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1945年8月。疎開した皇后や皇太子らとも離れ、地下の研究所で生活を送る天皇。敗戦が決定的となり、国民に平和をと願う天皇は降伏を示唆するのだった。マッカーサーとの会見などを経て、"人間宣言"を決断するまでを描く―――。 面白い。当時は神格化されていた天皇の、心の葛藤と孤独を、穏やかに静かに描いた異色作。カラーであっても抑えられたトーンは、時にセピアやモノクロのように映ります。うまく幻想シーンを取り入れることで、細部が気にならずに、異国の人々から見た日本の姿を受け止めやすくなっていました。押し付けがましいところはひとつもなく。捉える視線が優しかった。酷い戦争とはうらはらに、現人神とされ崇められる天皇の存在。周りに絶えず侍従らがいようと、その孤独は計り知れないものがありました。ときに、子どもように、精神の衰弱さえ感じる天皇を、イッセー尾形が熱演しています。彼特有のユーモアは健在で、海外製作の映画のなかに、それが活かされていることに驚きました。そして、ユーモアだけじゃない、高貴で孤高な精神までしっかり人物から感じとれるのでした。“天皇”という、とても量りきれない人物であっても、その人となりを好意的に見られたのは、演出と役者さんによるものが大きいのではないでしょうか。日本が戦争をしていたころ。その存在は、国勢に流されるばかりだったのでしょうか。玉音放送の翌年、一月一日になされた“人間宣言”で、国のあり方を変え、新日本建設を望んだ昭和天皇ヒロヒト。高貴であって風変わりな身のこなしも、震える口元も、記憶の中のイメージにぴったりと合わさります。悪夢のシーンで、大空襲を幻想的に描いていたのが印象深い。あえて戦闘機は、CGを使い、真っ黒な架空の魚として、空を飛びます。得体の知れないものの恐怖、縦横無尽に飛び回る様は、手に負えない怪物のように。とても静かで、豪奢なセットが見事。気高さの伝わってくる、じっくりと観られる作品でした。とにもかくにも、イッセー尾形の存在、間が抜群。登場は僅かでしたが、侍従の佐野史郎、皇后の桃井かおりも好演です。役者さんに拍手 したくなる、そんな作品でした。監督 アレクサンドル・ソクーロフ 製作 イゴール・カレノフ アンドレイ・シグレ マルコ・ミュレール 脚本 ユーリー・アラボフ 編集 セルゲイ・イワノフ 音楽 アンドレイ・シグレ 出演 イッセー尾形 ロバート・ドーソン 佐野史郎 桃井かおり (カラー/ロシア・フランス・イタリア・スイス合作/115分)
2007.10.23
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1923年のベルリン。突然、同居していた兄が自殺し、動揺を隠せない主人公アベルは、別居中の義姉の元に身を寄せるが、別の殺人事件の容疑者にされてしまう。間もなく、無事に釈放されるアベルだったが、怯えからすっかり人が変わってしまうのだった―――。スウェーデン出身のベルイマン監督、初鑑賞です。60年間、映画を撮り続けてきて、その丁度中間にあたるころの作品。劇場未公開。ベルイマン作品のなかでは異色で、アメリカ人からの強力な資金援助を受けているそう。セットが豪華なのはそのせい。まずは、映像に引き込まれました。1920年代の不穏なドイツ、陰鬱で、重苦しい。華やかで、猥雑で、グロテスクで、どこをとっても何気に痛いシーンが続きます。義姉との関係がメインストーリーですが、彼女がまた普通ではありません。定まらない情緒が、不安を煽る。街も、ドイツの国全体も、主人公さえ、みんなが不確かで、なにかに怯えているようです。それは当時の時代を見事に再現した、監督の手腕。見事に、えもいわれぬ恐怖感が漂っていました。殺人事件の真相は、ラストで明らかになります。けれど、伏線とかそういったものとは、無縁のサスペンスといえそう。見所は、ユダヤ系アメリカ人である主人公が、狂いつつある異国ドイツで感じる恐怖なのではないでしょうか。ナチスドイツがこの数年後行った人体実験が、そのままに物語の犯人の行為と結びついていて、怖い。当時のドイツ映画を再現して見せた作品だそうですが、まったくイメージどおりのドイツがここにあります。アベルが逃げたのは当然だと思う。ただひたすら、この場から逃げ出したくなる。これが、当時のドイツ人、みんなの思いだったのかもしれません。● ● ● ●監督・脚本 イングマール・ベルイマン 製作 ディノ・デ・ラウレンティス 製作総指揮 ホルスト・ヴェントラント 撮影 スヴェン・ニクヴィスト 音楽 ロルフ・ヴィルヘルム 出演 リヴ・ウルマン 、デヴィッド・キャラダイン 、ゲルト・フレーベ ハインツ・ベネント 、ジェームズ・ホイットモア (カラー/119分/ドイツ・アメリカ合作)
2007.10.19
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昨日のお出掛けでノートブックを買いました。むかしからの文房具店フリーク。紙の匂いや得体の知れないカビ臭さが好きです。そんな匂いのするところ、きっと最近では少ないと思うのだけど。それでも、独特の匂いが文房具店にはあります。学生のころに、漫画やイラストを描いていたころ。Gペンや丸ペンやスクリーントーンなど、よく買いに行きました。小さくて古ぼけたお店なんだけど、その店は実家のある町に、まだちゃんと建っています。このノート、カバーがマグネット式になっていてスマートで、たくさんのサイズやデザインがありました。わたしが買ったのは、中身が無地のもの。最近、なにか無性に描きたくて仕方ないので、欲しかったノート。裏表紙にはポケットが付いてたりして、実用性もありです。このシリーズでスケジュール帳も幅広くあるので、使う方にはおすすめかも。ちなみに、私はスケジュール帳を使いません。忙しくない身です昨晩、眠る前、寝転がって描いたもの。今読んでいる本が面白いので、文庫のカバーにあった百けんさんの写真を、見ながら描いてみました。描きたいとはいっても、こうやってただ悪戯書きのように・・・。新しいノートが無駄にならないようにしないといけません。
2007.10.17
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1946年、ロンドン。作家ベンドリックス(ファインズ)は、再会した旧友ヘンリー(レイ)から、妻サラ(ムーア)が浮気しているらしいとの相談を受け、嫉妬を感じる。実は戦時中、ベンドリックスは彼女と愛人関係だった。2年前の夏、逢引のさなかに爆撃を受けてから、関係は終わっていたが、サラへの想いが再燃した彼は、探偵に素行調査を依頼する。そして2年前の爆撃時に起こった、意外な真相を知ることになるのだった――― 先日の「プルートで朝食を」のニール・ジョーダン監督。原作はグレアム・グリーンの「情事の終わり」。同じタイトルで過去に一度映画化されています。サスペンス調で描かれる、過去と現在が交差する展開。そこが釈然とぜずに、感情移入しにくい作品でした。ニール・ジョーダンで期待していただけに、ちょっと残念です。主演男優レイフ・ファインズは顔立ちが美しい。美しいけれど、巧いけれど、いつも名演とは思えない役者さんです。悲劇にあっても、絶望にあっても、崩れない容姿に感情はなかなかえぐられません。美男子ゆえ、ですね。特徴ある、風貌の良さある俳優さんのほうが、私的には好みです。美男子は汚れになろうとしますね。ブラピ、オダギリジョー、過去にはリバー・フェニックスも。美を壊してこそ、醜いものが生みだせるようになると思うから、格好良いだけでは、美男子なだけでは物足りないです・・・全体が暗い。さほど官能的ではなく、爆撃があった日の秘密を知っても、あまり驚きはありません。心が動きませんでした。無神論者だったサラが、奇跡の出来事によって生き方を変えてしまう・・・実は浮気ではなく、神に傾倒していたサラなのでした・・・共感しにくい題材でもあります。二人の人物像と背景が、ぼやけていたから余計、絵空事と感じてしまう。互いがどうして、肉体以外のどんなところに、惹かれ合ってるのか、わからないまま。文芸作品の趣は、同じくレイフ・ファインズ主演の「オーネギンの恋文」を思い出させます。同じように、もやもやを残して終わってしまいました。 監督・脚本 ニール・ジョーダン 製作 スティーヴン・ウーリー 、ニール・ジョーダン 原作 グレアム・グリーン 撮影 ロジャー・プラット 音楽 マイケル・ナイマン 出演 レイフ・ファインズ 、ジュリアン・ムーア 、スティーヴン・レイ ヘザー・ジェイ・ジョーンズ 、ジェームズ・ボラム 、イアン・ハート (カラー/101分/イギリス・アメリカ合作)
2007.10.16
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なんて、癒されるんだろう。始終、温かかった。古きよき言葉のニュアンスが、センセイが、温かかった。切なくても。いつもどおり映像を先に。気に入って、つぎに原作を手に取る。細かな展開は変えてあるけれど、大まかにはドラマと同じ。特徴たっぷりな台詞は、そのままだった。映像を先にみると、どちらにもがっかりさせられることがないから良い。私の頭には嫌でも、センセイ=柄本明さん、月子=小泉今日子さんが浮かびます。当時柄本さんは55歳くらい、老人の演技をしていたけれど、ステキでした。壮年の魅力漂う男優さん、イメージが出来上がってるせいもあり、他の誰も浮かんできません。もう亡くなってしまったけれど、笠智衆さん? 三國連太郎さん? 寺尾聰さん? ・・・ちょっと惚けたところのある知的な人であってほしい。それでもすでに柄本さん意外に思いつかない・・・映像を先にみると、残念なところはそこですね。 こんなふうな恋の始まり、育くまれてく愛は素敵です。私もセンセイに頭を優しく撫でてもらいたい、激しくそう思う。(笑)すっかり月子になった気分で読んでいました。静かで、香りまで漂ってくるような、お酒が飲みたくなる本でした。センセイがいなくなった、月子さんの寂しさを想うと・・切なくてたまらない。自分が月子なら、寂しくて寂しくて、どうしようもないだろう。人との別れ、こんな純粋な寂しさを感じるのは久しぶりだった。久しく愛しい人との別れを体験していないから余計に。この痛さから立ち直る力が、誰にもあるんだって考えるだけで、人のすごさを思う。時間が解決してくれたことはたくさんあるけど、月子さんはもしかしたら、もう恋ができないのじゃないか、センセイひとりを愛していくのじゃないか・・・と思う。センセイが長くひとりで居た様に。そうしたら、切なさは、もっとずっと深くなっていった。
2007.10.13
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休日。紅葉狩りに出かける。南区の奥のほう、定山渓の奥のほう、豊平峡ダムというところ。豊平(とよひら)と書いてほうへいと読むそう。見事な紅葉が見られると、有名な観光名所で、この季節かなりの人出でした。行きは2キロほどある道を歩いてダムまで。長い長いトンネルを歩き、時折、途切れたところに美しい山の景色が広がる。ちなみに上の写真は、駐車場から見た山。寒くて震えながら、コートも着ないで来た身を後悔しつつ、歩く。そうしたらゆっくりと、体が暖まってきた。ダムの深さに吸い込まれそう。覗き込むと怖い。落ちそうで。周りを囲む木々は美しく、空気は冷たく凛としまっていて、気持ちも引き締まるよう。小さな売店で、焼きとうもろこしを買って食べた。おそろしく甘いとうきびだった。 景色を切り取るというけれど、切り取ってはもったいないけれど、それならばここ!と思った景色。そして、帰りは悠々。10分間隔で往復している電気自動車で帰る。とはいっても混みこみの、すし詰めで。
2007.10.13
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アメリカのユング派精神分析医が、心の危機に処方する16の物語を紹介。昔話の中から選んだ中年童話なるもの。それを紐解き考察していくと、面白いことにいっぱい気づかせてくれます。解説は、河合隼雄さん。日本の昔話がたびたび登場するのは、奥深いたくさんの物語があるからなのでしょう。当たり前のように、子どもの頃から昔話に触れてきたのはラッキーです。欧米が青年の文化で、東洋は中年・老年の文化だとは、以前どこかで読んだけど、欧米作品が極端に少ないのはそのせいなんですね~男と女は全く違った成長をして中年に至る。その過程が理解できると、配偶者との間にも理解が生まれる気がします。知っておいて良かったと思えることが、たくさんでした。女性の知的成長は‘沈黙’から‘従う’段階へ――自分自身の精神的な経験に頼る‘主観的知識’へ――そして他人の真実に調和させて、バランス感覚を得るに至るのだそうです。自分が今どの地点にいるのか、なんとなく分かった気がします。男も女も、歳を重ねるごと、自分のなかの異性をより大切にしていくようになるなんて、面白いですね~女性は男らしく意見を持ち、男性は家庭を離れ成長していく妻の変わりに、女性的になってお料理をしたりする(笑)円満な中高年夫婦はたしかに、そうしてる気がする。自然と上手くできているものです。内なる女性に気づかないと、新たな内的女性を求めて‘浮気’・・・ということになってしまうそうです。童話が教科書に思えてきます。ちなみに、中年童話では‘5’という数字が大きな意味を持ってるそう。たびたび登場してきます。夢の不思議を再確認して、また意識して夜夢が見られそうです。
2007.10.11
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ある日、ロンドンで働く証券ディーラー、セバスチャン(ルソー)は、モントリオールに住む母ルイーズから、父親がガンで容態が悪いことを知らされる。父親レミ(ジラール)は大学教授で、女ぐせが悪く、これまでさんざん家族に迷惑をかけてきた。父のような人間にはなるまいと、別の道を歩んできたセバスチャンだったが、葛藤を抑えながら、“友人を呼んで楽しい病室にして”という母の頼みを聞き入れ、行動を開始するのだった―――先日観た「海を飛ぶ夢」と同じ尊厳死を、一部扱ってはいても、違った趣の作品になっていました。死ぬまでに観たい映画1001本に選ばれ、アカデミー賞・外国語映画賞を獲ってはいますが、日本では意外と評価は低いようです。生き方の違いか、独特のユーモアのせいか・・?耐えること、言葉にしないでも伝わるもの。日本人の慣れ親しんだ気質とは逆な、主人公レミの末期なのでした。 この映画は、同じドゥニ監督が1986年に撮った「アメリカ帝国の滅亡」という映画の主人公たちが出演しています。観ていませんが、4人の男女が延々セックス談義をする、というものらしい。死という重いテーマにユーモアを持ち入れたくて、この役者陣となったそうです。その通り、ユーモアを観るとなかなか楽しめるかも。とにかく前作を引きずってるのか、下ネタ+下品な台詞が飛び交うのですが、友達の中年男女が集まって延々と語りあっていられるのは、楽しそうでした。ただ、主人公レミには死期が迫っているのです。父の生き方に反発して、家を出た子どもたちは実家と疎遠になっていました。やり手の証券ディーラーである息子セバスチャンは、婚約者とともにモントリオールへ戻り、父の最期に尽力します。病室の手配から、友人知人への連絡、痛みを抑えるためのヘロインの入手まで・・・あらゆることを。まあ驚くほどのやり手ぶりで、勢いよく展開していく前半はリズミカル。会話劇を楽しみながら、死にゆく人と見送る人の、心の葛藤を見守ることになります。それが好きか嫌いかは、分かれるところ。好きなことをして、家族や友人に見守られて、世を去る瞬間を自分で決められるとしたら、それは幸せでしょう。息子とのわだかまりも解け、たくさんの友人に見守られて幸せそうな最期でした。ただ、節操がなく、監督もいうとおり、哲学がない。(哲学なんて言葉、映像特典をみたから出てきたのだけど)難しいことじゃなくて、万人に通じる死にゆくときの知恵となるようなことがなかったと、思ったのでした。ヘロインを手に入れるため、レミの元愛人の娘ナタリー(マリー=ジョゼ・クローズ)と連絡を取ったセバスチャン。この物語では、彼女が第二の主人公のようです。母親との関係が悪く、麻薬でボロボロなナタリーは、レミの死に立ち会うことで次第に再生していきます。快楽を得てきたヘロインで、目の前のレミの痛みを癒し、死に至らせた・・・どんな思いでそれと向かい合ったのでしょう。彼女の仄かな恋が、きちんと封じられてよかった・・レミやその友人のように節操のない性を謳歌する遺伝子が、セバスチャンに流れていなくってよかったです~3秋の木々、紅葉した湖畔の情景が作品を盛り上げています。これからの季節にいいかも。秋の夜長に。監督 ドゥニ・アルカン 製作 ダニエル・ルイ 、ドゥニ・ロベール 脚本 ドゥニ・アルカン 撮影 ギイ・デュフォー 音楽 ピエール・アヴィア 出演 レミー・ジラール 、ステファン・ルソー 、マリ=ジョゼ・クローズ マリナ・ハンズ ドロテ・ベリマン 、ルイーズ・ポルタル (カラー/カナダ・フランス合作/99分)
2007.10.10
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ブッキングで復刊刊行されている、佐々木丸美さんの処女作。一連の18冊は、来年まで毎月1~2冊刊行され続けます。一度「恋愛今昔物語」に目を通しただけで、真新しい復刊本はずっと読みなおすことなくきました。表紙を眺めたあと、本棚に収められてきました。丸美作品の表紙といえば味戸ケイコさん。今回、新しく書き下ろされた表紙は新鮮です。まだ慣れないのは感覚ばかりじゃなく、これまでの表紙に十年以上、愛着を持ってきたからでもあります。今回改めて、また読み返してみた「雪の断章」は、少しだけ今までと違った感想でした。コレクションが刊行されるにあたって、書評家の三村美衣さんが書かれた言葉――そのまま頷いて、なるほどと溜め息をついたりして。少女小説の名作には、数奇な運命に弄ばれる孤児が溢れ、文学少女だった私は例に漏れずしっかり「孤児=ロマン」という刷り込みを受け・・・・・佐々木丸美の小説を開くと、そんな少女時代の記憶が蘇り、懐かしさと同時に気恥ずかしさを覚えてしまう。<孤児>シリーズはまさに「過去と未来へのタイムマシン」なのだ ―――三村美衣そう。私は文学少女ではなかったけれど、学生時代に出会った孤児の物語には憧れるなにかがあって、三村さんじゃなくても「なぜ自分は孤児ではないのだろう・・」なんて思っていたものです。そんな女の子はきっといっぱいいたはず。少女時代の妄想を(しかも今でも持っている)大人にも堪える物語として紡いだ作家こそ、佐々木丸美さんだったのではないでしょうか。懐かしくて、気恥ずかしい。今回妙に、その気恥ずかしさを覚えて、改めて大人になってしまったものだ・・・と寂しい思いがしました。ロマンスと現実に揺れて。手放しでノックアウトされはしなくなった私を、自覚しました。ようやく孤児シリーズを卒業して館シリーズの魅力に気づいたような・・・遅すぎる成長に苦笑いしつつ。それでも相変わらず「花嫁人形」には泣いてしまうのだろうな~。ともあれ、今自分が札幌にいて、札幌の冬を描いたこの作品には、相当に思い入れが深く、雪の美しさ冬の厳しさ、丸美さんが愛した街で暮らしている悦びを噛み締めました。誤字が気になると聞いていたので、なんとなく気にしながら読んだせいもあると思いますが、最低5箇所はありました。普通の本にしたらありえないことかなと思うけれど、それほど読み込んでいる本はなかなかないので、あっても気づかないだけなのでしょうか。ちょっと多い?一文字ならともかく熟語がまったく違っていたのにはショックです。復刊第一冊目だったからなのか、、さらと読んだ「恋愛今昔物語」では気になる箇所はありませんでした。次回は11巻・12巻の「ながれ星」「恋愛風土記」です。丸美さんの季節がやってきた大通り公園を、散歩したくなりました。
2007.10.09
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2003年、イラク戦争開戦直前のローマ。2人の娘の父親でもある詩人のアッティリオ(ベニーニ)は、毎晩ある女性との結婚式の夢を見ていた。彼女の名前はヴィットリア(ブラスキ)。しかし現実の世界では、アッティリオがどんなに自慢の詩で彼女への愛を語ろうが、まるで相手にしてくれないのだった。ある日、伝記作家である彼女が、イラク人の詩人フアド(レノ)の伝記を仕上げるため、イラク滞在中、爆撃で負傷し意識不明の重体に陥ってしまう。報せを受けたアッティリオは、危険な戦地へと向かうのだったが・・・。久しぶりに好きな、ベニーニ作品最新作を観ました。コメディのなかに愛を感じるのは、いつもと変わらないステキなところ。イラク戦争によるバグダッドの惨状を描いたシーンもあって、敬愛するエミール・クストリッツァ作品のような雰囲気も持っていたと思います。素晴らしかった「ライフ・イズ・ビューティフル」には及ばないけれど、こじんまりとまとまったドラマ。魔法にかかったようなファンタジックな展開は、まるで御伽噺です。偶然の出来事を、魔法に見せる手腕が好き。毎晩夢に現れる女性への恋、そして悲劇。最後のサプライズまで、多少、ご都合主義で進みますが、ファンタジーコメディなので気になりませんでした。バグダッドで負傷し、死にかけている愛する人のために、詩人は取るものも取らずイラクへと向かいます。空港は閉鎖され、ひとり陸路でイラク入りしたアッティリオは、命の危険も顧みず、意識の戻らない彼女を救うため、医薬品の調達に奔走するのでした。イラクで彼を助けてくれたのはイラク人詩人・フアド。ジャン・レノが違和感なく演じています。彼の自殺の理由が、釈然としないのが残念。国勢などについて、突っ込んだところはなく、「ライフ・イズ・ビューティフル」でホロコーストの描き方に不満を持った方には、同じように満足いかない触れ方かもしれません。イタリアでは、政治に関する発言の多いベニーニだと聞きましたが、映画ではやんわりと批判するのが、彼流なのでしょう。あくまでもファンタジーとコメディの路線を崩すことはありません。特殊効果で再現される、夢の幻想的なシーン、中東に広がる無限の星空が美しい。幾度も流れる結婚式の場面に、トム・ウェイツの歌声が情感たっぷりに沁み込みました。 監督 ロベルト・ベニーニ 製作 ニコレッタ・ブラスキ 製作総指揮 エルダ・フェッリ 脚本 ロベルト・ベニーニ 、ヴィンセンツォ・セラミ 音楽 ニコラ・ピオヴァーニ 出演 ロベルト・ベニーニ 、ニコレッタ・ブラスキ 、ジャン・レノ 、トム・ウェイツ (カラー/114分)
2007.10.07
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有名な恋愛小説をドラマ化。WOWOWで放送されて、劇場では未公開。一応ドラマという枠ですが、「理由」(大林宣彦)のように、のちに劇場で公開されることもあるので、映画として。劇場公開してもおかしくない。良質。37歳の月子さんと、初老のセンセイ。センセイは月子さんの国語教師でした。行きつけの居酒屋で再会したふたりは、なんとなく一緒に飲むようになり、なんとなく恋に落ちるのです。すごく良かった。なんともいえない台詞も、恋愛のありかたも。ハートを掴まれました。柄本明さんと小泉今日子さんは、はまり役です。老人の域に達したセンセイの、30才歳の離れた恋人・月子さん。若干擦れた、大酒飲みの月子さん。ふたりは時間をかけて、無理なくさりげなくお付き合いを始め、センセイ生涯最後の日まで、一緒にいるのです。最後に泣かなかったら・・大声出して泣かなかったら、これほど満足してなかったと思います。それほど、私にとってあの涙は意味がありました。センセイの逃げた奥さん(樹木希林)がいい味だしてます。そんな奥さんに、嫉妬する月子さんがかわいらしい。歳を重ね、もう寿命短いセンセイが月子さんに、申し訳ない・・と思っている。そういうところも好きでした。心が通じ合ったあと、体の結ばれるまでを描いた切実で誠実な展開に、素直に心が動きます。なんて温かいんだろうと。いつも一人、それなりに楽しく生きてきた月子さんは、ほんとうは孤独で、愛を求めていたことを知るのです。センセイに出会って、彼女らしい愛の形に身をまかせて、幸せになってく姿がとってもよかった。30代、微妙な年頃。月子さんは他の女の子とちょっと違っていたのかもしれません。冷めた彼女をほっこり温めてくれるのがセンセイ。壮年の男性の、こんな恋。あってもおかしくないのかなと、思う。そしてこんな恋を、自分がしてもおかしくないなと、思います。DVD出ています。演出 久世光彦 原作 川上弘美 『センセイの鞄』 脚本 筒井ともみ 音楽 都倉俊一 出演 小泉今日子 、柄本明 、モト冬樹 、樹木希林
2007.10.04
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交通事故で昏睡状態に陥ったまま目覚めないアリシア(ワトリング)を、4年間世話し続けている看護士のベニグノ(ハビエル・カマラ)。一方、事故で昏睡状態に陥った女闘牛士リディア(フローレス)の恋人マルコ(グランディネッティ)は、悲嘆にくれるばかりだった。いつしか親しくなる二人は語り合い友情を深めていくのだったが――。 監督は「オール・アバウト・マイ・マザー」が素晴らしかったペドロ・アルモドバル。現代人が抱える孤独を温かく見つめ、悲劇のあとの希望を包み込むように美しい映像で綴っていく。バレーダンサーのアリシアをつきっきりで看護するのは、彼女の父親に雇われたベニグノ。一方、女闘牛士のリディアを看病するのは、恋人マルコ。ふたりに共通しているのは、彼女たちを愛していることと、ちょっぴり孤独なことだった。意思を持たない肉体に触れることもできず、苦悩するマルコにとって、ベニグノの完璧さは驚愕だ。彼女が美しいままでいられよう、すべての世話をし語りかけ続ける姿。しかもそれが4年も続いているというのだから。。奇跡が起こらない限り意識を取り戻すことのない恋人に、どうやって接したらいいのかを、少しずつ彼に学ぶマルコだったのだが…。 恋人ではないことは明らかなベニグノの正体は、回想シーンで明らかになっていく。自宅の窓から見える向かいのバレー教室で踊るアリシアに一目ぼれしたベニグノは、彼女が交通事故で意識不明になった時、付きっきりで居ることが許されるこの仕事に就く。体を拭き、髪を整え、お化粧、マッサージ。彼女の裸を前に、心乱さず大切に扱っているように見えたベニグノ・・。しかし、とんでもない事件が起こってしまう。それは植物状態のアリシアが何者かにレイプされ妊娠するというショッキングな事件だった―――。自宅で母親を看病し続けたベニグノは、ずっと孤独だった。傷つくことなく人を愛せる、愛するアリシアを介護することが許されたこの4年は、だからきっと幸せだっただろう。でも、絶対にしてはいけないことをしてしまった。植物状態にあっても健常者と同じに接するベニグノを、なんてスゴイと思って見ていた前半。マルコにはできないことができる彼。でもまともなのはマルコであって、ベニグノじゃない。心が病んでいると分かった時、すごく悲しい思いがする。自分たちと同じ、愛の種類であったと思うからこそ、肉体を犯すという行為をしてしまったベニグノに、物凄くショック受けてしまう。刑務所に入ったベニグノに、最後まで知らされないラストの大きな悲劇後の奇跡は、希望を照らしていてよかった。こちらも死ぬまでに観たい映画1001本に選ばれている。監督・脚本 ペドロ・アルモドバル 製作 アグスティン・アルモドバル 撮影 ハビエル・アギーレサロベ 音楽 アルベルト・イグレシアス 出演 ハビエル・カマラ 、ダリオ・グランディネッティ 、レオノール・ワトリング (カラー/117分)
2007.10.02
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やっと読み終わりました。慣れないものを手に取って、進まないこと2ヶ月。上巻は、夏休みに帰省する汽車の中でも読んでいて、一月以上かかりました。ようやく中巻に入り、その帯の言葉に苦笑い。―上巻読むのに4ヶ月。一気に3日で中下巻!― 金原ひとみ若き作家の言葉に元気付けられ、しかもここから加速して面白くなるらしいので、さらに読み進めていったら、本当に中巻から急激に面白くなりました。「罪と罰」の時も感じましたが、原稿用紙一枚にまとまりそうな出来事が、延々これでもかと、詳細に綴られていきます。これは文芸作品ならではなのでしょう。しつこくて濃くて、しょうがないのだけど、あとあとその積み重ねが重く響いてくるので味わいがある。100年以上前に書かれたなんて、思えないほど、まったく古いと感じませんでした。普遍な内容は素晴らしかったし、後半、法廷での長丁場は息を呑む劇的な展開で、まるで映画を観ているようです。19世紀中期、ロシア。卑劣漢であった父フョードル殺しの嫌疑をかけられた、その息子ドミートリイ。次男イワンと三男アリョーシャは、それぞれの想いを胸に、いざ裁判が幕を開けるのだった―――簡単なあらすじではこうですが、上巻ではまだ殺人事件は起こらず、三男アリョーシャの修道院での生活や、父代わりであったゾシマ長老の死などが濃厚に綴られていきます。カラマーゾフ一家の誰の人生にも、長い枚数を割いているので、徹底した人物像が伝わってきました。フョードルの息子と噂される、私生児スメルジャコフも加わり、渦巻く憎悪は強烈です。法廷での大弁論はかなりの読みどころでしたが、この小説は、次男イワンの無神論者としての語り(中巻)が、大事な意味を持っているのだそうです。欧米の人にしたら、神の問題は一大事で、書かれた時代を思うとストレートで真摯な内容になっているのだと思います。神ありき――という考えはとても身近じゃないけれど、罪や憎しみ、愛や慈悲について思うとき、やっぱりそこに神がいなければダメなんですね。おなじヨーロッパとはいえ、独特な文化ロシアをじっくり味わって、西ヨーロッパ諸国との違いを感じながら読みました。登場する多くの人が、病的で心神喪失気味で、尋常ではないテンション。読んでいて疲れるのは、心理描写が多く、ずっと重い雰囲気だからなのでしょう。それでも、長い時間かけて読んでいると、人となりが分かって、兄弟それぞれに愛着が湧いてきました。最低な男かと思ったドミートリイや、彼が愛する女性グルーシェニカも、最後には好きになっています。最低なのはカラマーゾフ父なのでした。この小説の乱痴気騒ぎがすごいですよ――と教えていただいてたので、そこも楽しみに。まさにその通りでした。ドミートリイが巻き起こす破天荒な騒ぎ・・・徹底して穢れて描かれる、嫌なヤツなのです。ところが、そんな彼にも、けして失わなかった気高い精神があることを後半で知らされると、人間性を疑ってかかった自分にハッとして・・・驚かされることになるのでした。長いけど、上巻で挫折するにはもったいない。頑張って中巻を手にするところまでいけば、勢いよくラストまで読めてしまう本でした。是非映画も観たいけど、手に入りにくそうです。
2007.10.01
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