森田理論学習のすすめ

森田理論学習のすすめ

2016.02.19
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森田療法と森田理論の学習の違いについて考えてみたい。

神経症に陥っている状態は蟻地獄の底に落ちたようなものである。
そういう人は地上に這い出ることが差し迫った課題である。
そのために医療としての森田療法は役に立つと思う。
ただ現在いろんな選択肢がある。まず薬物療法がある。
また精神科への敷居が低くなっているので容易に病院に行くことができるようになった。
さらに心療内科という、心と体の両方から見てくれる科もある。
カウンセリングも盛んになってきた。そこではいろんな心理療法が試みられている。
精神分析、認知行動療法、内観法、森田療法、交流分析、家族療法、サイコドラマ、意味療法、人間関係療法、自律訓練法、マインドフルネス等である。

ということは、昔と違って神経症治療として森田療法の意義はどんどん低下しているということだ。
これを裏付けるかのように、心理療法の本を見ると森田療法のことが全く記載されていないことも多い。

現状では神経症に陥った場合、常識的には精神科、心療内科にかかる。
そして薬物療法を受ける。あるいはカウンセリングを受ける。
そして自分にあった心理療法を探して治療に取り組む。
だからあえて森田療法に取り組まなくてもよい。
でも森田療法で立ち直った人は視野狭窄に陥り、神経症治療は森田療法と決めつけることがある。
このことをもっと自覚する必要があると思う。

ところで森田には、全国的な森田理論学習のための自助組織がある。
ここでも神経症からの回復を第一目標に掲げて集いを持っているように思う。
そこには神経症でどうにもならなくなった人が藁をも掴む思いでやってくる。


そういう人は他の療法と天秤にかけているのではなかろうか。
双方を比較検討して他の治療法がましだ。森田は効果なしと判定しているのではないか。
むしろ理論を押し付けることに嫌悪感すら抱いているのかもしれない。
私は自助組織の目的が、神経症の克服に役立つという目標設定自体に問題があるのではないかと思う。

正面切って森田理論学習で神経症を治すということに目標を定めてしまうと、医療、カウンセリング、30もあるといわれる心理療法と同じ土俵に上がることにある。

大人と子どもが相撲をとるような結果となるでしょう。

つまりそういう目的を前面に押し出して自助組織を運営していくことは、組織の衰退を招き、その組織は早晩その役割を終えて淘汰されてしまうような気がする。
特に20代、30代、40代の若い人の支持が増えているのかどうかが問題である。
そうでないとすると、日本では森田理論は支持されていないことになる。

それでは森田理論学習をすることは意味が全くないのか。そんなことはない。
目標の設定を変えれば十分に蘇るだけのものを持っていると思う。
それは森田理論が神経質性格を持った人の本来の生き方を提示している点にある。

考えてみてほしい。
蟻地獄から這い出たばかりの人が自己を肯定して、自信を持って生きていけるだろうか。
心配性の人間にとっては難しい問題だ。
依然として社会の荒波の中でどう生きていったらよいのか見通しの立たない人は多いと思う。
重苦しい生きづらさを抱えている。そのまま放置しているとまた神経症を再発する。

そういう人は森田理論学習によって「人間の再教育」を受ける必要があるのだ。
森田理論は、この分野では極めて大きな力を持っている。
森田理論以外の精神療法では見当たらない。

私は提案したい。
自助グループとしては、神経症の蟻地獄から這い出る治療は、信頼できる精神科医による診断と薬物療法、カウンセラー、自分に合ったさまざまな心理療法に任せた方がよい。
その中の一つとして、かろうじて外来森田療法があるという認識を持つべきなのではないか。

自助組織は神経症治療については、多方面の治療法を幅広く網羅して正しい情報発信に専念した方がよいと思う。
自助組織が活動の中心目標として、森田療法による神経症治療を前面に押し出すのは得策ではないと思う。

自分たちの自助組織の目的は、「森田理論による人間の再教育」にあると高らかに方向転換を宣言したらどうだろう。
そのために貴重な人材も今まで培った森田理論の蓄積も選択と集中を図っていく。
組織の在り方、会合の持ち方、学習内容、組織運営方法等多くの面で、今までとはまるっきり変わったものが出現してくるように感じている。
そうなった時点で会員は遅かれ早かれ1万人から3万人ぐらいに伸びる余地があると思う。
なぜなら他の療法は対症療法であって、当面の神経症が軽快すればすでにその役目は終わるのである。
その先「人間の再教育」を標榜しているものはほとんど無いのである。
これを森田理論学習が引き受けるのだ。この分野はニッチで森田理論学習の独壇場である。
他の治療法はその目指す目的から言って「人間の再教育」というような視点を持つことはできない。
この分野こそが森田理論学習とその自助組織が生き延びていく唯一で最大の道であると思う。

「森田理論による人間の再教育」のキーワードとなるのは、「生の欲望の発揮」と「事実本位の生き方」であると思う。
これはとても奥が深い。これをとことん追求してゆく。
まだまだ研究して理論的に確固たるものにする必要があるのである。
これなら森田理論学習を、生涯学習として取り組んでみたいという人は出てくるのではなかろうか。





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Last updated  2016.02.19 07:52:02
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