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民法上いわゆる代償請求権が認められるか(積極)最高裁昭和41年12月23日判決「事案の概要」Xの所有地に、Yが家屋(パチンコ屋)を建てさせてもらう代わりに、その家屋はYが1年間使用したらXに所有権を移転し、以後XはYに当該家屋を相当賃料で賃貸するという約束をした。ところが当該家屋は完成直後に原因不明の火事で焼失し、Yは火災保険金を受け取り、Xは当該家屋所有権の移転を受けることが不能となり、得べかりし利益を喪失した。そこで、Xは、Yに対し、目的物の代償として、Yの受け取った火災保険金の引き渡しを求めた。「判旨」一般に履行不能を生ぜしめたと同一の原因によって、債務者が履行の目的物の代償と考えられる利益を取得した場合には、公平の観念に基づき、債権者において債務者に対し、右履行不能により債権者が被りたる損害の限度において、その利益の償還を請求する権利を認めるのが相当であり、民法536条2項但書の規定は、この法理のあらわれである(昭和2年2月15日大審院判決、民集6巻236頁参照)。代償請求権を認めることは、学説上の通説である(我妻・債権総論148頁等)。そして、代償請求の対象となるものは、第三者による物の滅失・毀損・侵奪に基づく損害賠償金、公用徴収による補償金・保険金が例示されている。民集20巻10号2211頁
2011.03.30
1 離婚に伴う財産分与として金銭の給付をする旨の合意が詐害行為に該当する場合の取消の範囲 2 離婚に伴う慰謝料を支払う旨の合意と詐害行為取消権(最高裁平成12年3月9日判決)「事案の概要」Xは,A(Yの夫)に対し,AからXに6000万円余を支払うべき旨の確定判決を得た。その後,YとAは離婚したが,当時Aは無資力で,YとAは他の債権者を害することを知りながら,AがYに対し生活補助費として毎月10万円,慰謝料として2000万円を支払うことを約し,執行認諾文言付き慰謝料支払等公正証書が作成された。XとYが各自の有する債務名義に基づき,Aの給料等債権を二重に差押えたため,執行裁判所が,第三債務者からの供託金をXとYに按分して配当する旨の配当表を作成したところ,Xが異議を述べ,Yに対し,手続き費用等除く供託金の全額をXに配当するよう配当表の変更を求めた。 「判旨」1 離婚に伴う財産分与として金銭を給付する旨の合意は,民法768条3項の規定の趣旨に反して不相当に過大であり,財産分与に仮託してされた財産処分であると認めるに足りるような特段の事情があるときは,不相当に過大な部分について,その限度において詐害行為として取り消されるべきである。2 離婚に伴う慰謝料として,配偶者の一方が負担すべき損害賠償債務の額を超えた金額を支払う旨の合意は,上記損害賠償債務の額を超えた部分について,詐害行為取消権行使の対象となり得る。判例タイムズ 1028号168頁
2011.03.28
破産法162条1項2号の規定にいう「支払不能」の解釈(東京地裁 平成22年7月8日判決)「事案の概要」本件は、破産したAの破産管財人Xが、主位的には、AとYとの間の預託金返還請求権質権設定契約につき、破産法162条1項2号に基づく否認権を行使したことを前提に、Yに対する再生債権として、預託金返還請求権に基づく預託金債権を有することの確定を求めた事案である。Xは、「支払不能」の判断に当たっては、履行期にある債務(将来に履行期が到来する債務についてもその債務不履行の確実性が現在の弁済能力の一般的欠如と同視できる場合は、当該債務も含めて)について、その請求があったか否かを問わず、客観的な支払能力の一般的欠如をもって支払不能と解すべきであると主張し、Aは、平成19年3月20日以後、Bからの払い戻し請求があれば、随時、120億円を払い戻さなければならない義務を負っていたが、Aの財務状況、信用状況、収益状況に照らせば、Aは、Bから120億円の寄託金返還請求を受けた場合、同請求に係る債務を履行しうる状況にはなかったといえるので、平成19年3月20日以後、遅くとも同年4月19日までの間に、支払不能に陥ったものであると主張した。「判旨」支払不能は、弁済期の到来した債務の支払可能性を問題とする概念であることから、支払不能であるか否かは、弁済期の到来した債務について判断すべきであり、弁済期が到来していない債務を将来弁済できないことが確実に予想されても、弁済期の到来している債務を現在支払っている限り、支払不能ということはできない。 判例タイムズ1338号278頁
2011.03.24
鉄道システム受注・納入会社のグループ長のうつ病罹患による自殺について業務起因性が認められた事例(神戸地裁 平成22年9月3日判決) 「事案の概要」Aは、平成10年1月に、訴外会社のシステム技術グループのグループ長に就任したものの、平成12年12月、うつ病の診断を受け、平成14年5月9日、自宅で自殺した。Aの妻であるXは、労災保険法に基づき、遺族補償給付等を請求したが、不支給の処分を受けたため、上記処分は違法であるとして、その取り消しを求めた。これに対し、Yは、Aのうつ病発症前の6カ月間の時間外労働時間は、最も多い月で69時間であり、精神的疾患を促すほど過重なものではなかったから、A自殺は業務に起因するものとはいえないなどと主張した。 「判旨」Aが従事した業務は、平均的労働者を基準として、社会通念上、精神障害を発症させる強度の心理的負荷を生じさせる過重なものであったといえ、判断指針によっても、Aのうつ病発症前の業務の心理的負荷の総合評価は「強」であり、他方、Aには、うつ病の発症につながる業務以外の心理的負荷や固体側要因もないのであるから、Aのうつ病発症は、同人の業務に起因するものであると認めることができる。そして、Aの自殺は、平成12年12月13日のうつ病発症から1年5カ月が経過した時点で発生しているが、本件において、うつ病による希死念慮の他にAが自殺をするような要因・動機を認めるに足りる証拠はないから、Aの自殺についても、同人が従事した業務に内在する危険が現実化したものと評価するのが相当である。 厚生労働省は、平成21年4月、業務起因性の認定基準について新しい通達を発出しているが(基労補0406001号)、その中心は、発症前6か月間に、客観的に精神障害を発病させるおそれのある業務による強い心理的負荷が認められるかどうかということである。判例タイムズ1338号85頁
2011.03.22
店舗の賃借人が賃貸人の修繕義務の不履行により被った営業利益相当の損害について,賃借人が損害を回避又は減少させる措置を執ることができたと解される時期以降に被った損害のすべてが民法416条1項にいう通常生ずべき損害に当たるというこことはできないとされた事例 (最高裁平成21年1月19日判決)「事案の概要」賃貸人Y1から建物の引渡しを受けてカラオケ店を営業していた賃借人Xが,同建物に発生した浸水事故により同建物で営業することができなかったことによる営業利益喪失の損害を受けたなどと主張して,Y1に対して債務不履行又は瑕疵担保責任に基づく損害賠償を求めるとともに,Y1の代表者として同建物の管理にあたっていたY2に対して民法709条等に基づく損害賠償を求めた(本訴請求)。これに対しY1は,上記賃貸借契約は解除により終了したなどと主張して,Xに対し建物の明渡し等を求めた(反訴請求)「判旨」1 事業用店舗の賃貸人の債務不履行により賃借人に生じた営業利益喪失の損害は,民法416条1項にいう通常生ずべき損害に当たる。2 本件建物は老朽化して大規模な改修を必要としており,Xが賃貸借契約をそのまま長期にわたって継続し得たとは考え難いこと,Y1により賃貸借契約解除の意思表示がされており,本件浸水事故から1年7カ月が経過して本件訴訟が提起された時点では,本件店舗部分での営業の再開は実現可能性が乏しいものとなっていたこと,Xがカラオケ営業をそれ以外の場所で行うことができないとは考えられないし,カラオケセット等の損害に対しては保険金が支払われていたことなどの事情の下では,Xにおいて,カラオケ店の営業を別の場所で再開する等の損害を回避又は減少させる措置を執ることなく発生する損害の全てについての賠償をYらに請求することは,条理上認められず,Xが上記措置を執ることができたと解される時期以降における損害の全てが民法416条1項にいう通常生ずべき損害にあたるということはできない。判例タイムズ 1289号85頁
2011.03.16
Yが名義貸しをしてXとの間で空リース契約を締結したことを理由とするXのYに対する不法行為に基づく損害賠償請求権につき,XがYに対して未払リース料ないし未払リース料相当損害金の支払いを求めた民事調停事件において成立し調停調書の「本調停条項に定めるほか,本件に関し何らの債権債務の存在しないことを相互に確認する」旨の清算条項により,これが免除されているとされた事例 (大分地裁平成20年7月24日判決)「事案の概要」リース会社であるXが,Yに対し,Yが名義貸しをして実体のない空リース契約をXとの間で締結したため,これによりXが販売店に対して支払った金額分の損害を被ったとして,不法行為に基づく損害賠償等の支払いを求めた事案。これに対し,Yは,別件調停(XがYを相手として本件リース契約等に基づき未払リース料の支払いを求めたもの)の調停条項中の清算条項により清算済みであるなどと主張して争った。別件調停の調停条項には「原告,被告双方は,本調停条項に定めるほか,本件に関し何らの債権債務の存在しないことを相互に確認する。」との限定型の清算条項があった。「判旨」 一般的に,この種の清算条項における「本件」とは,訴訟物及びこれに社会的又は経済的に密接に関連する範囲を意味すると解される。本件においては,契約責任と不法行為責任という違いはあるが,名義貸し,空リース契約といった同一の社会的事実を異なる観点からとらえたにすぎないこと,このことは別件調停の申立人代理人弁護士(本件の原告代理人でもある。)も理解し得たことなどから,本件リース契約に関する請求については,契約責任ないし不法行為責任等の法的構成にかかわらず,同一の社会的事実に基づく紛争を本件調停によって一括して終局的に解決する旨の合意をしたものと解するとして,不法行為基づく本件の請求も別件調停の清算条項により免除されたものであると判断した。判例タイムズ1337号150頁
2011.03.16
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