女性が眠りこけているのをいいことに、失礼ながら、私はしばらくその女性を見ていました。彼女はノーメイクで、ユニセックスのTシャツを着て、その上から紺色のジャンバーのようなものを羽織っていました。パンツはカーキ色で、少し前の私ならそのサイズのパンツはどこへ行ったら買えるんですかと思わず聞いてみたくなるほどの大きさでした。そして黒い靴下に黒い踵のないシューズを履き、ジャンバーと同じ色の大きなバッグを持っていました。
彼女を見ていたら、タイムマシンに乗って一気に若い頃の自分に戻ってしまいました。私もいつもノーメイクでユニセックスの洋服を身に着けていました。靴も踵のないものでした。そんな格好をしていた20代の頃、私の体重は50kg台でした。それでも当時の私は、自分のことをものすごく太っていると信じていました。だからお化粧なんてしても無駄だと思っていたし、綺麗で可愛い服なんて着る資格がないと思っていました。
今目の前にいる女性がどのように感じておられるかはわかりませんが、若い頃の私は自分のそんな姿が悲しかったのだと思いました。高校生の時、母にお弁当を作って貰えなかったのも寂しかったのだと思いました。でも当時は悲しいとも寂しいとも感じませんでした。感じていたら生きていけなかったのだと思いました。
自分の感情を封じ込めないと生きて来れなかったと、若かった頃のことを思いました。胸が少し痛くなり、目頭も少しだけ熱くなりました。各駅停車でふた駅だったので、私が降りるときも女性はまだ眠りこけていました。大切なことに気づかせてくれたその女性に黙礼して、下車しました。
今日は鍼に行って、美容院に行って、オイルマッサージに行って、耳鼻咽喉科に行くという、グルーミングデーでした。
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