フリーページ
ハムレット王子は、母親の行動が許せない。夫が死んだらとたんに、彼の兄弟と再婚してしまう。王子は、そんな母親への当てこすり芝居を考案し、新国王夫妻の前で演じさせる。この劇中劇の中で、夫に先立たれた王妃が必死で「絶対に再婚なんかしないもん」と言いたてる。ここで、ハムレットが母親にこの芝居をどう思うか聞く。彼女の答えが冒頭のセリフだ。
人は、心にやましいところがあればあるほど、本当じゃないことを本当だと言い張る。本当のことをウソだウソだと否定する。ハムレットの母のセリフは、この人間心理を実に的確に言い当てている。
なぜ、この話を持ち出しているのか。勘の鋭い皆さんはもうお察しのことと思う。ドナルド・トランプ次期米大統領の記者会見を見ている中で、上記のセリフが頭の中に繰り返し繰り返し浮かんで来た。
そもそも、あれを記者会見というのか。 政策方針に絡んだ発言は、ほぼ皆無。突然、顧問弁護士的な人物が出現する。 トランプ氏のビジネス帝国を、いかに完壁に大統領職から切り離すか。それをしゃべり立てる。 勉強不足とみえて時折つっかえながらだったが、これまた「言い張り過ぎ」の観極めて濃厚だった。この場面のおかげで、トランプ民本人の記者会見時間は、かなり短縮されることになった。
最も「言い張り過ぎ」色に満ちていたのは、ロシアとの関わりを巡るくだりであった。 ここまで突っ張って全否定するということは、この人、やっぱりプーチンさんに何やら秘密を握られているのじゃないか。 ここまでムキになるということは、身に何がしかの覚えがあるに違いない。どんどん、その思いが強まった。
ここでまた、別のフレーズが頭に浮かんだ。「しのぶれど色に出にけりわが恋は、ものや思ふと人の問ふまで」。ご存じ、百人一首だ。トランプさんの恋はどうでもいいが、この人の場合、実にさまざまな下心や思いつきや怨念や癇癪(かんしゃく)が、たちどころに「色に出る」。そもそも、「しのぶ」ことは知らないらしい。
さて、このように書き連ねて来ると、 圧倒的に抗(あらが)い難い必然性をもって、もう一人、別の人物のイメージが眼前に浮かび上がって来る。 これまた、勘のいい皆さんにはすぐさま共有して頂ける感覚だろう。さしたる勘の鋭さを要しないかもしれない。
いうまでもなく、その人はかの安倍晋三首相だ。この人も、何かにつけて言い張り過ぎる。昨年夏の参院選に向けて「アべノミクスは失敗したわけではありません」と必死で繰り返していた。あの時も、彼のムキになりぶりが、筆者に「ハムレット」の中のあのセリフを思い出させた。安倍首相も、多くのことがすぐ色に出る。気に食わない質問が発せられると、不快感を隠せない。彼もまた、しのぶことを全く知らない。洋の東西の似た者同士だ。
「ハムレット」には「心弱きもの、おまえの名は女」という良く知られたセリフもある。これはセクハラだが、これを「心弱きもの、おまえたちの名は癇癪男」と言いかえれは、何ハラでもなくなる。
(同志社大教授)
「残念」で済ませるのか?(8日の日記) 2026年09月08日
米国民主党、OS更新が進むのか(7日の… 2026年09月07日
理念と血税のAI選び(6日の日記) 2026年09月06日
PR
キーワードサーチ
コメント新着