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日本銀行は8月23日,金融政策決定会合で政策金利を現行の「0.5%前後」に維持することを決め,利上げを見送りました。2月に「0.25%前後」から「0.5%前後」に引き上げて以来,6ヶ月連続での据え置きです。 日銀は利上げ見送りの理由としてアメリカの低所得者向け住宅ローン(サブプライムローン)の焦げ付きに端を発した,国際的な金融市場の混乱をあげています。福井俊彦日銀総裁は記者会見で, この問題は日本の金融システムに不安をもたらすようなものではないとしながら,アメリカ経済が受ける打撃への懸念を詳しくのべました。 日銀は,1990年代から続けてきた異常な超低金利政策の出口を見失ってしまったようです。 超低金利政策で国民の預金利息は大きく目減りし,大銀行の儲けや貸出金利の引き下げを通じた大企業の利益に付け替わってきました。福井総裁によると預金利息は,1991年の水準が2005年まで維持されたとした場合に比べて,331兆円ものマイナスになっています。 空前の低金利で“激安”通貨になった円は,アメリカなどのヘッジファンド(国際投機集団)の元手となり,数十兆円ともいわれる規模で国境を超えた投機活動(円キャリートレード)に利用されています。 日本が超低金利を続けることは,日本と世界の経済の歪みをいっそう広げるアクセルを踏み続けることに他なりません。 それと同時に,円からドルに資金を流す日本の超低金利政策の継続は,巨額の貿易赤字を抱え,慢性的な資金不足に陥っている上,サブプライム問題を抱え政策金利の引き下げざるを得ないアメリカへのとびきりの奉仕です。 小泉・安倍政権が進めた「構造改革」路線が,金利正常化への壁をつくっています。 弱肉強食の「構造改革」によって,大企業は過去最高益を更新しているのに,家計の所得と消費は冷え込み,中小企業の経営難が深刻になっています。政策金利の引き上げで中小企業向け貸出金利や住宅ローン金利がさらに上昇すれば,この状態を一段と悪化させざるを得ません。 日銀は日本経済の回復が順調であると強調することによって政策金利の引き上げを図ろうとしていますが,実態に反した説明に説得力がないのは当然です。 他方で,日銀の利上げに対する政府・自民党の圧力にも道理がありません。 自民党の中川秀直幹事長は,「デフレ(物価の継続的下落)脱却ができないことに日銀に責任はないのか」と述べ,利上げをうかがう日銀をけん制しました。物価が上がるように,日銀はもっと金融を緩和して資金を市場に流せという主張です。 贅沢品の価格が急低下する一方で,食料品や医療費など,低所得層の支出の大きな割合を占める生活必需品の物価は上昇しています。低所得層の家計を直撃する物価の上昇を図るなど本末転倒の極みです。 利上げの見送りは展望のない“対症療法”にすぎません。くらしを痛めつける「構造改革」を改め,暮らしを温めながら超低金利を是正する道に踏み出すことが本当に必要です。
2007年08月31日
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ベトナム外務省のレ・ズン報道官は8月23日,ブッシュ米大統領が前日のミズーリ州でのイラク政策演説でアメリカのベトナム侵略戦争を正当化したことに対し,「戦争はベトナム人民に非常に大きな損害を与えた」「私たちは祖国防衛のための戦争をし,それはベトナム人民の正義のための戦争だった」と反論しました。 ブッシュ大統領はアメリカ軍のイラク駐留継続をはかるため,ベトナムからの「アメリカの撤退の代償は,再教育キャンプ,ボートピープル,キリングフィールド(大量殺人現場)といった新しい言葉とともに数百万の無実の市民の苦痛で支払われた」と述べました。 さらに,「オサマ・ビンラディンは,アメリカ国民がベトナム戦争で政府に反対して立ち上がった,今日も同じようにすべきだと言っている。これもベトナムからの撤退の代償だ」などとも主張しました。 レ・ズン報道官は「戦争の傷跡はいまに至るまで残っており,戦争を忘れるベトナム人民はいないといえる」と強調。同時に,「ベトナム人は平和を愛するため,過去を忘れることはないが,現在を重視し,未来を志向し,すべての国と良好な関係を持っている。アメリカもそのひとつだ」と述べました。 ベトナム戦争でアメリカは,後にウソだったことが明らかになる1964年の「トンキン湾事件」を口実に侵略を拡大。この戦争でベトナム人300万人,米兵6万人の命が奪われました。アメリカ軍が大量に散布した枯れ葉剤は300万人といわれるベトナム人に被害を与えました。 ブッシュ大統領はまた,「(朝鮮やベトナムの共産主義者が)イデオロギーを他者に強制することにわれわれが立ちふさがったため,彼らはアメリカ人を殺した」と,かつてのドミノ理論を正当化しました。 ドミノ理論は,ベトナムなどが共産主義化すれば周辺諸国も「ドミノの列のように倒れてしまう」(アイゼンハワー大統領)というもので,侵攻の口実にしました。しかし,ベトナム戦争を推進したマクナマラ国防長官自身が,ドミノ理論は「強迫観念」,「ものの見方の誤り」だったと認めています。 日本の安倍首相とアメリカのブッシュ大統領。ともによく似ていると思います。自分の責任を認めないところも,過去の誤った歴史認識も。さすが盟友の友だけある。 このままでは,世界で日本とアメリカが孤立する日も近いのかも知れません。日本国民もアメリカ国民も,自分たちの首相と大統領をしっかり見極めないといけないと強く感じます。
2007年08月30日
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安倍首相のインド訪問をめぐって,中国をはじめとするアジアのメディアは,厳しい批判と警戒の目を向けています。 とくに議論が集中しているのが,首相のいう「大アジア」構想です。 中国国営新華社通信(電子版)は8月24日,「『大アジア』構想は時代の潮流に逆行する」という論評を出しました。 論評は,安倍首相のインド訪問の目的のひとつは「中国に向けての“日・米・印・豪の四国戦略同盟”をつくりあげることにある。それが『大アジア構想』だ」と指摘。「勝手に敵をつくりあげてしゃにむに突き進もうとするもので,大方の失笑を買う」と批判しています。 論評は「中国と良好な関係にあるインド,アメリカ,オーストラリアが,日本の企みに乗るだろうか。『大アジア』構想で,どうして国連加盟国の信頼が得られるだろうか」と問いかけています。 最後に,「安倍首相の提起する『大アジア』構想は,冷戦時代の思考の表現であり,今日の時代潮流におよそ合致しないものである」と厳しく指摘しています。 主に華僑向けに発行されている中国新聞8月23日付(電子版)は,「中国排除の『大アジア』構想は,日本メディアの支持も得られず」と報じました。 記事は,日本のメディアが「首相のインドでの講演での4ヶ国協力構想は,中国に向けて“包囲網”で対抗していく狙いであることは明らか」と報じていると紹介。「アメリカも,東アジアに不安を引き起こす行動には慎重な態度だ。安倍首相の構想への国際社会の共鳴は極めて少ない」と指摘しています。 シンガポールの聯合早報8月24日付は,安倍首相のインド訪問について「中国を排除した“大アジアの仲間”だけの組織をつくろうとしている」と指摘しています。 多くのアジアのメディアが警戒の目を光らせているのが,安倍首相が東京裁判のパール判事の息子と会ったこととその話の内容です。 中国の北京晨報8月24日付は,「安倍首相は戦犯を無罪にした人物の息子と会った」という見出しで報じました。記事は「安倍首相のこの行動は,少なからぬ騒ぎを引き起こした。東京裁判の判決を覆したという印象を免れない」と指摘しました。 記事は“東京裁判は事後法で裁いたので被告は無罪”というパール判事の論理は,戦争犯罪をめぐる国際法の発展を軽視していると指摘しています。 さらに日本や韓国のメディアは,安倍首相のこの行動に疑問や不安を表明していると指摘。韓国メディアは「安倍首相はわざわざインドまで行って,日本軍国主義者をかばった判事の息子に会った。その目的は“A級戦犯は無罪”と宣伝することにあった」と報じたと紹介しました。 マレーシアの星州日報8月24日付は,安倍首相が「パール判事を多くの日本人は尊敬している」と讃えたことを紹介し,「これでは日本に侵略されたアジア諸国の激しい怒りを買うだろう」と述べています。【韓国紙】“戦犯無罪”の言動だ韓国紙朝鮮日報は8月16日付社説で,「極東国際軍事裁判の判事のうち,A級戦犯全員の無罪を主張した唯一の人物」であるパール判事の遺族との安倍首相との会見について論評を掲載,これを同首相の「戦犯無罪」の「アピールをもくろむもの」だと批判しました。 同論評は,パール判事が戦犯裁判は戦勝国による「報復のためのもの」と主張したことを指摘。安倍首相が著書『美しい国へ』のなかで「A級戦犯は日本の国内法上は犯罪者という扱いではない」と記していることや,昨年10月の国会答弁で「戦争責任の主体についてはさまざまな論理が存在し,政府が具体的に断定するのは適切ではない」と語ったことに触れ,パール判事の遺族に会うことにしたのは「決して偶然ではない」と述べています。 同紙は,安倍首相が今年4月の靖国神社の春季例大祭時に,現職の首相としては約二十年ぶりに,「内閣総理大臣」名で玉ぐしの一種である真榊を奉納したことを紹介。「ドイツの首相が事あるごとに,やり過ぎではないかと思うほどナチスの戦犯らを強く非難するのとはまったく正反対の行動だ」と強調しました。 さらに「終戦記念日には靖国神社への参拝はしなかった」にもかかわらず,「その数日後には,インドで軍国主義者らが英雄視する『戦犯無罪論者』の子孫と顔合わせする」と述べ,「アメリカ下院の外交委員長が言った通り,日本の首相の度重なる『吐き気がするような』言動には,あきれるほかない」と指摘しています。【イギリス紙】また批判を無視 イギリス紙フィナンシャル・タイムズ紙8月24日付は,安倍晋三首相がインド訪問時にパール判事の長男と会ったことについて,「アジアの批判を無視したものだ」とする記事を掲載しました。 同紙は「安倍首相は,終戦の日に靖国神社を参拝せずに失望させた右翼へのジェスチャーとして,パール判事の息子と20分間懇談した」と報道。「複数の論評が,この懇談は靖国神社参拝の代替として,首相自らの自尊心を救済し,国粋主義的な支持者をなだめるためのものだとしている」と論評。韓国紙,朝鮮日報の記事を紹介しています。 同紙は,国際キリスト教大学のピント客員研究員の「パールは右翼の最愛の人であり,右翼は東京裁判が巨大なでっちあげであったと証明しようと決心している」とのコメントを紹介しています。 同紙はまた,日本の戦争を侵略戦争ではなく植民地主義からの解放の戦争だとする見解をもっていたチャンドラ・ボーズ氏の関連施設訪問とその関係者との会見を,「微妙な戦時の問題にもうひとつ手を出した」と報じました。 “この首相は,どうにもならないものだろうか”というのが,私自身の正直な感想です。世界の流れが全く見えていないだけでなく,事態を悪くすることにかけては右に出るひとはいないと言い切れるほど「百害あって一利なし」の首相です。 自民党もいつまでもこのひとを総裁にしておくつもりなのだろうか?ある意味でポリシーはしっかりしていてぶれないのは認めますが,そのポリシーが今日到底受け入れられないものであることに,周りの人も教えてあげた方がよいのではないだろうか。
2007年08月29日
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異常気象の頻発や生態系への影響などが深刻化し,地球温暖化への対策はいよいよ差し迫った課題になっています。ところが政府がこのほどまとめた報告によると,日本が「京都議定書」で約束している,二酸化炭素などの温室効果ガスを2012年までに1990年に比べ6%減らすという目標がこのままでは達成されないことが明らかになりました。 抜本的な対策を講じることは文字通り“待ったなし”です。 政府は1997年に「京都議定書」が採択されたのを受け,翌1998年に「6%削減」への具体策を示し,その後も見直しを繰り返してきました。ところがこの期間に温室効果ガスの排出は減るどころか逆に増え,2005年度の実績では,1990年に比べなんと7.8%も増加しました。 今回,経済産業省と環境省の審議会が合同でまとめた報告(年末の最終報告に向けた中間報告)では,現状では「6%削減」目標の達成は困難で,追加的な対策が必要だと認めています。何度も計画の作成と見直しを重ねていながらこの結論とは,政府は,見通しも対策も甘すぎたことを,まず反省すべきです。 政府の「6%削減」計画の一番の問題は,最も排出量の多い産業部門やエネルギー転換部門が財界の「自主」計画任せにされてきたことです。石炭や石油など化石燃料を燃やした時点で排出量を計算すると,代表的な温暖化ガスである二酸化炭素の排出量で,エネルギー・産業部門が六割以上を占めます。 財界は日本の製造業のエネルギー効率は世界一で排出量はぎりぎりまで抑えているといってきましたが,エネルギー効率を上げる投資を手控えたことなどで,最近ではその根拠も失われてきました。 いずれにせよ,財界の「自主」計画任せでは,政府の削減計画を達成する保証にはなりません。 今回の政府の報告でも,エネルギー・産業部門の対策を財界任せにする仕組みは変えず,削減に効果があるといわれる排出権取引の検討も先送りしました。これでは何度見直しても,「6%削減」の目標達成は望めません。 「自主」計画任せをやめ,経済界と政府の間で削減協定を結び達成責任を公的に裏打ちするなど,抜本的な対策に切り替えるべきです。 政府は,石油や石炭を燃やす火力発電所を減らし,原子力発電所を増やせば温暖化対策にもなるとしてきましたが,原発は技術的に未完成なうえ地震などへの不安もあります。 今回の報告でも,原発の設備利用率を87%-88%と高く見込むことで発電による温暖化ガス排出を抑える計画ですが,相次ぐ事故やトラブルでとてもそんな高い利用率は見込めず,その分排出量が増えるジレンマに落ち込んでいます。小規模水力,風力,太陽光・熱,地熱,バイオマスなど自然エネルギーの開発・利用の目標を大幅に引き上げ,電力会社の買い取り価格も引き上げるなどの対策を講じるべきです。 「京都議定書」による温暖化ガスの削減目標達成はあくまでも第一歩で,温暖化を防ぐには,温暖化ガスの排出量を21世紀半ばには半分にまで減らし,安定させる必要があります。 政府も「2050年半減」の目標をきめていますが,「6%削減」目標も達成できないようではその責任を果たすことはできません。 経済システムや生活スタイルを含め,ただちに抜本的な対策に踏み出し,低エネルギー・低炭素社会への転換を目指すべきです。
2007年08月28日
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日米両政府が8月10日締結した「秘密軍事情報保護協定」(GSOMIA)は,秘密軍事情報の漏えい防止をたてに,マスメディアと国民の知る権利を大きく制約することにもなる危険なとりきめです。 協定の締結はアメリカの要求によるものです。日米軍事一体化を拡大・強化するうえで,アメリカが日本に共有させる秘密軍事情報の保全を日本に徹底させるのが狙いです。 日本政府は秘密保護の措置の強化を義務付けられました。それは軍事動向から国民をさらに遠ざけ,海外で戦争する態勢づくりを加速することにつながることはあきらかです。 アメリカは,自衛隊が海外の戦場でアメリカ軍とともにたたかい,弾道ミサイル攻撃からアメリカ本土と在日米軍基地を守るなど,集団的自衛権の行使を前提にした役割を日本に求めています。 イージス艦情報などの漏えいを防ぎ,秘密保全の徹底を義務付けることを条件にして,秘密扱いにしているアメリカの軍事情報を日本に共有させ,役割を果たさせるのがアメリカの狙いです。 安倍政権がアメリカいいなりに,海外で戦争する道に進もうとしているのに,軍事動向にふたをするGSOMIAの締結は日本の平和にとって有害無益です。 協定の内容は,口頭,映像,電子,磁気,文書,装備,技術の形態にかかわらず,日本政府が秘密に指定した情報のすべてが対象です。 日本政府はいまでも128,000件もの軍事情報を秘密指定し,メディアも国民も軍事動向がわからないようにしています。協定の締結で軍事情報の秘密指定がさらに増え,アメリカ軍,自衛隊の国民的監視をますます困難にするのは明らかです。 政府はいまでも秘密指定をたてに,国会に対してさえも,アメリカ軍や自衛隊の情報を隠し,軍事作戦についてまともな説明をしません。イラクで航空自衛隊が何人のアメリカ兵を運んだのか,バグダッドに空輸した自衛隊輸送機になぜ銃弾の跡ができたのかなども,一切説明しません。 協定を理由にして,政府がこうした傾向を強めるのは必至です。 協定は国内法の整備をうたっていません。国民の反発を避けるためです。しかし,アメリカが協定をテコにして,現行国内法の改定や新法の制定を要求してくることは大いにありえます。 戦時の秘密情報漏えいを死刑とするなど厳しい秘密保全措置をとっているアメリカの措置と「実質的に同等の保護を与える」と協定が規定しているからです。 日米地位協定の刑事特別法や日米相互防衛援助協定の秘密保護法はすでに一般国民をも対象に加え,自衛隊法も2001年の改定で一般国民を「そそのかし」の罪の対象にしました。これらの規定が将来,強化・拡大される可能性もあります。 軍事情報を秘密にし,軍機保護法で国民の目と口をふさいで侵略戦争に突き進んだ戦前の誤りを繰り返させるわけにはいきません。 GSOMIAは日本の海外で戦争する態勢づくりを加速し,憲法の保障する国民の知る権利をふみにじるものです。それにもかかわらず,政府は国会承認を受けることなく,8月10日に発効させました。 これは政治的に重要な条約は国会にかけるとした「大平外相三原則」(1974年)に明白に違反しています。 国会は憲法違反のGSOMIAについて十分な審議を行い,問題点を洗い出す必要があります。
2007年08月27日
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沖縄・那覇空港での中華航空のジェット機ボーイング737爆発・炎上は航空機事故の恐ろしさをあらためて示しました。737-800型は昨年秋以降,海外で墜落などの事故があいついで発生。ことし5月のカメルーンでのケニア機墜落では150人以上の犠牲者を出しました。 国内では,同型機を日本航空とスカイマークがそれぞれ5機保有しています。 大量交通機関である航空機の安全確保は生命に直結する重大問題だけに,今回の炎上事故はひとごとですませられません。 爆発・炎上事故につながった燃料漏れの原因が機体構造上の欠陥なのか,整備不備なのかはまだ明らかになっていません。EU(欧州連合)などは,海外の航空機就航にきびしい安全規制をとっており,今回の事故は日本に就航する航空機の安全チェック体制の強化を迫るものとなりました。 機種は違いますが,日本の航空業界でも昨年,機体の重大な不備を修理せず,極めて危険な状態で長期間運航していたことが発覚しました。 国土交通省から航空機の安全運航にかかわる「事業改善命令」が出されても,重大なトラブルが相次ぎ「いつ大事故が起きても不思議ではない」とも指摘されていました。この背景には「国際競争力をつける」という名目で1990年代後半から本格化させた航空の規制緩和と,整備・検査などの安全規制の撤廃・緩和が次つぎとすすめられてきた問題があります。 日本航空(JAL)と全日本空輸(全日空,ANA)は,1997年から整備作業後に別の検査員が行う検査の二重確認を縮小しました。整備費の削減(1992年)や航空機の到着から出発までに行う点検(飛行間点検)の整備士の半減(1992年),定例整備間隔の延長(1990年)などいずれも,国土交通省が認可しました。 「自社運航」という航空法の基本原則がとりはらわれた結果,機材はリース,整備は他社任せ,社員の多くも契約・派遣社員,定例整備の海外整備工場への委託・外注化(1994年)など,安全軽視のコスト削減競争に拍車がかかっていることも重大です。 日本航空の整備部門では「分社化・委託化」方針が打ち出され,2009年には全面的な海外委託と下請けで「自社整備」が完全に崩されようとしています。 整備部門の別会社化もすすみ,パイロットへの長時間乗務押し付け,客室乗務員の子会社化・派遣置き換えなど,安全がますます後回しにされているというのが実態です。 高い公共性と安全性が求められる航空産業に競争万能の規制緩和はなじみません。今回の炎上事故は,国の安全規制を抜本的に強化し,積み重なった歪みをただすことが待ったなしの課題であることを改めて教えています。
2007年08月26日
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内閣の中枢を占める官房長官が,自らにかけられた政治資金の疑惑さえ満足に説明しない。まさに“政権末期”としかいいようのない事態です。 塩崎恭久官房長官が,政治活動費を二重に計上して報告していたことが明らかになっても,職員の「私的流用」に責任を押し付けて,一切説明しようとしていないことです。 塩崎長官には,事務所費のうち1,000万円以上が使途不明になっているなどの疑惑もあります。疑惑に自ら応えないのでは,内閣の要としてその資格はありません。 政党や政治団体の政治資金は,「政治資金収支報告」として毎年総務省か各県の選挙管理委員会に届け出,選挙に使った資金は,「選挙運動資金収支報告」として選挙ごとに選管に届けることになっています。二重計上は,このふたつの報告書の届け先が違うことを悪用したもので,手の込んだ悪質なものです。 塩崎氏が支部長を務める自民党愛媛県第一選挙区支部の2005年分の政治資金収支報告書と,同じく2005年総選挙の選挙運動費用収支報告書を調べたところ,金額も日付も支出先も同じ支出が見つかりました。 二重計上ではないかと塩崎事務所に問い合わせたのに,「調査中」とさんざん待たせたあげく,塩崎事務所として発表したのが,600万円あまりの政治活動費の二重計上は事実だが,それは一職員が「私的流用」をごまかすためにやったことで,事務所に責任はないという,人を食ったような話でした。 たとえ職員の私的流用だったという説明がそのとおりだとしても,なぜそのごまかしのために提出先の違う報告書に二重計上したのか,政治資金のごまかしはこれだけだったのかなど,疑問が残ります。 報告書にはいずれも,同じ領収書のコピーが添付されていました。それを見るだけで二重計上であることは一目瞭然です。領収書の現物は3年間保管する義務があります。 報告書は当然,塩崎事務所の責任者がチェックして提出しているはずです。600万円もの大金の「不正」に気がつかないとすれば,塩崎事務所の日常の政治資金の取り扱いがいかにずさんで不透明かを自ら告白しているようなものです。 なにより問題なのは,塩崎長官自身の責任です。塩崎氏は事務所に説明を任せたままで,自らは一言も説明していません。疑惑を抱かれた政治家は,自ら説明責任を果たすという,最低限の責任さえ果たしていないのです。 内閣官房長官としてはもちろん,国会議員として資格が問われるのは当然です。 安倍政権では政治団体の事務所費の架空計上など「政治とカネ」をめぐる疑惑が相次ぎ,発足以来3人の閣僚が辞任あるいは自殺しました。先の参議院選挙でも国民の厳しい審判の理由のひとつとなったのは明白です。 この問題では,塩崎長官が内閣の要として追及を免れることができないのはもちろん,安倍晋三首相自身の対応が厳しく問われます。 塩崎氏があくまで疑惑に応えないなら,安倍首相は来週はじめの内閣改造を待つまでもなく,塩崎氏を官房長官から罷免するのが当然です。
2007年08月25日
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内閣改造・自民党役員人事を8月27日に控え,中川秀直同党幹事長が党所属議員に政治資金収支報告書の点検を指示,「クリアできなければ(入閣を)やめていただくしかない」と問題のある議員には入閣辞退を求める考えを示すなか,資金管理団体の収支報告書を訂正する同党国会議員が,相次いでいます。 8月23日までに判明したのは9人で,再入閣や入閣待望組が目立ちます。内閣改造を前にした「訂正ラッシュ」は,自民党議員の政治資金処理の不透明さをかえって浮き彫りにしたかっこうです。 これまで,訂正が明らかになっていたのは,衛藤征士郎元防衛庁長官(衆議院大分2区),川崎二郎前厚生労働相(衆議院三重1区),鈴木俊一元環境相(衆議院岩手2区)の3人。 新たに訂正していたのは,金子一義元行政改革相(衆議院岐阜4区),谷垣禎一前財務相(衆議院京都5区),宮路和明元厚生労働副大臣(衆議院鹿児島3区),山崎正昭・自民党参議院幹事長(福井選挙区),鈴木恒夫衆議院議員(神奈川7区),谷川弥一衆院議員(長崎3区)の6人です。 9人のうち,閣僚経験がないのは4人で,うち宮路,鈴木恒夫両氏は衆儀院当選6回の初入閣候補者です。 特徴的なことは,9人のうち,5人が「事務所費」を「光熱水費」(谷垣氏),「光熱水費」を「事務所費」(谷川氏),「組織活動費」を「事務所費」や「備品・消耗品費」(宮路氏),「事務所費」を「人件費」(鈴木恒夫氏)など費目の「付け替え」の訂正をしていることです。費目として間違えようがないもので,政治資金規正法に違反する「虚偽記載」の疑いがあります。 家賃が無料の議員会館に資金管理団体の「事務所」を置きながら,3,000万円を超す「事務所費」を計上していた鈴木俊一元環境相は,「事務所費」を2,000万円以上も減額し,「組織活動費」を1,600万円も増やすなどの訂正をおこないました。しかも,訂正した組織活動費のすべてを領収書添付の必要のない50,000円以下で処理しています。 駆け込み訂正ですませるのではなく,何がまちがっていたのか,なぜ訂正するのかなどを,国民にはっきりと説明すべきです。 これほど多くのベテラン議員の訂正がかえって,自民党の政治資金処理の不透明さを浮き彫りにしています。それを許していた国民自身も,自分たちの税金がこんないい加減に使われていたことを良く知るべきです。 『政治とカネ』の問題は,国民の意識の低さを表すものでもあります。税の負担を嘆くのではなく,税金を正しく国民のために使ってくれる政治家を選挙で選びたいものです。
2007年08月24日
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政府は8月17日,防衛相と事務次官,官房長官などの確執から調整が難航していた防衛省の事務次官人事について,守屋武昌次官を退任させ,後任に増田好平人事教育局長を起用する方針を固めました。 政府は,8月27日に予定する内閣改造後に次官人事を決着させる方針でしたが,安倍晋三首相の指導力を問う声が広がったため,早期決着を図る必要があると判断したものです。 この問題は,テロ特措法延長問題などの処理を理由に,続投の意思が固かった守屋次官に対し,小池百合子防衛相が防衛省の組織再編(9月1日)を機に退任を通告したことが発端。反発した守屋次官が安倍晋三首相にまで陳情したことから政治問題化しました。 一方,各省庁の次官人事などを検討する人事検討会議を主宰する塩崎恭久官房長官も小池防衛相から相談がなかったと不快感を表明するなど,官邸を巻き込んでの混乱となっていました。 塩崎官房長官は8月17日午後,「ここまで混乱してしまい,国を守る体制としてどうか。官邸としてリーダーシップを取らなければならない」と語り,次官交代の方針を示しました。 しかし,当初小池防衛相が内定したのは警察庁出身の西川徹矢官房長。後任の増田氏は防衛省(庁)生え抜きですが,西川氏のほか防衛政策局長,運用企画局長,防衛施設庁長官などより入省年次が遅く,人事面での混乱は続きそうです。 防衛省の事務次官をめぐる政府内の混乱は,安全保障を担当する省庁の事務方トップの人事さえ短時日に収拾できない安倍内閣の求心力のなさと首相の指導力不足を改めて浮き彫りにしました。 塩崎恭久官房長官は,次官交代の方針について「官邸としてリーダーシップを取らなければならない」と“官邸主導”を強調しましたが,混乱に拍車をかけたのが官邸の対応でした。 もともと防衛次官の人事をめぐる混乱は,政策的な対立などから起こったものではありません。防衛相続投に意欲を示す小池百合子防衛相が,異例の長期在任となっている守屋武昌次官を更迭し,省内を掌握したいとしたことに,守屋次官が「相談を受けなかった」と反発したことから始まったものです。 大臣と次官が反目した際に,調整役となるべき官房長官も小池氏の根回し不足を理由に,人事決定を先送りする主導的役割を果たしたのでした。安倍首相はこの間,自ら調整に乗り出すでもなく,静観するだけでした。 沖縄の米軍新基地建設予定地をめぐる意見の相違や,海上自衛隊のイージス艦の情報漏えい問題への対応など,後から“政策的対立”が背後にあるかのように報じられましたが,発端は国の安全保障とはかけ離れた個人的確執だったのです。 先の参議院選挙では,憲法改定や集団的自衛権行使に向けた解釈変更などで,「アメリカと肩を並べて海外で戦争をする国」づくりをめざす安倍路線への不安や危惧が自公大敗へとつながりました。そのことへの反省もなしに,内輪の主導権争いに終始する閣僚と高級官僚。 そこには,国民の審判も無視して,居座りをはかる安倍首相の国民不在ぶりが反映もしています。 国の安全保障政策そっちのけで人事争いを繰り広げた安倍自公政権には未来がないことを改めて示した混乱でした。
2007年08月23日
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故松岡利勝氏,赤城徳彦前農水相と閣僚の「政治とカネ」の問題が相次ぎ,参議院選挙惨敗の大きな要因となったことから自民党は,内閣改造・党役員人事に際し,所属国会議員に,関連政治団体について「事務所費」を点検させる方針を決めました。 いわゆる“身体検査”の徹底です。政治資金規正法の再「改正」も検討していますが,「これでは閣僚になれる人がいなくなる」との声があがるほど,政治資金に問題のある政治家だらけです。その酷さを安倍内閣閣僚の「事務所費」で見てみてみます。 閣僚の資金管理団体などを2005年の政治資金収支報告書で調べてみました。 年初から問題が明らかになり,大手マスメディア紙までも取り上げた「事務所費」問題の核心は,家賃がただの議員会館に資金管理団体の「主たる事務所」を置きながら多額の事務所費を計上しているのはおかしい,ということでした。 その1人,伊吹文明文部科学相は,4,146万円で,松岡氏の3,359万円を抑えてトップでした。伊吹氏は,4,146万円のうち,約1,700万円が東京・平河町と京都にある事務所の家賃としていますが,そのほかの約2,400万円は何なのか。 国会で追及されて,伊吹氏は,『選挙の準備活動と後始末に非常勤の職員を雇う』,『秘書が後援会の人と食事する会食費』,『地元(京都)の秘書の東京に行ったときの活動費』などと,本来,「事務所費」に計上すべきでないものを,組み入れていたことを,とくとくと語りました。 これは,収支報告書の虚偽記載をみずから認めるものです。 議員会館に資金管理団体の「事務所」を置いているのは,ほかに小池百合子防衛相(812万円),渡辺喜美規制改革担当相(419万円),菅義偉総務相(364万円),尾身幸次財務相(324万円)の4人。それぞれ説明が必要です。 資金管理団体と,みずからが支部長を務める政党支部が同居しているのは,山本有二金融担当相,溝手顕正防災担当相,高市早苗沖縄北方担当相,甘利明経済産業相ら6人です。 このうち,甘利氏は,両団体あわせて1,660万円の「事務所費」を計上していますが,家賃,郵送代を除く約1,420万円の使途が不透明になっています。 高市氏も,両団体あわせて2,245万円もの「事務所費」を計上。政党支部の「政党交付金使途等報告書」によると,家賃や駐車場代など使途が明らかになっているのは,475万円で,約1,770万円の使途が不透明です。 自分のほかの政治団体と資金管理団体を同居させているのは,安倍首相,柳沢伯夫厚生労働相らです。 安倍首相は,東京・平河町のマンション1室で,あわせて1,900万円の「事務所費」。柳沢氏も同じく平河町のマンション1室。資金管理団体は人件費のみの支出で,「柳沢伯夫後援会」が1,515万円の「事務所費」を計上しています。 塩崎恭久官房長官は,東京・西新橋にある父親,塩崎潤元経企庁長官の個人事務所内に資金管理団体の「事務所」を置き,事務所費はわずか32万円です。 麻生太郎外相の資金管理団体は,東京・永田町のビルが所在地で,2,903万円もの事務所費を計上しています。 自民党は,すべての政治団体に,人件費を除くすべての経常経費(事務所費,光熱水費,備品・消耗品費)の領収書添付を義務付けるという政治資金規正法「改正」を目指す方針を決めたといいます。 その前に,とかく表に出せない私的な支出を潜り込ませているのでは,と指摘されている「事務所費」について,閣僚みずから率先して領収書公開などをすべきでしょう。
2007年08月22日
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資金管理団体の「主たる事務所」を家賃がタダの議員会館に置きながら,年間3,000万円を超す「事務所費」を計上していた自民党の鈴木俊一元環境相(衆院岩手2区)が,政治資金収支報告書で「事務所費」を大幅に減額する訂正をしていたことが8月21日にわかりました。 減らした分,渉外費などの「組織活動費」を増やしており,国民に知られたくない支出を処理する抜け道に「事務所費」が利用されていたのではないかという,不透明な資金処理の一端が明らかになりました。 鈴木氏の資金管理団体「清鈴会」の政治資金収支報告書によると,2003年=3,080万円,2004年=2,980万円,2005年=3,012万円もの「事務所費」を計上していました。 参議院選挙での自民大敗を受けて,自民党は所属議員に収支報告書の点検を指示。「清鈴会」の訂正届けは8月20日に行われていました。 訂正によって,2003年=816万円,2004年=703万円,2005年=754万円,といずれも2,000万円以上減額しました。 一方,政治活動費のうち,「組織活動費」は,毎年約1,600万円増額させる訂正をしています。 組織活動費は,組織対策費や渉外費などで,50,000円以上は領収書添付が義務付けられていますが,「清鈴会」は,いずれも50,000円以下の支出にしており,増額した約1,600万円を含めて,使途は不明のままです。 鈴木事務所は,問い合わせに,「担当者(会計責任者)がかわったので,わからない」としました。 そんなことが通用するのか…。正直,愕然としました。会計責任者が変われば,分からないでも通用するものなのか。国民の税金が使われているにもかかわらず政治団体の認識はやはり国民と大きくかけ離れていると言わざるを得ません。
2007年08月22日
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塩崎恭久官房長官の事務所は8月20日,塩崎氏が支部長を務める自民党愛媛県第1選挙区支部の政治資金収支報告書で,政治活動費の領収書を二重に添付するやりかたで計6,268,890円を二重計上していたことを明らかにしました。 同事務所は「事務職員が私的に流用した」と説明しています。 同事務所によると,2005年分の政治資金で,この事務所職員が政治資金を個人的に流用,その「発覚を防ぐために」二重計上したといいます。同事務所は,この職員を8月19日付で懲戒解雇,法的責任も追及するとしています。また,愛媛県選挙管理委員会に政治資金収支報告書の訂正を届け出ました。 塩崎氏の政党支部など政治団体の収支報告書については,『事務所費につい2005年分で1,330万円の使途不明がある』,『政党支部の事務所費総額が,事務所費とみられる費目を積算した額より少ないという奇妙な実態がある』などと指摘されていました。さらに,今回認めた二重計上疑惑についても,質問状を事務所に送付し,回答を求められていました。 今回の事態について,塩崎長官は「自身の管理・監督責任を深く反省するとともに,徹底した実態解明と再発防止に全力を挙げたい」とコメントしました。 しかし,チェックすれば容易に見つけることができる二重計上を指摘されるまでなぜ放置したのか,指摘された事務所費疑惑についてもなぜ説明責任をはたさないのか,その姿勢が問われています。
2007年08月21日
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過去最低の9議席にとどまった参議院選挙結果を受け,公明党は8月22日に全国県代表者会議を開き,今月中にも総括を取りまとめることにしています。 しかし,8月9日の中央幹事会では選挙区で落選した議員から,「なぜ安倍晋三首相に厳しいことが言えないのか。支えていていいのか」と党執行部をなじる声が上がるなど,歴史的大敗の余波は収まりそうにありません。 公明党にとって今度の参院選は,太田昭宏代表,北側一雄幹事長という新体制に移行して初の国政選挙。公明党と政教一体の創価学会にとっても,原田稔会長になって初めての国政選挙であり,春のいっせい地方選とあわせ「本門の池田門下の初陣」と位置づけてきました。 しかし,選挙区では埼玉,神奈川,愛知が次点となり,18年ぶりに選挙区候補が落選。過去最高得票を目指した比例区では,逆に前回参院選から約86万票減となりました。40選挙区で推薦した自民系候補も,当選は17人にとどまりました。 1999年に連立与党入りして以来,創価学会・公明党は,自民党,民主党が競り合う選挙区で学会票を自民党候補に流し,その見返りを比例区で受け取るというバーター戦術をとってきました。この戦術も,悪政に対する圧倒的な怒りの前に崩壊した形です。 選挙後には,公明党幹部から「暴走機関車に乗り込み,ブレーキをかけていたつもりだったが,国民からは一緒に石炭をくべていると思われていた」(「産経」7月31日付)との発言がもれたと報じられました。 ところが,太田代表は早々と「小泉,安倍の改革路線を国民が否定したのではない」(7月29日)と表明。憲法改悪を核心とする安倍首相の「戦後レジーム(体制)からの脱却」路線に追随して改憲手続き法を強行してきたことや,小泉「構造改革」以来の社会保障の切り捨てと自らが主導した定率減税廃止などの庶民大増税などによる貧困と格差の深刻化には一言も触れていません。 逆に,「『政治とカネ』の問題や,年金記録問題,大臣の不規則発言や振る舞いなど,(共通して)『何かものを隠している』ということがあった」(太田代表,公明新聞8月8日付)と,いわゆる“逆風三点セット”に敗因を矮小化しています。 同党国会議員のブログやホームページでも,「『年金記録・政治とカネ・閣僚発言』の部分が大いに影響」(谷合正明参院議員),「(三点セットは)候補者にとっては,後ろから鉄砲を撃たれているような気持ちで,さぞや無念であったろう」(上田勇衆院議員)と,自らには責任がないかのような態度です。 「格差問題で国民の不満が鬱積していた」と分析する赤松正雄衆院議員も,「自立・自助の時代における弱者の味方であるとの主張に徹し切れなかった」と,説明不足がいけなかったとの立場です。 国民の厳しい審判を受けながら「悪政戦犯」に目をつぶるのでは,今後も自民党の暴走にアクセルを踏むことになりそうです。
2007年08月20日
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パート労働者に関する法律「パートタイム労働法」が14年ぶりに改定されました。来年4月に施行される改定はどういうものかみてみます。 いまパート労働者(週労働時間が35時間未満)は1,200万人にのぼり,その70%は女性です。賃金は平均時給で男性1,057円,女性940円で正社員と比べると非常に低く抑えられています(図)。福利厚生等でも差別があります。 1993年に現在のパート法がつくられますが,パートへの差別を改善する規定がないたいへん不十分なものでした。この間,世界ではパートと正社員との差別を許さない均等待遇を法律で定める流れがすすんできたのに,日本ではパート差別が放置され,格差が拡大してきたのです。 こうしたもと,貧困と格差に社会的な批判が高まるなかでの今回の改正には,大きな期待が寄せられました。 しかし改定は,一番求められてきた,賃金や教育訓練,福利厚生などの差別を禁止する均等待遇を,正社員並みに働くごく一部だけにしか認めない不十分なものにとどまりました(表)。 職務の内容や責任,人事異動などの範囲,契約期間がすべて正社員と同じ場合だけが対象で,国会での厚生労働大臣の答弁でもパート労働者の4.5%にすぎません。 職務,異動の範囲,契約期間のどれかが正社員と違うパートに対しては,差別を禁止するのではなく,企業の努力義務にとどめました。 「職務が同じで一定期間異動もある場合」には賃金を正社員と同じ方法で決めること,また「職務が同じでも異動がない」場合,「職務が違う」などの場合は,職務の内容,成果,意欲,能力,経験等をふまえて賃金を決めることを企業に努力するよう求めています。 ただし,たとえ努力義務であっても,改定パート法の趣旨にもとづいて,待遇の改善をはかることが企業には求められます。地域でも職場でもたたかいをすすめていきましょう。 国会審議で民主党,社民党もなどの野党が,均等待遇の原則を明記した独自の修正案を提出するとともに,法案が,差別の改善に実効性が弱く,格差の固定化や正社員のパート化など待遇悪化の危険性もあること等を指摘し,採決で反対しました。 こうした国会論戦で明らかになった問題点,法案への批判を受けて,8項目にわたる付帯決議がつけられました。差別禁止の対象となる要件の「公正な運用」を求めたほか,パート法が対象としていないフルタイムパート(労働時間が正社員と同じである有期契約労働者)についても「法の趣旨が考慮」されるべきこと,パートの待遇改善を理由に正社員に「一方的な不利益変更を行うことは法的に許されないこと」などが盛り込まれています。 今後は,国会審議や付帯決議の内容を生かし,格差の固定化や正社員の待遇引き下げを許さない闘いとあわせ,職場で,労働条件を一歩でもよくするために役立つ部分を活用することが大切です。均等待遇の対象をよりひろく認めさせる闘いが必要です。 また何年働いても昇給もなく最低賃金すれすれとか,同じ仕事なのに正社員の1/2や1/3という実態に対し,少なくとも改定法では企業に仕事内容や経験などに即して賃金などを決める努力が求められます。 他にも,採用の際に昇給や退職金,ボーナスの有無を文書で明示すること,正社員への転換制度や正社員募集の周知,食堂や更衣室などの利用,教育訓練などで一定の改善もあります。 パート労働者に適用される法律はパート法だけではありません。有給休暇や産前産後休業など労働基準法の規定は当然適用されますし,育児休業なども一定の条件を満たせば取得できます。社会保険等の適用も同様です。たたかってこそ生かすことができます。職場の労働者,労働組合と力を合わせ,パート労働者の待遇改善を迫る運動をひろげる必要があります。 今後は,パート労働者への差別禁止,均等待遇を盛り込んだ抜本的改正が不可欠です。参議院選挙での自民・公明大敗をうけて,闘い如何で新たな展望,可能性も開けます。国民が最低賃金の抜本的引き上げとともに,切実な要求をかかげた運動を大いに広げていくことを期待します。
2007年08月19日
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安倍晋三首相は8月17日から2日間の短い「夏休み」に入りました。「来週は海外出張がありますし,選挙の結果を受けて,国民の声をどう政策に反映させていくかということも,この時期にじっくり考えたい」(8月16日付配信の「安倍内閣メールマガジン」)と,8月27日に予定する内閣改造・自民党役員人事の構想を練る構え。 参議院選挙大敗で退陣を突きつけられた安倍首相の内閣改造は“ひとりよがり”の感を否めません。 「私1人で決めないといけない」。安倍首相は8月13日,内閣改造・党役員人事を記者団に問われ,自らの判断で行う考えを強調しました。森喜朗元首相が福田康夫元官房長官らの処遇を求めていることについても「私自身,熟慮して断行する」(同)と安倍カラーを捨て去る姿勢はありません。 しかし,「人心一新が必要」と内閣改造を打ち上げながら,自らは早々と続投を宣言した安倍首相に注がれる国民の目線は厳しいものがあります。NHKの世論調査(8月10日~8月12日実施)では,安倍首相の続投に40%が「反対」で「賛成」の25%を大きく上回り,内閣改造についても「期待しない」は53%と半数を超えます。 参議院選挙の連立与党大敗の根本に「自公政治の内政,外交の深刻なゆきづまりと,それへの国民の深い批判と怒りがある」もとで,首をすげかえる小手先の内閣改造では国民は納得できないことを示しています。 それも分からず,「1人で決める」と内閣改造に固執する安倍首相の姿勢は全く“ひとりよがり”です。 一方,内閣改造を前に自民党内では参議院選挙直後にあった首相退陣論は消えうせ,「安倍首相が(続投を)発言してしまった以上,とやかくいう段階ではない」(額賀福志郎元防衛庁長官),「首相がいばらの道を歩むと言っている時に,党内で駆け引きは適当ではない」(伊吹文明文部科学相)と各派閥幹部は「挙党態勢」を強調。 「上手に人を使って,トータルとしてうまくいくようにすることが最高のリーダーシップだ。それが自民党の伝統的手法だ」(野田毅元自治相)と,派閥の均衡や有力者の処遇を重視した古い自民党の姿があらわれつつあります。 内閣改造・党役員人事では麻生太郎外相らの名が取り沙汰されるなど,日本の過去の戦争を正しかったとする「靖国」派で通じる「お友だち内閣」ぶりもなくなっていません。
2007年08月18日
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「消えた年金問題」で基礎年金番号に未統合の共済年金記録181万件のうち,受給年齢に達した65歳以上の記録が約76,000件にのぼることが8月15日,分かりました。野党議員の質問主意書に対する政府の答弁書で明らかになりました。 公務員と私立学校教職員が加入する共済年金の未統合記録は,厚生・国民年金の未統合記録約5,000万件とは別に存在するもので,野党議員の質問(6月)で初めて判明しました。これまで国家公務員共済で約67万件,地方公務員共済で約68万件,私学共済で約46万件あることが分かっています。 今回明らかになった受給年齢記録は,国家公務員共済で約30,000件,地方公務員共済で約40,000件,私学共済で約6,000件。 死亡が確認できない人や受給要件を満たさない人の記録などと推測されると説明していますが,実態調査もせず「理由ごとの件数を把握するのは困難」としています。 質問主意書が,「未支給につながる可能性はほとんどないなどと言えない」と指摘していることに対して答弁書は,年金決定のさい統合しているとして「直ちに未支給につながる可能性はない」と正当化しています。 今後の対策では,年金制度の一元化にあわせて「2009年度中をめどに基礎年金番号に統合する」と述べていますが,7月5日に発表した対応策では,すべての年金記録との名寄せを行い,記録が結びつくと思われる人に対して,その旨を知らせるとしています。 共済年金の未統合記録は,基礎年金番号を導入しながら,「年金確定の際,本人から申し出があれば統合すればよい」と個人任せにして,政府としての対策を怠ってきたことが原因です。 にもかかわらず,申請があれば統合するからなどといって,「直ちに不支給に結びつくわけではない」などと正当化することは許されません。 厚生・国民年金の未統合記録約5,000万件についても,受給年齢に達する記録が2,850万件にのぼることが明らかになっており,政府の責任で漏れなく統合することが急務になっています。 そのためにも,共済年金加入者も含めて,すべての受給者・加入者に,加入履歴を直ちに送ることを,記録の照合など統合作業と同時並行的に行うべきです。加入履歴を見て間違っていなければ安心できるし,間違っていれば記録を訂正することにつながります。 政府は,日本共産党の提案を反映して,「ねんきん特別便」として受給者・加入者すべてに加入履歴を送ることを打ち出しましたが,実施は来年4月以降になっています。 記録は既にコンピューター内にあり,その気になればすぐにでもできることです。さらに前倒しして直ちに実施するべきです。 参議院選挙での自民党・公明党連立与党の大敗は,こうした年金記録問題での姿勢に対して国民が厳しい審判を下したものです。民意に従って徹底調査を行い,速やかに統合をはかることが求められます。
2007年08月18日
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先週末から始まった世界的な株価下落は,今週に入っていっそう下げ幅を拡大しています。アメリカ株の急落を受けて全面安となり,8月16日の東京株式市場は,昨年11月以来,一時16,000円台を割り込みました。 米欧日の中央銀行は,株価急落が世界的な金融危機に陥ることを避けるために,総計で40兆円を超える巨額な資金を供給しました。こうした措置は,とりあえずの連鎖的危機の回避策にはなっても,世界の株式市場・金融市場の矛盾の根源にメスを入れるものではありません。 今回の世界的な株価急落の直接のきっかけは,アメリカの住宅ローン(サブプライムローン)の焦げ付き拡大といわれます。これは,もともとはアメリカの低所得者向けの住宅ローンが証券化されて,世界中の金融機関が購入しているものです。 そのために,今回の株価急落は同ローンに投資していた欧州の金融機関から始まり,アメリカ・日本へ波及するという経過でした。同ローン関連の損失は最大1,000億ドル(約12兆円)にのぼるという予測もあり,日本でも野村ホールディングスが700億円の損失をかかえているといわれています。 世界的な金余りのなかで,巨額な投機資金を動かすヘッジファンドが数倍に膨張し,運用資産残高は1兆5,000億ドルを超えています。累積した資金が株式市場に流入し,ここ数年は世界的に株式ブームが続いてきました。しかし,今年に入ってから,すでに世界的に株価急落が4回も起こるなど,信用不安の影が次第に濃くなってきています。 世界的な株価不安,国際金融不安に対しては,市場に資金を供給する緊急措置だけでなく,根本的には,投機的活動に対する国際的な監視と実効ある規制措置を検討することが求められます。 今回の世界的な金融不安の引き金となったアメリカの住宅バブルの破たんは,アメリカの実体経済の歪みも表しています。2007年4月-6月期の住宅投資は同9.3%減と5・4半期連続の減少となりました。 さらに,アメリカの財政赤字と経常収支の「双子の赤字」が拡大し,ドル急落への懸念が強まっています。ブッシュ政権下の2002年から2006年までの5年間の経常収支赤字の累計は約2兆8,000億ドル(約330兆円)にまで膨れ上がっています。ドル不安を解決するには,「双子の赤字」を拡大する経済政策の根本的転換が求められます。 世界的な金融不安の拡大は,金利引き上げの時期を探っている日本銀行の金融政策にも大きな影を落としています。日本では,アメリカの国際収支赤字を日本などからの資本流入で穴埋めするために,日米金利差(日本の超低金利)を維持する金融政策をとり続けてきました。 これは,日本の金融経済にとって大きな歪みをもたらしているだけでなく,アメリカの経済政策を転換するためにもならないものです。 日本では近年,政府・日銀・金融界が一体となって「貯蓄から投資へ」の政策誘導をおこない,国民の小口資金が株式市場や投資信託へ大量に流入しはじめています。 政府や金融界が株式投資をあおることは,結果的に,株式市場の破たんの際には,多大な被害を一般庶民に押し付けることになりかねません。株式投資は,預貯金に比べて大きなリスクを伴っていることを,この機会に改めて周知させることも必要でしょう。
2007年08月17日
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自民党は,参議院選での大敗を受けて参議院選総括委員会(委員長・谷津義男選対総局長)を設置し,党所属国会議員や地方県連幹部などから意見の聴取を進めています。8月中に最終報告書をとりまとめる計画です。 意見聴取では,地方への公共事業拡大や「構造改革」路線の見直しを求める声が相次いでいるのが,ひとつの特徴です。 8月7日に開かれた委員会の席上では,野田毅元自治相が「自民党(執行部)は公共事業性悪説で,田舎の気持ちを分かっていない」と批判。衛藤征士郎元防衛庁長官は「(敗北は)地方への手当てができなかった結果で,小泉政権以来の路線の修正を含め考えるべきだ」と述べました。 太田誠一元総務庁長官はホームページで「(改革には)マイナス面がある」が,「そういうことを考えないで,改革でありさえすればよいというふうに言ってきたことによって,しっぺ返しを受けた」と敗因を分析。 加藤紘一元幹事長も,「今回の逆風は,ここ5年-6年続いた市場原理主義,民間の利益追求こそが正しい政策であると言ってきたことに原因があるのではないか」とホームページで指摘しています。 身内からもこうした声があがっているにもかかわらず,安倍晋三首相は「基本路線は多くの国民に理解されている」という認識を示しています。8月10日の閣議で了承した来年度予算の概算要求基準にも,小泉内閣以来の「構造改革」路線がそのまま反映。社会保障の2,200億円抑制や,公共投資の3%削減,「消費税を含む税体系の抜本的改革」など,財界の要求がすべて盛り込まれました。 小野次郎氏,猪口邦子氏ら当選1回の議員有志4人が8月10日,「改革の歩みを止めることなく,安倍総理に引き続き継続・実行して頂きたい」などとする「緊急アピール」を安倍首相に提出。安倍首相は「さらに改革にまい進していく」と述べたといいます。 「改革か,逆行か」と叫んだ選挙で大敗北を喫しながら「構造改革」路線に固執し,「人心一新」をいいながら自らは対象としない安倍首相。 有権者はもとより,党内でも「安倍総裁のもとで党の再生再建が本当にできるのかどうか」(逢沢一郎衆院議員)などの声がくすぶり続ける模様です。 自民党,特に靖国派はこの機会に,悪巧みをあきらめ,政治とは何なのか改めて考えて欲しいと強く期待します。
2007年08月17日
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今日から4日間,「教育のつどい2007」教研全国集会が広島で開かれます。 「教育再生」を「最重要課題」としてかかげ,教育基本法改悪を強行した安倍晋三政権は,7月の参議院選挙において歴史的な大敗を喫しました。「戦後レジームからの脱却」の名の下に,教育の民主主義的な原則を攻撃し,国家統制をつよめようという企ては,大きな打撃をうけました。世論調査では,安倍政権の「教育改革」を「評価しない」という回答は55%を超えています。 選挙結果は,国民が自民党・公明党の古い政治の枠組みに代わる,新しい政治を探求する時代のはじまりを示しました。これは,教育政策の転換にとっても,おおきな可能性をもつものに他なりません。 こうした時に,教職員,保護者,子ども,市民,研究者がつどい,教育の未来を探求する集会を開くことはたいへん意義深いものです。 私たちは何より,子どもの現実に目をむけたいと思います。政府や財界は,日本の子どもは学力も規範意識もダメだから「改革」だと声高にいいます。しかし,その前提は本当でしょうか。 客観的にいえることは,学力では国際的には成績上位でも「勉強嫌い」が世界一多いこと,そして「成績下位層」が増えていることです。 規範意識を問題にしなければならないのは,子どもではなく,安倍政権ではないでしょうか。 日本の子どもは世界一孤独で,イライラやむかつきの感情をためています。悪くなったのは子どもではなく,貧困と格差,競争主義の風潮など,子どもをとりまく環境のほうです。 安倍政権は「統制と競争」の教育を際限なく強めました。権力が教育の目標を設定し,学力テストや予算配分によって子ども・教員らを競争させ,その達成をはかるというやり方です。しかしそれは,東京・足立区でのテスト不正など,深刻な行き詰まりに直面しています。 「統制と競争」をやめ,子どもの成長をささえる教育をどう進めるのか。多様な実践が交流され,研究が深まることを心から期待します。 教育条件の整備も焦眉の課題です。日本の教育予算の水準は,OECD(経済協力開発機構)30ヶ国中最低です。教育をよくするにはここを改めることが不可欠だという認識は,文科省の中央教育審議会でも大勢をしめ,野党のマニフェストでもほぼ一致しています。国民は,自公政権を追い詰め,子どもたちとともに世界有数の教育条件を築くため,全力をあげることが必要です。 集会の開催地は,原爆が投下され,人間の尊厳がうばわれ,そして人間の尊厳を回復する努力が重ねられている広島です。「日本の戦争は正しい戦争だった」と子どもに教えこむことを国民の良識でやめさせ,平和の尊さを伝える決意を語り合う場になることを期待します。 今年の教研集会は,教育基本法が改悪されてはじめて開かれるものです。歴史的な教育基本法のたたかいは,たとえ基本法が改悪されても,憲法があるかぎり,教育は子どもの成長する権利にこたえる文化的営みであり,国家の介入はできるかぎり抑制されるという原則があることを浮き彫りにしました。 この土台のうえに,子どもの成長と発達を中心にすえた教育をすすめるために,国民が力をあわせる必要性がますますでてきように思います。
2007年08月16日
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厚生労働省は8月10日,国の原爆症認定申請却下処分を取り消した熊本地裁の判決を不服として福岡高裁に控訴しました。救済を求めてやむにやまれず裁判に訴えた被爆者に一片の思いやりもない安倍政権に怒りがまきおこっているのは当然です。 しかも,安倍晋三首相は8月5日,広島で被爆者団体の代表に原爆症認定基準を「見直すことを検討させたい」と述べたばかりです。見直しを約束しながら,行動では被爆者を裏切る態度は断じて許されません。直ちに控訴を取り下げるべきです。 政府の原爆症認定基準は,救済の対象をことさら狭める手段となっています。政府はこれを使って原爆症の認定を申請する人たちをことごとく排除しています。このため,被爆者手帳をもっている26万人のうちわずか2,000人余り,0.8%しか原爆症と認定されておらず,多くの被爆者が置き去りにされているのです。 現在の基準は,長崎の松谷英子さんの原爆症認定却下処分取り消しを政府に命令した2000年7月の最高裁判決をうけて,「手直し」されたことになっています。 しかし,政府が「より科学的」(2002年7月17日衆議院厚生労働委員会,下田智久厚労省健康局長)といったこの基準は,原爆症認定申請の却下数をそれまで以上に増やしただけです。爆心地からの距離で受けた被曝線量を推定する計算式を主要な要素にする不合理性をそのままにし,それを機械的に当てはめたからです。 昨年から今年にかけて出された6回の地裁判決はいずれも,この不合理を正面から指弾していることが特徴です。熊本地裁判決も,1.3キロ以遠での放射線被曝線量の政府の計算値が「実際よりも低い」,数十キロ離れたところでも「外部被曝を受けた可能性がある」と述べています。原爆投下のあと爆心地に入った「入市被爆者」についても,飲食などを通じて体内に入り込んだ「残留放射線による内部被曝の影響が考慮されていない」と厳しく指摘しています。政府に認定基準の根本的見直しをせまる内容です。 政府は,6つの判決が「それぞれ考えが異なっており,行政が依拠できるような統一的な考え方は示されていない」といって控訴しました。しかしどの判決も,政府の認定基準を具体的に検討し被爆者の実態にあわないと批判しています。 判決内容がばらばらのようにいうのは間違いです。こんな道理のないこじつけで控訴するなどもってのほかです。 政府の認定基準では原爆の後遺症で苦しむ多くの被爆者を救うことができないことはあきらかです。判決は被爆者救済にとって必要なことを提起しています。これをただちに実施に移すことが政府の責務です。 安倍首相は見直しを検討すると被爆者に約束しました。空約束に終わらせてはなりません。厚労省も現行認定基準に固執せず,認定制度の抜本的見直しにとりくむべきです。 被爆から62年が経ちます。原爆症の後遺症はいまなお多くの被爆者を苦しめています。各種のがんや肝機能障害などをひきおこし,「今度はどこに病気がでてくるのか」と心配の毎日です。しかも高齢化も重なり,原爆症認定集団訴訟の原告でも少なくない方が亡くなっています。被爆者には時間はありません。 政府は,原爆症認定制度を抜本的に見直し,被爆者救済の道を大きく広げるべきです。
2007年08月15日
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自動車排ガスが原因の大気汚染で,ぜんそくなどの呼吸器疾患を発病した患者が,国,都,自動車メーカーなどを相手どって起こした東京大気汚染公害訴訟で,和解が成立しました。自動車メーカーにも大気汚染の責任があることを認め,メーカーを含む汚染者の費用負担で医療費助成制度を創設するなど,画期的な前進といえる内容です。 提訴から11年余,「子や孫に安心して吸える空気を」,「患者への十分な救済制度を」と原告は命がけでたたかってきました。その願いを受け止め,国は本格的な被害者救済制度の実現,公害根絶に取り組み,国民の命を守る責任を果たすべきです。 「『公害はもう終わった』という政府の宣伝の誤りを公式に認めさせた」(和解後の報告集会,原告団長の西順司さん)和解は,深刻な大気汚染が広がるもとで後退を重ねてきた公害行政の本格的な見直しを迫る,大きな意味を持ちます。 1970年代に新潟水俣病など「四大公害訴訟」のたたかいと世論の広がりで勝ち取られた「公害健康被害補償法」は,不十分ながら公害被害者を企業など原因者の財源負担によって救済する制度でした。ところが,「公害は終わった」という財界の強力な巻き返しで同法は骨抜きにされ,国は1988年に指定地域を解除して以降,新たな公害病患者の認定をしていません。 未認定患者の置かれた状況はあまりにも過酷です。重い健康被害を受けながら放置され,人間的な生活をおくることも,十分な医療を受けることもできずにいます。せめて自己負担なしの医療費救済制度をつくることが,緊急の課題でした。 和解により,自動車メーカー,国,首都高速道路会社が一定額を都に拠出し,都が都内全域で年齢制限なく,ぜんそく患者に,自己負担なしの医療費助成制度を創設します。20万人ともいわれる都内のぜんそく患者すべてが対象です。大気汚染被害の広範な救済に道を開くものです。 自動車排ガスによる健康被害は,東京都だけのことではありません。大都市圏を中心に,日本中に広がっています。その救済は,地方自治体まかせではできません。医療費とともに,障害補償費等の給付を含む抜本的な患者救済制度を,国の責任で実現することが,今後の課題です。 環境対策で,健康被害の原因となる微小粒子状物質の測定を全国ですすめ,新たな環境基準設置を検討するなどを国,都に約束させたこともきわめて重要な成果です。 国はおそくとも1980年代前半には,ディーゼル車の微小粒子状物質による大気汚染の危険性と対策の必要性を認識していながら,必要な規制を見送りました。 国が,環境対策を後回しにしたことと被害者救済を切り捨ててきたこととは表裏一体の関係です。 国民の健康より大企業の儲けを優先したこれまでの施策の誤りを認め,大本から改めなければなりません。 東京大気汚染公害訴訟は,トヨタなど自動車メーカー7社を初めて被告席に座らせ,「汚染原因者」としての責任を明確にすることを求めた裁判でした。企業の利潤追求のなかで生活・自然環境の人為的破壊がすすむ,この社会の歪みを前向きにただしていく上で,大きな前進をみることができました。 企業は,重い社会的責任に立ち,被害者救済と環境対策に誠実に取り組むことが強く求められています。
2007年08月14日
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日本プロ野球組織(NPB)は8月10日,ソフトバンクのリック・ガトームソン投手(30)がドーピング(禁止薬物使用)検査で禁止物質のフィナステリドに陽性反応を示したため,同日から20日間の出場停止処分と,球団に対して制裁金750万円の処分を科すと発表しました。 NPBの医事委員会が作成したアンチ・ドーピングガイドでは,フィナステリドが世界反ドーピング機関(WADA)の定めた禁止薬物であることを明記しています。 NPBは昨季107選手に検査を実施するなど反ドーピングへの啓蒙を図ったといいます。今春には,全キャンプ地でコミッショナー事務局が説明会を開き,外国人も含めた全選手にスライドを見せて,飲む発毛剤への注意を呼び掛けました。 それでも,ガトームソン投手は禁止薬物だとは知らずに,ずっと服用を続け,トレーナーにも申告していました。球団や選手レベルでは薬物への警戒がほとんどなかった実態が,今回の事件で明らかになったのです。 ドーピングとの闘いには,スポーツの価値と信頼を守る意識を高めることが欠かせません。いかにひとりひとりの自覚を高めるかに,ことの成否がかかっています。 球団やNPBは当該球団だけの問題ととらえず,すべての球団,選手がどれだけ反ドーピングを意識してきたかを再点検し,二度と違反者を出さないよう啓蒙活動をいっそう強めるべきでしょう。
2007年08月13日
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厚生労働省は8月9日の労働政策審議会(厚労相の諮問機関)に,長時間労働野放しの『ホワイトカラー・エグゼンプション制度』の導入を除外した来年度の労働政策の重点事項を提出しました。1日8時間・週40時間の労働時間の規制を除外し,何時間働かせても,残業代も払わずにすむ制度です。 昨年の審議会で労働者委員の反対を押し切って報告書に盛り込みましたが,国民の猛反対にあい,今春の通常国会への法案提出を断念。自民・公明の与党は参議院選挙後にも提出を狙う構えでしたが大敗し,エグゼンプション反対を掲げた野党が多数を占めたことから,除外に追い込まれたものです。 しかし,財界・大企業は経済財政諮問会議や規制改革会議で導入を強く求めており,完全に断念させるたたかいが引き続き焦点になっています。 この日の審議会でも,使用者委員は「労働時間の柔軟化をはかるべき」と改めて導入を主張。労働者委員は「長時間労働が常態化し,過労死やメンタルヘルスが深刻化するなかで,労働時間管理の適用除外が広がることなどあってはならない」と批判しました。 来年度の重点事項ではまた,「労働者派遣制度についての必要な見直しの検討」が盛り込まれました。財界・大企業は,違法派遣で働かせた労働者に対する直接雇用の申し込み義務の撤廃など,偽装請負を合法化するために労働者派遣法の改悪を求めています。 この種の議論では,企業あっての国民なのか,国民あっての企業なのかという点が重要な論点になるべきだと考えます。政治も同様です。“国民あっての政治”であるべきで,政治あって国民不在では政治そのものの存在意義がなくなってしまいます。 役員報酬や株主配当も重要ですが,企業の利益を生み出している労働者に利益が還元されることなく,企業が成長し続けることはないと考えます。企業の付加価値を生み出しているのは,株主でも役員でもないからです。日々試行錯誤しながら働いている労働者こそ,企業の新しい付加価値を創造しているのです。
2007年08月12日
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安倍内閣が来年度予算の大枠を示す概算要求基準を決めました。一般歳出の上限を47兆3,000億円とし,大企業の要求に応える「成長力強化」などの重点要望枠を今年度の倍の6,000億円に拡大しています。 社会保障費は高齢化にともなう自然増の7,500億円を2,200億円も削り込む一方で,米軍再編経費は「必要な措置を講ずる」と特別扱いしています。 安倍晋三首相は「『基本方針2007』に沿って改革を進める予算にしなければならない」と述べています。参議院選挙で国民の厳しい審判が下されたにもかかわらず,「構造改革」路線に固執し続けようとしています。 安倍内閣が参議院選挙前にまとめた「基本方針2007」(骨太方針)は,小泉内閣が策定した社会保障の削減や庶民増税の財政方針をそのまま引き継いでいます。 参議院選挙の結果を受けて,柳沢伯夫・厚生労働相さえ,これ以上,患者や国民の負担を増大させることはできないと記者会見で述べざるを得なくなっています。「骨太方針」そのものも,歳出削減は「機械的」にはやらないと明記しています。 それにもかかわらず,安倍内閣は来年度の社会保障費を今年度と同額の2,200億円,「機械的」に大幅圧縮する方針を掲げました。来年度も国民への新たな負担転嫁を推し進めようというのです。 「介護難民」,「医療難民」が急増しているように,社会保障の相次ぐ改悪で国民の生存権が脅かされる現実が広がり,「この政治のもとでは生きていけない」という憤りの声が上がっています。国民生活の深刻な実態を無視して,さらに社会保障費を削減するのは,あまりにも冷酷です。 概算要求基準は,予算編成の作業と,消費税を含む「税体系の抜本的な改革」を並行して進めることにも言及しています。 安倍首相は自民・公明の歴史的大敗となった選挙結果について,「私が進めつつある改革の方向性が,今回の結果によって否定されたとは思えない」と強弁しています。 しかし,参議院選挙では「消えた年金」,閣僚の「政治とカネ」の疑惑や暴言とともに,くらしを痛めつける小泉・安倍「構造改革」に対する国民の怒りが噴き出しました。 連立与党の自民党,公明党が惨敗した根底には,「構造改革」の名で進められた,くらし破壊への国民の強い怒りがあります。 小泉・安倍「構造改革」路線をひた走る概算要求基準は,この国民の審判に対する挑戦です。 来年度の予算と概算要求基準の方針を直接決定付けたのは,8月6日の経済財政諮問会議に御手洗冨士夫・日本経団連会長ら4人の民間メンバーが提出した「平成20年度予算の全体像に向けて」という提言です。 この提言は“家計が改善し景気回復が続くから,予算の最大限の削減をやっても大丈夫だ”,「消費税を含む税体系の抜本的改革を実現させる」と明記し,そのまま承認されました。 ここには国民生活への目線は皆無です。大儲けを上げている大企業に相応の負担を求める姿勢がみじんもないばかりか,暗に一層の大企業減税を要求しています。 参議院選挙で示された国民の審判と,財界のための財界による経済・財政運営は根本から矛盾していることが明白になっています。「福祉削減ありき」の姿勢を改め,国民の命とくらしを守る予算編成にしていくことが切実に求められています。
2007年08月11日
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内閣府が8月8日発表した7月の景気ウオッチャー調査によると,街角の景況感を示す現状判断指数(DI)は,前月と比べ1.3ポイント低下の44.7で,4ヶ月連続で低下しました。景況判断で横ばいを示す50を割り込むのも4ヶ月連続です。 内閣府は,景気ウオッチャーの総合判断を「回復に弱い動きがみられる」とし,前月にあった「このところ」の表現を削除して,事実上,下方修正しました。 分野別DIでは,家計動向が42.8と,前月から2.3ポイント低下。増税やガソリンの値上げに加えて,自然災害による消費低迷に不安をもつ声が目立ちました。 「所得税の定率減税廃止,住民税のアップ,ガソリンの値上げ,年金問題など,消費者の心理が冷え込むことが続いているところで,(新潟県)中越沖地震が地元経済のマイナス基調に拍車をかけている」(東北地方・スーパー),「客との会話の中で,税金と健康保険の話題が多く挙がっている。特に年金生活者からの不満が多く,消費意欲が低下している」(北海道・美容室)などの声が寄せられました。 企業動向では,47.4と前月から1.2ポイント上昇したものの,50を3ヶ月連続で下回りました。「売上は増大したものの燃料費の高騰がその分を圧迫,結果的に変わらない状況になっている」(沖縄・輸送業)など,原油・原材料費の高騰の影響が指摘されています。 雇用動向は,前月から横ばいの51.2。内閣府によると,「求人意欲にばらつきが見られる」状況で,地域による格差を反映しています。「企業側の採用意欲が低下傾向で,将来を見越した中途採用は影をひそめた」(南関東・民間職業紹介機関)との声があがっています。 先行き判断指数(DI)は,45.7と,3ヶ月連続で悪化しました。 やはり定率減税全廃による国民所得の減少が,景気全体を押し下げているのがよく分かります。政府はこの状況の中で,消費税率を上げようとしています。それこそ論外です。 空前の利益を上げている大企業に対しては減税を続けている自民党・公明党連立与党ですが,参議院選挙の結果が示しているのは,これ以上の大企業優先の政治を改め国民のための政治に対する期待です。 自民党・公明党連立与党はこれを真剣に受け止め,国民のための政治に方向転換をすることを期待します。
2007年08月10日
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経済産業省が8月7日発表した原油価格・原材料価格上昇の影響調査結果によると,大企業と比べ中小企業により深刻な影響が出ています。中小企業庁が25業種1,157社の中小企業を対象に7月に実施した調査の結果をみてみます。 原油・石油製品について,仕入れ価格が最近3ヶ月の間に「上昇している」と回答した企業は90%を超えています。今後とも「上昇する」と見込む企業も約90%にのぼります。 価格上昇が収益を「圧迫している」企業は前回調査(2006年9月)の76.7%からさらに増え,89.7%になりました。業種別にみると,建設,食料品,繊維染色,化学,石油製品,プラスチック製品,ゴム製品,窯業・土石製品,非鉄金属,輸送用機械器具,運輸,クリーニング,自動車整備業などでは,90%以上の企業が収益の圧迫を訴えています。 価格上昇分を販売価格へ20%以下しか転嫁できない企業は86.6%(うち,まったく転嫁できないは59.0%)と依然として高水準です。90%以上(94.8%)の企業が今後とも転嫁は困難と感じています。 今回はじめて原材料全般(原油・石油製品以外)の価格上昇の影響について調査しました。それによると,自社で使用する主要原材料の全部または一部の仕入れ価格が前年に比べ「高騰している」と回答した企業は約95%でした。原材料別にみると,銅,亜鉛,ニッケル,アルミなど非鉄金属を主要原料として使用している企業のうち,「著しく高騰している」企業が60%を超えています。 収益への影響では,「大きく圧迫している」(35.9%),「やや圧迫している」(52.1%)をあわせると88.0%にのぼります。 原材料のコスト上昇分を販売価格へ20%以下しか転嫁できない企業は71.9%(うち,まったく転嫁できないは40.6%)。90%以上(90.7%)の企業が今後とも転嫁が困難と感じています。 中小企業に価格転嫁が困難な企業が多いことについて,中小企業庁では「大企業も厳しい価格競争にさらされているが,中小企業の場合,納入先が(特定の)大企業になるなど,販路が限定され,価格交渉が不利になっているケースが多いのではないか」(担当者)とみています。 このため,中小企業庁では,「買いたたき」などの違法行為をなくすため,下請代金法の順守や下請中小企業振興法にもとづく振興基準の周知を図るよう関係事業団体に要請することにしています。 原油価格という国際社会の取引の中では,一中小企業はどうすることもできないのが現実です。しかし,国内の石油元売り各社がこれに便乗し,大きな利益を上げていることが目に余ります。 政府は国際原油価格上昇に便乗し,莫大な利益をあげている石油元売り各社に対して,是正を求めることが必要だと感じます。
2007年08月09日
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大田弘子経済財政担当相は8月7日の閣議に2007年度年次経済財政報告(「経済財政白書」)を提出しました。 経済財政白書に示された安倍「経済成長戦略」のほころびを見てみました。 「家計部門では2006年半ば頃から賃金と消費の伸びがともに鈍化し,その後,消費は持ち直したものの賃金は横ばい」。白書は,労働者の賃金が一向に上昇しない現状を指摘しました。 白書はその原因として,(1) フルタイム非正規労働者の割合の増加 (2) 団塊世代の退職 (3) 賃金の低い産業への労働移動 (4) 地方公務員の賃金引き下げなどを挙げています。これらの要因が複合的に作用し,労働者の賃金押し下げの原因になっていると分析しました。 今回の「景気回復」局面では,「企業収益が回復する中にあっても,それに見合った賃金の増加は見られない」。白書は,企業がバブル期を超える利益をあげるもとで,それを賃金の上昇に反映させていない現状を浮き彫りにしています。 白書は,「2002年以降,大企業の企業収益が回復する中で,配当や役員報酬が増加する一方で,従業員給与が横ばいとなっている」と指摘しています。 大企業(資本金10億円以上)の従業員1人当たりの給与に対する役員1人当たりの報酬の水準は,2005年度には約4.8倍に達し,39年前と同じレベルに近づいています。白書の分析から,企業の業績回復のもと,役員報酬だけは増やしても,労働者の賃金が上がらない現状が浮き彫りになっています。 白書は,日本や米英では,「成長と格差拡大が同時に進む例がみられる」という分析結果を紹介しています。 正規,非正規間の賃金格差の拡大や,IT(情報技術)化,グローバル化による格差拡大の助長などを指摘した今年の「経済財政白書」。経済成長によって社会全体が底上げされ,格差は次第に縮小するとされてきた政府の従来の考え方とは異なる考えを示しました。 安倍内閣の「経済成長戦略」のもと,大企業優先の経済成長のみを重視すれば,格差拡大という大きな落とし穴があることに警鐘を鳴らしたものともいえそうです。 「日本経済は新しい成長に向けたステージに入りつつある」。 内閣府が8月7日に公表した経済財政白書の冒頭で,大田弘子経済財政担当相はこう高らかに宣言しました。しかし,大田氏の宣言とは裏腹に,白書の各論からは,安倍内閣が進める経済「成長戦略」のほころびが随所に見えているにもかかわらず…。 大企業は,バブル期を超える空前の利益を更新し続けています。 白書は,「リストラ」による企業部門の収益回復が「景気回復」の原動力になったとする一方,「正規雇用の減少と非正規雇用の増加が進むなかで家計部門には厳しい影響が及んだ」と分析しています。 「人々の間で景気が回復しているという実感が乏しいとの指摘がある」。分析だけは家計の実感に沿いながら,その打開策としては「企業部門から家計部門への波及が回復することで,景気回復の実感が高まることが望まれる」と述べるにとどまります。 家計が景気回復を実感するためには,雇用不安をなくし,賃金上昇を促す真剣な政治の取り組みや,自民党・公明党連立政治による負担増路線の転換こそ求められます。 大田氏は白書の冒頭で,「優れた人材やイノベーション(技術革新)の力が存分に発揮されれば,人口減少下で成長を持続するという難題をきっと克服できると信じている」と語りました。企業の業績さえ好調であれば,“きっと”家計も良くなる。 「信じている」方向が間違っていては,景気回復は家計に波及しません。
2007年08月08日
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東京の足立区教育委員会が,区の学力テストで1位になった小学校で不正があったことを認めました。 校長と5人の教員がテスト中答案をみてまわり,誤答をしている児童に指で「トントン」とたたいて示唆をあたえたり,学習に遅れのある児童の答案を全体集計から除外するなどしていました。平均点をあげる工作です。 区教委は個々の教員が不正をはたらいたと強調しますが,それは問題のすり替えです。問題の核心は,学校ごとに平均点を公表し競争させる「学力テスト体制」が,同区の教育を歪めたことです。 同区は4年前にはじまった都のテストで23区中最下位になり,その対策として,小2から中3までを対象にした区のテストをはじめました。平均点を学校ごとに公表して学校選択の参考とする,今年度からはテストの成績によって学校に配分する予算に差をつける,徹底した平均点競争が導入されました。 区教委の号令で,学校は過去問題の練習に明けくれました。テスト当日の4月19日まで,新学期の内容を授業しない学校もあります。 テストで測れるのはせいぜい学習内容の一部です。それに授業がふりまわされれば,学力そのものがつかなくなります。しかもテスト体制で放置されるのは,本来もっとも丁寧に教えられるべき,学習の遅れがちな子どもです。 さらに,昨年の教育基本法国会で野党が指摘したように,テスト対策で,運動会や自然教室などが中止・短縮されています。子どもが育つ土台をやせ細らせる愚行です。子どもたちのストレスは強く,保健室に駆け込む子どもが1日100人を超える学校もあるといいます。 教員自身も被害者です。校長は,平均点をどれだけ上げるのか目標を示せと区教委から指導され,数値で徹底的に管理されるようになりました。校長は,同様のことを教員にします。教員は異議を述べれば「君は異動してもらう」と脅されます。こうした体制こそ不正をうんだ温床にほかなりません。 この問題は全国的な問題です。政府はこの4月,国民の反対を押し切って全国学力テストにふみきりました。政府の狙いは,足立区のような「学力テスト体制」を日本全体にひろげることです。 まず,全国学力テストの結果を足立区のような形で公表して,全国の学校を平均点競争にかりたてることをやめることです。全国学力テストの結果発表は10月です。 政府の規制改革・民間開放推進会議は「学校ごとの結果公表」を主張しましたが,それは文科省の通知すら否定している乱暴な主張です。学校ごとの公表は自治体の権限であり,自治体は公表を見合わせるべきです。 そして,そもそも必要のない全国学力テストをやめることです。学力の全国的調査なら数パーセントの抽出調査で十分です。全国学力テストに使われている数十億円もの税金は,少人数学級の実施にまわすべきです。 政府は学力以外でも,数値目標で教育をしばろうとしています。しかし,それによって傷つくのは子どもたちです。競争と統制の「教育改革」をやめさせ,子どもの成長を中心にすえた教育を築くために全力をあげるべきではないのでしょうか。
2007年08月07日
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アメリカが広島に,続いて長崎に原爆を投下してから62年になります。原爆による爆風,熱線,放射線は一瞬のうちに両市を壊滅させ,広島市では140,000人以上,長崎市では73,000人以上の命を奪いました。そのときは助かった人たちもその後原爆症で苦しみ,毎年少なくない方たちが亡くなっています。 被爆者の苦しみをこれ以上放置するわけにはいきません。政府はただちに被爆者救済の手を大きく広げる立場に転換すべきです。 熊本地裁は先月7月30日,原爆症認定申請を却下された熊本県内の21人の被爆者のうち19人について,被爆者の訴え通り国に申請却下処分の取り消しを命じました。全国17地裁で係争中の認定訴訟のうち,被爆者は6度目の判決も勝利しました。司法の場では,国の認定基準の不合理性を厳しく断罪する流れが定着していることを示しています。 熊本地裁の判決は,爆心地から1.3キロ以遠での被爆者の初期放射線による被曝線量について,国の計算値は「実際よりも低いものとなっている可能性」があると述べています。数十キロ離れても「相応の放射性降下物による外部被曝を受けた可能性がある」ともいっています。 原爆投下のあと爆心地に入った「入市被爆者」についても,飲食などを通じて体内に入り込んだ「残留放射線による内部被曝の影響が考慮されていないのは,相当とはいえない」と厳しく指摘しています。 今回の判決もこれまでの判決同様,政府の原爆症認定基準それ自体の不合理性を断罪しています。原爆症認定基準を理由にした認定申請の拒否はもはや許されません。 原爆手帳をもっている約260,000人の被爆者のうち,原爆症と認定されたのはわずか0.8%,2,000人余りにすぎません。政府の非人道的な態度を改め,被爆者救済に大きく道を開く必要があります。そのために,判決を受け入れ,認定制度そのものを見直すべきです。 被爆で苦しむ人たちが多数いるのに認定数を絞っているのは,政府が原爆の恐ろしさを小さくみせようとしているからです。それは,日米核軍事同盟の強化政策と無関係ではありません。 政府がアメリカの核兵器使用を認めているために,国民の核兵器拒絶反応を抑える狙いがあることは確かです。 中曽根康弘首相はかつて,アメリカの核抑止力への依存を当然視し,日米共同作戦を行う際は,「核使用を日本側が排除する立場にない」と認めています(1985年2月19日衆議院予算委員会)。 安倍晋三首相もアメリカの核抑止力が「きわめて重要」といっています(4月24日衆議院本会議)。そのために,国連総会で核兵器使用禁止決議にも棄権しています。 被爆者への救済に消極的な政府の態度の背景にあるこうした核政策そのものを根本的に見直すべきです。 広島,長崎への原爆投下はどのような理由をつけようと正当化できません。久間章生前防衛大臣が原爆投下は「しょうがない」と発言しても罷免もせず,アメリカ政府のジョセフ不拡散特使が原爆投下を正当化する発言をしても抗議もしない安倍首相には被爆国国民を代表する資格はありません。 被爆者救済に全力をあげるとともに,どんな核使用の正当化も許さず,核兵器全面禁止条約づくりを急ぐことが重要になっています。
2007年08月06日
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スギやヒノキの国有林を育成する費用を国民から募った林野庁の「緑のオーナー制度」で,木材を販売したときにオーナー側に渡る分配金が出資額を大幅に下回る事実上の「元本割れ」する事例が90%を超えています。 元本割れは,国産材価格が外材輸入増などを要因に下落したためですが,危険性を十分説明せずに出資金を集めた同庁の責任が問われます。 同制度は,オーナーが出資金を一口50万円(一部で25万円)支払い,森林整備を林野庁がおこないます。15年から30年後の伐採時に入札にかけ,収益を林野庁と出資したオーナーが折半する仕組みです。 昨年度まで伐採した507ヶ所のうちオーナーへの分配金が50万円以上となったのは27ヶ所にとどまり95%が元本割れしています。2006年度の分配金は平均295,000円でした。 同庁は,1984年度から1998年度にかけ,のべ約86,000の個人・団体から約500億円の資金を集めました。林野庁は,出資を募るさいに「3%程度の利回り」とか「二階建ての住宅の木材に相当する収益」などと試算を示して募集をすすめてきました。募集パンフレットに「元本を保障しない」と書いたのは募集9年後の1993年度からだといいます。1999年度からは,対象になる森林が減ったとして公募を休止しています。 立ち木価格は輸入材におされ,スギやヒノキが制度導入時に比べ二,三割の低水準になっています。最近は輸入材の値上がりで国産材価格回復の兆しもありますが「すぐに50万円を超える状況はむずかしい」(林野庁国有林野管理室)といいます。 国会では野党が,「緑のオーナー制度」について,“投資すればもうかる”と宣伝をして加入をすすめることは間違いだと当初から指摘されていました。保安林が多く本来,国が責任をもつべき国有林の整備資金を,国民負担でおこなったことが破たんしたといえます。 同制度が導入された1984年の国会で中林佳子衆院議員(当時)は「30年後に投資されたものが必ず保証されるという見通しもない」と指摘。さらに国有林の整備をする職員を減らす計画になっていたことから「国有林野事業の使命の放棄につながる」と批判していました。 1987年の国会で国有林問題が審議されたときも下田京子参議院議員(当時)は,「断定的に全く間違いなく収益が上がるということで第三者から資金を集めることは許せないと思う」とのべています。下田議員は,「緑のオーナー」募集に使われたパンフレットに「木造二階建ての住宅に使われる木材に相当する収益」などと利殖を煽る表現があると述べ,「20年後,30年後にちゃんと幾分かの利益になって還ってきますよという,そういうもので集めたら間違い」と指摘していました。
2007年08月05日
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11月1日で期限切れを迎えるテロ特措法の延長問題が秋の臨時国会の重大焦点として浮上してきました。野党側は延長反対に向けて動き,日米両政府は焦りと危機感を強めています。 アメリカ側は同法に基づいてインド洋でアメリカ艦船などへの給油を続けている海上自衛隊と,イラクでアメリカ兵を空輸している航空自衛隊に繰り返し表明しています。アフガニスタンでもイラクでも破たんしたブッシュ米政権の先制攻撃戦略。それでも付き従う日本政府の姿勢を,アメリカは「道義的な支援」(ライト在日米軍司令官)と受け止めています。 小池百合子防衛相はすでに,「国際的に高い評価を受けている。特措法延長を否定する選択肢はない」(7月12日)と明言しています。 しかし,参議院選挙で自民・公明両党が大敗を喫して過半数を割り込みました。民主党の小沢一郎代表は「これまで反対したのに,今回,賛成するはずがない」と反対を表明(7月31日)。 日本共産党もアメリカの先制攻撃戦争に加担するテロ特措法に一貫して反対しており,参議院で野党が一致すれば廃止されます。 シーファー駐日米大使は,「日本は国際社会の責任あるメンバーだ。この問題(テロとのたたかい)はもはや重要でないと決定してほしくない」(英紙フィナンシャル・タイムズ8月1日付)と懸念を表明。民主党に対し,小沢代表との面会を申し入れたものの,小沢氏側は「会う理由はない」と当面,応じない意向です。 危機感を強める与党が参議院で否決後に衆院の2/3の賛成で再可決することも想定されます。 「民主党が参院で否決しても,衆院での再議決が織り込み済みならそれでいい」(防衛省幹部)との声も聞かれます。 しかし,これは「本当の禁じ手中の禁じ手。もう参議院はいらないというのと同じ」です。安倍自公政権と国民との矛盾が極限まで達するのは目に見えています。 テロ特措法 米同時多発テロ事件後,アフガニスタンでの「対テロ」報復戦争を支援するため,2001年10月に自民・公明両党の賛成で成立。海上自衛隊は同年12月以来,補給艦と護衛艦を派兵し,インド洋で対テロ作戦に参加するアメリカ艦船などへの洋上給油を続けています。 さぁ,安倍首相はどうするのか注目されます。
2007年08月04日
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参議院選挙惨敗にもかかわらず居座りを決め込み,世論の厳しい批判にさらされている安倍晋三首相が,改めて開き直りを宣言しました。 これは8月2日配信のメールマガジンでの表明で,選挙結果について,「わたしが進める改革の方向性が否定されたとは思えない。 ゼロから出直す気持ちで,新しい国づくりに向けた信念を貫いていきたい」,「今後とも新たな国づくりを進めていくことが,私の使命であり,責任である」などと白々しく述べています。 首相は,惨敗の原因は,もっぱら「消えた年金」や「政治とカネ」問題での対応であり,憲法改定や「経済成長戦略」など「改革」路線にはないとしたいのでしょうが,そうは問屋が卸しません。 例えば,首相が就任前から「改革」の最大の課題と位置づけてきた憲法改定問題。自民党はマニフェストの第一項目にこれを掲げたわけですから,国民の審判を受けていないという理屈はおよそ通りません。 これについて首相は,7月30日の会見で,「この選挙では憲法問題について十分議論できなかった」と逃げました。しかしそれは,喫緊の課題をほうり投げて,国民の多くが望んでいない改憲問題を前面に掲げれば,さらなる批判を浴びるからにほかならず,首相の勝手な都合にすぎません。 選挙で堂々と民意を問わず,首相自身,「議論が不十分」だったといわざるを得ない改憲を,選挙後に,さも国民が支持しているかのように装って推進すれば,国民を二重に愚弄することになります。 首相の開き直りは,どのような理屈によっても正当化される余地はありません。 それは,メルマガにある,「政治の空白をつくりだすことは許されない」という脅しまがいのもの言いにもよく表れています。 今回の選挙で明確になったのは,「成長戦略」などといい,大企業には減税など全面的支援をおこなう一方,庶民には雇用破壊を放置し,大増税を押し付けていることへの国民的批判です。 さらに,「戦後レジームからの脱却」などといい,憲法九条を投げ捨て,「海外で戦争する国づくり」を目指す首相の政治路線への“ノー”の声です。 新しい政治を求める国民の目には,安倍首相が居座ることこそ,「政治空白」として映っているのではないでしょうか。
2007年08月03日
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今になってなぜ辞任なのか,続投を決めた安倍晋三首相の責任はどうなんだ-事務所費疑惑を抱えた赤城徳彦農水相の辞任に,こんな疑問と怒りを抱いた人は少なくないのではないでしょうか。 政権発足以来10ヶ月あまりで4人目の閣僚交代。政権担当能力そのものが問われる事態です。国民に何ら疑惑の真相を明らかにせず,疑惑閣僚をかばってきた安倍首相の責任は重大です。 「選挙戦に影響を与え与党敗北の一因となったことは紛れもない事実だ。この際けじめをつけたい」。赤城氏は8月1日の辞任会見で,自らの疑惑が与党大敗の要因となったことをあげました。 原爆投下を「しょうがない」と発言して辞任した久間章生前防衛相が「選挙を控え,自民党も公明党もやりづらい」(7月3日)ことを理由にしたのと同じ理屈です。 与党の都合を理由に辞任すること自体,政治不信を招いたことへの反省のなさを示しています。しかも,自らの疑惑にはフタをしたまま,まともに真相を解明する姿勢もありません。 赤城氏は辞任会見で,領収書を公開して真相を明らかにするのかと聞かれても,「ルールが決まれば行う」という対応です。 実体がないのに多額の事務所費を計上する問題は日本共産党の追及で赤城氏にとどまらず,内閣中枢の塩崎恭久官房長官へと広がっています。すでに佐田玄一郎前行革担当相が辞任。松岡利勝前農水相は自殺しました。 これだけ多くの閣僚が問題になっているのに,だれ1人として,領収書を明らかにして,真相を語った閣僚はいません。その閣僚の任命権者である安倍首相は,だれ1人に対しても「真相を明らかにせよ」と指示を出していません。 就任以来,次々明るみに出た赤城氏の政治資金の疑惑に対しても,何ら対応をとりませんでした。9,000万円にのぼる架空事務所費疑惑が発覚したときには,「架空計上ではない」,「説明責任は果たしている」と領収書提出を拒みました。 そればかりか,「2005年の光熱水費は月800円だ。800円で大臣を辞めさせるのか」(7月8日の民放テレビ)と気色ばみ,追及する野党側を批判。いっさい説明を拒む赤城氏の“代理人”のように振る舞ったのです。 赤城氏は会見で「総理に官邸に呼ばれ,総理も『(辞職は)同じ考えだ』といって,その場で辞表を書いた」と自らの辞任で安倍首相が動いたことをあげ,「更迭」を強調してみせました。 いまになっていくら首相を持ち上げても,安倍首相が一貫して赤城氏をかばってきた事実は消えません。 参議院選挙の与党大敗を前にしても「基本路線は国民の理解を得られた」と強弁する安倍首相。4人目の閣僚交代は,政治の信頼という面でも安倍首相の指導力のなさを白日のもとにさらしました。 参議院選挙で示された国民の審判をかわすために辞任し,真相解明をうやむやにするとしたら,国民の怒りはさらに大きくなることでしょう。安倍首相は“まったく分かっていない”。
2007年08月02日
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アメリカ下院本会議が「従軍慰安婦」問題で日本政府に謝罪を求める決議を採択したことは,参議院選挙での歴史的大敗に続いて,安倍内閣にとって二重の痛打となりました。 参議院選挙での敗北も,単に年金問題や閣僚の失言,不祥事が重なったからだけではなく,安倍首相の掲げる「戦後レジーム(体制)からの脱却」路線が国民から拒否されたからでした。JNN(TBS系)の世論調査では,この「脱却」スローガンに“共感できない”が過半数を占めました。 「従軍慰安婦」問題での首相の対応も,まさに「戦後レジームからの脱却」と一体でした。“日本の戦争は正しかった”と正当化する立場から,アジアやヨーロッパの女性を性奴隷とした「従軍慰安婦」問題など消し去りたいという心情がにじみ出ていました。 だからこそ首相自身が「従軍慰安婦」の強制性を否定してみせ,「靖国」派の同志である下村博文官房副長官は「従軍慰安婦などいなかった」と存在そのものを否定しようとしました。 これが,国際的にも通用しない歴史の歪曲であることは,日米軍事同盟を強化・推進するアメリカ政府の側からも「同盟関係に破壊的影響が出る」(シーファー米駐日大使)などと批判と懸念が相次いだことで示されました。 日米同盟を評価するラントス・アメリカ下院外交委員長も7月30日,「日本の一部の人々によって,歴史を歪め,否定したり,犠牲者を非難するゲームが続けられていることは吐き気を催させる」として,自民・民主の「靖国」派国会議員によるワシントン・ポスト紙への広告を非難しました。 安倍首相は,今回のアメリカ下院本会議での決議採択について「先般の訪米でわたしの考えは説明してきた。こうした決議がなされたことは残念だ」と述べ,「20世紀は人権が侵害された時代だった。21世紀は人権侵害のない,世界の人々にとって明るい時代にしていきたい」と強調してみせました。 しかし,訪米時に首相がとった態度は元「慰安婦」への「同情」の表明だけでした。旧日本軍が関与した戦争犯罪に「第三者」のような態度をとることは許されないことでした。 まして,自らの負の歴史に目を背けて「明るい時代」にしていくことなどできないことも明らかです。 作家の保阪正康氏は参議院選挙結果に関連して,「『戦後レジームからの脱却』を繰り返すだけでは『戦前レジーム』への回帰を望んでいるようにしか聞こえない」,「首相自身の政治家としての資質や歴史認識が問われた選挙だったからこそ,ここまで負けたのだ」(「毎日」7月30日付夕刊)と指摘しました。 いま,国内的にも国際的にも批判にさらされている「靖国」派の路線には未来がないことをアメリカ下院の決議は改めて示しましたといえます。
2007年08月01日
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「開き直りは国民をばかにしている」「本人は『安倍か小沢か』って政権選択をにおわせていたくせに結果が出た途端に,自分の言葉を忘れてこの態度か」-リスナー(聴者)が討論に参加するTBSラジオ番組「アクセス」(7月30日放送)には,参議院選挙で歴史的大敗を喫した安倍晋三首相(自民党総裁)の続投表明に怒りのメールが相次いで寄せられています。 7月31日付地方紙社説は「責任はあるが,取らない。この不思議な論法が国民の政治不信に拍車をかけることを首相は分かっていない」(北海道新聞),「首相は納得が得られる説明もないままに政権を維持するという。これでは,選挙をした意味が分からなくなってしまう」(神戸新聞)など「分からない」を連発しました。 国政選挙で示された国民の審判を安倍首相や自民党,公明党の連立与党が受け止められないことに国民は呆れかえっているのです。 しかし,自民党・公明党の連立与党内は首相の続投宣言を黙って受け入れる状況です。渡辺喜美行革担当相は7月31日の講演で早くも内閣改造に話を進め,「戦後レジーム(体制)の大転換を行うにふさわしい,安倍カラーを全面的に出した『純化路線』(の人事)を推し進めるべきだ」と強調。 選挙戦で逆風の一因とされた赤城徳彦農水相は「参議院選挙の結果は厳粛に受け止める」と淡々としたもので,自民党として辞任を迫る動きもありません。(本日8月1日やっと更迭されました。) わずかに7月31日の自民党総務会で「青木幹雄参院議員会長が辞めるのにおかしい」(加藤紘一元幹事長),「首相は『私か小沢一郎民主党代表の選択』と何回も訴えた。有権者にどう説明するのか」(石破茂元防衛庁長官)などの声が出ただけ。 「これだけ負けたのだから,党内抗争をしている余裕なんてない。早くみんなで党の立て直しをはかるのが先だ」(自民党参院幹部関係者),「『ポスト安倍』がいまはいない」(同党関係者)という党内事情があります。 日本政治の研究で知られるジェラルド・カーティス米コロンビア大教授は7月30日の日本外国特派員協会での講演で,「わがまま坊ちゃんは有権者の声を聞こうとしない。参議院で多数をとっていないのに,どうやって『課題』を遂行するのか」と提起。 「国民は安倍退陣を求めている。日本の政治史上,非常に決定的な転換点になるだろう」と述べています。 「現職閣僚(松岡利勝前農水相)の自殺で,安倍さんが『美しい国』といっても受け入れられなくなった。広報戦略がガターンとなった」-自民党広報局長の片山さつき衆院議員は7月30日の民放番組でこう嘆きました。 しかし,安倍・自公政権の歴史的大敗の原因は単に広報戦略だけの問題ではありません。 自民党の麻生派関係者は「『構造改革』で自民党の支持基盤が弱り,市町村合併で自民党が利用できる行政機構も弱っている。郵政民営化で(特定郵便局長会の政治団体の)『大樹』も動かない。基礎体力が落ち,求心力もないなかで,逆風が吹いた。都市型の流れが郡部にも及んだ」とみています。 政権担当能力や政治路線そのものも問われています。 ジェラルド・カーティス米コロンビア大教授は,今回の選挙について有権者が,『年金問題などでの安倍首相の指導力への“ノー”』,『「戦後レジームからの脱却」という安倍政権の国民の願いとかけ離れた優先政策への“ノー”』,『日本社会に経済格差を生み出した小泉・安倍の改革に“ノー”』という「3つの“ノー”」を示したと分析し,「日本では自民党の土台を侵食する根本的な社会の変化が進行している」と指摘しています(7月30日の日本外国特派員協会の講演)。 7月30日の記者会見では安倍首相の「政策の基本路線について国民の理解を得られた」という発言に「その根拠は何か」という質問が飛びました。答えは「演説の聴衆の反応で分かった」。首相一人の肌感覚でした。 その演説で安倍首相は「戦後レジームからの脱却」に憲法改定だけでなく,国の年金運営の責任を放棄する社会保険庁の民営化・解体まで入れて,選挙で国民に“実績”としてアピールしました。それが否定された以上,文字通り「続投」する根拠は完全に崩れています。
2007年08月01日
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