森田理論学習のすすめ

森田理論学習のすすめ

2017.07.01
XML
岡山県真庭市は、県の北部に位置し、岡山県内でも屈指の広さを持つ。
しかし、人口は5万人に過ぎず、その面積の8割を山林が占める。
典型的な過疎の地域である。市内には大小合わせて30ほどの製材業者がいる。
この10数年来の出口の見えない住宅着工の低迷に喘ぎながら、厳しい経営を続けている。
それほど厳しい製材業界にあって、 「発想を180度転換すれば、斜陽産業も世界の最先端に生まれ変わる」と息巻く人がいる。
中島浩一郎さんである。中島さんは従業員を200名ほど抱える製材会社の代表取締役社長だ。

この会社では「木質バイオマス発電」を行っている。
製材所では樹皮や木片、カンナクズといった木のクズがたくさん出る。
その量は実に年間4万トンであると言う。今まではこれを産業廃棄物として産廃業者に処理してもらっていた。その費用は実に年間2億4,000万円かかっていた。

さらに、自分の工場で使用する電気のほぼ100%をバイオマス発電でまかなっている。
その金額は年間1億円であるという。
また、余った電力を電力会社に売っている。販売する電力が年間5,000万円の収入になる。
そのための設備投資が10億円かかったが、すでに完済しているという。

製材工場から出る木のクズは発電事業だけでは使い切れない。
そこで思いついた使い道が、それらを2センチほどのペレットにして燃料として販売することだった。
このペレットを1キロ20円ちょっとで販売している。
顧客は全国に広がり、 1部は韓国に輸出されている。
特に、お膝元の真庭市内では、一般家庭の暖房や農業用ハウスのボイラー燃料として急速な広がりを見せている。これを行政が「バイオマス政策課」を作って強力に後押ししている。
ペレット専用のボイラーやストーブを農家や家庭が買うとき、補助金を出しているのである。
市の調査によると、真庭市で使用するエネルギーのうち、実に11%をこのペレットでまかなっているという。 11%と聞くとそれほど大きくないと感じるかもしれないが、日本全体における太陽光や風力も含めた自然エネルギーの割合はわずか1%である。

(里山資本主義 藻谷浩介 NHK広島取材班 角川書店 28ページより引用)

本来ゴミとして捨てられるものの利用価値を見つけて、最後まで活かしていくという考え方は森田理論に通じる。「物の性を尽くす」という考え方だ。森田先生のエピソードに古下駄の話がある。
ある入院性が鼻緒の切れた古い下駄をゴミ溜めに捨てた。それを見ていた森田先生は、それはまだ燃料としての使い道がある。そのものの持っている利用価値を最後まで活かしていくという考え方が大変重要であると説明された。

1960年代までは、家で使う燃料は全部山から調達していた。
裏山から薪を切り出し、ご飯を炊いたり風呂を沸かしていた。

今は山は荒れ放題である。足を踏み入れることは大変危険である。
蛇やスズメバチなどの危険生物がいる。イノシシ、鹿、熊などが増えてわがもの顔で動き回っている。
そこで私のふるさとの山はヒノキの木を植えることになった。
これはかって受けてきた山の恵みを放棄することだ。

今や農家の冷暖房、風呂、調理のエネルギー源は、完全に「電気、石油、ガス」にとって変わった。
身近にある自然の燃料源は見向きもされず放置されるようになった。
「石油やガス」は取り扱いが煩わしいということがない。手を汚すことがなく、都会と何ら変わりがない。しかし、その方向は農家が貨幣経済に完全に呑み込まれる事を意味していた。
その方向は、お金に振り回される生活を受け入れざるを得なくなった。
それと並行して農家の人たちが元気をなくし、生きがいを失ってきたということが1番の問題である。

今や農家でも自分たちが食べる物を自分たちで作るということをしなくなった。
自給自足の生活よりは、お金を払って魚や肉、野菜までも買って生活するという仕組みが完全に定着した。農家にはそれ以外にも高額な農機具、自家用車や軽トラックなどが必需品となっている。
それなりの費用を賄うために、単一作物の大量生産や労働の切り売りによる現金収入の増大が不可欠となった。そうした生活スタイルは、労働の喜びをなくし、地域の人間関係を希薄にしてきた。
田舎暮らしは刺激がなく、楽しいことがなく、若者は村から都会に移り住み、お年寄りだけになってしまった。空き家や耕作放棄地が増大し、過疎や限界集落がどんどん拡がっている。

これらの問題を解消するには、田舎の持っているものの潜在価値見つけ出して、とことん活用していくことだと思う。
そう考えれば、田舎には田畑がある。山がある。竹がある。山菜が生えている。カキやクリなどの果実がなっている。四季折々の花が咲き乱れている。魚が住んでいる池や川がある。山にはイノシシなどがいっぱい住んでいる。野菜つくりや米作り等に精通したお年寄りがたくさん住んでいる。生活の知恵を数多く持った貴重な財産である。
また耕作放棄地や空き家はタダ同然で使用できる。空き家など住んでくれれば補助金を出すところもある。
これらを昔のようにとことん活用するようになれば、田舎暮らしは張り合いも出てきて、むしろ都会よりはストレスのない人間らしい生き方をすることができるようになると思う。
そのためには森田でいうところの、自分たちが元々持っていたものに焦点を当てて、とことん活用するというところに考え方を転換する必要がある。





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  2017.07.01 10:55:54
コメント(0) | コメントを書く
[森田理論の基本的な考え方] カテゴリの最新記事


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

PR

Keyword Search

▼キーワード検索

Favorite Blog

寒い時期の脳卒中、… 楽天星no1さん

長谷寺~室生龍穴神… へこきもとさん

心食動操 メルトスライム25さん
神経症を克服します♪ ROSE33333さん
「私」がいる幸せ えみこた2さん

Profile

森田生涯

森田生涯

Comments

分からない歴20年子@ Re[2]:成功するためには感謝力が必要となる(04/09) 森田生涯さんへ  お返事ありがとうござ…
森田生涯 @ Re[1]:成功するためには感謝力が必要となる(04/09) 分からない歴20年です子さんへ コメント…
分からない歴20年です子@ Re:成功するためには感謝力が必要となる(04/09) 森田を知って随分経つのに今だに難しく感…
森田生涯 @ Re[1]:成功するためには感謝力が必要となる(04/09) 長谷川勤さんへ 読んでいただいてありが…
長谷川勤@ Re:成功するためには感謝力が必要となる(04/09) 森田理論学習のすすめ のブログ 本日初…

Calendar


© Rakuten Group, Inc.
X

Mobilize your Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: