森田理論学習のすすめ

森田理論学習のすすめ

2017.08.12
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森田先生は実践や行動をするときに、不安や恐怖をなくして、おもむろに実践や行動するという態度を諫めておられる。
また、実際に行動する前に、意欲ややる気を高めて、勢いをつけて取り組むこともだめだといわれている。

決心とか自信とかいうものを、思いっきり投げ出してしまって、ただ自分の机の上に、原稿用紙とペンと参考書などを並べて、静かに退屈しながら、それと、にらめっこをしていればよい。
その時間は1日に、 10分なり、 30分なり短い時間で、何回でもよいから、なるべく度々 、机の上に座ればよい。
そして、あるいは三行でも、落書きし、また参考書を手当たり次第、開いたところでたらめに読んでいればよい。
このありさまを1週間なり、 3週間なり、忍耐して続ければよい。
その全体の意味から言えば、できても、出来なくとも、いやでも応でも、しなければならぬ事は、ともかくもするということに帰着する。
その時に、勇気とか自信とか言うものの、付け焼き刃をしてはいけない、ということである。
今、私の言う通りにすれば、たちのよい人は、 2日目から、早くも書く気になる。


私は大学を卒業して初めての仕事は訪問販売の飛び込み営業の仕事でした。
しかし、対人恐怖症の私にとって、それは精神的にとてもきつい仕事でした。
最初は同期入社した仲間たちに負けたくないという気持ちが多少ありました。
しかし冷たく断られてばかりいると、しだいに訪問する意欲がなくなりました。

森田先生に言わせると、そこで仕事をさぼってはいけない。
いやいや、仕方なしに、断られ続けても仕事から逃げてはならないということだと思う。
仕事から逃げると、一時的には精神的に楽になるが、そのうち何もすることがなくなって虚しくなる。
大学まで出たのにどうして訪問営業の仕事で苦しまなければならないのだろうと思う。
さらに、営業成績が上がらず上司や同僚から軽蔑したような目で見られる。
しだいに針のむしろに座らされているような気分になる。
同期入社をした人たちは、今や続々と定年退職を迎えている。


森田理論学習を積み重ねた今だったら、仕事から逃げないで、頑張ることができたであろうか。
これについては残念ながら未だ自信がない。冷たい断りの嵐の中で、その辛い気持ちを抱えたまま、次の訪問先に向かうことができたであろうか。頭ではわかるが、たぶん今でも体がついていかないのではないかと思う。そういう気持ちがいつもあるので、たまに訪問営業の辛い時が夢にまで出てくる。

神経症で悩んでいる人は、逃げてはいけないのはよくわかっているのだが、それができないから神経症に陥ったのだ。不安や恐怖を持ったまま、目の前の仕事にイヤイヤ仕方なしにでも取り組みなさいといわれてもどうしても体のほうがついていかない。森田理論はそれができないから症状に陥ったのに、強いてそれをやれと、どうして無茶なことを言うのかと反発される人も多いと思う。

私の場合、振り返ってみると、そういう冷たい断りの嵐の中でも逃げずに訪問営業に取り組むことができた時期がある。それは2人1組で訪問営業活動をやっていた時である。その時は先輩や同僚がいるので、おいそれと逃げ出すことはできない。
それが歯止めとなって、冷たい断りを受けてもある程度水に流して、次の訪問先に向かうことができた。


ここで教訓として得たことは、私のような場合は、自分ひとりで不安や恐怖を抱えたまま、目の前の仕事に取り組んでいくということは大変難しいことだ。
のべつ幕なしに不安や恐怖を抱えたまま、イヤイヤ仕方なしにでも仕事をしなさいというよりも、このように視点を少し変えれば目的が果たせる場合があるのだ。自分をサポートしてくれる仲間がいれば、すぐに逃げ出さないで、目的を達成できていたのだ。
さぼらないので1日中仕事をするので、一人で営業活動をするよりも、成績は良かった。
だいたい営業マンは上司の目がないので、使命感が強くない限り、容易にさぼり癖がついてしまう。
そういう場合は、ここに症状の克服の何かのヒントがあるのではないかと思った。

考えてみれば、倉田百三氏が普通の人では考えなれない強迫観念で悩まれたとき、森田先生が症状で苦しくても休まないで筆を執りなさいとアドバイスし続けた。
倉田氏は、そういうサポートを得て、森田先生に素直に従って強迫観念を乗り越えていかれた。
森田先生の日記指導と面談による親身なサポートがなかったとしたら完治は望めなかったと思う。
神経症を乗り越えるというのは、森田理論もさることながら、「森田正馬」という人の存在が大きくかかわっていたということだと思う。
だから神経症で悩んでおられる方は、森田理論を学んで自分一人で乗り越えようとするよりも、人の力を借りて乗り越えようと柔軟に考えられたほうがより現実的であると思う。

そういう意味では、困難に陥ったとき、集談会の仲間や尊敬する先輩をイメージすることができることは大きな意味がある。
不安や恐怖で押しつぶされそうになったとき、何かあったら多くの仲間たちやあの先輩が話を聞いて相談に乗ってくれる。さらに症状の真っただ中の仲間たちも不安や恐怖にさらされながらも頑張っているのだと思えれば不安や恐怖には確かに耐えやすくなる。
そのためには、1回や2回の参加だけではそんな人には巡り合うことはないだろう。
最低でも1年ぐらいは参加していると、自然にそういう先輩や仲間を見つけることができる。
森田理論の理解は、そういう状態が土台としてできた後に、少しずつ身に着けてゆけばよいと思う。





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Last updated  2017.08.12 08:12:01
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