ヒトの細胞に見られるDNAは二本鎖DNAである.DNAには5'末端から3'末端といった向き( 極性)が存在して,一般的に二本鎖DNAは互いに逆向きの 反平行な状態で安定して存在する.この二本鎖DNAは核酸塩基を内向きとして互いに向き合っている.1950年に エルヴィン・シャルガフがDNAに含まれるアデニン(A)とチミン(T)の量がほぼ等しいこと,同様にグアニン(G)とシトシン(C)の量が等しいこと(プリン(P)の総和とピリミジン(Y)の総和が等しいこと)を発表したと伝えられている.これを シャルガッフの経験則と呼ぶ.
シャルガッフの経験則は後にフランシス・クリックとジェームズ・ワトソンによるDNAの構造決定に影響を及ぼした.二本鎖DNAでは両鎖で向き合う核酸塩基であるAとTが塩基間に2つの 水素結合を形成して引き合っている.同様にGとCが塩基間に3つの 水素結合を形成して引き合っている.水素結合を介したAとTの距離が11.1Å( オングストローム),水素結合を介したGとCの距離が10.8Åであり3つの水素結合を介したGCペアの方が距離が近接している.
このような塩基同士のペアのことを 相補的塩基対と呼ぶ.このためDNAに含まれる核酸塩基の量を測定( 定量)した際に,大まかに言ってA=T, G=Cといった現象が認められる.一方で,同じ鎖上に隣接する核酸塩基同士は 疎水的相互作用と言う力によりくっつくことなく(結合を作らず)並んでいる.
ちなみに,DNA二重らせん上で塩基対間の距離(長軸方向の距離)は3.4Å( オングストローム)であるが,DNAの長さを表す時には生物学的な意味合いから塩基対数を用いることが多い.例えば,10個の塩基対を持つDNAの長さは10bp( ベースペア)と記述される.ちなみに,二本鎖DNAが作るらせん1回転分が10bpである.(細胞内に最もみられるDNAであるB型DNAの場合)
DNAは他の化合物と同様に 元素という単位から出来ているが,元素自体も古典的には 原子核と 電子という物質から出来ていると説明される.原子核は電気的に プラスに,電子は マイナスを帯びている.簡単に言って,プラスとプラスやマイナスとマイナスといった同じ極性を持った物質同士は離れ,プラスとマイナスという別の極性同士は互いに引き合う.このため化合物など元素が複数集まった場合には,元素間で片方の電子(マイナス)がもう片方の原子核(プラス)に引き寄せられるといった現象が起きる.こうなると化合物全体として見た時に部分部分で電気的な偏りが生じる.細胞内にも広く存在する水( 水分子)も分子全体で見ると電気的な偏りが生じており帯電している物質に引き寄せられるといった現象が観察される.
DNAはデオキシリボヌクレオチドが重合して出来たポリヌクレオチドであるが,鎖構造を形成している リン酸ジエステル結合はマイナスに帯電しているため水分子を引き寄せやすい.こういった性質を 親水性と呼ぶ.前出した同じDNA鎖上の隣合う核酸塩基は 疎水性である.このようにDNA二重らせん構造は外側は親水性で内側は疎水性といった電気的な偏りが生じている.この性質は化学的なDNAの修飾に役立っている.
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2019年01月18日
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