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この国は1991年に政権が崩壊して以来、中央政府がなく、氏族などが割拠する「破綻(はたん)国家」となっている。そして究極の民営化、つまり無法化によって成長したビジネスが、身代金目当てに船を襲う海賊だった。国連の発表によれば、海賊は2008年だけでも1億2000万ドル(110億円)の身代金を掌中に収めたとされる。
「ソマリアには資源がないため、国際社会が関心を向けず、内政不干渉の原則もあって十数年も放置した。その結果が今の事態を生んだ」と遠藤教授は語る。各国は重要な海上航路であるソマリア沖の警備へ動き出しているが、「ソマリア自体が崩壊国家のままという状況は変わりそうにない」。
ところが、教授によれば、ソマリアでは携帯電話が通じるほか、コーラの生産工場が稼働するといった闊達(かったつ)な経済活動も見られ、アメリカ在住のソマリア人からの送金もあるという。「崩壊国家でも、それなりに安定して生活する仕組みがつくられているのです」
国際社会は、領域内で暴力を独占管理し、対外的に代表を持つ「国家」で構成するという建前を持つ。ソマリアのような対外的な顔のない破綻国家でも人々が生活し、ビジネスが成り立つということは、国際政治学者の竹田いさみ・独協大教授(56)によれば、「近代がほころび、前近代が戻ってきていることなのかもしれない」。
昨年は金融危機で小さな政府を掲げる新自由主義が退潮した年だった。今年はソマリアのような『前近代化』も念頭に置きつつ、「国家」や「政府」というものの意味が問い直される年になるのではないか。 (植田滋)
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