Comments
Freepage List

あるとき、長谷川わかが、ゾロアスター教的ミサを行った。彼女を慕
うグループが五十人ぐらい集まって、護摩台で護摩木を燃やして盛んに
拝むのである。護摩を焚くと、霊がどんどん、たくさん出る。その霊が
苦しい状態になっているのを楽にしてあげられる、という効果もある。
そうして拝んでいると、某大学の助教授が、男の子を連れて門を通っ
て玄関までやって来たのが、護摩台のところで目をつぶって拝んでいる
ままで見えた。
彼女の霊視野に、助教授の奥さんの子宮の内部が真っ赤に見えた。赤
い背景に、ちゃんと赤ん坊の形にできあがった姿の胎児が逆さになって
いる。その助教授が靴を脱いで、護摩台を設けてある座敷へ上がったと
きに、突然、座敷中にも、隣近所にも響きわたるような大声で、
「どうぞ、命ばかりは、お助けください!」
と、わかの口から霊言が出た。
助教授の奥さんのお腹の中にいる胎児の霊が、長谷川わかの口を使っ
て大声に叫んだのである、声帯を使われた長谷川わか本人は、自分でし
ゃべったことはわかるが、なぜそう言ったのか事情がわからない。
《変だなあ》と思いながら、助教授にたずねた。
「先生、先生の奥さんのお腹の赤ん坊が『命ばかりは助けてください』
って言ってるよ。どうしたの?」
助教授は、目を白黒させている。
「長谷川先生、実はたった今、赤ん坊をおろすために、家内を病院へ送
ってきたんです」
「……まあ……『僕は科学や勉強が大好きで、こんど大学の先生の家に
生まれるからとても楽しみにしていたのに、両親とお医者さんとで僕を
殺そうとしているんです』って、聞こえていますよ」
わかの言葉を聞いた助教授は、瞬間真っ青になって、赤ん坊をおろす
のを止めさせるために病院へとんぼ返りしていった。
「今飛んできたかと思ったら、奥さんのお腹の子供に『お父さん、命だ
けは助けてください』といわれて、びっくりして、またすぐ飛んで戻っ
たのよ、大学の先生が。みんなの見ている前で。もうおかしくて!今思
い出しても、おかしくてたまらないよ」
彼女の目には、助教授が小さな男の子の手をひんもげそうに引っ張り
ながら、青くなって駅のほうへすっとんで行く後ろ姿がずっと見えてい
たそうだ。
「女性のお腹の中に入っている胎児がしゃべるのですか」
「そう、助教授の先生は、歳がちょうど盛りだから、子供ができる時期
だったのね。胎児でも、みな生まれ変わってくる霊だから、ちゃんと言
葉を話しますよ」
他の大人の霊が、赤ん坊の代弁をしてあげるのだろうかとも思ったが、
わかは、胎児は霊だから、生まれ変わってくるときも、すでに人格や言
葉を持っていて、胎児自身でしゃべるというのだ。
なるほど、胎教はこういうコミュニケーションの原理でできるらしい。

お母さんは勝五郎のお兄さんやお姉さんが少し大きくなった時、あまり
豊かではなかった家の暮らしを助けるため、子どもたちをおばあさんの
つやさんにあずけて、江戸へ働きに行きました。
江戸に行ってから、勝五郎がおなかにいることがわかり、中野村に
戻ってきました。
藤蔵の魂が、生まれ変わろうとして、勝五郎の家のかまどのかげに
かくれていたとき、お父さんとお母さんは、江戸に働きに行く相談を
していました。
他の人が知らないはずのそのことを、勝五郎が知っていたので、
お父さんやお母さんはとても驚き、勝五郎のいっていることは本当
なのかもしれないと思い始めました。

PR
Keyword Search
さそい水さん