2006年03月08日
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柳 美里著  『自殺』  1999  (株)文藝春秋  p.159

ぼくは実は知らなかったのであるが、この本が書かれた当時をにぎわした3面記事として、「草壁龍次」なる男の服毒自殺があったらしい。
彼は複数の人にネットで毒物を送っていた人物で、それが発覚したため服毒自殺を図ったらしい。
その彼が「ドクター・キリコ」と名乗っていたのも非常に興味深いが、それ以上に自殺抑止のために毒薬を送っていたというのに興味を引かれた。

「七名もの人間が自殺目的で毒物を入手したという事実にはさほど注目しなかったようです。そのうちの一人の女性が、あれは自殺するためではなく、むしろ青酸カリを持っていればいつでも死ねるから、今すぐ死ななくてもいいという安心感を得るために入手したのであって、ドクター・キリコも絶対に飲むべきではないとくりかえし呼びかけていたという手記を発表しました。つまり、送った方も受け取った方も自殺抑止のための毒物であると認識していたというのです。」

この発想はよく分る。
「いつでも死ねるから、今すぐ死ななくてもいいという安心感を得る」
実はぼくも前に禁煙したときに、つねにタバコを身近に置いておいた。
いつでも吸えると思うと、以外とがまんできるものなのだ。

正直な話、そこらの灰皿に捨ててあるシケモクを危うく吸いそうになったほどだ。

そうなのだ。
下手に欲望を押さえつけるとその反動が怖いのだ。
タバコだからシケモク程度で笑い話となるのだけど、これが自殺となるとそうは言ってられない。
自分が死ぬことを物理的に抑制されている状態で、悶々と自殺することを考え続ける。
これが精神衛生上いいわけがない。
リビドーを抑止することができるのは、それを上回る精神力しかないのだと思う。
いくら物理的にはけ口をなくしてしまっても、リビドーは収まらない。
むしろカタルシスはよりむき出しの形となる。
そうなったときに行動をコントロールすることなどできなしないだろう。

いまの社会を鑑みるに、子供たちに対して大人は異常なまでに過保護になっているような気がする。

団塊の世代に育てられた子供たちが親となる時代。
彼らは物で欲望を満たす以外、信じる道がないのかもしれない。
いずれにせよ、物理的に押さえつけてしまうと、そうでない状況におかれたときに爆発しやすい。
つまり社会的に自分の位置を把握する能力が低くなってしまうのだ。
だからこそ、自分のチョイスの幅を狭めることなく、逆に広げてあげた上で状況判断のできるように訓練することが大事になるのだと思うね。





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最終更新日  2012年04月18日 09時41分56秒
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Re:「自殺抑止のための毒物」(03/08)  
msk222  さん
このはなしはいろいろな面でよくわかります。
抗菌グッツなどもそのたぐいではないでしょうか。雑菌を遠ざけて生活したら、むしろ強い雑菌につかまったときの耐性がなくなるのではないかとか、子供たちの危険防止に先回りして対策をしすぎると、危険を避ける訓練を経ずに大人になってしまうのではないかとか…。
いろいろに当てはまるような気がします。
(2006年03月08日 11時02分00秒)

>msk222さん  
FLUR  さん
msk222さん、こんばんわ!
お久しぶりです♪

>このはなしはいろいろな面でよくわかります。
>抗菌グッツなどもそのたぐいではないでしょうか。雑菌を遠ざけて生活したら、むしろ強い雑菌につかまったときの耐性がなくなるのではないかとか、子供たちの危険防止に先回りして対策をしすぎると、危険を避ける訓練を経ずに大人になってしまうのではないかとか…。
>いろいろに当てはまるような気がします。

本当にその通りだと思います。
ただし、時代というかコンテクストというか、われわれを取り巻く環境も刻一刻と変化していることも事実です。
たとえば、昔は乾布摩擦は肌を鍛えるのに良いとされているのですが、アトピーが蔓延する現代ではかえって肌を荒らすとして忌避されます。
やはり温故知新の改良型といいますか、古人の経験を知識として取り入れ、現コンテクストへ適応させていく。
そういう柔軟さが必要で、そうして多層的に事象を観察、考察することで「死ぬ」以外の回答をも見つけていくことができるのではないかと思います。

(2006年03月08日 23時22分44秒)

Re:「自殺抑止のための毒物」(03/08)  
alex99  さん
自殺する人間って、良心的すぎるんですよね。
だから、この私も、自殺するかも知れませぬ。

それに、若年の自殺も、老衰の死も、大局的にみれば、どれほどのちがいがあるのか。


・・・てな事を考えていると、人生論が意味をなさなくなりますね。
でも・・・。

(2006年03月12日 00時42分07秒)

>alex99さん  
FLUR  さん
alexさん、こんばんわ!

>それに、若年の自殺も、老衰の死も、大局的にみれば、どれほどのちがいがあるのか。

このブログは原則的に自殺は良くないという立場で書いていますが、ほんとにそうなのか、自信がもてません。
単にぼくは生きるのが楽しいのでそう思っているのかもしれません。
実際、柳美里さんは自殺の肯定者、いや、人間は尊厳を守るために死ぬべきだとも言っています。
それにはにわかには賛同できませんが、人間、死ぬことだけは確実ですので、その死に違いなどないのかもしれないとは思います。

>・・・てな事を考えていると、人生論が意味をなさなくなりますね。
>でも・・・。

んんんん。。。。
でも・・・のあとが気になります。。
(2006年03月12日 01時00分42秒)

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