フリーページ
抗議活動による影響を理由に東京と大阪の映画館3館が上映中止を決めた今年6月から、無事に6都府県で公開初日を迎えた7月にかけて、「ザ・コーヴ」をめぐる問題は連日のようにメディアに取り上げられた。
上映すべきでない、というのも一つの意見。表明するのは自由だ。駅前で雑踏に向けて大いにやればいい。だが、映画館や館主の自宅でがなりたてる行為は「表現の自由」で許されるにはいささか暴力的過ぎないか。そんな危惧(きぐ)を抱いてから約3カ月。現在、あの騒動は影も形もない。波及効果か、配給のアンプラグドによると作品の客足は好調で、最終的には全国36館で公開する予定という。
今回の騒ぎを2008年の映画「靖国 YASUKUNI」の上映中止問題の再来と指摘する意見は多い。憲法21条とのかねあいでいえば07年、プリンスホテルが右翼団体の街宣を理由に、日教組の研修会参加者の宿泊を拒否した事件にも通じる。騒動は繰り返し起きていることになる。
「今の日本では突出した行動をする人たちが許されている。他人が火の粉をかぶっていても、みんな平気で見て見ぬふりをする」。こう指摘したのは、抗議を受けながらも上映に踏み切った映画館の一つ、京都シネマ(京都市)の神谷雅子代表だ。「話題を追い掛けるだけのマスコミもおかしい。『事なかれ主義』社会の根底まで掘り下げて報道すべきだ」。神谷代表からはこんなおしかりも受けた。
「ザ・コーヴ」は無事上映された。だがせっかくわき上がった「表現の自由」をめぐる議論がこのまま立ち消えになっては、今度は書店で、八百屋で、駅で、同じことが起こるかもしれない。
京都で公開後、大学教授らでつくる「上映を支持する会」が公開討論会を開いた。上映すべきだとの声が大勢を占める中、ある男性が「作品を見もしないで『上映支持』はおかしい」と疑問を口にした。この意見に対し、会場からは反論こそ出たが、やじは飛ばなかった。異なる主張にも耳を傾けるまっとうさがあった。
騒動を繰り返さないためには何が必要か。火の粉が自分に飛んできたらと想像し、今後も議論を続けていくべきだ。暴力的に他者を屈しさせようとする勢力がその出番を失ってしまうほど活発に。
私たちにはすでに「靖国」や「プリンスホテル」から教訓を得なかった過去がある。 (放送芸能部)
アベノミクスは、隠れ蓑!?(30日の日… 2016年07月30日
大橋巨泉の遺言(29日の日記) 2016年07月29日
憲法と違う回路で進む恐ろしさ(23日の… 2016年07月23日
PR
キーワードサーチ
コメント新着