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29日
「二宮翁夜話」(底本は、「報徳要典」昭和9年1月1日発行)
二宮翁夜話巻之3(【 】は夜話の通しで表記する)
【129】翁曰く、人生尊ぶべき物は、 天 禄 を第一とす、故に武士は 天禄 の為に、一命を 抛 つなり、天下の 政事 も 神儒仏 の教へも、 其 の 実 衣食住 の三つの事のみ、 黎民 飢 へず 寒 えざるを王道とす、故に人たる者は、 慎 んで 天禄 を守らずばあるべからず、 固 く 天禄 を守る時は、 困窮 艱難 の 患 ひなし、 仮初 にも、我が 天禄 を 賤 むの心出る時は、 困窮 艱難 忽 ちに 至 る、 夫 れ 天禄 の 尊 き事は 云 ふ 迄 もなし、 日々 の 衣食住 其 の 他 、 履 き 物 笠 傘 よりして 鼻 をかむ 紙 迄 も、 皆 天禄 分内 の 物 なり、 嫁 は 他家 より 来 る者といへども、 云 ひもてゆけば、 天禄 の 中 より 来 ると 云 はんも 違 へるにあらず、 然 るに我が 此 の 方法 は、 天禄 なき者に 天禄 を 授 け、 天禄 の 破 れんとするを 補 ひ、 天禄 の 衰 へたるを 盛 んに 為 し、 且 つ 天禄 を 分外 に 増殖 し、 天禄 を 永遠 に 維持 するの 教 へなれば、 尊 き事 論 を 俟 たず、 古語 に、 血気 ある者、 尊信 せざる事なし、といへるは、 我 が道の事なり。
【129】尊徳先生はおっしゃった。「人生尊ぶべき物は、天禄を第一とする。だから武士は天禄のために、一命をなげうつのである。天下の政事も神・儒・仏の教えも、その実、衣食住の三つの事のみである。庶民が飢えず、こごえないようにすることを王道とする。それゆえに人たる者は、慎んで天禄を守らなければならない。固く天禄を守る時には、困窮・艱難の心配はない。かりそめにも、自分の天禄を賤しむ心が出る時は、困窮・艱難がたちまちに来る。天禄の尊い事はいうまでもない。日々の衣食住その他、はきもの、笠やからかさから鼻紙までも、皆天禄分内の物である。嫁は他家より来たる者ではあるが、その原因を考えると、天禄のうちより来たるといっても違いはない。だから私のこの方法は、天禄がない者に天禄を授け、天禄の破れようとするのを補い、天禄の衰えた者を盛んにし、かつ天禄を分外に増殖して、天禄を永遠に維持するところの教えであるから、尊い事は論をまたない。
古語に、『血気ある者、尊信せざる事なし』というのは、私の道の事である。」
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