2006年03月25日
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カフカ著  前田敬作訳  『城』

手紙というものは事務的であっても私的なものであっても文字というもので構成されている。
もちろん、いまの時代であれば写真なんかもプリントしてあったりすることはあるけれど、たとえそうだとしても、そこにされている行為は現実の事象の描写でしかない。
その描写を空想の空間に再構築するのはその手紙を読む人の想像力にゆだねられる。
だから簡単な例を挙げれば、「東京タワー」という言葉を読んで、実際の東京タワーを知っている人であればどんなものがその映像を創造することができるけど、知らない人にとってはなにが東京のタワーなのかわからない。
人によっては都庁のような超高層ビルと思い浮かべるかもしれないし、ひょっとして東京の銘菓の名前だと思う人もいるかもしれない。
まあこれは極端な例ではあるけれど、情報通信ツールとしての言語は、そこに共有する情報がない場合、間違って、すなわちおなじ文章でも違った解釈を生むこととなりやすい。
だから正確に言えば手紙そのものが、価値を変えるのではない。
読み手が認識の中で手紙に違う意味を付加していくのである。


よく考古学で、単に昔の文字を解読しただけではその手紙なりの本当の意味が判明しない場合がある。
その文書の書かれた時代背景や文化背景を理解した上でないと理解することができない場合が多い。
ぼくは高校のとき古文や漢文を勉強しているときに、つくづくそれを感じてしまった。
ただし、その文章がインフォーマティブなものでない限り、その文章からどのようなメッセージを読み取るのか、個人の認識に委ねられる。
ぼくはいちいち時代背景や文化背景を理解することが面倒くさいし時間的にも難しいので、自己の内部へ訴えかけるメッセージを含んだテクストとしてその手の文章を読むことにしている。
そのときに重要になってくるのは自分がどのように時代を分析・解釈しているかということだ。

ぼくらは過去にも未来にも存在することなどできない。
いや、存在しているいまこのときを現在として始めて過去も未来も意味を成す。
だから現在を基準として過去を判断するところに歴史が生まれる。
それはぼくらのいる位置によって必然的に変わってくる。
中国と日本とで歴史の解釈が異なるのも必然的といえるであろう。


あるコードに沿って解釈していて矛盾が生ずるのであれば、強引にテクストを解釈するのではなく、コードを柔軟にアジャストしていくことが必要になる。
だから事象をできるだけ客観的に観察し、それをヒントとしてテクストの意味、あるいはコノテーションを解釈していく。
歴史小説家の童門冬二もその歴史的事象をできるだけ現在の事象に重ね合わせて解釈を行うことを心がけているという。
自分の生きているこの同時代性をテクストの中で以下に解釈していくか。
そこに流行やマニュアルに流されない独自の視点が個性となって表出してくるのではなかろうか。





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最終更新日  2012年04月16日 15時49分27秒
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