司馬遼太郎の「 街道をゆく」のオランダ紀行に、オランダ北部の全長30キロの大堤防を車で走るシーンが出てくる。左が海、右が湖。10キロほど走ったところで停車し、司馬さんは高台に立つ。海には白い波が立つが、湖は波もない。「国土とはこういうものか!」小さい展望塔には、三人の男たちの土を耕す姿がレリーフされていて、「将来を立てないと民族はなくなる(“Een volk dat leeft, bouwt aan zijn toekomst”)」と刻まれている。「今、私たちが立っている現在もかつての人々が将来を思って営んでくれたおかげである」と司馬さんは思う。私たちもまた将来の人々のために現在を営む必要がある。
*締切大堤防 Afsluitdijk
オランダ語の名称は、"Afsluit"(閉鎖、締め切り)と"Dijk"(堤防)という二つの単語から成り立っていて、日本語名称もそこから来ている。 この堤防は、ゾイデル海開発プロジェクトの一環であり、かつてゾイデル海(湾)であったアイセル湖を、外海である北海(厳密には北海に繋がっているワッデン海)から仕切っている。 淡水化し水位を下げたアイセル湖の 4 箇所(北ホラント州のウィーリンガーメール、フレヴォランド州の北東ポルダー、東フレヴォランドと南フレヴォランド(現在のアルメレ、レリスタット、ドロンテン、ゼーヴォルデの各基礎自治体))では大干拓地が造成された。 堤防の南西端は北ホラント州のヴィーリンゲン基礎自治体、東北端はフリースラント州のウォンセラデール基礎自治体である。 締切大堤防上には、欧州自動車道路 E22/A7(E22:国際 E-ロードネットワーク、イギリス西部~同・マンチェスターManchester~オランダ・アムステルダム Amsterdam~ドイツ・ハンブルク Hamburg~スウェーデン・マルメ Malmö~ラトビア・リガ Rīga~ロシア・モスクワ MockBa~ロシア中央部まで5,320km、A7:ドイツ連邦高速道路、デンマーク国境~オーストリア国境まで 963km ドイツを縦断)が通っている。 展望台の登り口にある、大堤防の石を積み上げる男たちが刻まれたレリーフは、 「将来を樹てないと、民族はなくなる。」(EEN VOLK DAT LEEFT BOUWT AAN ZIJN TOEKOMST)と題されている。