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2019年03月24日
損得勘定の脳科学?@
最終的には、心の働きの脳内メカニス?ムについて述べていきます。
損得勘定
損得勘定の脳科学?@
直感の“癖”に流されていませんか?
ときに人間は、感情や直感に流されて判断を下し、行動する。
そのおおまかな傾向は、多くの人に共通のようだ。
こうした現実の人間像を踏まえた上で、経済現象を読み解こうとする学問分野を 『行動経済学』 という。
近年では、脳神経科学の実験手法も取り入れられて、判断に個人差が生まれる仕組みも明らかになりつつある。
実験を元にした質問に答えながら、あなたを支配する脳の“癖”を実感してみよう。
クイズ番組の賞金—それぞれAとBのどちらを選ぶ?
Q1-1
クイズ番組に出たあなたは、賞金100万円を手に入れた。
すると、司会者が次の提案をしてきた。
「ボーナスチャンス!
AとB、どちらかを選択してください」。
あなたなら、どちらの選択肢を選ぶだろうか?
選択肢A
さらに50万円獲得(確率100%)
選択肢B
ルーレットに挑戦
追加の賞金はもらえない(確率50%)
さらに100万円獲得(確率50%)
Q1-2
別のクイズ番組に出たあなた、賞金200万円を手に入れた。
すると、司会者が次の提案をしてきた。
「残念ながら、無条件に賞金を渡すことはできません!
AとB、どちらかを選択してください」。
あなたなら、どちらの選択肢を選ぶだろうか?
選択肢A
賞金から50万円没収(確率100%)
選択肢B
ルーレットに挑戦
賞金から100万円没収(確率50%)
そのまま全額を獲得(確率50%)
この問題に正解はないので、あまり考え込まないで答えてほしい。
もしかするとあなたは、Q1-1ではAを選んだ一方で、Q1-2ではBを選んだのではないだろうか。
つまり、確実に得をしうる場面では確実な選択肢、確実に損をしうる場面では賭けに出る選択肢を選んだのではないだろうか
(もちろん別の選択をした人もいるだろう)。
この質問に対する答え方から、あなたの損と得の感じ方の傾向がわかるという。
例えば、アメリカの大学院生25人を対象にした実験によれば、複数回の質問に対して、Q1-1のような場合には80〜90%ほどの確率で選択肢Aが選ばれた。
しかし、Q1-2のような場合には比率が逆転し、選択肢Bが80〜90%選ばれた。
実は、どの選択肢も、計算上期待できる最終的な賞金総額(期待値)は150万円で同じだ。
それにもかかわらず、なぜこうした特定の選択肢を選ぶ傾向が見られるのだろうか?
この傾向と深い関わりのある次のQ2にも答えてみてほしい。
コイントスゲームーいくらなら賭けに乗る?
Q2
これからコインを投げる。
コインの表と裏が出る確率は、きっかり50%ずつ。
表が出たらあなたの負けで、1万円を没収される。
だが裏が出たらあなたの勝ちで、賞金を獲得できる。
あなたなら、賞金額がいくらに設定されていれば、この賭けに参加するだろうか?
あなたの回答: ?????円
この質問からは、あなたの損と得の感じ方が、より具体的にわかるという。
これも多くの研究で使われている質問形式と同じものだ。
研究ごとにばらつきはあるものの、没収金額が1万円の場合、賭けに参加する条件となる金額は2〜3万円の範囲に収まるという。
つまり、確率が50%ずつの賭けであれば、損の2〜3倍の得を得られる可能性を求める、ということを意味する。
これらの質問は、運に任せるしかない不確実な状況になることが共通している。
そうした場合での判断には、多くの人に共通した“癖”があるようだ。
行動経済学とは?
アメリカの心理学者ダニエル・カーネマン博士と同僚だった故エイモス・トヴェルスキー博士は、不確実な状況下における人間の意思決定について長く研究を行い、客観的な実験に基づいて、ある法則を1979年に提唱した。
それが『プロスペクト理論』だ。
(プロスペクトとは「期待される満足水準」の意味)
カーネマン博士は、プロスペクト理論を含む一連の研究によって、2002年のノーベル経済学賞を受賞している。
受賞理由は、心理学の実験手法で実際の人間の経済活動に関わる行動を明らかにし、その結果を単純化された従来の経済学に統合してきたことだ。
そうして生まれた、実際の人間行動に基づき、より現実に則すであろう経済理論を作り上げようとする専門分野は『行動経済学』と呼ばれている。
行動経済学を専門とする明治大学の友野典男(ともの のりお)教授は、「プロスペクト理論が万人に共通だと想定している人間の重要な特性は、三つあります。
それは
『絶対的ではなく、基準と比較した変化の大きさで価値を判断する性質、(参照点依存性)、
『損失を利得より重く評価する性質』(損失回避性)、そして
『絶対値が大きくなるほど、利得の変化あたりの満足度が下がる性質』(感応度逓減性)です」と話す。
このことを、冒頭の質問を例に読み解いていく(次回)。
参考文献:ニュートン別冊 脳力のしくみ 2018年7月15日発行
損得勘定
損得勘定の脳科学?@
直感の“癖”に流されていませんか?
ときに人間は、感情や直感に流されて判断を下し、行動する。
そのおおまかな傾向は、多くの人に共通のようだ。
こうした現実の人間像を踏まえた上で、経済現象を読み解こうとする学問分野を 『行動経済学』 という。
近年では、脳神経科学の実験手法も取り入れられて、判断に個人差が生まれる仕組みも明らかになりつつある。
実験を元にした質問に答えながら、あなたを支配する脳の“癖”を実感してみよう。
クイズ番組の賞金—それぞれAとBのどちらを選ぶ?
Q1-1
クイズ番組に出たあなたは、賞金100万円を手に入れた。
すると、司会者が次の提案をしてきた。
「ボーナスチャンス!
AとB、どちらかを選択してください」。
あなたなら、どちらの選択肢を選ぶだろうか?
選択肢A
さらに50万円獲得(確率100%)
選択肢B
ルーレットに挑戦
追加の賞金はもらえない(確率50%)
さらに100万円獲得(確率50%)
Q1-2
別のクイズ番組に出たあなた、賞金200万円を手に入れた。
すると、司会者が次の提案をしてきた。
「残念ながら、無条件に賞金を渡すことはできません!
AとB、どちらかを選択してください」。
あなたなら、どちらの選択肢を選ぶだろうか?
選択肢A
賞金から50万円没収(確率100%)
選択肢B
ルーレットに挑戦
賞金から100万円没収(確率50%)
そのまま全額を獲得(確率50%)
この問題に正解はないので、あまり考え込まないで答えてほしい。
もしかするとあなたは、Q1-1ではAを選んだ一方で、Q1-2ではBを選んだのではないだろうか。
つまり、確実に得をしうる場面では確実な選択肢、確実に損をしうる場面では賭けに出る選択肢を選んだのではないだろうか
(もちろん別の選択をした人もいるだろう)。
この質問に対する答え方から、あなたの損と得の感じ方の傾向がわかるという。
例えば、アメリカの大学院生25人を対象にした実験によれば、複数回の質問に対して、Q1-1のような場合には80〜90%ほどの確率で選択肢Aが選ばれた。
しかし、Q1-2のような場合には比率が逆転し、選択肢Bが80〜90%選ばれた。
実は、どの選択肢も、計算上期待できる最終的な賞金総額(期待値)は150万円で同じだ。
それにもかかわらず、なぜこうした特定の選択肢を選ぶ傾向が見られるのだろうか?
この傾向と深い関わりのある次のQ2にも答えてみてほしい。
コイントスゲームーいくらなら賭けに乗る?
Q2
これからコインを投げる。
コインの表と裏が出る確率は、きっかり50%ずつ。
表が出たらあなたの負けで、1万円を没収される。
だが裏が出たらあなたの勝ちで、賞金を獲得できる。
あなたなら、賞金額がいくらに設定されていれば、この賭けに参加するだろうか?
あなたの回答: ?????円
この質問からは、あなたの損と得の感じ方が、より具体的にわかるという。
これも多くの研究で使われている質問形式と同じものだ。
研究ごとにばらつきはあるものの、没収金額が1万円の場合、賭けに参加する条件となる金額は2〜3万円の範囲に収まるという。
つまり、確率が50%ずつの賭けであれば、損の2〜3倍の得を得られる可能性を求める、ということを意味する。
これらの質問は、運に任せるしかない不確実な状況になることが共通している。
そうした場合での判断には、多くの人に共通した“癖”があるようだ。
行動経済学とは?
アメリカの心理学者ダニエル・カーネマン博士と同僚だった故エイモス・トヴェルスキー博士は、不確実な状況下における人間の意思決定について長く研究を行い、客観的な実験に基づいて、ある法則を1979年に提唱した。
それが『プロスペクト理論』だ。
(プロスペクトとは「期待される満足水準」の意味)
カーネマン博士は、プロスペクト理論を含む一連の研究によって、2002年のノーベル経済学賞を受賞している。
受賞理由は、心理学の実験手法で実際の人間の経済活動に関わる行動を明らかにし、その結果を単純化された従来の経済学に統合してきたことだ。
そうして生まれた、実際の人間行動に基づき、より現実に則すであろう経済理論を作り上げようとする専門分野は『行動経済学』と呼ばれている。
行動経済学を専門とする明治大学の友野典男(ともの のりお)教授は、「プロスペクト理論が万人に共通だと想定している人間の重要な特性は、三つあります。
それは
『絶対的ではなく、基準と比較した変化の大きさで価値を判断する性質、(参照点依存性)、
『損失を利得より重く評価する性質』(損失回避性)、そして
『絶対値が大きくなるほど、利得の変化あたりの満足度が下がる性質』(感応度逓減性)です」と話す。
このことを、冒頭の質問を例に読み解いていく(次回)。
参考文献:ニュートン別冊 脳力のしくみ 2018年7月15日発行