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2020年08月27日
「老化」は抗えない現象か?治療可能な「病気」か?
外科・消化器外科の専門医で、ジェネラリスト:総合臨床科医です。
末期がん患者を看取る緩和病棟と脳血管輪番病院として、
急性期から慢性期を診る病院の診療部長として働いています。
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「老化」は抗えない現象か?治療可能な「病気」か?
今日の重病のほとんどは老化の一作用です。
したがって、老化の分子メカニズムとその治療方法を究明することは
最優先事項と考えられています。
老化は「人類の普遍的な運命」ですが、
その根本的原因を見つけて対処することで、
人々の寿命を延ばすことができると考えられています。
2016年にネイチャー誌に発表された研究論文によれば、
人間の寿命は115歳程度。この推測の基礎となっているのは、
100歳を超えると長寿者が減る傾向があり、
最高長寿者の記録は1990年代以降塗り替えられていないという
世界的な人口統計データです。
多くは平均して80歳以前に死んでいるのですから、
35年分は早く死んでしまっていると言えます。
高齢者の劇的な増加に対して高齢者の健康や
身体機能を維持する方法を見つけることができれば、
生活の質と経済、両方の面で大きな恩恵を受ける
ことになります。
老化速度を遅くする方法を探さなければなりません。
老化とは、腸内細菌叢の変化から
DNAのメチル化の程度の変化に至るまで、
体内の有害な変化の蓄積です。
マウスや線虫などのモデル生物を用いた研究により、
老化細胞の中で何が起こっているかが明らかにされ、
寿命を(時に驚くべき年齢にまで)延ばす
さまざまな方法が発見されています。
有望な治療薬の1つが、メトホルミンです。
メトホルミンはすでに、一般的な糖尿病治療薬として
長年使われていますが、
動物実験の結果から、
老衰、アルツハイマー病、がんを予防できるかもしれない
と推測されています。
健康な人がメトホルミンを服用することで老化を遅らせられる
可能ですが、
医師は正式な指導なしでは、
老化遅延を目的としたメトホルミンの処方はしません。
<メトホルミンの作用機序>
メトホルミンがAMPキナーゼ(AMPK)を活性化させる
ことが明らかにされています。
AMPKは乳酸からブドウ糖を合成する糖新生、およびアセチルCoAより
中性脂肪、コレステロールを合成する経路に関係して、
いずれもATP(エネルギー通貨)を増加させる作用を持ちます(TCAサイクル)。
肝臓のAMPKが活性化されると細胞内脂肪がエネルギー源として
燃焼される方向に働き、
さらに脂肪肝の患者さんではインスリン抵抗性が改善し、血糖も改善します。
また肝臓ではグリコーゲン分解と糖新生により糖が産生されますが、
メトホルミンは乳酸からの肝臓での糖産生量を抑制して
血糖を低下させるのです。
インスリンを過剰分泌させずに血糖を下げることが、
老化やガン化を抑制していると推測されています。