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2025.04.06
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『水車小屋のネネ』津村記久子(毎日新聞出版)

 長編小説であります。
 私が読んだ新刊書では482頁もありました。
 本作は毎日新聞連載で、2021年7月1日から2022年7月8日までとなっていて、ほぼ見事に1年間でありますね。
 なるほど、まるまる1年間ということは、何回くらいの連載回数になるのでしょうかね。一年のうちには、新聞休刊日も何日かあるし、新聞は出ているが連載小説は休みという日もあるでしょうね。
 ざっくり、350回、辺りでいかがでしょう。

 夏目漱石の『明暗』は、漱石が原稿用紙に「189(回)」と書いたところで机に突っ伏してしまい、そのまま未完の作品となっていますが、岩波文庫で624頁(解説等込み)であります。本作がいかに長い小説かがわかりますね。

 なぜこんなに長いのか、わたくし、頑張って読みながら、また読み終えてから、少し考えましたね。
 まず、なんといっても全体の構造がユニークです。説明するのは面倒なので、目次をそのまま引用してみますね。

 第一話   一九八一年   5
 第二話   一九九一年 183
 第三話   二〇〇一年 305
 第四話   二〇一一年 393
 エピローグ 二〇二一年 475

 こんな感じです。どうですか、かなりユニークな作品構造だとわかりますね。「話」が進むたびに登場人物がみんな十歳ずつ年を取っていくんですね。いかにも面白そうだ。(しかし「話」ってのも、なんか変ですね。「章」とか「部」じゃないですか、普通は。)

 そういえばわたくし、これとよく似た構造の小説をずっと昔に読みましたよ。(つまり、本書よりかなり先行する小説)それは、

三島由紀夫『豊饒の海』

 ただし、三島の小説は、巻ごとに二十年ごと進む設定であった違いと、第一、長さが「ネネ」の三倍くらいあるんじゃないでしょうか、四冊の連作長編小説であります。

 私は今、似た構造だと書きました。でも、津村「ネネ」は、特に三島「豊饒」に影響を受けたとは感じませんでした。
 ただ、こうして並べると、なんとなく興味深い事柄が浮かんできました。
 それは、この構造にした起点となる年は、いつだったんだろうということです。

 『豊饒の海』については三島自身がどこかで書いていたのを覚えています。
 まず副主人公(全編を通しての狂言回しのような人物)の年齢を二〇歳から八〇歳までとし、そして、第四巻の年代設定を未来の(『豊饒の海』が書き始められたのは1965年)1970年とする、という事だったと思います。

 本書(「ネネ」)の場合はどうだったんでしょうね。
 筆者あとがきによると、この小説は2020年5月から2021年6月までに書いた(ごく短いエピローグだけ2022年4月執筆)とありますから、書き始めた時は、おおざっぱに最後を現代にそろえようという意図があったのかもしれません。

 また、内容的な側面から類推すると、やはり2011年東日本大震災と絡めるための年代設定であったのかもしれません。確かにこの大震災の挿話は、終盤に向けてのストーリーの推進力になっています。

 と、いうようなことをまずあれこれ考えました。
 そして、この長さについて、さらに読み進めて感じたことが、もう一つあります。
 それは、この長さこそが作品の「救い」に一定の説得力を保証しているということであります。

 と、ここで突然、私が考えた、本小説の主たるテーマについて触れてみます。
 と、書いたところで、あ、すみません、少し長くなりそうなので。次回に続きます。

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Last updated  2025.04.06 10:54:25
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analog純文 @ Re[1]:父親という苦悩(06/04)  七詩さん、コメントありがとうございま…
七詩 @ Re:父親という苦悩(06/04) 親子二代の小説家父子というのは思いつき…
analog純文 @ Re:方丈記にあまり触れない方丈記(03/03)  おや、今猿人さん、ご無沙汰しています…
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analog純文 @ Re:漱石は「I love you」をどう訳したのか、それとも、、、(08/25) 今猿人さんへ コメントありがとうございま…

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