本日は久しぶりに偐山頭火氏との銀輪万葉の旅である。
飛鳥、甘樫丘地区にある国営飛鳥歴史公園の駐車場に車を停め、自転車を降ろして出発。
さて、何処へ行く?行く先は大和高田市の奥田蓮池にあるとかいう役の行者(役小角)の母親、刀良売
(とらめ)
の墓と決めていたが、どういうコースで行くかは決めていないという、いつもいい加減な二人なのである。偐山頭火氏の「大神神社に寄ってゆこうか。」との言葉に従い、取り敢えず三輪山方向に走ることに。初瀬川(大和川)を渡って、先ず、海石榴市
(つばいち)
観音の辻にて、今東光筆の歌碑(巻12-3101)に挨拶。
(万葉歌碑3101)
八十
(やそ)
の衢
(ちまた)
に 逢へる児や誰
(たれ)
(巻12-3101)
たらちねの 母が呼ぶ名を 申さめど
路
(みち)
行く人を 誰と知りてか (巻12-3102)
次に、
志貴御縣神社
に立ち寄る。ここは第10代崇神天皇の磯城瑞籬宮の跡とされている。境内にはその旨の石碑があり、山口誓子筆の万葉歌碑もある。
山辺の道は歩く細道なので、我々はMTB故、その道は取らず、広い道を迂回し、大神神社の鳥居前に向かう。そこで昼食を取ろうという次第。
(志貴御縣神社)
(万葉歌碑・巻13-3249)
しき島の 日本
(やまと)
の国に 人多
(さは)
に 満ちてあれども 藤波の 思ひまつはり 若草の 思ひつきにし 君が目に 恋ひや明かさむ 長きこの夜を (巻13-3248)
反歌
(崇神天皇磯城瑞籬宮址碑)
大神神社の鳥居前で昼食後、大和三山を一望できる道に行き、カマトポチ氏のご期待にいくらかでも添うべく、三山を写真に撮りましたが、山が遠過ぎますかな。
(大和三山――左から香具山、大鳥居、畝傍山、建物の後に耳成山)
香具山は 畝火ををしと 耳梨と 相争ひき 神代より かくなるらし いにしへも しかなれこそ うつせみも つまを 争ふらしき (中大兄皇子 巻3-13)
箸墓古墳が目に入ったので、立ち寄って行く。古墳の前の池の堤に立って、来た方向を振り返ると、右に三輪山、左に穴師山、その間の奥に巻向山と弓月が嶽が見える。人麻呂も眺めた風景であるか。さらに左に目を転じると、写真には入っていないが、引手の山、竜王山が続いている。
箸墓を後にして大和高田の奥田蓮池を目指す。泊瀬川(大和川)を渡る。川面が光って眩しい。
(初瀬川<泊瀬川>)
大和高田は思った以上に遠かったが、飛鳥川、寺川などを越えて、葛城川に辿り着く。ひとつ西の高田川は桜の美しいことで有名であるが、ここ葛城川も桜並木がある。未だほんの一部咲き初めたばかりにて、見頃は少し先のよう。
期待した刀良売の墓は、どうやら最近出来たばかりのようで、新しくて、古めかしさ、
趣きに欠けるものでありました。まあ、墓に趣きも何もあったものではないのではあるが・・。
刀良売
(とらめ)
の墓の場所を地元の方に尋ねると、「とらめさんの墓は・・」と教えて下さった。「〇〇さん」と、まるでご近所の先頃お亡くなりになった「おばあちゃん」ででもあるかのような、その呼び方からして地元の方が刀良売に親近感を抱いて居られ、彼女のことを大切に思って居られることがよく分かるのであった。
(とらめの墓)
<墓の後方に見える山は二上山である。>
(奥田蓮池)
(役小角生誕伝承地の碑)
上の碑に記されている文章は以下の通り。
奥田蓮池のひとつ目蛙
役の行者の母刀良売は この蓮池の近くで療養していましたが ある朝 池の中の捨篠神社に詣でました すると 池の中から光かがやく蓮の茎がのび ふたつの白蓮が咲いたのです 蓮のうてなでは金色の蛙が鳴いていました
刀良売は何げなく 萱を一本抜きとって蛙に投げると あろうことか蛙の目を射ぬき 片目を失った蛙は水の中へ沈んでいきました そして あたり一面を彩っていた五色の露と白蓮は消えて もとの土色になったひとつ目蛙が浮かび上がってきたのです
刀良売はそれから重態になり とうとう亡くなってしまいました 母を失った役の行者は このことを契機に発心 葛城山で修行を積み修験道を開いたのです そして 吉野の山奥にわけ入り 蔵王権現をあがめ 蛙の追善供養と母の菩提をとむらいました
いまも毎年七月七日には 奥田の村人が早朝から蓮池の蓮一〇八本を切り取り刀良売塚に詣でた後 吉野山蔵王堂に持参し 蓮華会の行事の一つである「蛙とび」がおこなわれます そして翌日 蔵王堂から大峰山への沿道のお堂に蓮を献じて 蛙の供養をしています
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奥田蓮池の一つ目蛙
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後日に偐家持の詠める歌三首
忍坂 の 山はいづこや 分け入れば 行けども行けど 辛 き坂道
つばいちの 八十のちまたに 逢へる児は いづち行かめや 春日の照れり
枯れ果てぬ
奥田の池の
はちす葉の
水面
の影か 刀良売の悲し
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飛鳥川銀輪散歩(下) 2024.11.11 コメント(4)
飛鳥川銀輪散歩(上) 2024.11.10 コメント(2)
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