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小説家は随筆を書くな
小説家は随筆を書くなと言った小説家がいることを知ったのは小説家の南木佳士さんの随筆を読んだ時だった。その中で芥川賞受賞パーティーの席で開高健さんから言われたと書いている。何でも随筆一作で短編の材料を使うのはもったいないというような意味のことを言われて戒めたという。南木佳士さんは随筆を沢山書かれているが書いている時に常に開高健さんの言葉がよみがえってきて何か悪いことをしているという罪悪感に襲われたらしい。芥川賞の選考委員と言えば受賞者にとって雲の上の人、その人から声をかけられ将来を思い戒めの言葉を貰ったのだから分かるような気がする。南木佳士さんはそのことを何遍も書いているのは自分には医者として誰も書かけない小説を書く自信があることを小説のテーマーからも文章からも伺えるのだ。確かに随筆を書くときに少し突っ込んで書き進めれば短編になる物がある。開高健さん言いたかったのは小説家は本来小説を書く事を本業とし、随筆家は随筆を書くことで立つと言うことであったろう。
南木佳士さんには今は克服したが鬱という病気持ちで短編長編となると神経が持たないという事で頼まれて短い随筆を書いているのだろう。
南木佳士さんは大変なことを書いていた。彼が「文学界」に応募したとき一次も入らなかったが編集者から電話がかかり異質な世界の方で作品に光る物があり温かさを感じたので話を聞きたかったという物だったと。本来応募作品についてはお答えしないと言うのが定説なのだがこれは応募要項違反であるのだ。それが縁で編集者に作品の書き方を教わったという。文章や構成を学んだというのだ。「文学界」の新人賞を受賞したときにも応募する間際まで編集者と作品を推敲したと書いている。カンボジア難民救済医療団の一員として飛行場から出発する一時間前まで額をつきあわせて直したと言うことも書いている。これは真剣に作品を書き未来を夢見て応募する人たちにとって不幸なことである。編集者がその才を見抜き新人賞を取らせたと言っても過言ではないのだ。文芸春秋社の大いなる過失であり賞の価値はなくなる。私が応募した賞でも最終に残っていなかった作品が受賞した例はあるから何かの画策があったというほかない。選考に付いての問い合わせには応じられないとあるが、私が作品について聞きたいと電話をすると編集長さんが出て親切丁寧に答えてくれました。私はそこで問い合わせに応じられないという但し書きはみんなから問い合わせが来ているのだという意味なのだと感じた。この理解は正解であった。新人を発掘したい、偉大な作家を誕生させたい、希有な小説を世の中に出したいこれは編集者の仕事であるから時に型破りをするらしかった。
世の文学青年や文学老年達が南木佳士さんの随筆を読んで文芸春秋社に抗議をしたというニースに出会っていないのでそんなことはなかったのだろう。この話はもう時効だからと南木佳士さんは書いたのかも知れない。
徳のある人の人との邂逅は時に大きな花を咲かす事がある。そんな経緯があって南木佳士さんも今花を咲かしているのだ。
信州の佐久平の七百床もある病院の勤務医である南木佳士さんは呼吸器の専門医として特に肺ガンの治療に携わり多くの患者を見送ったのだ。それが元でパニック症から鬱になられた。自己診断も出来ずに病院の精神医にかかり治療を始められた。その病床にあってこれでは駄目だ何かしなくてはこのままでは死ねないと小説を書き始めたという。育ちは山奥でなにもすることがないので父の本を取り足りして読んでいたらしい。彼は言う、芥川の小説で一番良いのは「秋」だと。子供の頃から今までその思いは変わらないらしい。芥川の「秋」を出すくらいの深い理解力それが元になっているらしい。呼吸器系の診察から外して貰い人間ドッグドクターとして勤務して快方に向かったという。それに加えてこのままでは死なぬと言う思いと書くという彼の使命が支えたのだろう。
自宅から自転車で五分の通勤を続けておらせれると言う。
信州佐久平の病院は医療研修医に評判が良く全国から来るという。 私のかかりつけの耳鼻科の医師に尋ねるとよく知っていた。
今、勤務の傍ら日本百名山に登るという計画を立てるほどに恢復しておられる。山に生まれ山で育つた彼は人間の宿命とも言える生まれたところへ帰るという回帰本能が芽生えたというのでしょうか。
小説家は随筆を書くなと言う開高健さんの言葉を今どのように感じておられるのか。彼の随筆を読むたびに思うのである。彼の随筆は読む薬として広く処方されている。読者の層は広く浮気をしないらしい。作者の優しさと真実が読む者に心地良い癒しを与えてくれる。心の持ちようでなんとでもなるものだと感じ取らせてくれる。
彼は言う、どんな患者でも何処が悪くても奇跡が起こり治るのだと言う人が殆どだという。死なないと思っているという。が・・・。
人間はどんなに金持ちでも貧しくても平等に死を迎えるのだと。
「あの憎たらしい奴が死なないのに俺が死ぬのは不公平だ」と言うことはないのだ。
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