森田理論学習のすすめ

森田理論学習のすすめ

2016.04.26
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カテゴリ: 森田番外編
イギリス人で日本人の妻と国際結婚した人が東京に20年暮らしている。

その彼が次のように言う。
たえず目に見えないスピードに背中を押され、もっと新しいもの、もっと珍しいこと、もっと便利な暮らしを手に入れるために働き続ける。
家に帰る頃には疲労困憊してベッドに倒れこみ、泥のように眠る。
街を歩く自分の視線はたえず何かを探してキョロキョロと落ちつきがない。
つまり、彼はイギリス人であるのに、東京の中で物欲に走り、働くか、寝るか、買うかの毎日を送っているという。

そんな彼でもイギリスに帰るとピタリと妙な心臓の高鳴りが止まるという。
まずイギリスでは日本のような人をせき立てる感じがしない。
世の中のペースはまるで止まったかのようにゆるやかなので走る必要がない。


そこで次第に我に返っていくわけだよ。
たとえば、あんなに家族との時間を削ってまで働く必要はなかったな。
毎日の生活が送れるだけの収入があればそれでいいんだとかね。
日本では僕は何かにとりつかれていて、イギリスに帰るとその魔法が解けていく気がするんだ。

ところが、そんなペースもいったん日本に帰ってくると、元の木阿弥になってしまう。
ただがむしゃらに働き、欲しいものをむさぼるように買い、手に入れていく。
そのために全員がいっせいに競争し、走り続ける。
イギリスではこんな現象を「ラットレース」と呼ぶ。
こんなレースに、彼は日本に戻るなり自動的に組み込まれてしまうのだ。

再び走り始めると、一人取り残されないようにどこまでも頑張り続けなければならない。
そんな暮らしの中で息切れしている人が多いからこそ、そのストレスが物を買う行為につながっていくのだ。


イギリスの美しい街並みを眺めていると、連なる家々に深い伝統や歴史を感じる。
また田舎の民宿に泊まると古いながらも丹念に手をかけた飾られた客室に、日本の我が家はどうだったのかと思い返す。生活習慣にしてもそうだ。

日本は給料が高く、イギリスは安い。
日本食は健康的でイギリスの料理はハイカロリー、しかも大味で美味しくない。
日本のシャワーは水圧が強く爽快で、イギリスは水が少ししか出ないため体を洗うのに時間がかかる。

でもどちらの国で暮らしたいかというと迷うことなくイギリスだ。
心豊かな暮らしが出来るのは間違いなくイギリスの方であると断言できる。

その日本も戦前までは農業が発達し、歴史があり、物がなく、質素な暮らしを続けてきた。
日本の環境は今のイギリスにとてもよく似ていた。
でも今や小さなアメリカだ。
かつての日本には素晴らしい伝統があったのに、人びとはそれを忘れ去ってしまっている。
だから今の日本の家や暮らしの中には何もないんだ。
(古くて豊かなイギリスの家 便利で貧しい日本の家 井形慶子 大和書房より引用)





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Last updated  2016.04.26 18:16:21
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分からない歴20年子@ Re[2]:成功するためには感謝力が必要となる(04/09) 森田生涯さんへ  お返事ありがとうござ…
森田生涯 @ Re[1]:成功するためには感謝力が必要となる(04/09) 分からない歴20年です子さんへ コメント…
分からない歴20年です子@ Re:成功するためには感謝力が必要となる(04/09) 森田を知って随分経つのに今だに難しく感…
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