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2015年10月25日

マギ 27巻 大高 忍(※少しネタバレ)


ということで早速買ってきて読みましたよ。 全巻の最後で燃え尽きた灰のようになって見えたアリババ 、一体どうなってしまったのか???
と期待と恐ろしさとが入り混じった感じで一気に読み進めました。

が、待っていたのは想像を超える展開でした。

いや、表面上のストーリーの展開という訳ではないんですよ。
どちらかというとテーマに関する展開ですね。

本当に恐ろしい漫画です。
「マギ」。

作者の方は実は徳のある 高僧か何かか!?と疑ってしまうくらい、何か、精神世界に訴えてくるものを持っています。それとも私が知らないだけで、世界の神話などには既にこういうモチーフがあるのでしょうか。

そう、今回27巻の中で、
白龍から提示される考え方。

「アラジン殿、『堕転』はそんなに悪いことですか?」

それに対して、アラジンは、 目指していた未来と真逆の方向へ突き進んでいくことが堕転であり、それは不幸なことだ と説きます。
だからやめさせたいのだと訴えます。
わかります。これまで散々本作中で言われていたことですよね。

しかし再度、白龍はアラジンに幾つかの言葉を伝えた後、最後にこう言い放ちました。

「不幸だからと・・・ あなたに生き方を決められたくはない な。」

という事でした。

この時、私の中でアルマトラン編(23巻)での、そう、ソロモン王の言葉が脳裏にフラッシュバックしました。

「真実を知ってしまった今、『運命』を神に支配されたままでは俺たちは絶望で生きてはいられない。
みんなが それぞれの生き方で未来を変えられる可能性がある世界にしなくては 。」

これはまさにソロモン王が言っていたことと全く同じなのでは?
「堕転」した白龍が、その真逆にいるはずのソロモン王と同じ事を言うというのは、一体どういうことなんだ?
混乱と疑念が頭の中でぐるぐる回ります。

そう。
これまで作品の中では、

「堕転」=運命に逆らう、不幸の象徴。
     ルフの流れから外れるという大いなる孤独。


というメッセージが一環して語られてきました。
かつてマグノシュタットの学院長であったモガメットは「黒いルフを白いルフへ戻す方法を探して欲しい」とアラジンに伝えました。
それが作品の一つの今後の大きなテーマだと思っていたのですが・・・。

(しかしその後の展開の中で、ルフは元々黒かったのであり、白いルフは作為的に作られたものだということが示されて少し揺らぎを見せることになりましたが・・・)

27巻では「堕転」に対する考え方がひっくり返された訳です。

そもそも堕転って悪いことなのか?ということ。
そしてそれを言っている人間が考えていることが、そもそも白いルフを作り出したソロモン王が考えたことと根本的には同じであること。
じゃあ、一体堕転って何なんだ?これまでひたすら訴えられてきた「堕転=悪=不幸」という図式は一体何だったんだ?

これは大げさな表現かもしれませんが、私の中ではマギの世界観がひっくり返る大事件だった訳なんですよ。
読者をさんざんその気にさせておいて、後で大きく根本からひっくり返す、恐ろしい仕掛けが秘められていたってことなんですね。

こうなってくると堕転云々はストーリーの一つの仕掛けでしかなく、
本来のテーマはこの
「不幸だからと・・・あなたに生き方を決められたくはないな。」
という一言に象徴される、

自分で生き方を決めること。
他人がどんなに善に見える介入で口を挟んできても、最終的には、やはり自分が決めるのだということ。


という事になると思います。

このテーマはこれまでも何回も示されてきました。
シンドバットの有名(※自分の中で)な台詞である

「自分で考え、自分で決めろ。俺はこれまでそうして道を切り開いてきたが、君たちはどうだろうか?」

も、その一つですね。
ちなみにこの27巻でも、後で、紅炎がやはりこのテーマを汲んだ台詞をアラジンにぶつけてくるシーンがあります。

「おまえは馬鹿か?」
「ならば、あとはおまえのやりたいようにやれ」
「少なくとも、俺達はそうしている」

ふう。。。

しばらくは、この「堕転ショック」が響きそうです。
恐るべしです、マギ。

↓↓過去のマギについての記事はこちら

マギ 大高 忍 (11〜26巻)

マギ 大高 忍(1〜10巻)

posted by 霧島もとみ at 2015年10月25日 | Comment(0) | TrackBack(0) | コミックー冒険
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霧島もとみ
他人との距離感をいつも遠く感じながら生きてきました。高校の体育祭のフィナーレでは、肩を抱き合って大はしゃぎする光景に「何でこんなに盛り上がれるんだろう・・・?」と全く共感できませんでした。共感できない自分が理解できず、いつも悩んでいます。そんな私でも面白いと思うことはこの世界に一杯あります。それが私の生きる糧でした。面白いことが増えていけば、よりたくさんの人が楽しく生きられるはず。そんな世界を夢見ています。
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