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日本政府による戦争被害者への補償が、公平さを欠いていたため である。また戦争の被害と加害の問題は入り組んでいて、理解が難しいからでもある。本書は、朝鮮人元BC級戦犯の運命に焦点を当てて、戦争責任の問題を考察したものだ。
BC級戦犯裁判は、捕虜を虐待した罪で裁かれることが多かった。戦犯裁判の記録から知られるのは、南方の捕虜収容所の凄惨(せいさん)な実態である。そこでは捕虜の食糧と医薬品が決定的に不足しており、コレラや赤痢の伝染病患者が急増していく。
軍は捕虜を使って飛行場や鉄道を建設することを決めながら、捕虜の生存の条件を配慮しなかった。 現場では無理な完成予定に合わせて病人まで駆り出して使役し、多くの捕虜が死ぬ結果となった。 日本の軍や外務省は、捕虜を過酷に扱えば国際問題化するという認識が乏しく、捕虜の国際法上の権利を守ろうとは考えていなかった。
他方で収容所の末端の監視員には、朝鮮人などの軍属があてられていた。戦後に戦犯として裁かれた彼らには、捕虜の扱いについての 権限が小さいのに虐待の責任を問われたことへの不条理感 があった。また本国が独立したのに、過去に日本人であった資格で裁かれることを、納得しかねていた。
連合国の戦犯裁判の記録と朝鮮人元戦犯の証言とには、食い違いもある。だが著者は両者を付き合わせて事実を究明し、どちらも戦犯裁判の全体像を理解する一部だと位置づけている。
著者はかつて『朝鮮人BC級戦犯の記録』で 朝鮮人戦犯が、日本人戦犯には与えられた補償の支給からは除外される差別 を描いた。その状況は今も変わっていない。その後著者は、 欧米人捕虜の残酷な被害の実態や、その虐待が日本軍の捕虜政策の構造的な特質に由来していたことを解明してきた。 簡潔な記述の中にも、著者が発掘してきた戦争責任問題への多角的な視点が、詰め込まれている好著といえよう。
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