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2019年03月21日
好き嫌いの判断
最終的には、心の働きの脳内メカニス?ムについて述べていきます。
判断力・直観力
好き嫌いの判断
扁桃体を含む大脳辺縁系で感情が処理されている
1937年、アメリカの精神科医ハインリッヒ・クリューバーとポール・ビューシーは、
サルの左右両側の 『扁桃体』 という場所を含む側頭葉を壊すと、奇妙な行動が見られることを発見した。
食べられるものと食べられないものが区別できなくなったり、
それまで恐れていたものを恐れなくなったりしたという。
その後、この症状はネコやサルの扁桃体だけを壊しても起きることが確認され、
現在では 「クリューバー・ビューシー症候群」 と呼ばれている。
扁桃体は、 大脳辺縁系 と呼ばれる脳内の場所の一部である。
大脳辺縁系は大脳の内側の下部にある。
この 扁桃体を含む大脳辺縁系で感情が処理 されていると考えられている。
怒っている人がいたら、多くの人は争いに巻き込まれないために、近づかないようにするだろう。
しかし、感情が読み取れなかったら、怒っている人にも平気で話しかけ、
トラブルに巻き込まれてしまうだろう。
このような心の働きが、脳のどこで起きているかを知ることは、脳の病気やその治療、人間の心を理解するためにも重要である。
人間でも、扁桃体が壊れると感情に障害が見られる。
扁桃体だけが壊れてしまう 『ウルバッハ・ビーテ病』 の患者は、
表情から相手の感情を読み取ることができなくなる。
このように扁桃体が壊れると、
自分にとって好ましいものと、そうでないものの判断がつかなくなったり、
感情を理解できなくなったりする。
そのため、 扁桃体は快・不快の判断などを行っている と考えられている。
富山大学の小野武年(おの たけとし)特任教授は、サルを使って扁桃体の機能を詳しく調べている。
サルの扁桃体に電極を差し入れて調べた結果、次のことが分かったという。
「オレンジやリンゴなどの好ましいもの、あるいはクモやヘビなどの嫌いなものに反応し、
しかも好きなものほどあるいは嫌いなものほど強く反応する脳の細胞を発見しました。
この細胞は、石ころなど自分にとって意味のないものには反応しません。
さらに、自分にとって好ましいものでも、好きなスイカや嫌いなクモだけにしか反応しない脳の細胞も発見しました」。
この小野博士の実験は、自分にどの程度の喜びをもたらすものか、あるいはどの程度不快な気持ちをもたらすものかを判断する脳の細胞があることを示している。
また、喜びや不快感をもたらすものが、スイカやクモであることを『知っている』脳も細胞もあることを示している。
恐れることを忘れたサル
正常なサルは、飛び上がって逃げるほどヘビを恐れる。
しかし、扁桃体が壊されたサルは、食べられるものと食べられないものの区別がつかなくなり、
ヘビにも噛み付くようになる。
この他にも、扁桃体が壊れると、周りにあるものを手当たりしだい口に持って行ったり、
同性や異種の動物に対しても交尾行動を行ったりするようになる。
感情が生まれる場所—大脳辺縁系
表情から感情を読み取ったり、自分の感情を表情に表したりするには、
脳の中の大脳辺縁系と呼ばれる場所が重要だと考えられている。
大脳辺縁系は、大脳の内側の下部にあり、視床を取り囲んでいる。
快・不快の判断を行っている扁桃体は、情動において特に重要 だと考えられている。
また、 海馬体 は 記憶を作るために重要 な部位だと考えられている。
扁桃体
喜怒哀楽の感情を司る。扁桃体が壊れると、快・不快の判断がつかなくなる。
海馬傍回
大脳皮質と海馬体をつなぐインターフェース。
海馬体
思い出と知識の記憶を作ったり、一時的に保存したりする。
乳頭体
思い出と知識の記憶を作る。
視床下部
感情の変化を、行動や内分泌系などの変化として身体的に表現する。
分解条
扁桃体と視床下部を結ぶ。
脳弓
海馬体と乳頭体、視床前角群などを結ぶ
視床背内側核
感情、注意、嗅覚の学習を司る。
視床前角群
思い出や知識の記憶形成と空間の認知を司る。
帯状回
注意・運動・感情・自律神経反応を司る。
参考文献:ニュートン別冊 脳力のしくみ 2018年7月15日発行
判断力・直観力
好き嫌いの判断
扁桃体を含む大脳辺縁系で感情が処理されている
1937年、アメリカの精神科医ハインリッヒ・クリューバーとポール・ビューシーは、
サルの左右両側の 『扁桃体』 という場所を含む側頭葉を壊すと、奇妙な行動が見られることを発見した。
食べられるものと食べられないものが区別できなくなったり、
それまで恐れていたものを恐れなくなったりしたという。
その後、この症状はネコやサルの扁桃体だけを壊しても起きることが確認され、
現在では 「クリューバー・ビューシー症候群」 と呼ばれている。
扁桃体は、 大脳辺縁系 と呼ばれる脳内の場所の一部である。
大脳辺縁系は大脳の内側の下部にある。
この 扁桃体を含む大脳辺縁系で感情が処理 されていると考えられている。
怒っている人がいたら、多くの人は争いに巻き込まれないために、近づかないようにするだろう。
しかし、感情が読み取れなかったら、怒っている人にも平気で話しかけ、
トラブルに巻き込まれてしまうだろう。
このような心の働きが、脳のどこで起きているかを知ることは、脳の病気やその治療、人間の心を理解するためにも重要である。
人間でも、扁桃体が壊れると感情に障害が見られる。
扁桃体だけが壊れてしまう 『ウルバッハ・ビーテ病』 の患者は、
表情から相手の感情を読み取ることができなくなる。
このように扁桃体が壊れると、
自分にとって好ましいものと、そうでないものの判断がつかなくなったり、
感情を理解できなくなったりする。
そのため、 扁桃体は快・不快の判断などを行っている と考えられている。
富山大学の小野武年(おの たけとし)特任教授は、サルを使って扁桃体の機能を詳しく調べている。
サルの扁桃体に電極を差し入れて調べた結果、次のことが分かったという。
「オレンジやリンゴなどの好ましいもの、あるいはクモやヘビなどの嫌いなものに反応し、
しかも好きなものほどあるいは嫌いなものほど強く反応する脳の細胞を発見しました。
この細胞は、石ころなど自分にとって意味のないものには反応しません。
さらに、自分にとって好ましいものでも、好きなスイカや嫌いなクモだけにしか反応しない脳の細胞も発見しました」。
この小野博士の実験は、自分にどの程度の喜びをもたらすものか、あるいはどの程度不快な気持ちをもたらすものかを判断する脳の細胞があることを示している。
また、喜びや不快感をもたらすものが、スイカやクモであることを『知っている』脳も細胞もあることを示している。
恐れることを忘れたサル
正常なサルは、飛び上がって逃げるほどヘビを恐れる。
しかし、扁桃体が壊されたサルは、食べられるものと食べられないものの区別がつかなくなり、
ヘビにも噛み付くようになる。
この他にも、扁桃体が壊れると、周りにあるものを手当たりしだい口に持って行ったり、
同性や異種の動物に対しても交尾行動を行ったりするようになる。
感情が生まれる場所—大脳辺縁系
表情から感情を読み取ったり、自分の感情を表情に表したりするには、
脳の中の大脳辺縁系と呼ばれる場所が重要だと考えられている。
大脳辺縁系は、大脳の内側の下部にあり、視床を取り囲んでいる。
快・不快の判断を行っている扁桃体は、情動において特に重要 だと考えられている。
また、 海馬体 は 記憶を作るために重要 な部位だと考えられている。
扁桃体
喜怒哀楽の感情を司る。扁桃体が壊れると、快・不快の判断がつかなくなる。
海馬傍回
大脳皮質と海馬体をつなぐインターフェース。
海馬体
思い出と知識の記憶を作ったり、一時的に保存したりする。
乳頭体
思い出と知識の記憶を作る。
視床下部
感情の変化を、行動や内分泌系などの変化として身体的に表現する。
分解条
扁桃体と視床下部を結ぶ。
脳弓
海馬体と乳頭体、視床前角群などを結ぶ
視床背内側核
感情、注意、嗅覚の学習を司る。
視床前角群
思い出や知識の記憶形成と空間の認知を司る。
帯状回
注意・運動・感情・自律神経反応を司る。
参考文献:ニュートン別冊 脳力のしくみ 2018年7月15日発行