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貸金業者Yとその完全子会社である貸金業者Aの顧客Xとが、金銭消費貸借取引に係る基本契約を締結するに当たり、YがXとの関係において、AのXに対する債権を承継するにとどまらず、AのXに対する債務についても全て引き受ける旨を合意したものと解された事例(最高裁 平成23年9月30日判決) 「事案の概要」大手消費者金融会社であるYが、国内の消費者金融子会社を再編する手続の一環として、完全子会社である貸金業者Aの顧客であるXとの間で、形式上、Yからの借入金によりAに対する約定利率による残債務を完済し、以後、Yとの間で継続的な金銭消費貸借取引を行うといういわば契約の切替えをした事案について、Xが、Aとの過払金等返還債務をYが引き受けたなどと主張して、Yに対し、不当利得返還請求権に基づき、その返還等を求める事案である。 「判旨」貸金業者Yとその完全子会社である貸金業者Aの顧客Xとが、金銭消費貸借取引に係る基本契約を締結し、この際、Xが、Aとの継続的な金銭消費貸借取引における約定利息を前提とする残債務相当額をYから借り入れ、これをAに弁済してAとの取引を終了させた場合において、次の(1)から(3)などの判示の事情の下では、XとYとは、上記基本契約の締結に当たり、Yが、Xとの関係において、Aとの取引に係る債権を承継するにとどまらず、債務についても全て引き受ける旨を合意したと解するのが相当である。(1)Yは、国内の消費者金融子会社の再編を目的として、Aの貸金業を廃止し、これをYに移行、集約するために、Aとの間で業務提携契約を締結し、同契約において、Aが顧客に対して負担する過払金債務等一切の債務をYが併存的に引き受けることや、Aと顧客との間の債権債務に関する紛争について、Yが、単にその申出窓口になるにとどまらず、その処理についても引き受けることとし、その旨を周知することを、それぞれ定めた。(2)Yは、上記業務提携契約を前提として、Xに対し、上記基本契約を締結するのはYのグループ会社再編に伴うものであることや、Aとの取引に係る紛争等の窓口が今後Yになること等が記載された書面を示して、Yとの間で上記基本契約を締結することを勧誘した。(3)Xは、Yの上記勧誘に応じ、上記書面に署名してYに差し入れた。判例タイムズ1357号76頁
2011.12.27
市立小学校又は中学校の教諭らが勤務時間外に職務に関連する事務等に従事していた場合において、その上司である各校長に上記教諭らの心身の健康を損なうことがないよう注意すべき義務に違反した過失があるとはいえないとされた事例(最高裁 平成23年7月12日判決) 「事案の概要」市立小中学校の教諭であるXら9名が、平成15年4月から12月の間(ただし8月を除く)に時間外勤務を行ったところ、これは義務教育諸学校等の教員に原則として時間外勤務をさせないとしている「国立および公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法」及びこれに基づく京都府の条例の規定に違反する黙示の職務命令等によるものであり、また、各学校の設置者であるYはXらの健康保持のため時間外勤務を防止するよう配慮すべき義務に違反したなどと主張して、Yに対し、国家賠償法1条1項に基づく損害賠償等を請求した事案である。 「判旨」市立小学校又は中学校の教諭らが、ある年度の合計8か月の期間中、勤務時間外に職務に関連する事務等に従事していた場合において、上記教諭らの勤務する学校における上司である各校長は上記教諭らに対し時間外勤務を明示的にも黙示的にも命じておらず、上記教諭らは強制によらずに各自が職務の性質や状況に応じて自主的に上記事務等に従事していたものというべきであること、上記期間中又はその後において上記教諭らに外部から認識しうる具体的な健康被害又はその徴候が生じていたとは認められないことなど判示の事情の下では、上記期間中、上記各校長において、上記教諭らの職務の負担を軽減させるための特段の措置を採らなかったとしても、上記教諭らの心身の健康を損なうことがないよう注意すべき義務に違反した過失があるとはいえない。 判例タイムズ1357号70頁
2011.12.22
Xに建設用機械を販売し、Xの依頼により継続的にその改修を行っていたYの改修拒絶について、改修に応ずべき信義則上の義務が当該改修拒絶の時点では既に消滅していたとして、Yの違法性が否定された事例(大阪地裁 平成22年11月29日判決) 「事案の概要」本件は、工事業者であるXが、掘進機製造業者であるYから、水道管敷設用の建設機械である複合堀進機(CMT堀進機)6台を購入し、その後約20年間に渡り、Yから継続的にCMT堀進機の改修を受けてきたところ、平成20年8月になって、その改修をYから一方的に拒絶されたこと等により、CMT堀進機による工法が組み込まれた水道管敷設工事の受注及び施工をすることが不可能になったと主張して、Yに対し、債務不履行または不法行為に基づき、逸失利益相当額の損害賠償を請求した事案である。「判旨」改修義務については、それが信義則上の付随義務として認められるものである以上、当然にその終期が存する。被告は、原告がCMT堀進機の所有者である限り、永久的にそのような義務を負い続けるというものではない。そのような義務が存続するかどうかは、その基礎としての原告・被告間の信頼関係のほか、通常その義務が存続すべき期間、さらに、義務が履行されないことによる原告の不利益の程度等を総合考慮の上、決せられるべきものであると解される。原告の所有するCMT堀進機は耐用年数を優に超えており、投下資本も回収されていることがうかがわれる。また、原告の売上高に占めるCMT工事の割合はそう高いものではなく、原告は、旧協会の解散後も、独自の改修を施してCMT工事を受注・施工しており、その実績も従来とさしたる変わりがなく、原告の不利益の程度はそれほど大きいものとはいえない。そして、原告は自ら請負代金の支払いを巡る争いを起こし、そのために、信義則上の改修義務の基礎をなす被告との約20年来の信頼関係が失われたものといわざるを得ない。これらの事情によれば、原告の主張する信義則上の改修義務は、遅くとも旧協会の解散時(平成20年8月)には、消滅したものと認めるのが相当である。判例タイムズ1356号180頁
2011.12.16
土地の売買について,土地上にかつて存在した建物内で殺人事件があったことが,隠れた瑕疵にあたるとされた事例 (大阪高裁平成18年12月19日判決)「事案の概要」XはYから地続きの2筆の土地(以下「本件土地」という)を購入したが,うち1筆の土地上に以前存在していた建物で殺人事件があったことを後から知ったことから,本件土地には隠れた瑕疵があるとして,Yに損害賠償請求をした。 「判旨」(1)売買当時本件建物は取り壊されていて,嫌悪すべき心理的欠陥の対象は具体的な建物の中の一部の空間という特定を離れて,もはや特定できない一空間内におけるものに変容していたとはいえるものの,この事件は女性が胸を刺されて殺害されるというもので,病死,事故死,自殺に比べても残虐性が大きく,通常一般人の嫌悪の度合いも相当大きいと考えられること(2)事件は新聞報道もされており,売買から約8年以上前に発生したものとはいえ,その事件の性質から付近住民の記憶に少なからず残っていると推測され,また現に売買後,本件土地のうち事件が起きたほう土地部分の購入を決めた者が,本件土地の近所の人から事件のことを聞き及び購入を見送っているなどの事情に照らせば,本件土地には,住み心地の良さを欠き,居住の用に適さないと感じることに合理性があると認められる程度の嫌悪すべき心理的欠陥がなお存在するというべきである。 類似の裁判例によくみられる自殺ではなく,殺人事件があったことが問題とされ,しかも,売買当時には既に取り壊されていた建物内での出来事であったことが特徴。 判例タイムズ1246号203頁 参考 仲介人は,賃貸借契約につき建物の階下の部屋で半年以上前に自然死があった事実につき説明すべき義務があるか(東京地裁平成18年12月6日判決)「判旨」一般に,不動産媒介業者は,宅地建物取引業法上,賃貸目的物の賃借人になろうとする者に対して,賃貸目的物に関する重要な事項を告知すべき義務があるというべきであり,賃貸目的物に関する重要な事項には,賃貸目的物の物理的欠陥のほか,賃貸目的物にまつわる嫌悪すべき歴史的背景等に起因する心理的欠陥も含まれるものと解されるが,本件建物の階下の部屋で半年以上前に自然死があったという事実は,社会通念上,賃貸目的物にまつわる嫌悪すべき歴史的背景等に起因する心理的欠陥に該当するものとまでは認め難いといわざるを得ず,したがって,賃貸目的物に関する重要な事項とはいえないから,かかる事実を告知し,説明すべき義務を負っていたものとは認め難いというべきである。
2011.12.07
競売不動産の元所有者の買受人に対する固定資産税等の日割精算額の不当利得返還請求が否定された事例(大阪地裁 平成23年2月7日判決) 「事案の概要」本件は、平成22年1月1日時点において不動産の所有者であり、不動産登記簿上の所有名義人であったXが、同年8月20日に担保不動産競売手続により当該不動産を取得したYに対し、Xが当該不動産に係る平成22年度の固定資産税等の全額を納付したことにより、Yが当該不動産を取得した日の翌日以降の期間に対応する固定資産税等の負担を免れたことが不当利得に当たるとして、その日割精算額の返還等を求めた事案である。 「判旨」地方税法の規定及び私人間の売買契約と不動産競売制度との違いに照らすならば、競売不動産に係る固定資産税等の負担について、これを不動産競売手続において執行債務者と買受人との間の合意により調整することは制度上予定されておらず、また、同手続が終了した後に、別個の手続により固定資産税等の負担を調整することも基本的に想定されていないと解するのが相当である。現在の不動産競売手続実務においては、通常、競売不動産の評価や売却基準価額及び買受可能価額の決定に際し、固定資産税等の税額及びその納付の有無が考慮されていないが、それは、以上のような固定資産税等の負担の調整が制度上予定されていないことに基づくものであると解される。そして、このような不動産競売手続実務を前提に、後日、競売不動産に係る当該年度の固定資産税等の請求を受けることはないと期待して当該不動産の買受の申出をすることをもって、不合理な行為であるということはできないし、それにより、結果的に買受人が最大で1年分の固定資産税等の経済的負担を免れることになったとしても、当該固定資産税等の賦課期日における不動産の所有者との関係で不当な結果を招来するということもできない。判例タイムズ1356号176頁
2011.12.01
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