2007年12月01日
XML
カテゴリ: OPERA
グラインドボーン「トリスタンとイゾルデ」Part1

昨夜まんじりともせず4時間以上、見た。

よかった…

ギャンビルさんのトリスタンは、すばらしかった。

英語の評では散々だったので心配していた。ギャンビルさんはやっぱり映像の人なのかな。最初から最後までどんどんトリスタンが変化していく。
こんなにすごい演技が出来る人はなかなかいないだろう。
感情の機微を余すところなく表現していた。
第3幕は…もう… やってくれちゃってるなという。
ヴァーグナーのヘルデンを演じる歌手として、こんなに陰影がついた、光と影のついた人間的な演技が出来る人は他にいないだろう。


最初の登場から幕が下りるまで、彼から目が離せない。

他の歌手もすごいのだが、何よりギャンビルさんの舞台だったなという印象。

英語の評ではシュテンメ絶賛だったが、確かに歌唱的にはすばらしいが、彼女は「私のイゾルデ」ではなかった。最初から最後まで「怖いイゾルデ」だった。
もっと変化を見せて欲しかったなあ…

脇もすばらしかった。スコウフスはワグネリアンロールには不向きなハイバリトン、声が軽めなので最初は正直心配した。もともとコミカルな演技力が第3幕では全開で、「これクルヴェナルのキャラ、違う」という印象でおもしろかった。

パーぺのマルケ王、これがまた驚きなのだが、ベルリン国立のマルケ王とまったく違うのだ。
ベルリンではひたすらかっこ良くって、オーラを放ってたが、ここではオーラを完全封印。
年老いた、哀れで、人間的にちょっとゆがんだ部分のある、くせのある、なよっとした、執着心の強い、猜疑心の強い感じの王。
レーンホフはさすがだ。こうまで変えるとは。

ティモシー・ロビンスンも良かったです~

今回のレーンホフ演出のもっとも革新的な部分は、時間の経過である。

死よりも残酷なのは時の経過だ。

登場人物は苦しみ続け、ようやくトリスタンが死の床で譫妄状態に陥って初めて、物語が展開し始めるのだ。

これには…やられた。
ギャンビルさんもシュテンメさんもこの3幕が一番自然で良かった。
人間だった。ヘルデンじゃない。


第1幕

イゾルデが怨み節、火を吹いている。
またあの若い水夫の歌が聞こえてくる。
アイルランド娘が泣いている…という歌。
「私をバカにしている!」
激怒するイゾルデ。
背後にゆっくり現れる人影。
トリスタン。
鉄のかぶとをかぶっている。
表情は憂いを帯びていて冷静沈着。
ここは本来は登場シーンではないのだ。
トリスタンは船の行く先を見ている。海を見ている。
そのトリスタンをイゾルデは見ている。

イゾルデはブランゲーネをトリスタンのところにやる。
トリスタンはブランゲーネを見ない。
憂いに満ちた眼でずっと船の航路を見ている。
しかしブランゲーネが女主人の侮辱に満ちた言葉をそのまま伝えると、ブランゲーネをきっと見据え、出て行く。
クルヴェナルがブランゲーネの行く手を遮るように剣を床につく。

船が港に近づき、クルヴェナルが呼びに来るが、イゾルデはトリスタンが自分のところに謝罪に来ないと行かないと言い出す。

トリスタンがやってくる。
長い影が上手の入り口から伸びる。

トリスタンは相変わらず、冷静沈着な憂いを帯びた表情で、まるで自分の感情を押し殺すようにしている。
しかしイゾルデが自分を殺さなかったのはモロルトを愛していてモロルトの敵を誰かが討ってくれると思っていたからだと聞かされるとだんだん動揺してくる。
トリスタンは本来ではここのシーンではイゾルデにつれない。
しかしこの演出では、明らかにイゾルデへの気持ちを押し隠しているトリスタン、それを出さないよう必死でこらえているようになっている。
トリスタンは言う。「あなたの口に出さない気持ちもわかっている」
「だからこの杯をいただこう。」
彼はこれが毒杯だと明らかに知っていて飲もうとしているのだ。
彼女をマルケ王に届けるために、そして自分の気持ちを断ち切るためにもうここで死のうとしている。
しかしイゾルデもその杯を奪って飲んでしまった。

苦しんで2人とも倒れる。トリスタンはかぶとをぬいでしまう。
暗闇。
2人が気がついたとき、表情は一変している。
毒薬は恋薬にすりかえられていた。

「今までとらわれていたトリスタンの名誉って何だったんだ?」

お互いの気持ちのかせが取り払われる。
抱き合う2人。
ブランゲーネが引き剥がす。

トリスタンはふらふら酔っ払ったように歩く。
目線が定まっていない。

船が港に着き、メロートが入ってくる。
第1幕了。

Part2へ続く。





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  2007年12月02日 11時57分10秒
[OPERA] カテゴリの最新記事


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x

PR

サイド自由欄


YBGgi9BO.jpg


TENOR


小原啓楼

Ten.望月哲也2016
Ten.望月哲也2017

Ten.望月哲也2018



Ten.笛田博昭~2016
Ten.笛田博昭2017
公式サイト

小野弘晴


Ten.城宏憲 INDEX 2014~2017


Ten.又吉秀樹 INDEX
Ten.又吉秀樹2017


Ten.澤崎一了~2017
澤﨑一了2018~2019


Ten.小堀勇介2015
小堀勇介2016~2017
小堀勇介2018
小堀勇介2019


金山京介

Ten.吉田連


Ten.前川健生


伊藤達人
UPCOMING
PAST


Ten.宮里直樹
UPCOMING
PAST
~2017
2018~2019


工藤和真
UPCOMING
PAST

BARITONE


青山貴
UPCOMING
2015


KS Tomohiro Takada, Bariton 概要


Bar.大沼徹
UPCOMING
2015~2016
2017
His repertory 1


今井俊輔
UPCOMING


高橋洋介
UPCOMING
PAST

飯塚 学


小林啓倫
UPCOMING
PAST

清水勇磨


大西宇宙
UPCOMING


池内 響
UPCOMING
PAST

井出 壮志朗
UPCOMING
PAST


市川 宥一郎
UPCOMING
PAST

Bs-Br大塚博章 2014-2015


Bs-Br狩野賢一2015


Bs河野鉄平

後藤春馬

水島正樹

IL DEVU

HIGHLIGHT 2014
Francesco Meli Il Trovatore
Micheal Fabiano La traviata
Juan Diego Flórez IL BARBIERE DI SIVIGLIA
Tézier vs Kaufmann La forza del destino
Tetsuya Mochizuki Faust
OperadeLyonJapan tourHoffmann
Tetsuya Mochizuki Dichterliebe
Stefano Secco Madama Butterfly
Bryan Hymel Guillaume Tell
Dmitry Korchak I Puritani
Celso Albelo Lucia di Lammermoor
Teatrodell'OperadiRomaJapantour2014
Wolfgang Koch Arabella
Lawrence Brownlee I Puritani
Tomasz Konieczny Das Rheingold
Torsten Kerl Die tote Stadt


Best Opera 2023


Best Opera 2022


Best Opera 2021


Best Opera 2020


Best Opera 2019


Best Opera 2018 Index

Best Artists in Opera 2017

Best Opera 2017
Photo:©Shevaibra, courtesy of the artist

2016 Best Opera
表紙10.jpg
2015 Best Opera
2014 Best Opera
2013 Best Opera
2012 Best Opera
2011 Best Opera and Ballet
2010 Best Opera and Ballet
2009 Best Opera and Ballet
2008 Best Opera and Ballet
[BALLET]
2009

2008 Ballet Top 10 in Japan
2008 BALLET INDEX
What's New 2007
What's New 2006
Past Articles 2005
Past Articles 2004
Past Articles 2003


[OPERA]
Simon Keenlyside What is NEW ?

Robert Gambill
What's new
Biography

2008 Opera Top 10 in Japan
2007 Top 10
What is NEW ? 2006
What is NEW ? 2005


STAGE What is NEW ?

Second Top -Sheva's Sporting World

Football
[José Mourinho - Chelsea 2007 Index]
[José Mourinho - Chelsea 2006 Index]
What Mourinho said - 抱腹絶倒モウリーニョ語録
Last edited 1 Jul 2007

FOOTBALL What is NEW ?
2005

Tennis

2006
Roger Federer First time in JAPAN - AIG Japan Open INDEX


Cinema, Books brand new and privat


Cinema
2005年5月3日


音楽関係更新 Classical Music


BOOKS 2006
BOOKS 2004年  
1月31日 Books by Jeffery Deaver


LINKS
Theatre official
Bayerische Staatsoper
Bayreuther Festspiele
Lyric Opera of Chicago
MET
Royal Opera House
Salzburger Festspiele
Teatro alla Scala
Wienerstaatsoper
ZurichOperaHouse
New National Theatre,Tk
Tokyo Nikikai
Singers official
Takashi Aoyama
Aris Argiris
Johan Botha
Fabio Maria Capitanucci
Massimo Cavalletti
Markus Eiche
Alex Esposito
Burkhard Fritz
simonkeenlyside.info
Wolfgang Koch
Tomasz Konieczny
Zeljko Lucic
Alexey Markov
Tetsuya Mochizuki
Ryoichi Nakai
Evgeny Nikitin
Toru Onuma
Takashi Otsuki
René Pape
Detlef Roth
Andreas Schager
Jörg Schneider
Kasumi Shimizu
Yuri Vorobiev
Koji Yamashita
Kwangchul Youn
Operabase Artist
Orchestra
Berliner Philharmoniker
NHK Symphony Orchestr
Opera Fan Blog
Alex Vinogradov(Valenci
By The Thames(dognora
Cafe Klassiker H(Hiroto
猫の日記(camelstraycat
FOOD FOR SOUL(Sarda
東海岸-音楽、食(Kinox
Impression(娑羅)
In fernem Land(galahad
Intermezzo
ネコにオペラ(kametaro)
Opera Chic
OperaOperaOper(Madok
右舷日記(starboard)
taqkkawanamiさんのブログ
備忘録(euridice)
Ballet Fan Blog
きょんのバレエ日記(きょん)
Web Radio
Oe1 Programm
Bayern 4 Klassik
Deutschlandradio Kultur
NDR Kultur
RBB Kultur
BBC Opera on 3
RAI radio3
WFMT-Chicago
Sydney ABC
Radio New Zealand Conc
operacast

劇場座席数・残響時間
SITE MAP

Sheva's Blog( What people tweeted )

Since Apr 2003

キーワードサーチ

▼キーワード検索


© Rakuten Group, Inc.
Mobilize your Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: