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民主主義が機能するためには、国会での行政権力や与党に対する批判、監視が不可欠です。野党が批判を加えてこそ、行政権力のゆがみや問題点が可視化され、多少なりともただされます。そのことは「森友・加計・桜を見る会」疑惑の追及からも明らかです。
新型コロナ対策や経済対策なども政府への批判があってこそ、建設的な提案ができます。
いま必要なのは、ファクトを抉(えぐ)り出して政府や与党の責任に迫る、徹底した「批判力」です。そのための共産党の情報収集・調査能力は高いと思っています。
「野党は批判ばかりを改めよ」とのメディアの主張は、権力や与党の悪事を黙認しろというのに等しい ものだと思います。このことは野党にも問われていることです。
<3面につづく>
ぼくは少し前、ある雑誌で新聞の元政治部長らと鼎談(ていだん)しました。そこで「今後のメディアは批判一辺倒にとどまらず、建設的な政策提言活動も重要だ」という言葉が飛び出し、びっくりしました。いわゆる「リベラル」派といわれる新聞の幹部も「その通りだ」と口をそろえたので、”批判も満足にしていないのに”とあきれたことを覚えています。
もちろん、ぼくは「提言」活動を否定しているわけではありません。 「批判よりも提言を」「対立よりも対案を」などという、優先順位のつけ方がおかしい と言いたいのです。
政策課題では、たとえば新型コロナ対策で給付金支給が業者に「中抜き」されているのはおかしいというのは、立派な「提言」ですよね。
今回の「10万円支給」だって、「クーポンという配り方は実情に合わないし、余計な費用もかかるのでは」というのも、現金を困った人たちに配るというまともな「対案」です。
◆監視機能が果たせない
日本では、メディアによる権力や与党への監視が十分に機能していません。
たとえば、「森友・加計・桜を見る会」などをめぐるおびただしい疑惑や、元法相夫妻が選挙買収で逮捕・起訴された前代未聞の事件を思い起こしてください。
行政権力の中枢や与党幹部できちんと責任をとった方、心からの謝罪を口にした人がいますか。真相は解明されましたか。いや、 誰一人責任を取らず、真摯(しんし)に説明することすらなく、いまなお権力の中枢でのほほんと権力を行使し、恥じ入る気配すらないのではないですか。
スキャンダルの数々に加え、安倍政権では、安保法制や秘密保護法、共謀罪など問題だらけの法をゴリ押ししてきました。ベテランのメディア関係者はよく言っていました。
「昔なら政権の一つや二つは吹っ飛んでいたな」と。 与党が国会を軽視し、憲法を無視して好き勝手なことをやっても、政権が吹っ飛ばなかったのはなぜか。 ぼくはメディアの政権監視機能が衰えたことが大きいと思います。
◆政権機関紙へ「読売」の変質
たとえば「読売」のさらなる変質です。同紙は以前から保守的な立場ではありましたが、いまほど政権べったりではなかった。たとえば小泉純一郎首相(当時)の靖国参拝などは社説できびしく批判していました。
しかし最近は、そうした気骨さえ失われました。憲法改正問題では安倍晋三首相(当時)の単独インタビュー(2017年5月3日付)を大きく載せ、安倍氏は国会で野党の追及を受けると「読売を熟読してくれ」と答弁しました。まるで政権機関紙です。
さらに同年5月22日付の「読売」では、前川喜平・元文部科学事務次官の「出会い系バー通い」が掲載されました。ちょうど加計学園疑惑が大問題となり、前川氏が実名での告発を準備していた時です。記事を読んでも何か問題なのかさっぱりわからない。ただ女性の話を聞いていただけ。それを「読売」1紙だけが”スクープ”した。
しかも 「読売」の各本社が社会面の同じ位置で、同じ大きさで載せている。 「ワケアリ」の案件で上層部の意図が働いている、と 「読売」出身でジャーナリストの大谷昭宏さんは指摘 しました。
かつて公安警察を取材したぼくの経験から言うと、本人をつけ回してこんな情報を取れるのは公安警察ぐらいです。ということは、そういう筋からリークがあったとしか考えられません。つまり、 政権批判の告発者をつぶしていく。それにメディアが加担した疑いがある。
最大の部数を持つ新聞の変質は、メディア全体に影響を与えています。メディアがまとまって政権批判をすることがなくなり、監視機能が大きく低下するのです。
◆野党全体にも問われる能力
監視機能の低下は野党にもつきつけられます。共産党の情報収集、調査能力は高くても、野党全体がもっと新しいファクトを突きつける必要もあるでしょう。一部メディアは「批判ばかり」と言いますが筋違いです。批判するのはそもそも野党の責務。議院内閣制のもとでは、国会で与党を追及するのは野党の責務です。
そして 現在の政権や与党は、だれがどう考えても批判されるようなことばかりやっている。それを満足に批判せず、批判する側が批判されるのは本末転倒 です。いま、野党やメディアに必要なのは、事実をえぐり出し、権力や与党に迫る徹底した「批判力」です。
<聞き手・田中倫夫記者>
あおき・おさむ=1966年生まれ。共同通信記者を経て、フリージャーナリスト、ノンフィクション作家。著書に『日本の公安警察』『安倍三代』『日本会議の正体』『時代の抵抗者たち』『時代の異端者たち』など多数
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