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chiko619 @ Re:新参者(09/22) 「新参者」読みました。 東野圭吾さんは、…
kimiki0593 @ 相互リンク 初めまして、人気サイトランキングです。 …
Twist @ こんにちは! 遅ればせながらあけましておめでとうござ…
Twist @ こんにちは! 遅ればせながらあけましておめでとうござ…
Twist @ はじめまして^^ 先ほどこのロングインタビューを読み終え…
2014.11.30
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カテゴリ: 文芸

 保科正之の命に、「必至!」と応じた渋川春海。
 改暦が社会に及ぼす影響は、宗教・政治・文化・経済の全てに及ぶ。
 この大事業に、春海は『蝕考』で挑むが、最後に誤謬、そして失意の日々。

 「授時暦を斬れ、渋川春海」
 関孝和の言葉に、「必至!」と応じた渋川春海。
 「今は、士気凛然、勇気百倍だ」
 えんに向かって、再度改暦の儀に挑むことを宣言した渋川春海。

  あの北極出地の測定を任されてから、今年で二十三年。

  あるいは中国の学問が最高と信じる者からの罵詈雑言が、
  春海一人に集中していた。
  そうまでして改暦の名誉が欲しいのか。
  そういう声が全国から聞こえて来た。
  「うん……欲しいな」
  闇の中で春海は呟いた。
  建部と伊藤に褒めて欲しかった。
  酒井と光国に天に触れたと告げたかった。
  死と争いの戦国を廃し、武家の手で文化を作りたいと願った保科正之の期待に応えたかった。
  闇斎の、島田の、安藤の、改暦事業を立ち上げた仲間たちの悲願を叶えたかったし、
  亡き妻に胸を張って報告したかった。

  関孝和という男が託してくれたものを何としても成就させたかった。
  己だけの春の海辺に立ちたかった。
  それにしても、いったいいつの間に、これほどの人間が関わるようになったのだろう。
  どうして自分が、いつまでもその渦中にいられたのだろう。
  からん、ころん。

  いつか聞いた金王八幡の算額絵馬の鳴り響く幻の音が鮮やかに耳に響いた。
  喪失した天守閣の向こうに広がる果てしもない青空を見た。
  それらの美しさを思いながら、いつしか微笑みながら泣いていた。(p.271)

この物語の全てが見事に凝縮された場面。
この場面を読むために、この物語は存在する。





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Last updated  2014.11.30 11:58:12
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