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2024年8月上旬に、中国海軍の052型駆逐艦で興味深い動画が出ました。
図1 耐衝撃試験
引用URL:https://x.com/i/status/1821176609841541131
機雷や魚雷などの水中爆発に対する試験は、地味だけど重要な試験です。
米海軍並みに、各種試験分析など中国海軍の技術発展が見て取れます。
(前回記事):『 EAという不思議な防衛省個数表記のお話! 』
\こちらもご参考にPR!/
(1)耐衝撃試験とは何ぞや?
海軍の耐衝撃試験(SHOCK TRIAL)と聞いても、ピンとこないかもしれません。
図2 米海軍試験
引用URL:https://nationalinterest.org/sites/default/files/styles/desktop__1260_/public/main_images/ShockTrial.jpg?itok=B8WE45bg
米軍では、新造艦に対して必ず行う水中爆発に耐えることを確認する試験です。
1.1 結構激しい試験だよ!
軍艦は、航空機やミサイルばかりでなく機雷や魚雷など水中爆発にも耐える必要があります。
設計やシミュレーションでは分からない、実際の爆破衝撃に耐えるか試験をします。
動画:米空母耐衝撃試験
URL:
見た目が派手なので、一時的にニュースになるけど深い考察がされていません。
けっこう爆破した後の検証も、重要な技術開発になります。
1.2 海上自衛隊でも実施!
海上自衛隊でも護衛艦に対する、耐衝撃試験は実施されたことがあります。
(参考記事):『 艦艇開発隊の大衝撃!日本でのショックトライアル実施! 』
図3 海自耐衝撃試験
引用URL:http://www.mod.go.jp/msdf/frdc/whatsnew/ssc/taishogeki.files/image002.png
私ペンギンも、2回ほど耐衝撃試験に参加したことがあります。
予想以上の衝撃と、シミュレーションでは分からない貴重なデーターが収集できます。
・ディーゼル発電機は、耐振防護をしても停止しやすい。
・ガスタービンエンジンは、衝撃があっても運転を継続できる。
・レーダー回転部など回転する装備のターレットは、衝撃に結構弱い。
・パッキンやOリングを使うと、配管系はかなり耐える!
シミュレーションでは、ガスタービン機関は爆破衝撃で緊急停止すると予想されていましたが結構頑丈にできているものですね〜!
実際にやってみないと、分からないものも結構あります。
ただ海自は、耐衝撃試験は金がかかるとしてあまりやらなくなったんですよね!
1.3 対振動装備はきちんとしよう!
軍用装備は、ごっつい格納ラックに入れて対振動性能をこれでもかと要求します。
図4 サーバー
引用URL:https://res.cloudinary.com/tbmg/c_scale,w_800,f_auto,q_auto/v1564232055/sites/tb/articles/sup/ET/2010/features/0910_ET_feat2_fig01.jpg
耐衝撃性能を緩和すれば、装備品を安く市販品で済ますことが出来るかもしれません。
しかし水中爆破の耐衝撃試験を経験すると、考えが変わります。
耐衝撃試験では、耐振措置をしてない市販品は全部壊れました。
けっこう耐衝撃試験は重要ですよ!
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(2)中国海軍の耐衝撃試験は本格的だね!
052DL型を使った中国海軍の耐衝撃試験は、かなり本格的であり勉強になります。
図5 振動後部
引用URL:https://pbs.twimg.com/media/GUYaBpqa8AIb1z7?format=jpg&name=large
なかなか052型駆逐艦も、侮れない耐衝撃性能を持っているようです。
2.1 試験用機雷はPMK-2弾頭部か?
今回の中国海軍耐衝撃試験では、試験用機雷と思われる写真もあります。
図6 試験用機雷
引用URL:https://pbs.twimg.com/media/GUYbmcKXgAAKDC5?format=jpg&name=large
特徴的な、紅白に塗装した弾頭部と人間との対比から上昇機雷の弾頭と思われます。
試験発火装置を取り付けており、おそらくPMK-2弾頭部ではないか?
図7 PMK-2
引用URL:http://images.china.cn/attachement/jpg/site1004/20130823/001ec94a25c513814e9b1c.jpg
2013年に撮影された、PMK-2の敷設状況から見てほぼ同一と思われます。
なかなか最新型の機雷を投入するとは、中国海軍も気合が入っています。
2.2 航行中でレーダーも停止していない!
注目すべき点は、052型駆逐艦が航行しながら耐衝撃試験を行っているところです。
図8 航行中
引用URL:https://pbs.twimg.com/media/GUYZ-8ma8AIeiwa?format=jpg&name=large
試験用炸薬は、推定約250kgぐらいで水深約30mくらいと見込まれます。 (マストを超えた水柱から推定)
米軍では耐衝撃試験は船を停止させて行いますが、中国海軍は航行しながら試験をしています。
より実戦的に試験をしていると言えるとでしょう。
回転中のレーダーも、衝撃で停止していないことが分かりました。
052型駆逐艦については、予想よりも船体設計強度が強靭と言えます
2.3 試験関係者が手慣れている!
映像の中には、艦橋にて試験関係者が集合しているシーンかあります。
図9 試験関係者
引用URL:https://pbs.twimg.com/media/GUYaJXSa4AAUa9F?format=jpg&name=large
全員がマスクを着用して、タイベックス(防護服)を着用した人物もいます。
おそらく中国海軍は、これまでに何度か耐衝撃試験を実施していたのでしょう。
その中で、爆破衝撃時に艦内にホコリやチリが激しく舞い散るのを経験したと思われます。
(海自耐衝撃試験でも、同じ現象が起きました)
中国海軍も、この手の試験の技術試験をしっかり行っていると読み取れます。
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(3)Quicksinkが登場して水中爆発対処は重要!
今までなら、水中爆発は機雷や魚雷だけに注意していれば済みました。
図10 Quicksink
引用URL:https://i.ytimg.com/vi/bsgd0evUtSg/hqdefault.jpg
最近米軍は、Quicksinkなんていう対艦航空誘導爆弾を登場させてきました。
3.1 対艦ミサイルより安い対艦型JDAM!
Quicksinkは、米軍JDAMの派生型として開発が進んでいます。
図11 概要
引用URL:https://www.navalnews.com/wp-content/uploads/2022/03/quicksink-3-scaled.jpg
安いJDAMを利用して、艦艇に命中させず船底近くの水中で爆発します。
対艦ミサイルでは不可能だった、1発での撃沈も可能となります。
3.2 水中弾対策は重要になる!
かつては水中弾対策なんて、第二次世界大戦で消滅したと思われました。
しかし対艦ミサイル価格高騰により、安い誘導爆弾が見直されています。
今後の軍艦は、水中弾などの耐衝撃性能が重要になるでしょう。
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Quicksinkの水中爆発による撃沈は、安い誘導爆弾で撃沈できる魅力を示したと言えます。
ただJDAMということで、水上艦の長SAMの射程範囲に入って投下というリスクを冒すだけのメリットが確保できるのか?と言う問題があります。
ASM-2の2重船殻対策での貫通力や、ASM-3による艦内で爆発してのミッションキルで「大破戦闘不能」を目指すという本邦の開発方針も十分理に適っていると言えます。
(撃沈よりも、大破航行不能の方が敵軍にえい航の苦労を負わせることが出来る)
Quicksink用の弾頭シーカーが対艦専用になるならば、本邦のように対艦ミサイル高威力化のほうが良いかもしれませんね。
Quicksinkは既存の航空爆弾を気軽に対艦兵器に転用できるという点で画期的だと思います。XGCS-2がぽしゃった理由の一つに爆弾の船体への侵徹に関して経験が不足だったからという話があります。航開5室とメルコさんもその辺りについては知見がなかったのでしょう。水面下で爆発するのであれば、その心配は要らないはずです。
航空事業部にはミサイルのように上部構造物を破壊するだけではだめで、沈没させるためには船体内で爆発する誘導爆弾が必要だと主張する一派が少なからずいます。既にJDAMを運用している航空事業部もQuicksinkに注目しているかもしれないですね。
ただ、現用の対艦ミサイルであるASM-2には仕様書上で二重船殻対応が要求されており、これはこれで凶悪だと言えます(w
米海軍では、各部署に人員を配置したまま耐衝撃試験を行います。
理論上、重大な損害が出る危害範囲の外で爆発させるため人員も耐えられるようにはなっています。
海自の耐衝撃試験では、初回のみ試験関係者以外の乗員を上甲板で待機させ安全確認をしました。
計算上の危害範囲外であれば、水中衝撃波が人体に影響を与えることはありません。
(むしろ衝撃による落下物での負傷が多いです)
各部署に人員を配置した状態でやるのでしょうか?
機械が耐えれても人間が耐えれなかったら意味がないので・・・
外傷無くても衝撃波で脳みそがオシャカになりそう