森田理論は事実をとても大切にする。
そのためには事実をよく観察するという態度が大事である。このことをリンゴ農家の木村秋則さんから見てみよう。
リンゴの葉っぱの中央部分に穴が開いていた。
普通は虫に食われたのだろうと思う。でも真ん中だけを器用に食べる虫はいない。
木村さんは葉っぱを観察することによって、虫が食べた穴ではないことがわかったという。
ある時、この穴のあいた葉っぱの側に、斑点落葉病の黄色い病斑のついた葉を見つけた。
そこで、その病斑がどうなるか観察をしてみた。
すると、病気に侵された部分が、カラカラに乾燥していった。リンゴの葉がそこだけ水分の供給を絶って、病気を兵糧攻めにしているみたいに見えた。そのうち、病斑部がポロリと落ちて、穴があいた。
この穴が開いてから、葉っぱの横に付いていた小さな葉がどんどん大きくなっていった。
葉っぱを失った部分を補っているわけだ。スケールで計かったんだけれども、穴の大きさと葉っぱが大きくなった分はほぼ同じであった。穴がもっとたくさんあいて、それだけでは補えなくなると、今度は枝の先に新しい葉っぱを出すんだよ
このリンゴ畑にはギリギリの栄養しかないから、りんごの木がもともと持っていた自然の力が引き出されたのだと思う。
知れば知るほど、自然というものはなんとすごいものかと思う。
(奇跡のリンゴ 石川拓治 幻冬舎 192ページより引用)
なんという観察力でしょうか。事実をより深く知ろうとすると、感じが発生しより高まってきます。
すると、気づきや発見が増えてきます。すると、しだいにやる気や意欲が高まってくるのです。
このプロセスはとても大切なことです。
森田先生も、事実を自分の目で確かめて、正確に把握しようとする生活態度が基本にありました。
夜中の幽霊屋敷の探検、熱湯の中に手をつける実験、関東大震災の時の流言飛語の観察などがあります。
私が物をよく観察するということでいつも引き合いに出す話があります。
5歳位の子供が、新聞紙に水滴が落ちた時の事を次のように表現していました。
「新聞に水が一滴たれたら、小さな水の小山ができて、そこに写った字が大きくなった。だんだん水の小山が小さくなってきたら、今度は横に拡がっちゃった。そしたら裏の字も見えてきた」
事実に服従するということを体得することは大変難しいことです。
その態度を身に着けることが森田理論学習の目指していることはよくわかりました。
「具体的にはどうすればよいのですか」という質問を受けることがあります。
なかなか的確に説明できません。
その手始めとして、事実をありのままによく観察して、具体的に話したり書いたりするということだと思います。観念的、抽象的ではいけませんね。
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