近代日本文学史メジャーのマイナー

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2009.06.24
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『澪標・落日の光景』外村繁(新潮文庫)

 初めて読む作家です。
 でも、なんとなくお顔についてはイメージがあります。旧制高校の三高生として学生三人で写っていた肖像写真ではなかったかと思い出すんですが、その写真を初めて僕が見た時の目的人物は、梶井基次郎でした。
 同じく小説家の中谷孝雄と合わせて三人で写っていました。外村繁は梶井・中谷より2歳年下だそうです。
 そんな時代の人なんですねー。

 読み終えて、なんというか、とても「優しい」あたりだなーと思いました。
 例えばこの時代の他の作家といえば、ちょっとバイアスの懸かった選択かもしれませんが、やはり、太宰治あたりですかね。
 この優しさは、とっても似ている気がしますねー。

 それと、私、思うんですが、やはり、「ええ氏の子」共通点じゃないでしょうかね。
 この外村繁も、やはり「ええ氏の子」のようですね。
 「育ち」ですね。
 太宰なんかも、見逃さずに読めば気がつきますが、やはり「上品」さがありますものね。

 さて、三つの作品を含む短編集です。
 「澪標」という作品が、どこかの文学史の教科書で見たことがありますね。
 つまり、日本文学史の教科書レベルでいいますと、この作家は、小説家名だけが載るか、一作ぐらい代表作を紹介されるかという、ぎりぎり「文学史メジャー」作家中のマイナー作家でしょうかね。

 まさに私の読書テーマのストライク・ゾーンであります。

 「澪標」は、『ヴィタ・セクスアリス』です。
 主人公(仮名ながら、ほぼ作者と等身大。作品中に中谷孝雄と梶井基次郎は実名で出てきます)が、産まれてほぼすぐの頃から、死の前年まで(解説によると本作執筆一年後に亡くなったそうです)の性欲史です。

 ポイントは、一人目の妻の病死と、その後の二人目の妻との生活、そしてその妻の乳ガン発病ですかね。つまりこの作品は、「性欲史」であるとともに、「病妻もの」でもあるわけです。

 「病妻もの」というのは、近代日本文学史独特のジャンル(なのかな、他国の文学史にもこんなジャンルはあるのかしら)でありましょう。

 何の本で読んだのか忘れましたが、私小説=自然主義作家のテーマ、三種の神器といえば、

1.貧乏     2.病気     3.女

であると聞きます。
 「病妻もの」はこの区分でいけば「病気」の変形ですかね。
 でもこの辺のテーマは、お互いに重なり合って出てきますものね。

 そういう意味で言うと、本作には「3.女」は全く出てきません。特殊ですね。

 あのー、言わずもがなですが、ここで取り上げている「女」とは「愛人」の事ですね。「妻」はこの「女」の中には入りません。

 で、本作には「女=愛人」の類は一切出てきません。
 だって、童貞で結婚したことを誇らかに宣言する男性が主人公なんですから。
 これって、ひょっとしたら、友達に梶井基次郎なんかのいたのが「反面教師」になったのかもしれませんね。

 「病妻もの」で有名な小説って、どんなのが挙がりますかね。たくさんあるようにも思うんですが改めて考えると、どんなのでしょうか。こんなのかな。

  ・堀辰雄の一連の作品  ・島尾敏雄『死の棘』

 あれぇ、案外挙がりません。古井由吉の芥川賞受賞作も思い浮かべましたが、あれは「病妻」というより亭主と両方とが病んでいる小説ですね。(堀辰雄のも、妻ではなくて恋人でしたっけ)

 まー、そんな中で、本「病妻もの」は、なかなかよかったです。「優しい」イメージを感じるのも、それ故かもしれませんね。

 表題作以外に入っている「夢幻泡影」という病妻ものも、解説にもありましたが、最終シーンの台詞のやりとりは絶品でありましたよ。

 えー、ついでに、本作の新潮文庫はすでに絶版であります。
 大阪梅田のカッパ横町古書街の店で三百円(安い!)で買いました。

 まー、今回はそゆことで。
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Last updated  2009.06.24 06:55:24
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analog純文 @ Re[1]:父親という苦悩(06/04)  七詩さん、コメントありがとうございま…
七詩 @ Re:父親という苦悩(06/04) 親子二代の小説家父子というのは思いつき…
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