多くグループ向けの店舗のようでした。 ちなみにこちらが「菊富士チェーン」の韓国居酒屋です。 続いては,今回の勝田台行きを決定づけたお店に向かうことにします。先ほど通過した際は開店準備で店の方たちはてんやわんやのご様子でしたが,開店しているでしょうか。向かった先は「角一」というもつ焼店。木造モルタルの店舗の1階は掘立小屋のような枯れた店舗となっていて,焼物を焼く香ばしい煙が早くも漂い漏れていました。慌てて店に駆け込むと先客はまだ2名だけ。ほっと一安心です。老夫婦がやっている店だと思い込んでいましたが,実際は若い男性2名と女性1名が主力で,お一方高齢の女性がいますが黒板に本日のお勧めを記入しています。カウンター10席程度にテーブル席と小上りとまあ客席の配置はごく平凡で,テーブル席と小上りは味気ありませんが,壁や天井に土間,カウンターや丸椅子などは店の歴史を物語るかのように黒ずんで煤けています。加えてお通しのマカロニサラダのチューハイに合うことといったら,こういうお通しなら大歓迎です。もつ焼も京成線の酒場であるという意気を感じさせてくれる絶品でした。この酒場は雰囲気・味ともに酒場愛好家であればぜひ1度は訪れていただきたい(地元の人にしか)知られざる名店でありました。ところで,お店には開店時に謹呈されたらしき大きな鏡があって,贈呈者の銘が記されていました。阿佐谷「もつ焼 長谷」という記載だったのですが,調べてみても今ではなさそうです。ご存知の方がいらっしゃればお聞かせください。
2014/03/10
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先日,千葉に出張しました。翌朝は早い時間に出張先に向かわねばならず,そばに宿泊する必要がありました。最寄は船橋なのですが,船橋には何度も行っており新鮮味に欠けるのでこの夜は八千代台に宿泊することにしました。八千代台といっても千葉方面の方でないとピンとこない地名だと思います。津田沼駅のちょっと東側に位置する京成電鉄の停車する町です。本当はそのさらに東にある勝田台駅に宿泊したかったのですが,適当な宿がなく渋々八千代台に宿泊することにしました。ちなみにこの夜に予約した八千代台の駅そばのビジネスホテルはこの周辺では破格に安い部屋があって,最上階の訳あり部屋であるとのこと。まあ大抵の訳あり程度であれば,十分呑んでおけばなんら支障はないであろうとの計算です。 勝田台駅周辺には,お前の好きそうな酒場が多そうだぞという地元出身者からの事前情報を得ていたものの,まだ酒場の開店には早い時間だったので,ひとまず八千代台駅にて下車。何軒かの喫茶店に立ち寄っていくことにします。 八千代台駅は駅前コンコースもあって思ったよりは遊べそうな町並みのように見えます。駅前のショッピングビルを抜けて,アーケード商店街を進みながらなかなか商店も多くて楽しい町ではないかと思ったのもつかの間,突如商店は途切れてしまいありふれた住宅街となってしまいます。そんな商店街の切れ目に「COFFEE FUJI(フジ) 八千代台店」があります。店のある2階の階段を進むと特別感はないものの,山小屋風で本格的な落ち着いた佇まいのお店であることがわかります。50名程は入れそうな収容力があり,食事メニューも豊富,近隣の主婦連の溜り場になるのも無理もないところです。それにしてもこうしたおばちゃんたちのかしましさと言ったら,遠慮という言葉を知らないのでしょうか。しかもこの後,もう1軒の喫茶店に寄った後に,通りから窓を見上げると飽きることなくまだ居座り続けていたのでした。まあお店型にしてみれば,こうしたとんでもない長居をする客もぼくのような一見客よりずっと大事な存在なのでしょうね。その証拠に,ホットコーヒーは多くのファミレス同様にお替り自由なのでした。 商店街を抜けると目当ての喫茶店のある場所は巨大なマンションの建設現場となっているようです。その先は住宅街のようですが,時間もたっぷりあるので,もう少し歩いてみることにしました。建設現場を抜けると道を挟んだ向こう側に「ダッチコーヒーの店 喫茶 点」というのがありました。ここは事前の調査では引っ掛からなかったお店です。出逢ってしまった以上はお邪魔せずにはおられません。古い木造の一軒家で場末のパン屋さんのような素っ気ない構えのお店でした。遠目ではおよそ喫茶店には見えないのですが,近付くにつれお馴染みのキャラバンコーヒーの看板が視界に広がってきました。ガラスのサッシ戸の1枚にはステンドグラス風のフィルムが貼り付けられているのがかろうじて喫茶店らしさを漂わせています。店の中は絞られた照明の中,カウンターがメインで黒系統の調度で誂えられており,どうしてもスナックっぽさを感じてしまいます。さきほどとは一転して他にお客さんがおらず,静まり返っています。若干気詰まりを感じたため手短に店を出ることにしました。うるさけりゃうるさいで煩わしいし,静かすぎると落ち着かないなんて,まあ勝手なもんです。ところで帰宅後,「CAFE ふくろう」なるカフェでもダッチコーヒーを出しているようです。この界隈ではダッチコーヒーが人気なんでしょうか。 ここはもう廃業されたんでしょうか。
2014/03/09
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最近どうしたものか混沌とした呑み屋街よりも静寂に包まれて呑むのが心地よく感じられるのでした。少し疲れてるのかもしれません。そういったわけで静寂さが町を包む根津にやって来ました。根津の町は夜になると閑静というより寂寂たる空気に浸されていて,それが孤独さに拍車を掛けてくれるのでした。 根津といってもどこもかしこも静かなわけではないので,注意深く店を選ぶ必要があります。駅の裏手の通りにある呑み屋街を徘徊し,目指す酒場を物色します。いくつかの候補となる店を見つけたもののこれぞという決定的なお店はありません。とはいえいつまでも町をぶらぶらしているほどには時間的余裕があるわけでもないので,とりあえず目に付いた「定食 かめや」に入ってみることにしました。まあどうってこともないごくありふれた大衆食堂です。4人掛けのテーブル席のほか,向かい合わせに長椅子の置かれた細長いテーブル席もあります。こちら創業が昭和34年とけっこうな老舗店なのだそうです。お客さんもおらず独りっきりなのは望みどおりですが,店のちょっときつそうな女将さんに背後に立たれているとちょっと気詰まりになります。呑みの肴も一通り揃っていて便利です。値段が安い分,量はちょっぴりでいささか物足りない気もしますが逆に言えば独り呑みサイズの盛りでちょうど使い勝手がいいかもしれません。品書:ビール中:420,割水芋焼酎:400,ハムエッグ/たらこ:300,シュウマイ:280 そこへO氏から連絡あり。孤独を楽しむよう装っていましたが,実は2人で呑みに行く予定があったのでした。向かったのは不忍通り沿いにある「酒の店 灘屋」です。マンション風の建物1階にあるお店で,看板には季節料理とありちょっと敷居の高さを感じさせますが,ガラスの引き戸が大衆酒場らしい感じもあって以前から気になっていたのでした。店内はカウンターにテーブル席,小上りとごくごく標準的な造りです。スツールの座面がわずかに反っているのがお尻にフィットしそうで,腰掛けてみたくなります。さて,それなりに広い客席ですが,独りの客もおらず,根津の辺りの夜はなかなか商売が厳しいようです。雑音がまるでないため,必然的にわれわれも心なしか声を潜めて会話することになります。この店いつ頃からやってるんだろうなとコソリと交わした言葉もしっかり女将さんに伝わっていました。で,けっこうな歴史のある居酒屋さんらしいのですが,高齢の女将さんの口からは戦後からよの一言が告げられただけだったのでした。
2014/03/08
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つい先だって,池袋のかつての三業地のとば口でハシゴしましたが,今回はその中心となった通りの真っただ中―とは言っても今では寂れた人気の少ない商店街としか見えない通りとなっています―で呑むことにしました。この界隈にはかつて数年ほど暮らしたことがあり,当時足繁く通った酒場に10年振り位で訪れてみることにしました。 そのお店は「酒楽」と言います。かつて三業地の検番が置かれた場所からもすぐそばの場所です。かつての自宅からはもっとも近距離にある酒場の一軒なので,さんざん呑んだ挙句であっても自宅に近いという安心感から度々お邪魔したしたものです。とは言っても,店のご夫婦と親密な付き合いとなることもなく,何度通っても淡々とした対応であったのも酔っ払いにとってはむしろ気楽に感じられたのでしょう。当時お二人は60歳前後だったはずですが,今でも健在なのでしょうか。劇場通りから山手通りに抜ける道路拡張工事ですっかり付近の様子は様変わりしている中で,かつてとほぼ変わらぬ佇まいでいてくれるというのは驚くべきことなのかもしれません。店内もこの10年まるで何事もなかったのようにかつてのままの様子を留めていました。以前どおり猫もうろうろしていましたが,さすがにこの猫は代替わりしたんでしょうね。さらに驚くべきは店主夫婦のあまりの変わらなさです。10年という歳月などまるでなかったかのような,停滞感にこの場で長居することは危険であろうとの意識さえ芽生えました。そんなこともあって,ここでは2,3杯さっと呑むと逃げるようにして店を飛び出したのでした。 なぜかぐったりとくたびれたので,三業通りから早々に離脱し,池袋駅に向けて最短距離と思われるルートを歩きました。この辺りはかなり道が入り組んでいて,うっかり知らぬ道を歩くと思いがけないところに出てしまったり,まったく見知らぬ道を通ってしまうということがあります。この夜も近道を探りつつ進んでいくといつしかまったく見慣れぬところを歩いていて,引き返すきっかけも見いだせぬままやがて暗い通りにこれまた見覚えのない居酒屋を見掛けたのでした。これも何かの縁だと,先ほどまでの不安などどこへやらすっと引き込まれるように店に入ってしまったのでした。「ゆうさん」というお店でした。ゆうさんというから石原裕次郎とは似ても似つかないまでも,てっきり無口な男性店主のお店かと思ったのですが,どこかほのぼのとした女性店主が独りでやっているお店でした。カウンター6席ほど,奥には小さなテーブルがあるばかりの狭いお店でした。カウンターに先客4名,ちょうど1席が空いていました。一見の客にも驚く風もなく,飲物を伝えるとすぐにおしぼりとお通しが出されました。独りの客もいなかった先ほどとは違い,こちらは大層賑やかです。つい先ほどまでいた常連の方と4名の一人がささいなことで大口論となったようで,ひとしきりそんな愚痴を言い合うと,話題の中心はめったに訪れない一見客に振り向けられ,しばし虚実織り交ぜて会話に加わったのでした。いつの間にやら5杯ほども呑んでしまったので,お勘定して店を出たのでした。帰路を急ぎならなんとなくもうこのお店に辿り着けることはないのだろうなという予感に捉われたのでした。
2014/03/07
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大山のここ数年の酒場の充実ぶりには驚かされるものがあります。数年前まではほとんどなかった都内各地の優良店が店舗拡大のターゲットとして大山に狙いを定め続々と新規オープンしているのでした。商店街で知られる大山ですが,こちらの方の新陳代謝はいまひとつですが,酒場に関しては活性化しているようです。 まずは,やきとん屋の「ひなた 大山店」にお邪魔します。上板橋の本店を振り出しに,続いて大山店が開店,都営三田線の志村坂上駅のそばにも店舗展開しています,この「ひなた」ももともとは野方の「秋元屋」からの独立した店主のお店であり,さらにさかのぼれば「秋元屋」の店主は蕨の「喜よし」を出発点としており,都内のもつやき酒場のメインストリームとなりつつあります。しかも各店主がしのぎを削って,兄弟店・姉妹店との差別化にも力を入れていて,画一的などこに行ってもそれぞれに特徴があるというのはうれしいことです。ともあれ,やはりここは大変な人気があってあっさり入れることとは思いもせずにダメもとのつもりで向かったわけですが,なんとも運の良いことにすんなりとテーブル席に案内されたのでした。といっても空いているわけではまったくなくて最後の空テーブルにようやく潜り込めたというほどの混雑ぶりです。前回はこのお店の特色であるビストロ風の肴をメインにいただきましたので,今度はオーソドックスにモツ煮込みとやきとんに絞った注文としました。やはりうまいなあ,これじゃ繁盛してちょっと窮屈な思いをしても文句言えませんね。 続いては,さほど年季を感じられない飲食ビルの1階にある「関西風串かつやきとり たぬき 大山店」に伺いました。店内も外観同様ににこざっぱりと明るいお店です。カウンターには独り呑み客も数名いますし,テーブル席もほぼ満席。こちらも人気店のようです。席に着いて巨大ジョッキのサワーを注文します。お通しはつみれです。旬の山菜天ぷらをいただいてみることにします。のんびり呑みつつ,箸に手を伸ばすと箸袋に他店のことが記載されています。川口に2店舗あるほか,ときわ台店,練馬店があって,ああ東十条の「たぬき」も系列だったんですね。店の雰囲気は随分違って,東十条のほうが大衆的なくだけたムードであるのに対して,こちらは大衆割烹風の内装です。値段にもその差が表れているようです。また店の方も東十条店は家族経営的な人たちが主でくつろいだ雰囲気でしたが,こちらは若い調理人が多くてフロアー係も若い女性でした。ともあれさほど混雑しているわけでもなく,落ち着いて呑むにはよさそうなお店でした。
2014/03/06
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この夜は,亀戸在住の女性A嬢を囲んでの呑み会であります。獣医のK氏とともに亀戸に出向きました。待合せの時間まではまだ当分ありますので,先に一軒適当な居酒屋で呑むことにしました。といってもいつもの顔ぶれとは違って,K氏は若くはないので,あまりにオンボロとか場末っぽい店という訳にはいかず,迷いに迷ってうろうろしているうちに蔵前橋通りまでやって来てしまいました。呑み屋街を彷徨いながら歩いたため,もうすぐ亀戸水神宮というところまで辿り着いていました。亀戸水神駅の近くは,酒場もまばらな印象がありましたが,思いがけぬ場所にちょっとよさそうな店を見つけました。早速入ってみることにしました。 店名は「大衆酒場 直」と言うようで,なかなか硬派な店名です。しかし店は案外新しくて,ちょっと装飾が過剰でごちゃついた印象です。店に入ると別の意味でごちゃついています。というのはとにかく店中に品書きの短冊が張り巡らされ,いったいどれほどの品数を揃えているのだろうと,圧倒されてしまいます。カウンター席は少なくテーブル席がメインなのはちょっと残念です。先客は一組のご夫婦だけ。若い男性の店主とその御母堂らしき方で切り盛りされています。次があるので控えめに肴を注文しますが,種類の豊富さに迷いに迷わされるほど。しかも居酒屋の定番メニューに加えて,ちょっと洋風にアレンジしたものなどもあって,あれこれ食べてみたくなります。洋風の味付けの牛筋煮込みなんかをもらったのですが,2人で食べても十分なほどの量があり,しかも呑むことを忘れてしまうほどにいい味付けがされているのでした。お通しの温奴というのもさり気なくていいですねえ。もうここに居座って,A嬢を呼び寄せようかという気にもなったのですが,そんなところに待合せ場所に到着したとの連絡が入ってしまい,泣く泣く店を去ることにしたのでした。ここはぜひともしっかりと腹を減らせて,いっそのこと食べることをメインに据えて再訪してみたいと思うのでした。 慌てて亀戸駅前の呑み屋街に到達しました。当初の目当ての店はどう見ても入れそうにありません。しからばとお隣にあるこちらも目を付けておいた「海鮮料理 新花」という魚介系の肴をメインに据えた酒場に入ってみることにしました。こちらも奥のたった1卓を覗いてはほぼ満席です。3席ほどあるカウンターは使用されていないようです。大勢の客たちを捌くには人手が足りないようで,こちらの小学生くらいのお嬢さんも感心にも配膳で駆け回っています。全品ほぼ均一の安価な価格で肴は提供されており,いろいろ工夫された手の込んだものもあったりして,魚好きであれば何を注文するか心が揺れることでしょう。頼んだ品がなかなか出てこないのはじれったいのですが,腰を据えてじっくり呑むことにするのがよさそうです。出された肴は一品一品が量が控えられていて,むしろ独り酒向きの盛り付けです。これであれば,もう少し調理の人出を増やして,カウンターだけの店にして独り数品と数杯でさっくりと帰ってもらうようにして回転をよくすればいいのになんて,客の身勝手な希望を言ってみたくもなるのでした。
2014/03/05
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これまでも北綾瀬での呑みについて2回程報告してきました。「まづいや」,「まねき鳥」,「葡萄(グレープ)」,そしてよく知られる「丸福」などを巡ってきましたが,まだこれぞという酒場には出逢えていません。これまで北綾瀬に向かい際は,亀有駅もしくは綾瀬駅からとぼとぼと20分以上を掛けて歩いて向かいました。そしてやはり今回も綾瀬駅から歩いて北綾瀬駅を目指すことにしたのでした。綾瀬駅―北綾瀬駅間では,これまでもネット情報では知りえないであろう何軒かの良店に遭遇できていて,今回もそうした出会いがあることを期待したのでした。 綾瀬駅を出発して10分,新たな酒場との出会いもなく夜道を独り思考停止の状態で黙々と歩いていると急速に空腹感を感じました。折よく渋い佇まいの「つくし亭」なる中華料理店があります。ここでちょっとお腹を膨らませておくことにします。店内は想像よりずっとくたびれた様子でカウンターのないテーブルが4卓ばかりの小さなお店です。1テーブルを除くと独り客で埋まっていて,いずれも足繁く通われているらしく,店の方とも親しげです。餃子とビールという王道の組合せを想定していましたが,品書きに水ハイというのがあります,おっと梅ハイも250円です。水ハイは容易に想像ができ,無難ではありますが思い切って梅ハイを注文。甘いシロップ入りなのではなかろうかという懸念もありましたが,幸いにも水ハイに立派な梅干しが入ったものです。お通しのサービスもうれしいです。餃子は大ぶりで具もみっちと入っています。本棚に並ぶ軽く「酒のほそ道」を眺めながらのんびりといただきました。食べるつもりが思いがけず,しっかりしとおいしくいただけて,北綾瀬まではちょうどいい腹ごなしになりそうです。 駅に近づくと居酒屋やスナックなど数軒が軒を連ねる呑み屋の集まる一画がありました。そんな中でもっとも大衆的な居酒屋らしい風情がある「又兵衛 北綾瀬店」の暖簾をくぐることにしました。まっすぐ奥に伸びるカウンターに小上りがあって,カウンターも小上りもすでに多くの客がおり,大いに盛り上がっています。カウンター席ではご近所の方がジャージ姿でくつろいでおられ,アットホームなムードです。お通しはお浸しなど3種が三連の小鉢に程よく盛り付けられています。こういうちょっぴりの肴がいくつも並んでいるとちょっと得をしたような贅沢な気分になれます。店は両親と息子さんでやっているようで,みなさんとても明るくて親切な方たちなのが他の客たちとのやり取りから伝わってきます。これはいい酒場だなあ。ところで,店先の看板に北綾瀬店とあります。寡聞にも近隣で「又兵衛」という酒場を知りませんが,どこかに系列のお店があるんでしょうか。あればそちらにも一度お邪魔してみたいものです。
2014/03/04
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金町は狭い町にも関わらずユニークな酒場が多くて時折このブログでも登場しますが,さすがに目ぼしい酒場はほぼ行きつくしてしまったようです。もちろんすべての酒場に行けているとは思っておらず,もうひと踏ん張り呑むのを堪えて歩き回ってみれば,思いがけない出逢いも期待できないことはないのでしょうが,そのためにはもうほとんどの店舗の並びは頭に入ってしまう程度には歩いてしまっているため,見たことのない風景に出会うためだけでも10分程度は歩くことは覚悟せねばなりません。そういうこともあって,うっかり金町に下車してしまってもら最早車窓から目に留まった1軒の酒場に向かうのは必然だったのかもしれません。 常磐線各駅停車の車窓から白い大きな真新しい看板がやけに目立っている「トリス酒Bar」です。京成金町駅方面,南口を出てロータリーを越えるとすぐに店があります。飲食ビルの2階に向かう細くて暗い階段を上ると思い扉が見えます。若干不安を感じながら店に入ると,ありゃこれはどう見ても居酒屋というよりはBARの内装です。腹を括ってカウンターだけの席に着きます。値段の安さから選んだのは当然トリハイ。店の雰囲気は十分にオーセンティックなバーの雰囲気ですが,マスターの動きはどこかしら緩慢でバーテンダーらしいきりっとしたところありません。肴もバーらしいお値段で,オーダーしたくなかったのですが,なんとなく1品も取らずに帰らせないよというような無言の圧力に屈してしまいました。これで他にお客さんがいればもう少しくつろげたんですけどね。かつて京成高砂に「トリス酒場」がありましたが,どうやらこちらは移転されてから業態を軌道修正したようです。酒場の方に伺ったのはもう4,5年前になってしまったはずですが,その時も空席が目立ってさびしかったのですが,店の雰囲気は清潔感のある居酒屋といった趣で,これならそのまま高砂に留まってもらいたかったものだと口に出しそうになるのでした。 沈鬱な緊張感から解放され,一息つこうと向かったのが,最近開店したのは知っていたもののたまたまいつも休みだった立呑み屋さん「立呑処 長門」です。飲食店やパチンコ屋が集まる並びにあり,派手なネオンや看板にまぎれているためうっかりすると見過ごしてしまいそうになります。ぎゅうぎゅうに詰め込めば十分100名は収容できそうな広さがあります。止まり木だけではなく,コの字のカウンターもあるのはいい感じ。ところがこれだけの広い店なのに客はただの一人もいません。なんという寂しさ。厨房には店主らしき中年男性,フロアー係は20歳前後の青年だけです。いわしフライに開店サービスの生ビールをもらいます。いわしフライを頼むと青年は,これはおいしいですよぉ,お勧めですなんてなかなか調子がいいです。その後もことあるごとにいろいろとお勧めしてくれるのですが,これが正直うっとおしい。頑張っていてしかも真面目なのはよく分かるんですけどね。ちょっと独りにしておいてほしいなとチラリ視線を上げるとこちらの方をじっと見つめて,視線を逸らそうともしません。悪気ないんだろうなあ。けどちょっと居辛いなあと,結局心安らぐまもなく店を出ることになったのでした。
2014/03/03
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さて,足利での滞在時間もごくわずかとなりました。30分後に迫った列車時刻を逃すと佐野行きは危うくなります。それでもほんのひと時でもいいから過ごしておきたい店があります。前夜から何度か覗きに来ていたのですが営業しておらず,最悪の想像が脳裏を過ることもありましたが,諦めずに立ち寄ることにしてよかった,うれしいことに店が開いています。 線路沿いの商店街にある「食事と喫茶 富士屋」にお邪魔したのでした。外観は観光地にありがちな食堂といった造りで,軒先で自慢焼なるお菓子を販売しているのも観光レストラン風です。ところが濃紺の扉を開くとそこはまさしく純喫茶としかいいようのないどこかうらびれていて,それでいながらキッチュな装飾が随所に確認できる空間が広がっていたのでした。しかもこれが100名ほどは収容できそうなオオバコなので壮観です。店を入るとすぐに食券販売の小窓があって,自慢焼を焼くおばさんが食券販売を兼ねているようです。時間もあまりないし,名物ということなので200円の小倉アイスをいただくことにしました。食事系のメニューが充実していて,昼はここにしておけばとちょっと残念でしたがこの小倉アイスも甘み控えめですっきりといただけたっぷりの量をぺろりといただいてしまいました。昼食時を過ぎていたためか客はわれわれだけ。ひっそりと静まりかえった店を独占したような贅沢気分に浸ることができました。 この日訪れた「Café de FURUKAWA(フルカワ)」,「コーヒーの店 はとや」とこの「富士屋」はいずれもまったく系統の異なるタイプの喫茶店ですが,いずれも東京のもっとも好きな喫茶店に引けを取らぬ素晴らしいお店でした。喫茶店という業態は居酒屋とは異なり,地域ごとの差異が希薄であることに興味を引かれます。これら純喫茶があくまで日本国内で同時多発的に誕生し,今や瀕死の状況に置かれていることを考えると,寸暇を惜しんで通わねばならないという使命感に駆られたりもします。 足利の行けなかった喫茶店。 さて,十分満足した今回の旅ですが,最後に佐野に立ち寄ってみることにします。存分に感慨を噛みしめる間もなく佐野駅に到着,まずは佐野厄除け大師に向かうことにします。すると「ナカダパン 本店」というのがあります。あんぱんで有名なお店があることは知っていましたが,店の佇まいも渋くてついふらふらと立ち寄ってしまいました。店の奥には古くからやっているお店らしく喫茶室が併設されていましたが今や物置と化してしまっています。あんぱんは5個入りだけととても食べきれなさそうなので,あん入りのコッペパンなど数個を購入。このコッペパンがあんとマーガリンのバランスがよくて,甘からずほのかにマーガリンの塩気が利いていてさすがに定評のあるお店と感心。人通りもまばらな通りを進むとやがて騒がしくなり,どうやら佐野厄除け大師が近づいているようです。今回の旅のお土産に狙っていた「関東・栃木レモン」があるのではなかろうかと立ち寄った商店にもやはり当の商品は見つかりません。食品店兼食堂としていまでは食堂がメインの商売となっているようです。ここでいもフライが販売されていました。せっかくなので足利のものと味比べするために購入。足利の焼そば店のおばちゃんの話通り,パン粉の衣で覆われています。味はいいのですが,足利の天ぷら風のものに比べるとやはりちょっと油が重く感じられ,これなら東京でもありそうです。 佐野厄除け大師は,川崎,西新井に比べると気の毒ですが,参拝者数もそれほど多くなく2,3分程度待つだけであっという間に参拝終了。屋台の数こそ多いのですが,参道らしい参道もないのがやはり物足りない気分です。しからばと下調べしておいた喫茶店を巡ることにします。 最初に伺ったのが「もみの木」です。県道9号線の1筋裏手の通りに大きな洋館風の建物があります。地方の結婚式場のような建物です。店の正面に至るとここが洋菓子店であることが分かります。1階の売り場の階段を上がると喫茶室となっていますが,あいにくと正月明けは定休のようです。せっかくなので見せてもらうことにしました。上品ではありますが,華美さに過剰さが感じられずやや物足りない印象ですが,地元の方には重宝されそうなお店に感じられました。 最後にもう一軒,巨大なショッピングモール,イオンタウン佐野のそばにある「大樹」に立ち寄ってみました。広い一軒家の喫茶店で,外観こそいまどきあまり見かけなくなったドライブインのようでそれなりに趣きがありますが,店内はこれといった特徴もなく,足利での充実した喫茶店の数々とは比較できるはずもありませんが,さんざん歩き回ってくたくたになった足を休めることができたのはありがたいお店でした。 本当であれば「木古里」,「コーヒーハウス 点」などにも立ち寄りたかったのですが,陽もとうに暮れて,一休みして疲れがどっと出てきたので今回の旅はこれにて終了ということにしたのでした。 最後に佐野の行けなかった喫茶店。
2014/03/02
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困ったときの東十条頼みということでまたもや飽きもせず東十条にやって来たのでした。この夜はO氏と待合せて呑みに行くことになっています。ただ待合せの時間には到着できないとの連絡あり。さて,どうして時間を潰したものやらとひととき悩みますが,立ち止まって悩んでいるのはどうも性に合いません。北口改札前で一瞬,崖上に進むか,崖下を行くかを迷ってしまったものの,距離も近くて到着の連絡が入っても即駆けつけられることから崖を上ることにしました。随分久しく行っていない「みとめ」にでも行ってみようかという気になったのでした。良心的な価格で良質なとんかつ定食を食べられることでことに知られる「とんかつ みのや」などの飲食店が並ぶ通りを進むと軒先で天ぷらを揚げているお店がありました。たまには天ぷらでもつまみながら一杯やるのもよかろうと早々に心変わりして暖簾をくぐったのでした。 窓越しにテイクアウト用天ぷらのショーケースに並ぶ天ぷらを見てもごくごく庶民的な定食屋さんの天ぷらのようです。店の名は「天ぷら えびや」です。カウンターにテーブル2卓程のごくごく平凡ではあるけれど,どこか郷愁を誘うような空間です。土間に板張りの壁でどこか寒々しいのがむしろ温かみを感じさせるというのが不思議なものです。日本酒をお燗してもらい肴はゲソ天ぷらだけにしておくことにしました。お通しにはちょっとだけ大根などの煮付け,これがただなのがすごく気が利いています。優しい女将さんが揚げてくれるゲソ天はけして上品ではなくて衣もバリバリとしていますが,むしろこの食感の頼もしさがゲソ天にはぴったりで,日本酒よりむしろビールの方がぴったりだったかもしれないとちょっと後悔。しかもボリュームがとてもとてもお銚子2本では食べきれず,ついついもう1本となってしまいました。優しい女将さんを慕ってか,常連のおじさんやおばさんは皆独りでも孤独感は感じられず,我が家での食事風景を見ているようなほんわかとしたよい気分になりました。 O氏がようやく到着したようです。今度はエスカレーターで崖を下り,北上します。やがて住宅街に差し掛かる頃に見えてきた小体なやきとり店に惹かれて,暖簾をくぐります。カウンター10席にテーブル席3卓とごくごくありふれたお店ではありますが,なぜだかとても居心地がいいのです。「やきとり 末広」というお店です。ちょっとおっかない顔つきですが,笑顔が優しい店主とおふくろさんというのが似合う風貌の女将さんのお二人が迎えてくれます。ここでは城北では珍しいハイサワーのハイッピーともつ焼がまずはお勧め。お通しの里芋やら鶏肉の煮付けもおいしいなあ,この里芋きっと冷凍物なんでしょうけどどうしてこうもおいしくできるのでしょうか。大量に作るからでしょうか? それだけではなさそうです。やはりこうした気分のいい酒場でちびりちびり食べることで味わいが変化することがあるみたいです。O氏も言ってましたが,特に変哲のない店ではあるけれど,近所で(できれば最寄駅から自宅をちょっとだけ通り過ぎた辺りの路地にあるといいなあ)独りでゆっくりと呑みたいときにはこういう店が一番かもしれないなあ,とのこと。同感です。
2014/03/01
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