森田理論学習のすすめ

森田理論学習のすすめ

2017.06.30
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カテゴリ: 行動のポイント
鳥取県の山あいの町八頭町では、耕作放棄地の田んぼを20センチほど掘り、用水路から水を引いてホンモロコという魚の養殖を行っている。
現在養殖をしている人は51人です。ブームは周りの町や他県にも広がっている。

ホンモロコは体長10センチほどの琵琶湖特産の魚で、昔から京都の料亭などで、高級食材として珍重されてきた。炭火であぶったり、甘露煮にしたりして食べる。上品な味の白身魚です。
ホンモロコを京都の台所である錦市場に持っていくと、甘露煮が100グラムで1,500円を超える値段をつけていたこともある。

しかし問題はホンモロコを食べる文化を持つのは京都周辺だけということである。
だから、われもわれもと京都の市場にホンモロコを出すと、途端に供給過剰になり、値段が下がってしまうのである。
生産者は、高級魚としてのブランド維持するためにどうすればよいのか。市場の拡大は図れないのか。
会合を開いてさまざまな議論が行われた。しかし妙案は出てこなかった。

ここでホンモロコの養殖の発起人である鳥取大学の七條喜一郎さんがある問題提起をした。

そこで始めたのがホンモロコの養殖だった。
最初はそもそも儲けようとか、採算が取れるとかを考えて始めた事ではない。
楽しいからしているのだ。それでもいいじゃないか。
産地間競争をしてたの生産者と争うなどもってのほかだ。
自分たちの田んぼで高級魚が育つ。そういう地域を誇らしく思う気持ちが大切なのではないか。
この七條さんの提案をもとに、生産者は出発した原点に戻って考えることにした。
ボタンの掛け違いが起こったのは、京都でホンモロコが高値で取引されているということに気づいたからだ。
このホンモロコが八頭町の農家が、現金収入を得るための戦略商品になるのではないかと甘い幻想を抱いたことから始まっている。
1番最初にホンモロコを養殖し始めたのは、そうではなかった。
過疎化進行する。空き家が増える。地域に活気がなくなる。そんな中で地域が元気になる。
若者はuターンしてくる魅力のある地域づくり。地域の人の相互交流が増えて、人間関係の輪を広げる。その一環としてホンモロコを養殖したら何かが変わっていくのではないかと思って始めたことだった。


私たちはホンモロコを生産した時、これを外の市場に持っていき、現金化しないといけないと頑なに信じていた。
京都の市場で値崩れが起きると、ホンモロコの品質と生産量だけにひたすらこだわり、他の産地に負けないように、価格競争をしてきた。海外産はもっと安いと言われ、しぶしぶ値下げに応じてきた。
こんな状態がずっと続けばお手上げになる。

そして、私たちが食べる魚は八頭町の外から入ってきたもの買って食べていた。
発想の転換をして、私たちは食べる魚は、お金を出して買わないで、私たちが作っているホンモロコを料理して食べるようにしたらどうか。みんなで集まり、工夫して美味しい食べ方のレシピを作る。

そしてホンモロコを知らない人に、食べ方を紹介しながら、こんなに美味しい魚が取れる八頭町を自慢する。

ホンモロコは、学校給食でも使うようになってきた。
七條さんたちは何度も小学校を訪ねては、ホンモロコが育つ水がきれいなこと、そんな環境に自分たちが暮らしていること繰り返し子供たちに教えている。
その結果、子供たちは自分の住んでいる地域を好きになってくれればいい。
そして将来八頭町に住み続けてくれることがあればもっといいと考えている。
(里山資本主義 藻谷浩介  NHK広島取材班  196ページより引用)

今の農家は自分たちの生産したもので、自分たちの生活を潤すという考え方が希薄である。
自分たちが自立するために米を作る、麦を作る、野菜を作る、ニワトリやヤギを飼育するという考え方をしなくなった。
売れる農産物を作り、それを市場に出荷してできるだけ多くの収入を得ることだけを考えている。
そして自分たちが普段食べるものは、販売して得た収入でスーパーなどで購入してまかなう。
やろうと思えばできるのに、実に効率の悪い方法をとっているのである。

現在、アメリカは日本に対して全農産物の完全自由化を目指している。
これが実現してしまうと、日本の農家が農産物を販売して現金化するという生活は成り立たなくなる。
アメリカの安い輸入農産物に対して簡単に負けてしまう。
その先はアメリカの穀物メジャーが我がもの顔で日本の市場に入り込み、暴利を貪ってしまうことになる。
この考え方は日本の農家が完全に資本主義の論理で頭の中も実際の農業のやり方も翻弄されていると言える。
八頭町の実践に学べば、農業をするということは、まず自分たちの食べるもの自分たちでまかなうということである。
自分たちの町でできるものを多品種少量生産で取り組んでいく。そして今まで町外からお金を出して購入していたものを町内で賄うようにする。
相互に融通しあうようになれば町内での人間関係も活発になってくる。
そういう方向でせめて食料の分野だけでも、お金に振り回されない生活の仕方に変更していくことが大切なのではないか。
いったん突破口を見出すと、それが様々な方面に波及していくことが考えられる。
利潤追求、効率化一辺倒の資本主義社会に対して、生活中心、人間中心の社会を作り出していくことが今人間に課せられた大きな課題である。





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Last updated  2017.06.30 06:30:06
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