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自動車の仮差押えをした債権者は本執行として当該自動車の強制競売を申し立てるにあたって当該自動車を仮差押え後に占有している第三者に対し執行官に引き渡す旨の命令を申し立てることができるか(積極) (大坂高判平成22年6月22日)「事実関係」債務者(Y)の所有する本件自動車に対する仮差押えをした債権者(X)が,本件自動車に対する本執行として強制競売を申し立てるに当たって,仮差押えの後,本件自動車を占有している第三者(Z)に対し,民事執行規則176条2項,174条2項に基づき,本件自動車を執行官に引き渡す旨の命令を申し立てた。 「判旨」自動車を登録の方法により仮差押えした場合,仮差押えにはその登録後の売買等の処分行為を制限する効力があり,仮差押えが本執行に移行したときは,その手続きにおいて,仮差押後の処分行為の効力は否定される。したがって,仮差押えにより制限されていた処分行為により対象自動車の占有を取得した者は,処分行為の効力を否定されるとともに,自動車の強制競売のため,その占有確保を担当する執行官に自動車を引き渡すべき義務がある。 債務者が自動車の占有をしている場合,その占有が第三者に移転する危険を防止し得ない。そこで,仮差押えと同時に,執行官に対し自動車を取り上げて保管すべき旨を命ずる,いわゆる執行官保管の方法も可能だが,実際に,仮差押えと同時に執行官保管の方法が執られる場合はそう多くない。本件でも,そのような方法が執られていなかったため,仮差押え後に本件自動車の占有がYからZに移転した。このような場合に,債権者が仮差押えした自動車の本執行として強制競売を求めることができないのは不当である。そこで,民事執行規則176条2項・174条2項を類推して(本来,この条文は担保権の実行における規定で,本件のような強制競売の条文ではない),占有者に対し,執行官に対する引渡しを命じることができる,とした。 判例時報2107号 122頁
2011.06.20
「相続させる」旨の遺言により遺産を相続させるものとされた推定相続人が遺言者の死亡以前に死亡した場合における当該遺言の効力(最高裁 平成23年2月22日第三小法廷判決)「事案の概要」本件は、被相続人Aの子であるXが、遺産の全部をAのもう一人の子であるBに相続させる旨のAの遺言は、BがAより先に死亡したことにより効力を生じないこととなり、XがAの遺産につき法定相続分に相当する持分を取得したと主張して、Bの子であるYら、すなわちAの代襲相続人らに対し、Aがその死亡時に持ち分を有していた不動産につきXが上記法定相続分に相当する持分等を有することの確認を求めた事案である。「判旨」被相続人の遺産の承継に関する遺言をする者は、一般に、各推定相続人との関係においては、その者と各推定相続人との身分関係及び生活関係、各推定相続人の現在及び将来の生活状況及び資産その他の経済力、特定の不動産その他の遺産についての特定の推定相続人の関わりあいの有無、程度等諸般の事情を考慮して遺言するものである。このことは、遺産を特定の推定相続人に単独で相続させる旨の遺産分割の方法を指定し、当該遺産が遺言者の死亡時に直ちに相続により当該推定相続人に承継される効力を有する「相続させる」旨の遺言がされる場合であっても異なるものではなく、このような「相続させる」旨の遺言をした遺言者は、通常、遺言時における特定の推定相続人に当該遺産を取得させる意思を有するにとどまるものと解される。したがって、上記のような「相続させる」旨の遺言は、当該遺言により遺産を相続させるものとされた推定相続人が遺言者の死亡以前に死亡した場合には、当該「相続させる」旨の遺言に係る条項と遺言書の他の記載との関係、遺言書作成当時の事情及び遺言者の置かれていた状況等から、遺言者が、上記の場合には、当該推定相続人の代襲者その他の者に遺産を相続させる旨の意思を有していたとみるべき特段の事情がない限り、その効力を生ずることはないと解するのが相当である。 判例タイムズ1344号115頁
2011.06.16
契約期間1年の臨時雇運転手に対する最初の更新時の雇い止めにつき,特段の事情がない限り、右雇用契約の更新拒絶をすることが信義則に照らし許されないとされた事例(大阪高裁 平成3年1月16日判決 龍神タクシー事件) 「事案の概要」契約期間1年の臨時雇運転手につき,臨時雇運転手の制度創設以来,自己都合で退職する者以外は雇用を継続され,正規運転手に欠員が生じたときには正規運転手に登用されてきたところ、最初の更新時に雇い止めがなされた。当該臨時雇運転手は、従業員たる地位の保全と賃金仮払いの仮処分を申し立てた。 「判旨」臨時雇運転手制度の導入以降,自己都合による退職者を除いては,例外なく雇用契約が更新(再契約)されてきており,会社において契約の更新を拒絶した事例はない。正規運転手に欠員が生じたときには,臨時雇運転手で希望する者の中から適宜の者を正規運転手に登用してこれを補充してきた。本件臨時雇運転手は,雇用契約の際,会社の担当者から契約書のとおり1年限りで辞めてもらう旨の話は聞かされておらず,かえって,会社と期間1年の契約で稼動している他の運転手らは自動的に契約を更新されていると聞いていて,本件労働者の場合も,当然契約が更新されて継続して雇用されるものと思って稼動していた。以上のような臨時雇運転手の雇用契約の実態に関する諸般の事情に照らせば,その雇用期間についての実質は,期間の定めのない雇用契約に類似するものであって,本件労働者において,契約期間満了後も雇用が継続されると期待することに合理性が認められる。 よって,従前の取り扱いを変更して,契約の更新を拒絶することが相当と認められるような特段の事情が存在しない限り,会社において更新を拒絶することは信義則に照らし許されない。 労働法律旬報1262号51頁
2011.06.09
臨時員に対する雇い止めにつき解雇に関する法理を類推すべき場合において、その雇い止めが有効とされた事例(最高裁 昭和61年12月4日判決 日立メディコ事件) 「事案の概要」Yは、昭和45年12月1日、契約期間を同月20日までと定め、Xを柏工場の臨時員として雇用し、同月21日以降期間2カ月の労働契約を5回にわたり更新してきた。ところが、柏工場においては、間もなく不況やドルショックの影響により製品在庫が急増し、翌46年9月末には適正在庫量の2倍の在庫を抱えるに至った。そこで、Yは、柏工場の人員削減計画を作成し、その一環として同工場の臨時員14名全員を、契約期間満了をもって雇い止めとすることにした。これに対し、Xは、本件雇い止めを無効であるとして、労働契約上の地位の確認等を求めた。 「判旨」2ヶ月の労働契約を5回にわたり更新してきた臨時員に対し,使用者が契約期間満了による雇い止めをした場合において,右臨時員が季節的労務や特定物の製作のような臨時的作業のために雇用されるものでなく景気変動に伴う受注の変動に応じて雇用量の調整を図る目的で雇用されるもので,その雇用関係はある程度の継続が期待されていたものであり,右雇い止めの効力の判断に当たっては,解雇に関する法理を類推すべきであっても,独立採算制がとられている工場において,事業上やむを得ない理由によりその人員を削減する必要があり,余剰人員を他の事業部門へ配置転換する余地もなく,工場の臨時員全員の雇い止めが必要であるとした使用者の判断が合理性に欠ける点がないと認められるなど判示の事情があるときは,当該雇い止めを無効とすることはできない。 判例タイムズ629号117頁
2011.06.03
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