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小学4年生のA及びBが公園内において軟式ボールでキャッチボールをしていた際、ピッチャーをしていたAが誤って付近で遊んでいた小学校5年生のCの心臓部に投球を当てたたため、Cが心臓震盪を引き起こして死亡したとして、Cの両親である原告らがA及びBの各両親である被告らに対し民法712条、714条1項(監督者責任)に基づいて損害賠償を求めた。判決は死因について、「以上によればCがAの投球を胸腹部に受けて心臓震盪を引き起こし、死亡したということが高度の蓋然性をもって証明されたというべきであり、Cの死因を心臓震盪と認定するのが相当である」とし、予見可能性については「本件事故当時の公園の状況でキャッチボールをすれば、ボールがそれてCら他人にあたることが十分予想でき、軟式ボール(C球)が他人にあたった場合に、その打撃部位によっては他人に傷害を与え、更には死亡するに至らせることがあることも予見できる」とし、「以上によれば、Cは責任無能力者であるAらの共同不法行為によって死亡するに至ったことが認められ、被告らに監督義務懈怠がないことが認められない本件においては、被告らは、民法712条、714条1項に基づき、原告らの損害について賠償の責任を負うとして、6000万円余の損害賠償を命じた。この件は控訴され、控訴審において、6000万円を認め、約定とおり3000万円を支払ったときは残額を免除するという和解が成立した。 判例タイムズ1225号 281頁個人賠償責任保険に入っておきましょうね。保険料は年額1万円くらいです。火災保険などにもサービスとして、個人賠責が1000万円とか500万円とかついておりますので何かあったときは見逃しなく。
2007.04.27
1 子の養育料の給付義務の終期を「子が大学を卒業する月まで」とした離婚調停における 合意は、子が成年に達した時点において学校教育法所定の「大学」に在籍しているか、 合理的な期間内に大学に進学することが相当程度の蓋然性をもって肯定できるとの特段 の事情が存在する場合を除き、子の成年に達する日の前の日を終了するとの趣旨と解す べきである。(子は既に成年に達しており大学にも進学していない)2 子の養育料の給付義務に関して「原則として年毎に総務庁統計局編集の消費者物価指数 編東京都区部の総合指数に基づいて増額する」とした離婚調停における合意から直ち に養育費の具体的増額分にかかる金銭債権が発生するとはいえない。3 過去の増額養育費の支払を求めることは、既に経過した期間における扶養料を遡及的に 一括請求をするものであって許されない。 東京地裁平成17年2月25日判決 本判決は、上記2,3について、上記条項は、養育料等の増額の時期、基準、支払方法、 例外の有無について一定の解釈を許すもので具体性を欠くとし、同条項を根拠とした具体 的な増額養育料の支払請求権の発生を否定するとともに、養育料等の増額分の支払請求が 発生しているとしても、それは過去の養育料を一括して遡及的に請求するものとして許さ れないとした。 控訴されている。 過去の養育料(扶養料)の請求については、扶養請求権の法的性格論と相俟って肯定説、 否定説の両説があり、またこれを肯定する立場においてもその始期をいつとみるかに関 して諸説が提唱されている。 また、扶養義務者間における過去の扶養料の請求について、これを認めうるか、また、 その分担額の決定が訴訟事項か審判事項かについても議論のあるところである。 判例タイムズ1232号 299頁 頭注
2007.04.26
消費者との契約において、違約した場合の損害賠償の予定、違約金の定めが平均的損害を超える場合は、超えた部分は無効とする。年14.6パーセント以上の遅延損害金はこれを超えている部分について無効とする。消費者契約法9条大学入試の入学金の問題学納金返還訴訟の裁判例を見ると、京都地判平成15年7月16日判決が、入学金は学生としての地位を取得する対価であるなどとし、在学契約の始期である4月1日前に辞退をした者について返還を認めたが、その後の裁判例は、入学金は大学に入学しうる地位の対価であるなどとして返還を認めず、入学金以外の学納金は、消費者契約法施行後の入学辞退者については、同法9条1号を適用し、返還を認めていた。横浜地裁平成17年4月28日判決は入学金は学生としての地位を取得する対価であるとして入学金の返還を認めた。 控訴されている。 判例時報 1903号111頁進学塾の受講契約の中途解約を一切許さず、支払い済みの受講料の返還を認めない特約が消費者契約法第10条により無効とされた例東京地裁平成15年11月10日判決 判例タイムズ1164号 153頁最高裁平成18年11月27日判決 判例タイムズ1232号 97頁
2007.04.25

人身傷害補償保険とは、平成10年に損害保険料率算出団体に関する法律の改正・施行に伴い導入された保険商品であり、被害者側が契約した自動車保険の保険会社から、被害者の過失割合を問わず保険契約の約款上に定められた損害額算定基準によって積算された保険金(算定損害額)が支払われる保険契約である。人身傷害補償保険の目的は、第1に責任の確定に要する膨大な額の費用負担、第2に過失相殺のために生じる保険金支払の時間的な遅れ、第3に過失相殺のために生じる支払保険金の減額という従来型の責任保険方式が抱えていた三大欠陥を克服し、それを通して被害者の迅速・確実な救済を実現することにあるとされ、平成18年4月時点での人身傷害補償保険の付帯率は68.3%となっている。人身傷害補償保険の開発から時間が経過するにつれ、人身傷害補償保険金の支払により保険代位が生じるか、生じるのであれば、その範囲をどのように考えるかについて問題が生じるようになった。大阪地裁平成18年6月21日判決は人身傷害補償保険は定額保険でなく、実損填補を目的とした損害保険金である。人身傷害補償保険金を支払った保険会社が保険代位する範囲は、保険約款に基づいて算定された金額のうち過失相殺部分から充当され、その残部について代位が生じると判示した。 判例タイムズ1228号 292頁 頭注ブログランキング参加してます。↓ クリック、よろしく!
2007.04.24
交通損害賠償事件における中間利息の控除方法については、従来、いわゆる東京方式と大阪方式が対立していたが、平成11年11月に出された、東京、大阪、名古屋地裁の交通部共同提言により、いわゆる東京方式に統一されることになり、全国的にライプニッツ方式が採られている。ところが最高裁平成17年6月14日判決(判例タイムズ1185号109頁)が中間利息の控除割合は民事法定利率によらなければならない旨判示したことにより、中間利息の控除割合を年5%未満とすべきであるとの主張がされなくなったが、代わってホフマン方式を採用すべきであるとの主張がされることが増えてきた。そして福岡高裁平成17年8月9日判決(判例タイムズ1209号211頁)が、ライプニッツ方式を採用した1審判決を取り消してホフマン方式を採用したことから、中間利息の控除方式は、最近改めて注目されている論点である。 判例タイムズ1228号 大島眞一判事の解説中間利息の控除とは 例えば10年後に得る収入100万円を現在賠償するとすれば現在いくらあれば10年後に100万円となるかを計算する方法 現在の賠償額を毎年5パーセントの複利で運用した場合 10年後に100万円となる これがライプニッツ方式 単利で運用した場合がホフマン方式 ホフマンのほうが、現在受ける額が多くなる なお、最高裁判例としては、平均賃金を使ってホフマン方式によって算出した控訴審 判決について誤りではないとしたものがある。
2007.04.23
労働者が退職後、同業他社に就職したり、同業他社を開業したり、しようとした場合、退職金の減額、損害賠償請求、競業行為の差止請求の可否が問題となる。本件は競業行為の差止請求の可否が問題となった事案である。東京地裁平成18年5月24日判決において、競業禁止の合意が公序良俗に反するか否かは1 競業禁止条項制定の目的 2労働者の従前の地位 3競業禁止の期間、地域、職種4 競業禁止に対する代償措置等 を総合的に考慮し、労働者の職業選択の自由を不当に制約する結果となっているかどうか等に照らし判断するのが相当であるとの判断基準に立つことを明らかにした。事案 原告はプロジェクトマネジメント(以下PM)に関する講座を提供することを主な業務とする会社 PMとはチームに与えられた目標を達成するために、人材・資金・設備・物資・スケジュールなどをバランスよく調整し、全体の進捗状況を管理する方法をさす。被告は平成15年1月原告会社に入社 PM研修の講師と顧客に対する営業活動に従事していたが、平成18年1月8日退職した。本件は原告が同社を退職した被告に対し、雇用契約に記載されている競業禁止の合意に基づき、退社から2年間、競業行為の仮の差止を求めた事案で上記判決は、原告の請求を認めたものである。 判例時報1956号 160頁
2007.04.20
売買の担保責任における除斥期間の起算点についての判例としては、土地の売買における当該土地の一部の所有権の帰属をめぐり隣地所有者との間で裁判手続がなされた後に民法563条又は565条に基づき提起された代金減額請求訴訟に関して民法564条の「事実を知った時」を「買主が売主に対し担保責任を追及し得る程度に確実な事実関係を認識したことを要する」と判示し、隣地所有者の主張を知った時点をもって「事実をしったとき」とはいえないとした最高裁平成13年2月22日判決 判例時報1745号85頁がある。また、造成地と地上建物の売買契約において、建物が傾斜し雨漏りがするなど欠陥が生じたため570条の瑕疵担保の成否が争われた事案で「問題となる瑕疵がある程度進行し、瑕疵の内容や程度が明確化したときから進行する」と判示し、欠陥に関する専門家の調査結果により瑕疵の内容や程度が明確化した時点をもって「事実を知ったとき」とする京都地裁平成12年10月16日判決 判例時報1755号188頁がある。東京地裁平成18年1月20日判決は、土地建物の売買において平成13年7月に原告が本件建物に入ってシロアリ被害を発見していることを認めたが、除斥期間の起算点を「少なくなくとも白あり被害が土台の大部分に及んでおり、建物の効用が相当程度減殺されることを認識した時点」と解して原告らが右認識を持った時点を平成14年7月と認定し、訴訟提起の日である平成15年2月段階で除斥期間を経過していないと判示した。また、同判決は、建蔽率違反については現況有姿売買である点を重視し「隠れた瑕疵」には当たらないとした。 判例時報1957号67頁 頭注
2007.04.19
最高裁昭和53年10月20日判決は、公権力の行使に当たる国の公務員の職務行為につき、国が国賠法1条に基づく損害賠償責任を負う場合には公務員個人は民法709条に基づく損害賠償責任を負わないと判示しており、学説上も責任否定説が通説である。否定説の論拠としては1法律が「国又は公共団体が」責任を負うという文言を用いていること2被害者としても国又は公共団体から確実に賠償が得られる以上、公務員個人の責任を追及 させる必要はないと考えられること3公務員個人が責任を追及されるおそれがあるということになると、公務員を萎縮させ公務 の適正な執行まで抑制されるおそれがあることなどが挙げられている。このような否定説の論拠は、公務の委託を受けた者が自ら違法な職務行為を行った場合のみならず、被用者に公務を行わせたところ当該被用者が違法な職務行為を行った場合においても概ねあてはまると思われる。特に委託を受けた者が個人である場合を想定すると、自ら公務員と公務員として違法な職務行為を行った場合は免責されるのに、被用者が違法な職務行為を行った場合は民法715条使用者責任に基づく損害賠償責任を負うと解すべき実質的理由も見出しがたい。家庭での養育が困難になった親が子を県による児童福祉法27条1項3号所定の入所措置に基づき社会福祉法人Y1の設置運営する児童養護施設に入所したところ、他の児童から暴行を受け傷害を負い、施設の職員に保護監督につき過失があったとの事案で、被害者は県に国家賠償法による損害賠償の請求、施設には使用者責任による損害賠償請求を求めた。原審は県の責任を認め、更に施設に対する使用者責任も認めた。これに対し最高裁平成19年1月25日判決は、上記否定説の趣旨で使用者責任を否定した。 判例時報1957号60頁 頭注
2007.04.18
所有権留保特約付売買契約の形式を採って自動車を買ったものについて代金完済前に再生手続開始の決定がされた場合、当該契約の代金債権が再生債権であって再生計画に基づいて弁済すべきものであるから債務不履行はない。しかし、売主は当該自動車に担保権(所有権留保という形式の)を有するものであるから、再生手続によらず担保権本来の実行方法により、別除権(担保権のこと)を行使することができ自動車の引渡しを請求することができる。東京地裁平成18年3月26日判決 判例タイムズ1230号 342頁判決は、上記の場合、双方未履行の双務契約(民事再生法49条)にあたらないとした。
2007.04.17
1988年11月16日 30万借入以後借入と返済を繰り返し 1994年11月28日時点で過払金2万3175円発生以後借入と返済を繰り返したが、恒常的に過払金が発生しており今から10年前である1997年3月27日で348.497円の過払金が発生していた。その後も借入と返済が繰り返され2006年6月20日時点では、188万円の過払金が発生していた。貸金業者は、このような場合、1997年3月27日までの過払金は10年経過しているので消滅時効であるから、それまでの過払金はゼロとして計算してくれと主張する場合がある。しかし一連の取引の場合次のように考える 貸付 返済1997年3月27日 △348.4971997年5月7日 59.000 a1997年11月21日 105.000 b1998年3月26日 58.000 c1998年7月17日 59.000 d1998年12月8日 73.000 e1999年3月9日 42.000 f過払い金は、a,b,c,d,e,fに順次充当されて消滅する(当然充当 意思表示を要せず充当)新たに1997年3月27日以降に返済した金額が過払い金となる。10年以内の発生なので消滅時効とはならない1貸付と2貸付が一連の取引でないときは 1貸付の過払金 2貸付の過払金 は別個のものと扱われる1貸付の過払金が発生1997年3月末日に発生しているとすれば、以後に借りた2貸付の借入金に充当消滅させることができないので、10年前の過払金として残存しており消滅時効の対象となってしまうよって、一連の取引かどうかが、結論に大きな影響を与えることとなる。過払金シリーズ ここまでで一旦中断
2007.04.16
貸金業者は、債務者から取引履歴の開示を求められた場合には、その開示請求が濫用にわたると認められるなど特段の事情のない限り、貸金業法の適用を受ける金銭消費貸借契約の付随義務として、信義則上、保存している業務帳簿(保存期間を経過して保存しているものを含む)に基づいて取引履歴を開示すべき義務を負うものと解すべきであり、貸金業者がこの義務に違反して取引履歴の開示を拒絶したときは、その行為は、違法性を有し、不法行為を構成するものというべきである。(最高裁平成17年7月19日第三小法廷判決 裁判所時報1392号5頁)慰謝料20万円と弁護士費用5万円を認めた例 大阪地裁平成18年1月26日判決慰謝料15万円を認めた例 大阪高裁平成18年1月25日判決
2007.04.13
平成元年4月25日にカード契約がなされたが、取引履歴の開示は平成元年10月27日の返済分からであった。そして返済が平成3年5月まで継続され、ついで平成6年5月に12万円を貸し付けたという内容の取引履歴であった場合、原告は、平成元年10月27日時点の残元金債務は存在しないという前提で、原被告間の金銭消費貸借取引が返済から開始することになるが、被告においてそれ以前の貸付の事実を立証しない以上、上記争いのない取引履歴を前提に利息制限法所定の制限利率に引き直して計算する際には、その出発点である上記時点での貸付残高は0円として計算するのが妥当であると主張し、被告はこれに対し、原告計算書によると、借入金額としては平成6年5月の12万円からしか記載されていないにもかかわらず、それ以前の返済額がそのまま被告の不当利得となるような計算がされている。しかし、当該返済額については、当然それに対応する借入金が存在していたからこそ返済が繰り返されていたものであり、それにもかかわらず被告において貸付を立証できないからといって貸付残高が0円であることを前提として返済が始まり返済額の全てが不当利得になるというのは暴論であり、むしろ被告の想定計算により過払額を判断するのが妥当である。と主張した。大阪地裁民事8部は平成18年1月26日言い渡しの判決で、被告において平成6年5月より前の貸付の事実につき具体的に立証していない以上、原告の主張のような計算方法を採用せざるを得ないとした。
2007.04.12
高松高裁平成19年2月2日判決被控訴人と控訴人との間の取引は、昭和58年9月26日に開始された後貸付と返済が繰り返されてきたものであるところ、取引開始から約3年経った昭和62年3月の時点で過払いとなって以降平成14年1月末に取引を終了するまで約15年にわたって恒常的に過払いの状態が続いてきたこと、取引開始から昭和62年3月までの間の借入金額の合計が103万円余、返済金額の合計が118万円余であるのと比較すれば、それ以降の借入れ金額の合計は75万円余に過ぎないのに対し、返済金額の合計は287万円余に及んでおり、その間の借入金総額と返済金額との不均衡には著しいものがあること、被控訴人は、上記取引の期間中、貸金業法の正当な解釈に従った措置を十分に講じることなく利息制限法所定の制限を超えた利率による利息の支払義務を前提として貸金債権の請求を行ってきており、法律知識に疎く過払い状態の発生を知らないままこれに応じてきた控訴人から上記のとおり多額の金員を弁済金として取得してきたものであること、被控訴人は、貸金業を遵守して営業を行うべき立場にあって、そのために必要な態勢を講じることを求められており、かる、これに対応することも容易であるのに対し、控訴人は、被控訴人から貸金の返済を請求をされる立場にあり、法律知識の点でもこれに基づいて対処する能力の点でも著しく劣った状態あって、過払い状態の発生後早い段階での不当利得返還請求権の行使を控訴人に期待することは実際上困難であったと考えられること、貸金業法の正当な解釈については近時の最高裁判例を通じて一層明確なものとなってきたものであるとはいえ、被控訴人が、過払い金の発生を比較的容易に認識し得る立場にありながら、上記のとおり貸金の返還請求を続けることによって、結果的に過払い金の累積という事態がもたらされたということもできることなどの事情にかんがみれば、本件のように過払い状態の下での借入れと返済が長期間に及んでいる場合に、上記のような立場にある被控訴人による消滅時効の援用を認めることは、誠実な債務者に不利益を強いる一方で、貸金業法を遵守しなかった貸金業者に対して長期間に及び過払い状態の放置による不当利得の保持を容認することにつながるものであって、クリーンハンドの原則に反し、信義にもとる結果をもたらすものとして許されないものというべきである。従って、被控訴人の消滅時効の抗弁は理由がない。
2007.04.11
山口地裁周南支部 平成19年3月22日 言い渡し第1取引完済後、293日後に第2取引を、更に第2取引完済後、452日後に第3取引を開始した事案。なお、契約番号は同一だが、第1取引と第2、第3取引とは別の支店で契約。金融会社は、各取引を別個のものとして第1取引で生じた過払金返還請求権は時効消滅し、第2取引で生じた過払金請求権と第3取引の貸金返還請求権をは相殺すると主張。判決は「本件各取引は、いずれも、当事者間において継続的に貸付が繰り返されることを予定した基本契約が締結され、これに基づき、継続的に貸付が繰り返されたものである」「前の貸付の際にはその後の貸付が想定されていた」として、前の取引によって発生した過払金を後の取引の借入金債務の返済に充当することを認め、全部の取引を一連計算した。 神戸弁護士会 判例検索より 担当の橋野成正 弁護士の解説上記はリボルビング契約判決の中に記載されている いわゆる「完済後再貸付」事案における一連性の判断基準高裁判決は完済後再貸付の事案において概ね次のような判断基準で、全取引を一連のものと判断している。a 第1取引と第2取引が、消費者金融業者による一般市民に対する利息制限法所定の利率を 超える高金利での無担保での貸付であることb 両取引が、いわゆるリボルビング契約式の契約で、実際に煩瑣に借り増しと弁済が繰り 返されていたことc 仮に、第1取引と第2取引とで基本契約書が別個に存在していても、基本契約書2を作成 した際、改めて実質的な審査がなされていないか、審査がなされたとしても、審査項目 のうち、融資希望金額、勤務先、雇用形態、給与の支給形態、業種及び職種、住居の種 類、家族構成等にほとんど変わりがなく、年収額及び他の利用中のローンの件数、金額 に大差がない場合には、第2契約の際の審査は、第1契約が従前どおり継続されることの 確認手続きに過ぎず、別個の取引と見る判断資料となならないことd 支店の同一性e 金融業者の顧客管理は、全取引を通じて、同一の顧客番号を使用し、これらをコンピュ ーターに入力しておこなっていること(なお、枝番まで同一であることを要しない)f 金融業者からの電話勧誘により改めて取引が開始された場合には一連性が強く推認される本判決が支店を異にしても一連性を認めた理由前記高裁判決において、取り扱い支店の同一性が判断基準のひとつとしてあげられている趣旨は、同一支店で貸し借りがなされる場合、借主も貸主も新たな契約書を作成しても、以前の取引の延長線として捉えるのが通常の意思と考えられるからである。そうであれば、形式的に同一の支店で再貸付がなされなくても、借主・貸主の合理的な意思として、最初の契約の延長線として契約がなされたと見られる事情があれば、別の支店で契約がなされたとしても一連性を肯定することは可能である。この点、神田支店を訪れた際に、最初に借入れをした新潟支店に電話して、原告に貸し付けるか否か、極度額をいくらにするかを確認したというのであるから、被告において取引2は取引1の延長線として捉えていたことは明らかである。また取引3の契約締結後、原告が帰省後、新潟支店から追加融資の電話を受けていたことからも被告において取引3も取引1の延長線上のものと考えていたことは明らかである。一連計算の場合の充当関係 当然充当同一の貸主と借主との間で基本契約に基づき継続的に貸付とその返済が繰り返される金銭消費貸借取引においては、借主は借入の総額の減少を望み、また、過払金の不当利得返還請求権が累積するといった複数の権利関係が発生するような事態が生じることは望まないのが通常と考えられることから、当事者間に充当に関する特約が存在するなど特段の事情のない限り、過払金につき弁済当時存在する他の借入金債務に対する弁済を指定したものと推認することができる(最高裁平成15年7月18日第2小法廷判決)
2007.04.10
1審 京都地裁 控訴審 大阪高等裁判所 平成17年1月28日判決昭和57年11月2日 100万円借入れ昭和57年12月7日より弁済として金員を支払続け、それが利息制限法の制限を超えていたことから昭和61年4月18日には過払いとなったが、そのことを知らないまま平成15年4月15日までの間金員の支払を続け、その結果平成15年6月27日現在、控訴人(貸金業者)が不当利得した額は元本だけで金102万7328円となっている。債権の消滅時効は、その権利の行使につき法律上の障害がなく、かつ、権利の性質上、その権利行使が現実に期待することができるようになった時から進行すると解される(最高裁昭和45年7月15日判決 最高裁平成8年3月5日判決)本件の場合、昭和61年4月18日の支払以後、各支払時ごとに支払額と同額の不当利得返還請求権が成立するというべきであり、その成立時にただちにこれを行使することに法律上の障害はなかったというべきである。・・・・したがって、弁護士からの受任通知がなされたときより10年以上前である平成5年6月22日以前の支払により発生した不当利得返還請求権は10年の消滅時効期間が経過しているといえる。時効の援用が信義則に反するか控訴人は、被控訴人に対する貸金債権については昭和61年4月18日に過払状態となり、以後被控訴人に対して返還請求権(貸金の)を失ったにもかかわらず、被控訴人がそれに気づかないのに乗じる形で、なお返還請求権を有するかのようにして、被控訴人に対して約17年間もの長きにわたって支払を請求し続けてきたものと認められる。しかも、本件の貸付金は100万円に過ぎないのに、その貸付後控訴人が被控訴人に対して残債務の一括返済ないし早期完済を請求したことはないこと及び被控訴人の支払状況に照らせば、その貸付後約20年もの長期にわたる支払は、控訴人自身が積極的に容認してきたものと推認される。このような事情を考慮すれば、被控訴人の控訴人に対する過払金についての不当利得返還請求債権の一部の消滅時効の完成は、少なくとも大部分控訴人の上記対応によってもたらされたといえる。このような対応をした控訴人が、被控訴人に対して消滅時効を援用することは信義則に違反し、許されないというべきである。
2007.04.09
名古屋高等裁判所平成18年10月6日判決本件はリボルビング式金銭消費貸借契約に基づく貸借取引につき利息制限法所定の制限利率に引き直し計算すると過払が生ずるととして不当利得返還請求権に基づき過払元利金72万5709円及び過払元金68万7802円に対する民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。当裁判所は、控訴人の過払金返還請求については全部理由があると判断するものであり、その理由は次のとおりである。同一の貸主と借主との間で継続的に貸付とその返済が繰り返される金銭消費貸借取引においては、借主は借入総額の減少を望み、複数の権利関係が発生するような事態が生じることは望まないのが通常であると考えられるから、仮に、一旦約定利息に基づく元利金が完済され、その後新たな借入がなされた場合でも、少なくともそれらの取引が一連のものであり、実質上一個のものと観念されるときは、利息制限法違反により生じた過払金は新たな借入金元本に当然充当されるものと解するのが相当である。本件では、基本契約1に基づく借入債務については平成7年7月19日約定の元利金全額である50万3634円が返済されている。その後、平成10年6月8日に、基本契約書2を作成し同日50万円を借り入れるまで約3年の間貸借取引は行われなかった。控訴人と被控訴人との貸借取引は、上記中断期間を除き、平成2年9月3日から平成17年7月7日まで行われたが、それは、いわゆる消費者金融業者による一般市民に対する利息制限法所定の利率を超える高金利での無担保貸付であり、また、一定の期間を一定の期間貸し付けるというものではなく、極度額50万円の範囲で自由に借り増しができ、一定額以上の弁済をしていれば、貸借取引が継続されていくというリボルビング式の契約であり、現に控訴人は煩瑣に借り増しと弁済を繰り返していた。契約書2を作成する際に、借入れ申込書、健康保険証のコピーの徴収をし、勤務先に電話して在籍を確認しているが、基本契約書2を作成した際の審査項目のうち、融資希望額、勤務先、雇用形態、給与の支払形態、業種及び職種、住居の種類、家族構成は基本契約1と同じであり年収額及び他に利用中のローンの利用件数・金額も大差がないものであった。またこれを扱った支店は基本契約1と同じであり顧客管理も同一番号が使用された。これらの事実によれば、基本契約1及び2は別個のものではなく、実質上一個のリボルビング式金銭消費貸借契約をなすと解するのが相当である。そうすると、平成7年7月19日の完済終了時で存した過払金42万9657円は、その後、平成10年6月8日に50万円の貸付を受けた時点で、何らの意思表示をすることなく同貸付金債務に充当され、既発生の過払金の範囲で新たな借入金債務の元本は減少したものというべきである。上記のとおりであるから、被控訴人の消滅時効の主張は理由がない。
2007.04.06
平成19年2月13日 最高裁第3小法廷 原審 広島高裁 松江支部平成5年3月26日 300万円貸付 第1貸付債務者は平成5年4月26日から平成15年12月19日まで弁済利息制限法を適用するとヘイセイ8年10月31日以降 過払金が発生している。平成10年8月28日 100万円貸付 第2貸付この債務について弁済を継続上告人と被上告人との間には、継続的に貸付が繰り返されることを予定した基本契約は締結されていない。 以下基本契約という原審の判断同一の貸主から複数の貸付を受ける借主としては、基本契約に基づき継続的に貸付が繰り返される場合でなくても、過払金を考慮して全体として借入総額が減少することを望み、複数の権利関係が発生するような事態が生じることは望まないのが通常の合理的意思であると考えられ、過払金が発生した後に別口の借入金が発生したときであっても、その別口の借入金の弁済に過払金を充当する意思を有していると推認するのが相当であるから、上告人と被上告人との間で基本契約が締結されておらず、本件第1貸付について過払金が発生した平成8年10月31日の後に、本件第2貸付に掛る債務が発生したものであるとしても、本件第1貸付についての過払金は、本件第2貸付に係る債務に当然に充当されると解される。不当利得の利息の利率はショウジ法定利率年6分と解すべきである。最高裁判決 原判決は是認できない貸主と借主との間で基本契約が締結されていない場合において、第1の貸付けに係る債務の各弁済金のうち利息の制限額を超えて利息として支払われた部分を元本に充当すると過払金が発生し(以下第1貸付過払金という)、その後、同一の貸主と借主との間に第2の貸付に係る債務が発生したときには、その貸主と借主の間で、基本契約が締結されているのと同様の貸付が繰り返されており、第1の貸付の際にも第2の貸付が想定されていたとか、その貸主と借主との間に第1貸付過払金の充当に関する特約が存在するなどの特段の事情がない限り第1貸付過払金は、第1の貸付に係る債務の各弁済が第2の貸付の前にされたものであるか否かにかかわらず、第2の貸付に係る債務に充当されないと解するのが相当である。なぜなら、そのような特段の事情のない限り、第2の貸付の前に、借主が、第1貸付過払金を充当すべき債務として第2の貸付に係る債務を指定するということは通常は考えられないし、第2の貸付の以後であっても、第1貸付の過払金の存在を知った借主は、不当利得としてその返還を求めたり、第1貸付過払金の返還請求権と第2貸付に係る債権とを相殺する可能性があるのであり、当然に借主が第1貸付過払金を充当すべき債務として第2の貸付に係る債務を指定したものと推認することはできないからである。原審は、この特段の事情の有無について判断していないので、これを審理させるために原審に差し戻す。不当利得の利率は民法所定の年5分と解するのが相当である。
2007.04.05
大津地裁は平成18年9月25日栗東市が新幹線栗東新駅の建設工事の仮線工事のために支出する43億円の財源にするための地方債の借り入れを禁止する判決をした地方財政法5条違反として地方債の発行を禁止した初判例栗東駅は、請願駅として県・市が工事費(駅建設工事で250億円、全体で650億円)を支出する工事本件は1栗東市が、新幹線新駅建設のための起債(43億4900万円)をすることを議決し、県もこれを許可した2新駅の駅舎工事は240億円、そのうち101億3900万円は「仮線工事」(この部分は盛り土方式 時速270キロで運行したままで工事をするので1950mの2本の仮線が必要 工事が終われば一部を残して撤去)3仮線工事の2分の1を県、2分の1を栗東市が負担4地方債を発行してその財源に充てることができる公共工事を「適債事業」といい地方財政法5条は A資本的役割を果たす B後年度の住民の負担の点から5つの事業に限定している 新幹線新駅はJR東海が建設主体でJR東海の財産となるものであり、JR東海は完全民営会社(国の資本金はない)なので適債事業ではない。(同法5条5項では公共施設の建設事業費は公共団体、国・地方公共団体が出資している法人で政令が定めるものが設置する公共施設の建築事業に係る負担又は助成に要する経費を含むとされている)5栗東市は起債は地方財政法5条5項の公共施設のための起債であるが、その公共施設は、駅の建設工事ではなく、幅員8mの都市計画街路を30mに拡幅する必要があり、現在ある新幹線の下の第3蜂屋Cトンネルの8m以外は盛り土なので、盛り土を掘削するのに仮線が必要であり、仮線は栗東市の道路建設に必要だから適債事業であると主張した争点は1道路工事と仮線工事の一体性、不可分性、同時施工の必要性があるか2仮に道路のために仮線が必要としても6億円(道路拡幅工事費)の工事のために50億円を使うのは経済的合理性(最小費用最大効果の原則)に反しないか3道路拡幅に仮線以外の代替工法、安価な方法を検討したか4道路建設のための起債は地方財政法5条の脱法行為か判決は1適債事業か否かの判断に裁量権はない2道路拡幅のための仮線工事は全国で例がない3道路拡幅と仮線工事を同一時期一体的につくらなければならない必要性はない4代替工法を検討していない56億円でできる工事を50億円もかけることは不合理、不経済であり、道路のための仮線という説明は無理があるとして地方財政法5条に違反するとした日弁連公害対策・環境保全委員会発行 公害・環境 2006・11 滋賀弁護士会 吉原稔弁護士の解説から上記事件が判例タイムズに掲載されました。原告代理人は吉原稔弁護士です。控訴されています。 判例タイムズ1228号164頁控訴審判決 大阪高裁平成19年3月1日判決 原審判決が維持された 判例タイムズ1236号190頁
2007.04.04
わが国では訴訟において弁護士強制主義がとられておらず、また弁護士費用は訴訟費用に含まれていないことから勝訴しても相手から取ることはできない。しかし不法行為による損害賠償請求の場合は、損害を回復するために弁護士に委任する必要があるとして不法行為による損害の一部として認められている。安全配慮義務違反に基づく損害賠償請求については下級審判例では認めるものと認めないものに分かれている。これに対し、金銭債務の不履行による損害賠償請求に要する弁護士費用については、民法419条を根拠にこれを否定している。(最高裁昭和48年10月11日判決)東京地裁平成17年7月29日判決は、運送契約上の債務不履行に基づく損害賠償請求訴訟において弁護士費用について、同不履行と因果関係があるとして、その賠償請求が認められた。その理由は、不法行為に基づく損害賠償と実質上同質であるとして請求を肯定した。 判例タイムズ1228号 262頁 頭注
2007.04.03
債権の消滅時効を中断するためには、1 請求 2 差押、仮差押、仮処分 3承認が必要と民法147条に規定されている。時効が中断すると、そこから再度時効期間が新たに進行する。1に記載の請求は、6か月以内に訴訟や裁判手続き及びこれに準ずる手続きをしない場合は 請求(催告)が効力を失うとされている(民法153条) 故に、請求を続けていれば時効にならないという世間の俗説は誤りである。ところで、請求の後、6か月以内に行うべきことの中に主債務者の承認という文言が民法153条には記載がない。時効期間内の承認の場合は、上記3に該当するので問題ないが、請求している間に本来の時効期間が経過し、その後債務者が承認した場合、時効中断の効力があるか争われた事件で大阪高裁平成18年5月30日判決は、第1審が時効中断にならないと判断したのに対し、時効中断になると判断した。この判決に対しては上告受理の申し立てがなされたが、上告不受理決定がなされている。 判例タイムズ1229号 264頁
2007.04.02
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