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2016年03月10日

社会学者・古市憲寿さんの「(オリンピックに)出た方がやっぱりいいですか?」発言に思う


内容は、オリンピック最終予選で2敗を喫してリオ五輪への出場が絶望的になったというものでした。
前園さんは非常に残念な様子を見せて、「今大会に限っては少し、なでしこらしい部分がなかった」「僕の中ではショック」と話したのですが、それに対して社会学者の古市憲寿さんが 「出た方がやっぱりいいですか?」 と無表情でコメントしました。

前園さんは唖然。
「お前は何を言っているんだ」とばかりの表情です。
スタジオにも何とも言えない違和感が一瞬漂い、テレビを見ていた自分も「また古市さんが人の気持を考えずに言ってるよ・・・」という感情を覚えました。

しかし、はっと我に帰りました。
なぜこの場面に違和感を感じたのだろうと。
それは当たり前のようであり、しかしそれを「当たり前」として見過ごしてしまうのは何か危険な気がする、そんな予感がしたのです。

そこで、この違和感の正体について、古市さんの「(オリンピックに)出た方がやっぱりいいですか?」発言について考えてみたいと思います。

前園さんが唖然とした理由


前園さんは元サッカー日本代表選手です。
今はタレントとして定着してきた感がありますが、Jリーガーとしての現役時代はまさに日本を代表する選手の一人であり、僕のように詳しくサッカーを知らない人でも名前と顔が一致する、知名度のある選手です。

もちろん、現役を退いた今もサッカーに対する情熱があります。
そんな前園さんにとって現役の選手の活躍を応援するのは当然であり、当たり前であり、オリンピックという大舞台での活躍を期待することもごくごく普通のことです。

それに「なでしこジャパン」についても、前々回のワールドカップ優勝以降知名度はぐんと上昇し、メディアの注目度も上がり、国際試合についてはテレビ中継もされるようになってきました。
ニュースでも応援するファンの姿がよく映ります。

だから前園さんは「なでしこジャパンは大勢の日本のファンが応援するようになった。”みんな”オリンピックに出ることを願っていた」ということを無意識に感じていたんでしょう。
だからオリンピックに出られなかったことを「残念だ」といえば、それはその場にいる皆、またテレビの向こうの視聴者もきっと同じ気持で、共感を得ることができるんじゃないかという思いがあったはずです。

こうなると人間の心理としては、既に「そうですよね」という反応に対しての準備をしてしまいます。例えば、重たいものを運ぶ前には、体が無意識に力を入れてその重さに備えるように。

しかしそこに、いきなり真反対の言葉・感情をぶつけられてしまいました。



そりゃあ唖然としてしまいますよね。

整理すると、

・だからオリンピックに出られなかったことを残念だと思う気持ちはみんなに共有される。
・それと真反対のことを言われることを想定していなかった。

ということが、前園さんが唖然とした理由、ということです。

では次に、その言葉を投げかけた古市さんの視点から考えてみたいと思います。

古市さんの視点


古市さんの視点としては、まず、サッカーそのものに興味がありません。
サッカーに興味があり、応援する人の気持ちが理解できません。
だからサッカー女子代表がオリンピックに出場する・しないについても全く興味が無く、そのことがファンにとってどのような意味を持つかも分からないのです。

それ自体は別に良いことでも悪いことでもありません。
中立というか、客観的なだけ。
古市さん得意の「無属性な視点」であり、社会を冷徹に見ている社会学者としての視点なんですよね。

古市さんとしては、別に前園さんや多くのサッカーファンを馬鹿にしているわけではなく、純粋に「自分には分からないから教えてほしい」という意見を提示したに過ぎません。

これが古市さんの視点です。

それ自体は、冷静に考えると、良くも悪くもないことのように思えます。
ではなぜこの発言に自分は違和感を感じたのか?

違和感の正体


正直に告白します。
私も古市さんのコメントに対して嫌な気持ちを覚えました。
「何冷めたことを言っているんだコイツ!」という反感を持ちました。

しかし冷静に考えると、その発言の内容自体は、良くも悪くもないんですよね。

誰でも同じだと思います。
私も興味があまりない分野については、同じような思いを持つでしょう。
例えば私はプロ野球についてほとんど興味がありませんから、どのチームが優勝しようがしまいが何の問題もありませんし、そもそもたった12球団で毎年優勝を競うことの意味も良く分からない・・・といったことをボソッと言ってしまうかもしれません。

それなのに違和感を感じてしまい、反感までも感じてしまった。

その理由は?と考えると、
「世の中には自分と違い意見を持った人がいるという当たり前のことを忘れていた」
ということに尽きるのかなと。
または忘れるようにメディアに印象操作されていたのかもしれませんが。

基本的には、ごくごく当たり前のことです。
「世の中の人の考えは一人一人違う」
これに反対する人はまずいないでしょう。
けれども何か特定のトピックに関しては、何か大多数の人が同じ意見を持つような、それを当たり前と考えてしまう、そんな錯覚が作用するのかもしれません。
今回はそのトピックが「サッカー女子日本代表」だったという事でしょう。

この錯覚に陥っていたこと、それを自分自身では気付いておらず、古市さんの発言によって思い出さされたことが、違和感として感じたものの正体だったのです。

まとめ


・人は、気がつかないうちに、何か特定の意見・思想に対して「みんながそう思うことが普通だ」と考えてしまいがち。
・その錯覚に陥ると、異なる意見・思想に対して思わぬ反感が自分の中に生まれてしまう危険性がある。

ということを、考えました。

ていうか、元々はサッカー日本女子代表のニュースなのに、全然関係ないことを考えている 自分がシュールすぎてちょっと怖いです。
posted by 霧島もとみ at 2016年03月10日 | Comment(0) | TrackBack(0) | そこはかなきこと
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霧島もとみ
他人との距離感をいつも遠く感じながら生きてきました。高校の体育祭のフィナーレでは、肩を抱き合って大はしゃぎする光景に「何でこんなに盛り上がれるんだろう・・・?」と全く共感できませんでした。共感できない自分が理解できず、いつも悩んでいます。そんな私でも面白いと思うことはこの世界に一杯あります。それが私の生きる糧でした。面白いことが増えていけば、よりたくさんの人が楽しく生きられるはず。そんな世界を夢見ています。
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