富を得ることを考えただけで、人は他人を遠ざけるようになり、幸福を台無しにしてしまう場合があるのです。
ます。物質的なもの(美しい家から高級万年筆まで)は、経験を買うこと(旅行、コンサート、特別な食事など)ほど幸福をもたらさないことがわかりました。使った金額が2ドルだろうと 20万ドルだろうと、形のあるものよりむしろ経験を買ったほうが、出費に対する後悔が減ります。
ロンドンの住人の多くはビッグ・ベンを一度も訪れたことがありません。なぜでしょうか? 素晴らしいものがいつも身近にあると、人間というものはそれをあまり大切に思わなくなるものです。大好きなものに手が届かないように制限をかけると、新鮮な喜びを味わえるようになります。喜ぶ能力が再生されるのです。
消費を先送りすることから得られる恩恵は、前払いをしたときに特に顕著に現れることが多いようです。先に支払って、あとで消費することによって、化粧品からカクテルまで、とうとう手に入れたときには、まるでただでもらえたかのような楽しい気分を味わえるのです。さらにいいことに、前払いの痛みを経験すれば、お金を使いすぎることも減ります。
関西学院大学の中里直樹らのグループが、ドイツで1991年から2007年にかけて、自分の住んでいた家に不満があったために新しい家に引っ越した数千人の人々を追跡調査しました。彼らは新しい住まいに移った当初、古い家に住んでいたときよりも新しい家のほうがはるかに満足度は高いと答えていました。ところが、人間というのは順応性の高い生き物で、一度手に入れてしまうと、それが何であれすぐに飽きてしまう傾向があることが研究で示されています。
多くのお金をレジャーに使う人々のほうが、人生に対する満足度が明らかに高かったのです。当然ながら、こうした年配者たちがレジャーに使うと報告した金額は、住宅費に比べればずいぶん少なかったのですが、やはりこの場合も、住宅費は生活に対する満足度にはなんの影響も与えていないことがわかりました。
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