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社会福祉法人において退任した理事が「定款で後任理事の選任に必要とされている同意」をすることができるとされた例理事定数を10名から6名に変更する旨の定款変更決議をし、所轄庁の認可を受けないうちに定款変更の効力が生じると誤解により、4名の理事について後任理事を選任しなかったので、その任期満了による退任により、理事会の開催および後任理事の選任に必要な理解の員数を欠くに至った事案最高裁平成18年7月10日判決 判例時報1948号69頁 社会福祉法人が理事の退任によって定款に定めた理事の員数を欠くに至り、かつ定款の定めによれば、在任する理事だけでは後任理事を選任するのに必要な員数に満たないため後任理事を選任することができないという場合において、仮理事wの選任を待つことができないような急迫な事情があり、かつ、退任した理事と当該法人との間の信頼関係が維持されていて退任した理事に後任理事の選任を委ねても選任の適正が損なわれるおそれがないときには民法654条の趣旨に照らし、退任した理事は、後任理事の選任をすることができる。
2007.08.31
東京地裁平成17年10月17日判決事案 A 自宅の屋根から転落死亡 テレビの映りが悪いのでペンチをもって3階建ての建物の屋上にあがり、屋上にあるフ ェンスに昇り、階段室の壁面に設置されたアンテナの向きを調整しようとしたところ バランスを失って15メートル下に転落Aはサンダル履きで、堅固で安定した足場のないまま、夜間に、高さ113センチメートルのフェンスに上るという行為は、やや慎重さを欠いたものとの批判は免れないであろうとしつつもAが以前にも同様の行為をしたことがあったこと、本件事故の現場がAの自宅の屋上であり,Aは日常的にサンダルを履き行動していたものと推測されること、フェンス自体にぐらつき等はなく、足を掛けたり手で掴まる部分が他にもあったこと、Аには運動機能の障害などは認められず、飲酒などをしていたことも認められないこと、本件事故当時は雨が降っていたとは認められないことなどの事実を総合すれば,Aの行為は事後的に見れば危険性を否定できないといえるものの、自宅での日常生活の中では、わずかな注意を払えば当然本件事故を予見できるような極めて危険性の高い好意であったとまではいえず、注意義務違反の程度が著しかったとはいえないから、本件事故はAの重過失によるものといえないとして原告の災害割り増し特約に基づく保険金の請求を認めた。本判決は、免責条項における重大な過失の意義について、注意義務違反の程度が著しいものと解した上で、事故態様等を総合的に検討して重過失を否定したものであり、事例的意義を有するものである。と評されている。本件は控訴されたが控訴審で和解で終結している。 判例タイムズ1241号214頁 頭注
2007.08.30
飲酒運転による交通事故について同乗者に民法719条2項の責任が認められた事例山形地裁米沢支部 平成18年11月24日 判決本件はYら3名がY3の自宅で共に飲酒した後、Y1の運転する自動車で近所の飲食店に向かう途中でAをはねて死亡させたが、そのまま逃走したという交通事故である。本判決は、Y2及びY3がY1と共に飲酒し、同人が相当量の飲酒をしていることを認識しうる状況にありながら、近所の飲食店に行くためにY1の運転する自動車に同乗しており、またY1の本件事故に至るまでの運転は、制限速度を40キロ超過し、少なくとも本件事故現場及びその前の交差点で赤信号を無視するといった危険運転行為に該当するものであって、これはY1の飲酒による判断能力の低下に起因するところが大きいが、このような事態になりうることについてY2及びY3は十分予見可能であったとして、Y2及びY3について,Y1の飲酒運転及び危険運転行為を幇助した責任があるとした。飲酒運転による事故について同乗者の責任を認めた例としては最高裁昭和43年4月26日判決 判例時報520号47頁があるほか最近の裁判例として大阪地裁平成12年11月21日判決 東京地裁八王子支部平成15年5月8日判決がある。因果関係がないとしての否定例もある。裁判例上、飲酒運転による事故について同乗者の不法行為責任が認められるのは、同乗者に運転制止義務が認められる場合ということができよう。そして、このような作為義務は、同乗者運転者に飲酒を勧め又は共に飲酒をし、同乗者において運転者が飲酒の影響により正常な運転ができない可能性があると認識することができ、かつ同乗者において運転を制止することが極めて困難な事情がないような場合に認められているものと思われる。本判決は、基本的にこのような考え方に依拠しつつ、同乗者の責任を肯定する一事例を追加するものである。 判例タイムズ1241号152頁 頭注
2007.08.29
心神喪失者が起こした殺人事件につき父親が監督義務者を尽くしたとはいえないとされた事例本件は統合失調症に罹っていた20歳の男性Aが29歳の女性Bを殺害した事件についてBの遺族がAの父親に対し、民法714条1項の監督義務者の責任又は民法709条の不法行為責任に基づき損害賠償を求めた事案である。原審の長崎地裁佐世保支部判決は、Aが他室のドアを叩くなどの異常行動により2度も警察に保護され、2度目にはAを自宅に連れ帰ったこと、Aが住んでいたマンションの自宅は、ガラスが割れて荒れ放題であったこと、自宅に戻ってから独り言を言ったり、無音のテレビを見ていて笑う場面でないのに突然笑い出すなど、精神障害を強く疑われる言動が少なからず見られたことを理由に、被告は他害防止のためAを保護監督することが不可欠な状況にあることを予見していたか、予見することができたとしてАの父親が民法714条1項の法定監督者又は代理監督者に準ずる地位にあるものとして監督義務を認め、同項但し書きの抗弁を排斥してAの父親に7374万円余の損害賠償を命じた。控訴審の福岡高裁平成18年10月19日判決は原判決を支持した。本件は独立して生活し、20歳に達した子が起こした殺人事件について、父親が精神保健及び精神障害者福祉に関する法律上保護者に選任されていなくても法定監督義務者又は代理監督義務者に準じる地位にあるものとして損害賠償を認めたこと、殺人事件の発生が子の身柄を自宅に引き取ってから4日目であるのに判示の状況下で監督義務を果たしたことを否定したことに特色がある。殺人事件を起こした子の両親の監督義務違反については否定例と肯定例の先例がある。 判例タイムズ1241号131頁 頭注
2007.08.28
労働基準法上の労働者性劇場施設を管理運営する財団法人との間で1年間の出演基本契約を締結・更新していたオペラ歌手が労働基準法上の労働者に当たらないとされた事例東京地裁平成18年3月30日判決労働基準法上の労働者性をめぐる裁判例の体勢は、労働大臣の私的諮問機関である労働基準法研究会第1部会(労働契約関係)の昭和60年12月19日付け報告「労働基準法の労働者の判断基準について」と同旨の判断枠組みを採用しているといわれ、本判決の立場も同様であると解されるが、限界的事例においてはその判断は必ずしも容易でない。本判決は、労働基準法の立法趣旨等からすると労働基準法上の労働者とは使用者との間の契約の形式を問わず、実質的に事業主の支配を受けてその規律の下に労務を提供し(指揮監督下の労働)その対償として事業主から報酬を受ける者をいうと解すべきであり、指揮監督下での労働であるか否かの判断は、仕事の依頼や業務に従事すべき旨の指示等に対する諾否の自由の有無、業務遂行上の指揮監督の有無、場所的時間的拘束性の有無、代替性の有無を、または労働対償性については報酬の性格を検討し、さらに当該労務提供者の事業者性の有無、専属性の程度、その他の事情をも総合考慮して判断するのが相当であるとした。 判例タイムス1241号110頁 頭注労働基準法 41条2号 管理監督者について 日本マクドナルド事件 判例タイムズ1262号221頁
2007.08.27
補充送達の効力 同居者と利害関係のある場合訴訟が提起された場合、訴状は被告に送達される。被告は訴状を見て、反論し裁判所に出向いて応訴をすることとなる。応訴しないで放っておくと争わないものとみなされ、原告勝訴の判決が出される。これを欠席判決という。故に、訴状などは被告に確実に送られることが必要である。この訴状を被告に送ること等を送達という。書留の一種と思われるが、料金の高い郵便で行われる。1回1050円かかる。特別送達という。この郵便物は郵便局により配送されるが、被告本人が受け取るのが本来であるが、同居者が受け取った場合も送達の効力があるとされる。これを補充送達という。ところで、この同居者と被告本人と利害関係があって、訴状が送られてきても同居者が被告に見せなかったときにどうなるであろうか。同居者が原告で、自分が被告の同居者として、被告に対する訴訟関係書類の送達を受けた場合は、当然効力はない。以下の理由による民事訴訟法106条1項所定の同居者等は、受送達者あての送達書類の受領に限定された代理権を有するが訴訟法上の法定代理人とであると解するのが一般的であるところ、同居者などが当該書類の送達された訴訟自体において受送達び相手方当事者又はこれと同視しうる者に当たる場合には、双方代理禁止の原則に照らし当該同居者などには補充送達を受ける権限がないがないと解すべきであり、当該同居者などが訴訟関係書類の交付を受けたとしても補充送達の効力が生じないことについては、判例、学説上も異論がない。これに対し、当該訴訟に関して事実上の利害関係の対立があるに過ぎないときはどうなるか。最高裁平成19年3月20日判決は、送達は有効であるが再審をすることができると判示した。重要な判決である。事案は、BがAに対し金銭を貸し付けた Xが連帯保証人(AはXの義父)Bがこの債権をYに譲渡Y AとXに貸金返還請求訴訟を提起 訴状はAとXに送られたが、AとXは同居 Xに対する訴状はAが受領 第1回口頭弁論期日で AとXに欠席判決 確定2年後 X 再審請求 Xの主張 義父であるAは自己の債務についてXの氏名及び印章を冒用してBと連帯保証 したものである最高裁平成19年3月20日判決1 受送達者あての訴訟関係書類の交付を受けた民事訴訟法106条1項所定の同居者等と受送 達者との間に、その訴訟に関し事実上の利害関係の対立があるにすぎない場合には、当 該同居者等に対して上記書類を交付することによって、受送達者に対する補充送達の協 力が生ずる。2 受送達者あての訴訟関係書類の交付を受けた民事訴訟法106条1項所定の同居者等と受 送達者との間に、その訴訟に関し事実上の利害関係の対立があるため、同居者等から受 送達者に対して上記書類が速やかに交付されることを期待することができない場合にお いて、当該同居者等から受送達者に対して上記書類が実際に交付されず、そのため、受 送達者が訴訟を提起されていることを知らないまま判決がされたときは、民事訴訟法338 条1項3号の再審事由ある。 判例タイムズ1242号127頁 頭注
2007.08.23
弁護士法58条1項に基づく懲戒請求が不法行為を構成する場合最高裁平成19年4月24日 第3小法廷判決弁護士法58条1項に基づく懲戒請求が事実上又は法律上の根拠を欠く場合において、請求者がそのことを知りながら又は通常人であれば普通の注意を払うことによりそのことを知りえたのに、あえて懲戒を請求するなど、懲戒請求が弁護士懲戒制度の趣旨目的に照らし相当性を欠くと認められるときは、違法な懲戒請求として不法行為を構成する。田原裁判官の補足意見においては、弁護士が他の弁護士に対する懲戒請求をし、あるいは代理人等としてこれに関与する場合において考慮すべき点として、その懲戒請求の濫用が、現在の司法制度の重要な基盤をなす弁護士自治そのものを傷つけることになりかねないことについても自覚するべきであって、弁護士としては慎重な対応がもとめられる旨が述べられている。 判例タイムズ1242号 107頁
2007.08.23
最高裁平成19年4月23日第1小法廷判決「衝突、接触・・・その他偶然な事故」及び「被保険自動車の盗難」を保険事故と規定している一般自動車総合保険約款に基づき、上記盗難に当たる保険事故が発生したとして保険者に対して車両保険金を請求する者は、「被保険者以外の者が被保険者の占有に係る被保険自動車をその所在場所から持ち去ったこと」という盗難の外形的な事実を主張、立証すべき責任を負うが、被保険自動車の持ち去りが被保険者の意思に基づかないものであることを主張、立証すべき責任を負わない。「被保険自動車の盗難」という保険事故が発生したとして一般自動車総合保険約款に基づき車両保険金の支払を請求する者が、「外形的・客観的にみて第3者による持ち去りとみて矛盾のない状況」を立証するだけでは「、「被保険者以外の者が被保険者の占有に係る被保険自動車をその所在場所から持ち去ったこと」という盗難の外形的な事実を合理的な疑いを超える程度まで立証したことにはならないにもかかわらず、上記の立証をするだけで盗難の事実が推定されるとした原審の判断は主張・立証責任の分配に実質的に反する違法がある。 判例タイムズ 1242号100頁
2007.08.22
体育授業における担当教諭の安全配慮義務区立小学校の運動会において予定された5名による組体操を練習中、小学生が転落して前歯を損傷するなどの生涯を受けた事故につき担当教諭に安全配慮義務違反があったとして学校側の損害賠償責任が認められた例体育授業における指導上の過失が問題とされた事例としては水泳に関するものが多いが跳び箱運動、バスケットボールなどもある。本件で問題とされている5人による組体操自体は、少しの練習をすればそれほどの危険性があるようにはみられず、本判決は担当教諭に厳しすぎる指導・安全配慮義務を課すものであるようにも思われるが、これまで類似先例が見当たらないケースであるので、事例集積上で意義を有する。原告は区立小学校の6年に在籍する小学生であったところ、体育の授業中、講堂においてクラス担任のB教諭の指導の下に運動会の5人による組体操の練習をしていたが、土台役2児の上に立ち、倒立してくる他の2児の足をつかむ役目をしていたところ、バランスを崩して床に転落し、顔面を床に強く打ちつけたため、前歯を脱臼するなどの傷害を負った。そこで原告は、B教諭には下練習十分に行わず、倒立役の児童への適切な指導を行わなかったなどの安全配慮義務違反があったなどとし、区に対し通院交通費、慰謝料など260万円余の損害賠償を請求した。これに対し被告は、運動会の組体操の練習の前に3人補助倒立などを含め7回の下練習をしているほか、全体練習については講堂の正面でこの様子を確認し、また失敗したときの対応についても個別に指導して回っていたのであるから安全配慮義務の違反はないなどとして争った.本判決は、5人の児童のうち、倒立してくる他の児童の足をつかむ役目の中央の児童がバランスを維持することができるように倒立の仕方について児童に適切な指示を与え、それぞれの児童がその役割を指示とおりに行えるようになるまで補助役の児童を付けるなどしながら段階的な練習を行うなど児童らの安全を確保しつつ同技の完成度を高めていけるよう配慮すべき義務を負っていたがこれを怠ったなどとして損害賠償請求を166万円余の範囲で認めた。 判例時報1969号75頁 頭注
2007.08.20
再生計画認可決定が即時抗告により取り消された例再生債務者Y 賃貸ビルを所有し賃貸管理を業とする会社 建物を所有 敷地はYの代表者Aの所有Aについても再生開始決定あり再生債権者7名 建物及び敷地にだい1順位の抵当権を有し、抵当権で弁済を受けることができない予定 不測額のあるX2 テナント2名(敷金・建設協力金返還請求権を有する)以上3名 Aの息子B、C (Yの取締役) 関連会社D (Aが代表者) 以上Y関係者4名再生計画は同意を条件にY関係者4名に対する弁済はないものとされ、債権額の1パーセント弁済総額537万円)スポンサー企業からの融資で一括弁済 抵当権についてもスポンサー企業の融資で抹消予定で、抵当権の消滅請求がなされ裁判所の許可がなされスポンサー企業から融資を受け、スポンサー企業に譲渡担保による所有権移転登記がなされている。再生計画はY関係者4名が賛成、他の3名が反対原裁判所は再生計画を認可した(A個人の再生計画は否決された)B、Cの債権は、X2に劣後する金融機関が有していた回収見込みのない関係会社Dに対する貸付債権でYが連帯保証していた債権 整理回収会社に譲渡され、それをBが譲渡を受け、更に一部をCに譲渡したものBからCに対する譲渡がなければ、再生計画の議決について頭数が不足し可決要件を満たさなかった。本決定は民事再生法174条2項3号所定の不正の方法とは、再生計画の決議の結果を左右する法が容認しない不公正な方法をいうものと解するのが相当とした。そして法が議決要件として頭数要件を定めておきながら再生債権を一部譲渡することで頭数要件を具備することを認めたのでは、法の趣旨がないがしろにされるとして、民事再生手続開始申立後または申立直前の再生債権の一部譲渡により譲渡前の状態では頭数要件を具備しなかったものを頭数要件を具備するものとすることも前記不正の方法に該当すると判断した。また、本決定は同条2項4号(清算価値保障原則)該当製の判断にあたり、Y関係者の利害を重視すること相当でないとして、Y関係者を除いて清算価値につき破産の場合よりも再生計画が不利であるとした。 東京高裁平成19年4月11日決定 特別抗告 許可 判例時報1969号59頁頭注
2007.08.20

火災保険を請求する事案においては、保険会社からの免責事由として、商法665条・641条所定の故意・重過失が主張されることがある。ここで火災の原因が、保険契約者本人の放火ないし失火である場合には、保険契約者本人の故意・重過失の有無を判断することになるのはもちろんであるが、火災の原因が保険契約者本人ではなく、第3者の放火ないし失火である場合に、免責事由としてのほけ契約者の故意・重過失をどのように捉え判断すべきかが問題となる。この第3者を保険契約者と同視しうる場合(失火ないし放火した者が保険契約者の意思に基づき目的建物を管理しているような場合)は免責事由として認められている。広島高裁平成17年1月18日判決判旨保険契約者と同居していた18歳の長男が、主としてその病理的な精神状態に起因して、保険の目的である自宅に放火した場合において、保険契約者において、長男に精神科医の治療を受けさせ、その助言指導に従って相応の対応をしていたときには、長男が衝動的に放火行為に及ぶことを予見できたとしても、保険契約者に免責事由となる重大な過失があるとはいえない。上記の場合に、放火前日の保険契約者の言動が適切さを欠き、長男の精神状態を刺激するものであったとしても、放火が、主として病理的な精神状態に起因するものであることからすれば、保険契約者に免責事由となる重大な過失があるとはいえない。 判例タイムズ1215号158頁 守山修生判事補の解説ブログランキング参加してます。↓ クリック、よろしく!
2007.08.17

成年養子縁組と離縁東京地裁平成16年8月23日判決判旨原告と被告ら夫婦は、約4年前の養子縁組から同居したことがなく、現在では、年賀状を出したり、電話を掛けたり、互いの家を訪問したり、一緒に食事をとることがなく、互いに養親子として交流を図る意思を全く失っているから、養子縁組関係は破綻しているといわざるを得ず、養子縁組を継続し難い重大な事由があるということができる。問題の所在現行法上、裁判離縁における離縁原因は、悪意の遺棄、3年以上の生死不明及びその他縁組を継続し難い重大な事由があるときの3つである(民法814条)裁判離婚の原因が無責主義に改められたことに対応し、離縁原因の中に破綻主義が採用されているのである。しかし、養子には夫婦間のような同居・協力義務といった一般的義務は存在していない。すたわち、単なる別居や没交渉というだけでは、養親子関係の破綻が認められることにはならないのである。ましてや、本件は成年養子であり、当事者間で具体的な取り決めがされてもいないので、養親子関係の破綻の判断基準は必然的にあいまいなものとなる。加えて、一般的には財産分与の規定を離縁に類推適用することは認められていないと考えられているため、それ前提として考えると破綻の有無の判断の結果はオールオアナッシングとなる。そのため、簡単に養子縁組が破綻していると判断していくことに躊躇を覚えることが少なくない。本判決は、被告ら夫婦が離縁は同意するが解決金3000万円が欲しいと発言したことをとらえて被告ら夫婦の真意も、原告との離縁を望んでいることにあり、金銭的な補償を求めて争っているにすぎないと判断した結果であると想定することができる。 判例タイムズ1215号130頁 上原裕之判事の解説ねぶた は 海上運航 ですブログランキング参加してます。↓ クリック、よろしく!
2007.08.16

責任能力を有する未成年者の不法行為について親の監督義務違反が認められた事例未成年者が不法行為をした場合、当該未成年者が責任無能力者であればその親権者は民法714条に基づく責任を負うが、責任能力を有する場合(学説上は12歳くらいを基準とする)であっても、親権者は監督義務者としての義務違反と当該未成年者の不法行為によって生じた結果との間に相当因果関係が認められるときは、民法709条に基づく不法行為責任を負うとされる。(最高裁昭和49年3月22日判決)ただし、具体的にいかなる場合に監督義務違反及びその義務違反と損害との間に因果関係が認められるかという点については、なお問題が多い。前掲の最高裁判例んも出現以後も、親権者に対する民法709条に基づく不法行為責任を追及する場合の監督義務者の過失としてどの程度のものを要求するかについては、被害者保護や民法714条との均衡から比較的緩やかに解釈すべきとする立場、監督義務違反が未成年者の当該不法行為の原因となっている場合に限定解釈すべきであるとする立場など学説上様々な見解があった。前記最高裁判例の調査官解説でも、「民法714条のようなうすい義務違反では足りず民法820条の監督義務違反と同じものということもできない」との表現がなされている。これに対し裁判例は、監督義務を具体的・個別的に捉えようとするものが多く、加害行為当時の少年の性格、素行、生活態度等から加害行為を予見または予見する可能性があったか否かにより監督義務者の責任の有無の判断が分かれ、未成年者の平素非行性を放置して適切な措置を怠ったという点を監督義務者の過失として評価する傾向にある。大阪地裁平成16年3月18日判決は少年らによる集団暴行による被害者の死亡事案において「本件集団暴行による傷害致死事件の加害少年らがいずれも責任能力を有する未成年者であっても、中学生あるいは中学卒業後間もない少年が、夜間煩瑣に集団で徘徊し、不良交遊を続けている場合には、その親としては、その交友相手等をつきとめ、相手の保護者と連絡を取り、警察関係機関とも連絡を蜜にするなど不良交遊を止めさせるためにあらゆる手段を尽くして監督義務を尽くすべきであり、そのような積極的働きかけをしていない加害少年の父母らには、監督義務違反があるといえ、さらに、加害少年の父母らは、加害少年の性向や行状を容易に把握することができ、また不良集団の特性として集団ヒステリー現象を引き起こして集団内で競うように暴力行為をエスカレートさせ。普段単独では傷害事件を起こしたことがない者でも本件のような集団暴行事件を実行した結果被害者を死に至らせるということが決して珍しくないことなどからすると、加害少年らを相当な監督をせずに放任しておけば、いずれ不良仲間との深夜徘徊から集団の暴行に発展するし、場合によっては、本件のような事態に発展することも予見できたというべきであるから、親らの監督義務違反と被害者の死の結果との間に相当因果関係を認めることができる。」 判例タイムズ1215号98頁 三宅朋佳判事補の解説ねぶた は 海上運航 ですブログランキング参加してます。↓ クリック、よろしく!
2007.08.15

暴力団と使用者責任従来暴力団の構成員が行った犯罪行為について被害者がその上位者である組長等に対して民法715条の使用者責任を追及するにあたっては、暴力団の特殊性から1 事業の意義 公序良俗に反する違法な活動であっても民法715条の事業にふくまれる か2 事業の執行につき(事業執行性)の意義 暴力団構成員のいかなる行為が暴力団組長の 事業と関連性を有するのか3 ある事業のために他人を使用する者の意義(使用者性) 暴力団構成員とその上位との 間の指揮監督関係をどのような場合に認めるのか とりわけ上位者が構成員の所属して いた下部組織の組長ではなくその上部組織の組長であった場合にも指揮監督関係を認め てよいかのか 等の点が問題点として指摘されてきた。暴力団の活動形態としては、ア 抗争行為などの組織の維持・拡大を目的とする活動(抗争型)イ 債権取立、みかじめ料の徴収等の資金獲得活動(しのぎ方)の2累計が指摘されている。しのぎ型については最高裁平成15年4月25日判決が原審の東京高裁判決に対する暴力団の上告を棄却しており、最高裁の判断が示されているといっても過言でないと評されている。抗争型について最高裁平成16年11月12日判決は抗争事件において暴力団員と間違われて対立する暴力団員に殺された警察官の遺族から上位暴力団の組長に対する8000万円の損害賠償責任を認めた原審の判断が維持された。改正暴対法15条の2(平成16年4月施行)は指定暴力団の代表者等についての損害賠償を法定しているが、その前の事件である。 判例タイムズ1215号100頁 内藤和道判事の解説ブログランキング参加してます。↓ クリック、よろしく!
2007.08.14

意思表示は相手方に到達することが必要である。学説では、相手方が了知できる状態にあれば到達したといえるとされているが、実務では文書による意思表示(普通は郵便・特に内容証明郵便による)が相手方が不在で留置期間満了で返還されたときは執行官に対して送達を求めており、執行官が相手方のところに赴き手渡すなり差し置き送達をなしていた。最高裁平成10年6月11日判決遺留分減殺請求の意思表示がなされた内容証明郵便が留置期間の経過により差出人に還付された場合において、その意思表示は社会通念上受取人の了知可能な状態に置かれ、遅くとも留置期間が満了した時点で受取人に到達したものと認められた相手方が中身を予想できることが必要かと思われるので事例判決と思われるブログランキング参加してます。↓ クリック、よろしく!
2007.08.09

債権の消滅時効は10年が原則であるが民法には特に消滅時効の期間を短くした短期消滅時効の規定がある5年・3年・2年・1年と短期の規定があるが民法169条は「年またはこれより短い時期によって定められた金銭その他の物の給付を目的とする債権は、5年間行使しないときは消滅する」と規定する。最高裁平成16年4月23日判決マンション管理組合が組合員である区分所有者に対して有する管理費及び特別修繕費に係る債権が、管理規約の規定に基づいて、区分所有者に対して発生するものであり、その具体的額は総会の決議によって確定し、月ごとにい支払われるものであるときは、当該債権は民法169条所定の債権にあたる。ブログランキング参加してます。↓ クリック、よろしく!
2007.08.08

地方公共団体の長のした職務権限外の行為が外形からみてその職務行為に属するものと認められる場合であっても、相手方がその職務行為に属さないことを知り、またはこれを知らないことに重大な過失があるときは、当該地方公共団体は相手方に対し民法44条1項による損害賠償責任を負わない。最高裁昭和50年7月14日判決町長が公印を使用して自分の振り出した手形に町の裏書をなしたなどの事件が過去にありましたが、、地方公共団体の債務負担行為は議会の議決が必要とされるところです。ブログランキング参加してます。↓ クリック、よろしく!
2007.08.07

民法93条 心理留保意思表示は、表意者がその真意でないことを知ってしたときであっても、そのためにその効力を妨げられない。ただし、相手方が表意者の真意を知り、または知ることができたときは、その意思表示は無効とする。最高裁平成4年12月10日判決親権者がその法定代理権を濫用して法律行為をした場合において、その行為の相手方が右濫用の事実を知りまたは知りうべかりしときは、本条但し書きの規定を類推適用して、その行為の効果は子には及ばないと解するのが相当である。最高裁昭和42年4月20日判決代理人が自己または第3者の利益を図るため権限内の行為をなしたときは、相手方が代理人の右意図を知り、または知ることをうべかりし場合に限り、本条但し書きの類推により、本人はその行為についての責に任じないと解すべきである。ブログランキング参加してます。↓ クリック、よろしく!
2007.08.06

民法43条法人は、・・・・・・・・目的の範囲内において権利を有し、義務を負う。・・・・・には「法令の規定に従い、定款または寄付行為で定められた」と入る。最高裁平成8年3月19日判決税理士会が政党など政治資金規正法上の政治団体に金員の寄付をすることは、税理士法49条2項に定められた税理士会の目的の範囲外の行為であり、その寄付のため会員から特別会費を徴収する旨の総会決議は無効である。最高裁平成14年4月25日判決 判例時報1785号31頁被災した他の司法書士会に金員を寄付するために特別に負担金を徴収する旨の司法書士会の総会決議は、同会の目的の範囲を逸脱するものではない。ブログランキング参加してます。↓ クリック、よろしく!
2007.08.03

協議離婚に伴う財産分与契約において、分与者が自己に譲渡所得税が課されることを知らず、そのような理解を当然の前提とし、かつその旨を黙示的に表示していたときは、財産分与契約は動機の錯誤により無効となりうる。最高裁平成元年9月14日判決 判例時報1236号93頁夫が夫所有の不動産を妻に財産分与する場合は、税法上では、夫は不動産を売却し、その代金を妻に分与したのと同じに扱われるので、夫の不動産の原価が低いときは譲渡所得税が課せられる。妻に不動産を取られ、国に譲渡所得税を取られるのである。一方、財産分与についても当事者で合意をなすと、それは契約であるから錯誤無効ということがありうる。錯誤で無効となるためには、法律行為の要素に錯誤がある場合とされており、法律行為の要素とは何かということで判例がいろいろあるが、当事者の内心の意思である動機については表示されていない場合は無効とならないとされている。尚、不動産を取得すると地方税(県税)である不動産取得税が課されるが、財産分与で不動産が取得された場合は不動産取得税は非課税である。ブログランキング参加してます。↓ クリック、よろしく!
2007.08.02

有責配偶者からの離婚請求については当初これを認めないとされていた。たとえば、自分で女を作っておきながら、離婚を請求するような場合である。ところが次の判決により有責配偶者の離婚請求が認めれる場合があることが明らかとされた最高裁昭和62年9月2日判決夫婦が相当の長期間別居し、その間に未成年の子がいない場合には、離婚により相手方がきわめて過酷な状態におかれるなど著しく社会正義に反するといえるような特段の事情のない限り有責配偶者からの請求であるとの一事をもってその請求が許されないとすることはできない。未成年の子供がいないこと 相手の生活がある程度なりたつこと 別居が長期間であることが要件と思われ、この別居期間が15年という例からだんだん短くなっていった。最高裁平成2年11月8日判決有責配偶者の離婚請求の拒否を判断するにおいて、別居期間(本件は8年)が相当の長期間といえるか否かは当事者双方の諸事情の変容による社会的意義の変化なども考慮にいれるべきである最高裁平成6年2月8日判決有責配偶者からの離婚請求で、その間に未成熟の子がいる場合でも、ただその一事をもってその請求を排斥すべきでない有責主義から破綻主義へ移行しているブログランキング参加してます。↓ クリック、よろしく!
2007.08.01
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