実は1年以上前にAmazonで「面白そうだ」と興味本位で買ってはみたものの、届いた本を本棚に置いた時点で何か満足してしまい、それからは積ん読の見本のような存在になっていました。
こうなってしまうと「さあ、読もう!」という気持ちにはなりにくいのですが、思わぬことから急に読む気になりました。
「サーチ・インサイド・ユアセルフ——仕事と人生を飛躍させるグーグルのマインドフルネス実践法」
を読んでいるときに、その中で
最後に大事なことを記しておく。私はすべての友人に、生涯に一冊しかビジネス書を読まないのならば、ジェームズ・コリンズの『ビジョナリー・カンパニー2』を読むべきだと言っている。素晴らしい企業を経営することについて、私の知っているほかのどの本よりも多くを教えてくれる。
と書かれていたからです。
「サーチ・インサイド・ユアセルフ」は、私にとって非常に多くの気付きを与えてくれる本でした。その筆者が「生涯に一冊しかビジネス書を読まないのならば」という前置きまで付けて勧める本とは、一体どれくらい素晴らしい本なのだろう?
これは読まなければという衝動に駆られ、早速Amazonで検索・・・をしようとしたのですが、本の名前がどこか記憶に引っかかりました。
しばらくして「1年以上前に買っていた本だったんじゃないか?」ということを思い出した、という訳です。
こういう事ってあるんですね。
この本「ビジョナリー・カンパニー2」がどれほど素晴らしい本なのかは、先程の「サーチ・インサイド・ユアセルフ」からの引用文が全てを語っているところですが、自分で整理を行うための作業として、自分なりの書評を以下に書くことにします。
どんな本だった?
経営関係の本では時々、「私はこうやって成功した!!」という全く個人的な経験に基づく方法論だったり精神論を書いた本を見かけます。
著者個人に興味がある場合はそれでも面白いですが、正直あまり参考にならない事が多いです。
この本は「調査で得られたデータから法則を見つけ出す」というアプローチで科学的に書かれています。
ここが大きな特徴です。
成功者や学者の個人的な経験や見識を根拠として書かれたものではありません。あくまで科学的な見地、つまりデータと分析によって書かれたものですから、「普遍的に共通する法則である可能性が高い」という期待を持って読むことができます。
次に、本の構成が素晴らしい。
調査によって導き出された法則を順序立てて説明していくのは勿論のこと、それらを「読み手に分かりやすいように」「理解してもらいやすいように」工夫して書かれています。法則をビジュアル化した図がとても分かりやすいと感じました。
”飛躍の法則”には幾つかの段階があり、一つ一つのステップがやがて大きな動きとなってその企業を「偉大な企業」へと変貌させていくという理論なのですが、章の冒頭にかかれている図の中で「今ここを説明している」ということがとても明確に分かります。
読むことで得られたもの
企業の経営について分析された本ですので、会社経営者でもなく、投資家でもない私が読んでも「これはすぐにでも使える」という内容は正直ありませんでした。
それならそもそも読まなくてもいいじゃないか・・・という自分自身の心の声も聴こえてきましたが、だからといって「知らなくていい」という事はないと思います。
今の社会を支えているのは国や自治体といった行政は勿論のこと、世の中に数多ある民間企業であることは疑いの余地がありません。
むしろ社会資本整備がある程度整ってきた今の日本では、直接的な恩恵を感じるのは主に民間企業のサービスによるところが大きいのではないでしょうか。
企業は今後も無くてはならない存在で、これからも色々な形で関わっていく訳ですから、企業経営についての分析結果を知ることは意味があるはずです。
また、企業経営に限らなくても、対象とする問題を自分の周りの環境や、個人的な目的の達成に置き換えた場合には、活用の方法がありそうです。
しかし、本書で2番目のエッセンスとして挙げられている「適切な人をバスに乗せ、不適切な人をバスから降ろす」という内容には少し苦味を覚えました。
参考になったというよりも、少し重荷を背負わされたというような表現が近い感覚でした。
0から物事を始める時には適用できそうですが、既に走り出しているバスから「降りろ」ということが難しい場合にはすぐには適用は難しそうです。
”偉大な企業”を目指すのでなければ、ただちに「降りろ」という必要はないということになるのでしょうけれども・・・
巻末のQ&Aにはこの問いに対して”達成までに時間をかける。”と応えられています。
これは、相当大変だなあという印象を持ちました。
ひょっとしたらこの事が、読むことで得られたことの中で一番大きなことかもしれません。
こんな時にまた読みたい
自分自身が「何かをやり遂げたい」という強い思いを抱いたとき、それを達成するためのヒントが込められているというのが、今の時点でのこの本の感想です。
だから、「何かをやり遂げたい」という思いを強く持ったとき、またこの本を開きたいと思いました。
この本を読み込んで細部までを理解するときは、まだ来ていないというのが、今の判断です。
また少しの間、本棚で休んでおいてもらおうと思います。