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請負人である株式会社のいわゆる「事実上の取締役」について会社法429条1項の類推適用による第三者である注文者に対する損害賠償責任が認められた事例 名古屋地裁平成22年5月14日判決 「事案の概要」Xらは,Z会社との間で建物建築工事を目的として請負契約を締結し,Z会社は本件請負契約に基づいて本件建物を建築しXらに引き渡した。Xらは,本件建物に瑕疵があり,補修費用等の損害を被ったとして,Zの事実上の取締役であったというYに対し,その賠償を求めた。 「判旨」本判決は,本件建物の瑕疵を認定し,Zの設立の経緯,代表取締役・取締役の構成,関連会社2社の状況,当該関係会社とZとを合わせた本件3社の執務状況,本件三者の取引状況などを踏まえ,「YはZの事実上の(代表)取締役であった」とし,ZにおけるYの資金流用の事実を認定して,「これらのYによる個人的な金員の取得ないし流用がなければ,Zの経営が破綻することはなく,...Xらの損害を賠償することは容易であったと認められるから,事実上の(代表)取締役であるYの任務懈怠によりXらが損害を被った」といえるので「Yは,会社法429条1項の類推適用によりXらの上記損害を賠償すべき義務がある」とした。形式的には取締役でないが実質的には取締役である者については,事実上の取締役として第三者責任について会社法に直接的な規定はない。本判決は,会社法429条1項を類推適用して事実上の取締役の責任を認めた。 判例時報2112号66頁
2011.07.27
建物の設計者,施工者又は工事監理者が,建築された建物の瑕疵により生命,身体,又は財産を侵害された者に対し不法行為責任を負う場合 (最判平成19年7月6日) 「事案の概要」Y1建築士事務所が建築の設計及び工事監理をし,株式会社Y2が施工をした9階建の共同住宅・店舗(本件建物)及びその敷地(本件土地)を購入したXらが,本件建物にはひび割れや鉄筋の耐力低下等の瑕疵があると主張して,Y1に対しては不法行為に基づく損害賠償を,Y2に対しては,瑕疵担保責任に基づく瑕疵修補費用の支払若しくは損害賠償又は不法行為に基づく損害賠償をそれぞれ請求した。「判旨」建物の建築に携わる設計者,施工者及び工事監理者は,建物の建築に当たり,契約関係にない居住者を含む建物利用者,隣人,通行人等に対する関係でも,当該建物に建物としての基本的な安全性が欠けることがないように配慮すべき注意義務を負い,これを怠ったために建築された建物に上記安全性を損なう瑕疵があり,それにより居住者等の生命,身体又は財産が侵害された場合には,設計者等は不法行為の成立を主張する者が上記瑕疵の存在を知りながらこれを前提として当該建物を買い受けていたなど特段の事情がない限り,これによって生じた損害について不法行為による損害賠償を負う。 原審は,被告らの不法行為責任について強度の違法性を要求し,本件建物の瑕疵について不法行為責任を問うような強度の違法性があるとはいえないとして被告らの不法行為責任の成立を否定した。 差戻後控訴審(福岡高判平成21年2月6日)では,「建物としての基本的な安全性を損なう瑕疵」とは,瑕疵の中でも居住者等の生命,身体,又は財産に対する現実的な危険性を生じさせる瑕疵をいい,Xらが第三者に売却するまでにこの瑕疵があったことを必要とすると解した上で,前記の不具合はXらが売却してから6年以上経過しても,本件建物で事故が生じていないことなどの事情を考慮すると,これらの不具合が原因で,居住者等の生命,身体又は財産に対する現実的な危険性が生じていたとは認められないと判断して,Xらの請求を棄却した。最判平成19年7月6日 判例タイムズ1252号120頁福岡公判平成21年2月6日 判例タイムズ1303号205頁
2011.07.07
給与等の支払をする者が判決に基づく強制執行によりその回収を受ける場合源泉徴収義務の有無 (最判平成23・3・22)「事案の概要」Xは,従業員であるYらの懲戒解雇の無効を確認するとともにYらに対する賃金の支払を命ずる旨の仮執行宣言付き判決を受けた。同判決で支払を命じられた賃金の額は源泉所得税を控除しない金額だった。Yらは,同判決に基づき,Xの事務所内の現金を目的として動産執行を申立て,Xは執行官に対して上記賃金全額の弁済の提供をした。その後Xは,税務署長から納税の告知を受けたため,上記賃金に係る源泉所得税を納付した。そこで,Xは,Yらに対し,主位的に,所得税法222条に基づき源泉所得税相当額の支払を,予備的に不当利得に基づき同額の支払を求めた。 「判旨」所得税法28条1項に規定する給与等の支払をする者が,その支払を命ずる判決に基づく強制執行によりその回収を受ける場合であっても,上記の者は,法183条1項所定の源泉徴収義務を負う。 Yらは,賃金の支払をする者がその支払を命ずる判決に基づく強制執行による取立てなどにより回収を受ける場合には,賃金の支払の際に源泉徴収税を徴収することができないから,法183条1項の源泉徴収義務を負わないと主張したが,一審,原審ともYらの主張を排斥し,Xの主位的請求が認容され,最高裁でも原審の判断が是認された。判例時報2111号33頁
2011.07.05
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