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先週はクリスマスウィーク。J.E. ガーディナーのバッハ・カンタータ全集、CD1枚目のタイトルはFor Christmas Dayとあり、ちょうど時節にかなっているので週末はこれから聞き始めることに。このCDにはBWV63「キリスト者よ、この日を銘記せよ」とBWV191「天のいと高きところ神に栄光あれ」の2曲が収録されています。前者は1716年以前の作とあり、確かに同じ頃作曲された管弦楽組曲の作風に通じるところがあります。もう一方は1740年とだいぶ後の作品のようですが、バッハには珍しく祝祭的雰囲気に溢れた明るい曲で、受難曲の劇的・悲壮的世界とは違うバッハを垣間見せてくれます。録音は1999年12月25日、ワイマールのヘルダー教会とあり、ここから「バッハゆかりの地を毎週巡礼しながら1年かけてすべての教会カンタータを演奏する」というガーディナー達の壮大なミレニアムプロジェクトが始まったことがわかります。ちなみに、CD2枚目はFor New Year's Dayとあるので、こちらは新年にとっておくとして、少し先回りして全集最後の方のCDを覗いてみると、CD54が再びFor Christmas Day(およびFor the Second Day of Christmas)、CD55がFor the Third Day…、そして最後のCD56にはFor the Sunday after Christmasとあり、少々つまみ食い的に拝聴。(なお、いずれもニューヨークの聖バーソロミュー教会での録音(2000年12月)とありますが、この地がバッハにどのような縁があるのかは不明。)さて、クリスマスも終わって年末も残すところあとわずかになり、今年最後のお手入れにと2週間ぶりにハープシコードのチューニングを始めたところ、下段鍵盤Hの弦(42番)がプツリと断線。久々に弦の張り替えをする羽目に。まずはチューニングピンを回して響板から抜き取り、巻きついている弦を解いてその長さを測ります(~50 cmでした)。次に、交換用の弦の端(ループになっている)をヒッチピンにかけて目玉クリップで抑え、他の弦と平行に伸ばした先がチューニングピンの位置を通ってさらに50 cmだけ余分の長さになる位置で弦を切断。弦の端をチューニングピンの穴に通してキッチリ巻きつけて行き、元の位置まで来たところでチューニングピンをピン穴に突っ込み、ハンマーで打ち込みます(本当は木槌を使いたいところですが、手元にないのでピンの上に厚手の布を置いてその上から金槌で慎重にガツンとやります)。後はピンを回していつものようにチューニング。調べてみると、くだんの弦はチューニングピンの根元あたりで断線したようで、やはり弦に最もストレスが懸かる部位はその辺りの模様。チューニングを終えたところでふと湿度計に目をやると、なんと32%まで下がっています。このところようやく関東も冬らしくなり、空気が乾燥してきた模様。例年より遅くなりましたが、いよいよ加湿器の出番です。
2015.12.27
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12月の初頭、ニコラウス・アーノンクールが現役引退を表明したというニュースが飛び込んできました。A新聞の記事によれば、翌日が誕生日という12月5日、予定していた指揮を病気で交代したコンサートのプログラムに挟んだ自筆のメモに、そのように書かれていたとのこと。随分唐突ですが、すでに86歳という年齢を考えれば、今まで現役でいられたことが既に偉業という感じです。彼の公式ホームページhttp://www.harnoncourt.info/en/によると、2015/16年シーズンのウィーン・コンチェルト・ムジクス(WCM)のコンサートは予定通り行うとのことですが、来年後半からのシーズンからはおそらく新しい体制での再出発を目指すとのこと。このウェブサイトのタイムラインを見ていると、レコーディングの記録を通して60年あまりにわたる彼とWCMの長いキャリアを辿ることができますが、それは彼やレオンハルトといった面々を中心に始まった古楽復興運動の歴史そのものでもあります。その中でも、特に亭主の印象に残っているものの一つがモンテヴェルディのヴェスプロです。このタイムラインでは1967年に録音されたとありますが、亭主が最初にこれを聴いたのは今から30年ほど前、1983年にキングレコードから発売(再販)された2枚組廉価版のLP(ジャケットもエルグレコによる聖母マリアの絵も含めて元のものと同じデザイン)でした。(同じ1960年代後半に、英国でもJ.E.ガードナー達が同じようにヴェスプロに取り組んでいたことが思い出されます。)当時、エマ・カークビーとイングリッシュ・コンソートによるマドリガーレを聴いてモンテヴェルディにハマった亭主が、他にどのような作品があのだろうと漁っているうちに出会ったのがこの録音でした。これまで聴いたことがない新鮮な響きに打たれ、カセットテープに録音して繰り返し聴いていたことを今でも思い出します。とはいえ、LPのライナーノートには楽曲の詳しい解説が付いているものの、演奏者については(名前や楽団名を除き)何も情報がなく、ジャケット裏面にある彼の名前も「ハルノンクール」と書かれているのが何ともご愛嬌。ちなみに、総合指揮者としてユルゲン・ユルゲンスの名前が大書されていますが、アーノンクールとWCMの名前は参加した合唱団などと同じ1団体の扱いで、要するに当時は彼が何者であるか(少なくとも日本では)知る由もなかったということのようです。その彼の名を日本で一躍有名にしたがヴィヴァルディの「四季」の録音らしく、そのLPが日本初登場した時(1978年5月)、「少し大げさにいえば、この国のバロック音楽ファンは騒然となった」(渡辺和彦氏のライナーノートから)とのこと。それ以前の19世紀ロマン派的の延長のような美学と一線を画した演奏がどれほどセンセーショナルだったかを伺わせます。それにしても、アーノンクールの世代が去った後、古楽復興運動はどのように進んでいくのでしょうか…
2015.12.20
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先週取り上げた曽根麻矢子さんの演奏会、亭主が会場を出た後に奏された2曲目のアンコールはなんとダングルベールの「シャンボニエール氏のトンボー」だったそうです。(唖々…聴けなくて実に残念。)この作品、特に初めの3-4小節目の響きがとても印象的で、いつまでも耳に残ります。この曲を始め、スコット・ロスによる演奏のCDを聴き始めたところで楽譜が欲しくなり、例によってsheetmusicplus.comに注文しておいたところ、先月ウジュル版2冊が到着。この週末ようやく少し時間ができたので中身拝見です。編集はケネス・ギルバートによるもので、1975年に出版されたとありますから、すでに40年前のものですが、亭主が調べた範囲ではこれが唯一のまとまった印刷譜。おそらく専門家以外が手にすることのできる数少ないダングルベールの資料で、実際に冒頭4ページほどの序文を読むだけでもこれまで知らなかったことがいろいろと書いてあって大いに参考になります。それによると、ダングルベールが生前に出版した唯一の「クラヴサン曲集(1689年)」は、彼のオリジナルな作品(プレリュードや舞曲のタイトルを持つ曲)に加えてリュリの声楽作品などをハープシコード用に編曲したものが挿入されており、さらに末尾にはオルガン用フーガや伴奏のための教程まで付いている、という複雑な構成を取っているようです。そこでギルバートは思案の末にこれらを分けて提示することにし、まずオリジナル作品だけで4つの「組曲」(調性によって分かれる)を構成して彼の第1巻に収めています。次に、リュリ作品の編曲、その他の編曲、さらにオルガン作品と「伴奏原理」を第2巻に収めており、これで1689年版全体がカバーされています。1689年版の曲目リストから想像するに、ギルバートも当初は冒頭1曲目、17曲目、38曲目にある「プレリュード」を区切りの印として、調性ごとにそれらしく並べられた作品群をダングルベールが「組曲」として意図していたと考えたものの、一つの組曲に含まれる曲数があまりに多いので、やはり調性ごとに並べられた音楽帳のようなものと解釈を改めたのでしょう。実際、たとえば第2組曲(ト短調)ではオリジナル舞曲8曲に対して12曲もの編曲作品が付加されており、これらを1回の演奏のための組曲と考えるには無理があります。ウジュル版ではこれら1689年版曲集の作品に加え、さらに手稿譜として残っているものも収録しており、その中にはかのリュート奏者「老ゴーティエ」の曲を編曲した作品が数多く収められています。ここまで分かったところで、改めてクリストフ・ルセのCDを眺めて判明したことは、彼の録音が1689年版の曲集をそのまま忠実に通しで演奏したものだということです。(ただし、演奏時間の問題からか、第2と第3のプレリュードで始まる一連の部分が2枚のCDで入れ替わって収まっていますが。)一方、スコット・ロスのCDでは、ウジュル版の組曲構成をそのまま採用して演奏しており、よりコンパクトで分かりやすくなっています。これまで何の予備知識もなく二人の演奏を聴いていましたが、両者で印象が大きく異なっていた理由の一端は、どうやらこのような構成の違いにもあったようです。それからもう一つ、ロスが老ゴーティエの編曲作品を多数録音してくれているのが嬉しい点で、これらを聴いているとフランス・クラブサン音楽とリュート音楽のつながりがよくわかる気がします。なお、ウジュル版の末尾にはプレリュードの手稿譜のファクシミリ版が付いており、印刷譜では全音符が並んだだけで記されている譜面が手稿譜では一部四分音符など音価がわかるように記されているので、両者を比べることでこれらプレリュード・ノンムジュレを実際に演奏する上で大きなヒントになりそうだとのこと。ルイ・クープランの演奏にも役立ちそうです。
2015.12.13
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今月12月2日の夕べ、「クープラン一族の世界--今蘇る王宮の香り」と題された曽根麻矢子さんのコンサートに足を運びました。先月は大塚直哉さん、とハープシコードのコンサートが続く上に、この日はウイークデーのど真ん中。通常であればていよく諦めているところですが、事前にアナウンスされたプログラムの中にルイ・クープランの名前を見つけ、どうしても聴きたくなりチケットを予約。当日は雨模様のぐずついた天気でしたが、仕事を小一時間ほど早仕舞いして迷うことなく会場に直行です。 会場となった白寿ホールを訪れるのは今回が初めてで、あまり大きくないビルの最上階にある私設のホールということでそれほど期待していなかったのですが、着いてみるとこじんまりとしながらもとても立派なホールでした。 ところでホールに入るなり釘付けになったのがステージ上の楽器です。陶磁器をイメージしたと思しき白地にパステルカラーで華やかに装飾されたハープシコード、どこか見おぼえがあると思って渡されたプログラムに目をやると、ブランシェが1722年に製作したモデルのDavid Leyによるコピーとあり、その昔スコット・ロスが使っていた楽器を思い出しました。 さて、開演時間になってステージ上に現れた麻矢子さん、マイクを取って曰く「本日は私の新しいパートナーを初めてお披露目する席になりまして…」とご挨拶を始めたのですが、皆ポカ〜ンとした様子。とっさに雰囲気を察したのか、「アノ、私よく変なことを言いますから…」とフォローするも、聴衆の多くはまだ事情をよく飲み込めない感じです。(この多少ともヒョウキンな麻矢子節が彼女の人気の所以かも。)もちろん、その後の説明で「新しいパートナー」がステージ上の楽器を指すと分かり、演奏者・聴衆いずれにとってもメモリアルな機会に立ち会っていることを知ることに。 そしていよいよ最初の演目、亭主が最も注目したルイ・クープランです。プログラムノートには ルイ・クープラン:組曲ニ短調 プレリュード アルマンド クーラント カナリア ヴォルトゥ パストゥレル シャコンヌとありますが、よく知られているようにルイの作品はプレリュードや舞曲が調性ごとにバラバラにまとめられた「音楽帳」としてのみ残っていて、演奏家は(当時も今も)その中からその都度適当に組み合わせた「組曲」を奏でることになります。というわけで、今回麻矢子さんが「ニ短調」の調性の下、複数あるプレリュード・舞曲の中からどれを選んで「マイ組曲」を組み立てたのかが興味のあるところ。 まずプレリュード。当夜のために選ばれたのは中間部にフーガを持つ比較的長大な作品で、ウジュル版でA. カーティスが組んだ第IX組曲(ニ短調)のそれでした。なにしろルイ・クープランのプレリュード・ノンムジュレには、音符の並び方とスラーを手掛かりに演奏者が想像力を駆使して実際の音楽に仕立てる醍醐味、またそれを鑑賞する醍醐味、という他では得られない楽しみがあります。亭主はセンペ、アスペレン、エガーの3種類の録音を持っていますが、あえて言えば麻矢子さんの演奏、前半はアスペレンのそれを思い起こさせるもの。ふっと始まったかと思ううちに音楽がどんどん推進力を得て加速していく雰囲気です。フーガを挟んでの後半は、センペのそれのように怒涛のように音楽が流れていく感じでした。 続くアルマンドは…と続けたいところですが、こんな感じでやっているといつまでも終わりそうにないので、あとはご想像にお任せしましょう。とにかくまたとはない耳福の時間を過ごしました。(なお、選曲は基本的にウジュル版の第IX組曲に近い感じでした。) この「クープラン一族の世界」と題されたコンサート、ルイの後はフランソワ、次いでアルマン=ルイが取り上げられました。亭主はかつてオリビエ・ボーモンのCDを聴きながら、フランソワの作品はどうも退屈なものが多いなという印象しか持てませんでしたが、麻矢子さんの演奏ではオッ!?と思わせるものが。アルマン=ルイはセンペのCD「フレンチ・コレクション」で取り上げられた作品もあって多少馴染みがあったせいか、とても面白く聴きました。 プログラム終了直後のアンコールでは、モーツァルトのソナタ中から有名なトルコ行進曲の楽章を弾いて再び聴衆をポカ〜ンとさせた麻矢子さん、マイクを取って「1時間知らない曲ばかり聴かされたと思いますので、最後は有名な曲をと思って弾きました」とのことでしたが、亭主はこのレパートリーがアルマン=ルイのような18世紀後半のハープシコードのそれと連続的に繋がっていることを示すという意図もあったと「深読み」しました。 かくして楽しい時間はあっという間に過ぎ、電車の出発時刻が近づいてきた亭主は、「馬車がかぼちゃに戻っちゃう...」と恐れるシンデレラの心境さながら、2曲目のアンコールに後ろ髪を引かれながら大慌てで帰路につくことに。それにしても本当にワンダフルな1時間でした。 (なお、その後このコンサートを詳しく紹介したウェブサイトを見つけましたので、ご参考までにリンクを置いておきます。) 「ぶらあぼ」
2015.12.06
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