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我が家の電話は、昨年5月のパソコン用光ケーブル設置工事の際、従来の銅線電話からIP電話に変更しましたが、音質に問題があり、Fax兼用の親機レシーバでは音の途切れが顕著で聞き難い場合が多く、無線子機で通話をすることで対応して来ていました。19日は酷いものがありました、どうも電話を受けているらしいのですが呼び出し音が不調なのか、繋がりません。幸いにもFax兼用電話には通信履歴機能がありますので、それを確認して、掛かって来た相手の方にかけ直したのですが、今度はこちらからもどうも発信しないのです。何回かトライして、漸く繋がったのですが、声にエコーが掛かった感じで聞き取り憎いのです。謝りながら、話してみますと「10回以上呼び出し音を確認したのですが、出ないので留守かと思いました」とのことでした。デジタル時代は機能過多の為かどうも複雑脆弱で、これ以上障害が続く様でしたら、従来のアナログ銅線固定電話に戻すことも検討しなければいけません。IP(インターネット・プロトコル)電話「ひかり電話」が東日本全域でつながりにくくなった障害は、19日から3日間続き、21日夕にようやく復旧した。IP電話は、従来の固定電話に取って代わって通信網の主役になると期待される技術なのに、もろさが浮き彫りになった。今回の障害は19日朝、サーバの自動発信規制がかかり、11時間近くつながりにくくなった。20日は別のサーバが正常に動かなくなった。21日も再発防止のため、IP網の外との発着信を最大50%制限した。 約80万人の利用者への影響は大きかった。NTTへの苦情や問い合わせは4万件を超え、補償を求める声も出ているという。今年3月末にはNTT西日本の約39万回線が11時間つながりにくくなった。通常の固定電話が、交換機という成熟した技術を用いているのに対し、IP電話はSIPサーバという専門のサーバをプログラムで制御する発展途上の技術を使う。固定電話網の交換機は障害の原因を見つけやすく復旧も早いが、IP電話はソフトウエアの問題が障害につながることが多く、原因を特定しにくい。通信網を管理するサーバ数も交換機より少なく、被害が拡大しやすい。背景には複雑化するプログラムの品質を維持することの難しさがあるが、通信サービスというライフラインにかかわる問題だけに、早急な対策が必要といえそうだ。今回の障害はIP電話に力を入れるNTTの戦略を揺るがしかねない。昨年ひかり電話を導入した東京都板橋区役所は「従来の固定電話に戻すことも検討中」という。KDDIなどもIP電話化を進めており、影響は通信業界全体に及ぶ可能性もある。
2006.09.25
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Google Earth は新しくVersion 4 Beta版がDownload出来ることになりました。Download無料のFree版 でもアメリカだけで無く、世界各地の3次元画像を見られる凄いソフトになって来ました。今回提供が開始されたソフトはKeyholeの「Keyhole 2 LT」のバージョンアップ版で、俯瞰した衛星写真だけではなく、水平方向からも地図を表示でき、山や谷などの地形の起伏や、一部の米国の市街地では建物の3D表示も可能で、しかも視角も水平・垂直方向を自由に変更出来ることになっている。アメリカの大都市では、各ビルディングが3Dスケッチ表示され、摩天楼の俯瞰画像を回転させて見ることが出来るので感心してしまいました。グランドキャニオンの渓谷美も3次元画像で十分堪能した後、ナイアガラ滝も見たいと思い3次元画像にして見ましたが、起伏の少ない所では3D表示はされない様でした。日本を見てみますと、東京は大都市ですが未だ市街地では建物の3D表示はされません。しかし、富士山は見事な3次元画像に展開出来ましたので、回転させたり、近づいたり遠ざかったりして暫く楽しんでしまいました。Google Mapsと異なり、Google Earthは地図と連動していませんので、土地不案内の地域では、特定場所を絞り込むのが難しい難点はありますが、3次元画像はそれを凌駕する程魅力的です。無料ソフトをGoogleのWebサイトからダウンロード出来ますこのソフトはベータ版ですので使用言語は英語のみ、PCのユーザ設定に日本語が入っていると多数のエラーメッセージが出て来ますが、それらを全てOKをクリックことで起動され、世界各地を表示することは大丈夫です。
2006.09.08
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1つのチップに2つのCPUを持ち性能向上と省電を図ったとされるCore Duo(コアデュオ)のノート型パソコンが多くなって来ました。ノート型パソコンの最大の泣き所は内蔵バッテリ駆動時間の短さでしたから、その弱点克服に良いのでは思っていました。しかし早くも米インテル社は次世代のCore 2 Duo(コアツーデュオ)を発表しました。この8月頃にも出荷される予定とされ、64ビット対応となるらしく、ソフト処理の更なる速度向上が期待されるとのことです。更には「インテリジェント・パワー・ケイパビリティ」で電力管理を徹底して省電設計が格段に向上するとも言われています。インテル社のノートパソコン用CPUは「Pentium M」から「Core Duo」に進化した筈だったのですが、パソコン雑誌のベンチマークテスト結果では従来のシングルCPU「Core Solo」に較べて、ソフト処理性能がそれ程速くなっていませんので、設計不良の失敗作との懸念もあり、改良型の発表を急いだのかも知れません。どうも「Core Duo」の7割近い性能向上と言う謳い文句は真実では無い様です。Intel社が2006年1月に発表したノートパソコンを始めとするモバイル機器向けのマイクロプロセッサ。同社で初めてモバイル機器向けにゼロから設計された「Pentium M」の後継となる製品で、モバイル機器向けとしては初めて、1つのチップに2つのプロセッサコアを持つデュアルコアプロセッサとなっている。従来製品に比べて約3割消費電力を減らしながら、同時に最大7割近い性能向上を果たしている。当初発表された製品群では標準電圧版(1.1625~1.30V)と低電圧版(1.0~1.2125V)の2系統が用意され、前者ではプロセッサナンバーT2300(1.66GHz動作)~T2600(2.16GHz動作)の4製品が、後者ではL2300(1.50GHz動作)とL2400(1.66GHz動作)の2製品が提供される。熱設計電力(TDP)は標準電圧版で31W、低電圧版では15Wまで抑えられている。いずれも低負荷作業時に消費電力を節約するバッテリーモードを備えており、クロックを1GHz、電圧を0.95Vに落として発熱を13.1Wに抑えることができる。デスクトップパソコンにも「Core Duo(コアデュオ)」は波及するのでしょうが、どうも「Core 2 Duo(コアツーデュオ)」搭載を待っている方が良さそうに思えます。
2006.06.04
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人気のアップルiPODがHDDからフラッシュメモリ搭載となり小型高速化が加速していますが、遂にPCにも波及する気配となりました。ソニーは「VAIO type U」のHDDを16GB NANDフラッシュメモリに置き換えたモデルを「0スピンドルPC」モデルと公開、6月下旬の発表を目指して鋭意開発中だと言う。HDDをNANDフラッシュに変更することで、消費電力低減による駆動時間の伸びや、軽量化、衝撃への強さなど、持ち運びを前提としたtype Uには多くのメリットがあるとのことです。HDDは円盤を回転させピックアップで信号の読み書きを行う装置で、PCに限らずカーナビでもビデオコーダでもDVDからHDD搭載のものが多くなり、アクセス速度と容量増加を売り物にして人気となっています。回転数も4500rpmから5400~7200rpmと小型高速化が進んでいますが、衝撃にも弱く駆動部分の劣化もあり平均寿命は5年程度と言われています。その点やはり、駆動装置(スピンドル)が無く回路素子で構成したフラッシュメモリの方が寿命・信頼性の観点からも良い様に思われます。量産効果で価格が安くなれば切り替えは一挙に加速するかも知れません。コンパクトフラッシュ、スマートメディア、SDカードなどの記憶素子として利用されているNAND(否定論理積)型フラッシュメモリだが、オーディオ・プレイヤーのストレージなどに使われるNAND型の大容量化は目覚しいものがある。そこでアピール度が高いのは、開発会社の東芝でなく韓国のサムスン電子で、4Gbit量産が2005年で、32Gbitは2006年後半予定と言う。それにしても、毎年2倍で突き進むのは、とんでもない労力と、工場の建設費がかかることだろう。プロセス動向をみても、巧緻に攻めているというよりは、力まかせに「豪腕」をふるって自らが決めた「法則」を守っているという感じがする。一方老舗の東芝は、着実に商売しているようだ。また容量と時期などのロードマップは、プロセス動向を踏まえたものを公開している。こちらも容量アップだが、ある意味生真面目すぎるくらいにステップを踏襲するスタイルである。IT企業の雄インテル社が開発したNOR(否定論理和)型も巻き返して市場は拡大している。こちらは三菱電機等がフォローしているが、携帯がどんどん高度化して主記憶が拡大しているからだろう。技術や容量的には1Gbitも見えているが、まだ市場の主力は64Mbitから128Mbitといったところになりそうだ。プロセス的にもNAND系よりはもう少し枯れ気味のところを使っているもようである。NECなどは、マイコンに組み込むエンベデット・タイプのフラッシュメモリに注力しているようである。こちらの組み込みフラッシュメモリも「大容量」化しているが、大きいものでも2Mbytes(16Mbit)クラスくらいだろう。このように百花繚乱状態で、ハードディスクの市場を侵食し始めているフラッシュメモリなのであるが、そのフラッシュメモリにも「刺客」がすでに放たれている。FeRAM、MRAM、OUMの御三家を筆頭とする「ナノ世代」メモリたちである。どれかはサバイバル・レースを制してフラッシュメモリの後釜に座ることになるのだろう。そのときのマーケット・サイズはいまの数倍か数十倍か、戦国時代はまだ続く。ITニュースを読んでみますと「NAND及びNOR型フラッシュメモリ」も一つの通過点でしかない様で、IT技術進化は恐ろしい程に過熱・加速しています。
2006.05.19
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「E85燃料」は15%のガソリンと85%のエタノール混合物を意味する表現ですが、米国・欧州では化石燃料使用を削減する、環境に優しい持続可能な燃料として注目されています。従来からエタノールを混合することで、ガソリンのオクタン価が向上して燃焼効率が改善することは認識されていて、ハイオクガソリンとして販売されています。しかしエタノールは、ゴム・プラスチック製品に対して腐食性があること・潤滑性が無いことから、ホース類・燃料ポンプ等の耐久性が問題とされ、世界的には10%程度、日本では3%の含有率が安全であるとして制限していました。アメリカでは、燃料タンク、配管等へのエタノール適合材料の使用することで、それらの難点を克服する対策がなされ、一気に85%混入させた「E85燃料」対応車が脚光を浴びることになりました。日本ではハイブリッド車のみが脚光を浴び「E85燃料」対応車開発の動きも無い様ですが、廃材チップ等を使ったバイオマス手法によるエタノール生産が工業的に確立されるなら、環境保護の観点からも競合して来るものと期待されます。ハイブリッド車の2次電池寿命は長くなく、将来廃棄処理法が問題になると思っていますから・・エタノールは他の燃料と比べても引火性が高く、煤も無く綺麗に燃焼する。従って、運輸面における環境に与える好影響は注目されており、(日本国外では)公共バスの燃料として使用されている。しかし純粋なエタノールはゴムやプラスチック機器を腐食することが明らかになっており、無改造の自動車エンジンでは使用できない。加えて、エタノールは普通のガソリンに比べオクタン価も高く、エンジンの点火タイミングの変更も必要である。アメリカの自動車の大多数は改造無しにE85燃料で走行できる。大部分の車種がライトトラック(ミニバン、SUV、ピックアップトラック)の為である。このような自動車は"dual fuel vehicles" または "flexible fuel vehicles"と呼ばれ、自動的に燃料のタイプを検出し、エンジンシリンダー内の燃焼方式を変えて燃料の変化を補償する。トリオニック・マネジメントとも呼ばれるシステムは、給油毎に燃料の品質をモニタリングし、E85とガソリンとのいかなる組み合わせに対しても自動調整を行うことから、「E85燃料」が入手できないときにはガソリンを使用すれば良いことになる。ブラジルとアメリカ合衆国では、サトウキビとトウモロコシ穀物由来のエタノールの自動車燃料への使用を政府の計画として促進している。トウモロコシ穀倉地帯の州は、1973年に起こったOPECによる石油輸出禁止の後でトウモロコシ由来のエタノールに補助金を与え始め、1978年制定のエネルギー税制度は、バイオ燃料の物品税免税を承認した。物品税免税だけでも年間14億US$と見積もられている。1986年に連邦政府のローン補償政策はエタノール植物の基盤を作り、無税トウモロコシによるエタノール生産を奨励した。オクタン価で110の値を持つエタノールは、ガソリンに比べても遥かに勝っており、危険な他の添加物も不要となる利点がある。なお且つ、エタノールはガソリンの蒸気圧を増大させるので、大気中への揮発性物質の放出の増加は、鉛、ベンゼンあるいはMTBEといったものよりはるかに少なくなる。
2006.05.15
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新聞日曜版に「今更聞けない-メタンハイドレート」と言う記事が掲載されていました。分かり易い解説ですので転載致します。メタンハイドレートはシャーベット状の物質で火を付けると燃えることから、別名は「燃える氷」と呼ばれる。日本近海にも豊富なことから、次世代のエネルギー源になるのでは期待されている。ハイドレート(Hydrate)とは、水分子が作る籠の中にガス分子が閉じこめられた構造になっている「水和物」のことで、メタンがガス分子の場合は分解すると体積にして約170倍のメタンガスが出て来る。メタンハイドレートは低温で高圧な場所程、安定して存在出来る。陸上ではシベリアやアラスカ、カナダ等永久凍土地帯に集中するが、圧倒的に多いのは海底だ。世界の分布を見ると、陸に近い大陸棚海底に集中しているのが分かる。日本周辺は世界的にみても埋蔵量が豊富で、天然ガス消費量の50~250年分が眠っていると試算されている。ただ、水深が500mより深い海底下に形成されているので、採掘法が問題となる。現状有望とされるのはハイドレートを分解した上で発生したメタンをパイプで回収する方法と言われている。その他の採掘法についても種々の手法が検討されているが、何れもコスト面で問題があり研究者や技術者の試行錯誤が続いている。世界的なエネルギー資源の不足から、原油・天然ガスの市場価格が高騰して来て経済的にも問題となり、代替燃料の開発が焦眉の急となって来ました。原油に関しては、1980年代にはカナダに埋蔵される「タールサンド(砂に原油が付着したもの)」、アメリカ中部の「オイルシェール(岩石中に原油が封入されたもの)」、1990年代には南米オリゴノ河の「オリゴノオイル(半固形の原油)」も検討されましたが、工業的採掘が困難として中断されたままとなっています。近年ではバイオマス燃料からエタノール製造する「持続可能なエネルギー供給」が検討され、工業的にも稼働を開始しました。しかし、エタノール燃料は補助的なもので、従来から圧倒的なエネルギー源である「原油・天然ガス」の代替が必要で、メタンハイドレート(MH)又は天然ガスハイドレート(NGH)の工業的採掘確立が強く期待されています。石油天然ガス資源開発機構Webページでの「メタンハイドレート」も参照下さいこのハイドレート技術は炭酸ガス固定にも活用できます。地球温暖化をもたらす空気中の炭酸ガスを炭酸ガスハイドレートとして固定し、メタンハイドレートよりメタンガスを回収すると同時にハイドレート層に注入するのです。10年程前には、単に固定した炭酸ガスハイドレートを深海の海溝に沈めようとする研究でしたが、メタンハイドレート採掘跡に注入出来れば一挙両得です。この炭酸ガスの固化方法も2050年頃までには実用化され、エネルギー確保・地球温暖化防止対策に大いに役立つとも見込まれていますが、果たしてどうでしょうか?
2006.05.08
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HP200LXは7~8年前迄は312gのパームトップパソコンとしてマニアックな人気がありました。何と言っても単3乾電池2本で、1ヶ月以上使えちゃうところが強みで、スケジューラやメモの他、Dos/VとしてLotus123の表計算が出来るのが最大の魅力でした。WindowsのベースとなっているMS-DOSがOSですので、全てのソフトが軽く快適に動くのです。しかし、Hewlett Packard社が1999年に生産中止して以来、急速にユーザーが減ってしまい、今ではその話題を聴くことも無くなってしまいました。昨年の暮れ、100円ショップで中国製の充電器が売られていましたので購入し、デッドになっていたHP200LXのMH電池を充電してみました。105円充電器ですのでコンデンサー容量が135mAしかなく、1600mAH電池の充電に何と16時間も要してしまいました。ボタン電池もデッドになっていましたので本体RAMにあったデータは全て消え去っていましたが、フラッシュメモリに入れて置いたデータは無事でした。ボタン電池CR2032は100円ショップで品切れ状態でしたので、近くのコンビニにて250円で購入し交換、充電が終わったMH電池でHP200LXを立ち上げてみました。この画像はLotus123の表計算のグラフを表示したものですが、僅か312gのパームトップで実現可能ですので魅力は未だ残っている様に思えました。7~8年前に重宝していた住所録・電話帳は携帯電話の発達と共に、時代遅れとなっていますし、持っているModemカードも3Kbpsと通信スピードが遅く時代にマッチしません。赤外線ポートを使って115Kbpsで通信が出来るともされていましたが、Hewlett Packard社が1999年に生産中止して以来サポートも無くなったのでバージョンアップも期待出来なくなりました。立ち上げてはみましたが、今後あまり使わないだろうと思わざるを得ませんでした。インターネット検索しましても殆どが5年程前の記事ばかりですので、表計算・財務計算ソフトが組み込まれていますので魅力は未だ残っている様ですが、やはり携帯電話の発達と共にその役割を終えたのかも知れません。
2006.01.10
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米ウェスティングハウス最終入札軽水炉を使う原子力発電システムの名門メーカ、米ウェスティングハウス(WH)が売りに出されている。親会社、英核燃料会社(BNFL)が19日締め切る最終入札には、三菱重工、東芝、米ゼネラル・エレクトリック、と米エンジニアリング会社の4陣営の争いとなりそう。買収金額は2000億円と見込まれ、来年1月には売却先が決まると言う。これは、今朝の朝刊に載った経済記事ですが、往時のウェスティングハウス隆盛を知るものにとっては寂しいニュースです。ウェスティングハウス社(Westinghouse Electric Corporation)はゼネラル・エレクトリック社(General Electric Company)と並ぶ、アメリカと言うより世界の総合電機メーカでありました。ゼネラル・エレクトリック(GE)が発明家エディソンによって創設された様に、ウェスティングハウス(WH)も又発明家ウェスティングハウスが創立した100年以上の歴史を持つ会社でした。1920年代から、GEが東芝、日立に技術提携・供与したのに対し、WHは三菱との提携で、共に日本の電気事業発展に寄与して来ました。WH発電機の構造は冷却器を横引き出しにしてある等、保守整備に便利な工夫があって、発電機棟天井高さを低く出来る点では、GE型発電機よりも客先の評価も高いものがありました。現在世界中の火力発電所における主体原動機となっているガスタービン分野でも両社は優劣を競い合い発展しました。技術開発競争が競争力を高め、ガスタービン技術の開拓社であったスイスBBC社は完全に後塵を拝することとなってしまいました。原子力発電分野でも、GEが沸騰水型軽水炉、WHが加圧水型軽水炉を提唱し、日本を除く世界的シェアではWH式の加圧水型軽水炉が圧倒的優位を保っているのです。しかし、1980年代前半にWH社大型ガスタービンにトラブルが発生、どうも回転体振動に関する設計欠陥だった様で、解決に長い期間を要することとなりました。その間、客先は新規導入をGE社に限定したことから、一挙にGE社が大型ガスタービン市場を席巻することになってしまいました。有力な提携会社である三菱重工もWH型GTの改良には独自開発に方向転換し、自力でGE社と競合する事態となって、提携元であるWH社は主役の座を降りることになりました。1990年代にはガスタービン部門はドイツのシーメンス社に吸収合併、原子力部門はイギリスのBNFL社に吸収されて、実質的に解体となってしまいました。1970年代には民間航空機メーカの雄ダグラス社がDC8開発に失敗、軍用機メーカであるマクドネル社に吸収されてしまいました。技術開発競争に敗れて衰退するのは、資本主義社会の常かも知れませんが、今回はBNFL社からのウェスティングハウス再身売りの話ですから、寂しいこと限りありません!
2005.12.18
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超音速輸送機はSST(Supersonic Transport)と呼ばれ、英仏共同開発の超音速輸送機コンコルドは高度17000mを音速の2倍(時速約2200km)で航行していたのですが、2003年10月に就航を終え引退となりました。この引退には乗客収容能力僅か100人、推進エンジンが軍用機と同じターボジェットで燃料を大量消費して、経済性に欠けたことに大きい要因がありましたし、又、エンジン排気からの騒音、黒煙、粉塵、窒素酸化物が現在の環境負荷低減要求を満たすもので無く、改良出来なかったことも大きく影響しました。そこで1980年代後半から、主要国では音速の2~5倍の速度を有する次世代超音速輸送機の研究開発が進められていますが、クリアすべきテーマは非常に難易度が高く、経済性を満足させるだけの燃料消費の低減、ソニックブームと呼ばれる音速を超えた時の衝撃波低減、そして騒音や排出ガスなど環境への配慮があります。当然、推進エンジンは現在民間機主流のファンジェットでも軍用機用のターボジェットでも無く、効率と環境に留意した革新型のターボ・ラムエンジン混合型(ATR: Air Turbo Ram、TRJ: Turbo Ram Jet等)が候補となって来ます。今回の飛行実験は超音速飛行でのデータ取得が大きな目的ですが、上記の種々技術要求をクリアする為の開発に生かされるものとして、今後の発展を大いに期待しています。インターネットニュースでは以下の様に報じています。宇宙航空研究開発機構(JAXA)は10日、オーストラリアで実施した次世代超音速旅客機(SST)の無人小型実験機の飛行実験が成功したと発表した。2002年7月の初実験は失敗したが、3年ぶりの挑戦となった今回はほぼ予定通り飛行した。実験機は全長11.5m、主翼巾 が4.7m。午前7時、実験機はオーストラリア南部のウーメラ実験場から、ロケットに乗せて打ち上げられ、72秒後に高度約19kmで分離した。その後、マッハ2(時速約2400km/h)でグライダーのように滑空し、空気抵抗や飛行性能に関する約800種のデータを取得した。飛行時間は打ち上げから15分22秒だった。2002年の実験では、発射直後に実験機がロケットから脱落した。ロケットの電気部品の設計ミスで回路がショートし、誤った分離信号が出たことが原因だった。JAXAは信頼性向上のため、ロケットだけではなく実験機も含む約100項目の改修を実施した。旅客機用の超音速機としては、英仏が開発したコンコルド(2003年引退)が知られる。しかし、コンコルドは爆音が激しいうえに燃費が悪く、商用としては失敗作とされた。SSTは低騒音、燃費の改善、安全性の確保を目指す。速度はマッハ2以上を目指し、日本と米ニューヨーク間を約6時間で結ぶ。乗客数はコンコルドの3倍(300人)、航続距離は約2倍に増やす。また大気汚染につながる窒素酸化物の排出量は1/4、騒音はジャンボジェット並みに抑えるという。日仏の航空宇宙工業会は今年6月、SSTの共同研究で合意した。JAXAは、今回の実験機が得たデータを今後のSSTの設計に生かすとともに、ジェットエンジンを使った実験機や低騒音の実験機による新たな技術開発を目指すと言う。
2005.10.11
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此処10年程愛用して来たハロゲン懐中電灯Magliteより、高輝度で超寿命と言われています超高輝度LED懐中電灯を昨日量販店「サクラヤ」で購入して来ました。製品のメーカは“GENTOS”と言い中国製ですが、核心部品の超高輝度LEDはアメリカ製ですので不安は感じませんでした。近年、超高輝度LEDの開発が急速に進められている様で、店頭でもF1級、F3級、F5級の三種類が展示販売されていました。LEDの寿命は10万時間と言われていますので、従来の様に電球の交換をする必要が無いのが最大の特色です。F1級は高輝度LEDより12倍明るいもので約3000円、F3級は輝度30倍で6000円、F5級は50倍で9000円となっていましたので、中庸を選べば不満は無かろうと思いF3級を選択しましたが、一寸間違ったかも知れません。開梱して、リチウム電池を入れスウィッチオンして見ますと、猛烈に明るいと言うより明る過ぎるのです。パッケージ裏側をよく見ましたら、小さな字で注意書きが次の様に表示されています。「明るさは従来の高輝度LEDの約30倍、普及型LEDに比べると90倍に達する為、目に大変危険です。光源への直視、動物への照射は絶対にお止め下さい」これでは、暗い屋内での機械装置・電気機器を調査するには良いのですが、野外・屋外での使用には適しませんし、凶器にもなりかねません。従来のハロゲン懐中電灯Magliteは目を傷める程の輝度はありませんので、野外・屋外では使い続ける必要がありそうです。プロ用でもF1級で十分だった気がしていますが、購入したF3級LEDライト、仕方がありませんので、注意書きに準じて用途別(装置調査LEDライト、その他一般Maglite)に使い分けることにしようと思います。広く使える買い物をしようとしたのですが、「過ぎたるは及ばざるが如し」とオーバースペック気味で失敗だったかも知れません!超高輝度白色LEDについては、インターネット検索しますと次の様に紹介されています。超高輝度白色LEDは熱効率が高く且長寿命(10万時間)なので、次世代の照明システムとして有望視されている。この開発の成果として、液晶テレビのバックライトとしても使われるようになって来ている。従来液晶画面のバックライトには蛍光灯に似た冷陰極管が使われ、その寿命は約1万~5万時間、メーカーが公称する寿命時間は、製品出荷時の最も明るい状態で使い続けて、明るさが半分になった状態までの時間です。ユーザーによっては、少し暗めで使用していれば、寿命はさらに伸びます。ただし、冷陰極管は家庭で使われる蛍光灯と同様、オン・オフを繰り返すことで管の内部が黒くなり、暗くなることがあります。こうなると、規定の寿命時間までは持たなくなります。超高輝度白色LEDをノートパソコンに適用することで、綺麗で明るい画像を得ると同時に電池消耗量が減りますので、技術的には良いようです。しかしながら、現在の販売価格では高すぎ適用不能で、現在の普及型LED相当まで価格が下がることを期待します。
2005.09.02
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キプロス発アテネ経由プラハ行きのキプロス・ヘリオス航空B737が8月14日正午アテネ近郊で墜落、乗客・乗員121名全員が死亡しました。ニューヨーク・タイムズは15日付で以下の様に報じています。機長が「空調システムに問題発生」と報告した後、1時間以上交信を絶ったことからギリシャ空軍が緊急発進して、機内を覗ったのですが操縦室に機長達は見当たらず、乗客らしい2名が操縦をしようと試みる様子が見えた。結局、自動操縦は解除出来ず、その後45分間で飛行を続けてアテネ近郊の無人の森に墜落してしまった模様。その1人は「操縦士達は死んで青くなっている。従兄弟よ、さようなら!-我々は凍っている」と携帯メッセージを送ったことが確認されている。自己弁護する訳ではありませんが、この携帯からのメッセージ送信は嘘だと言う記事が、8月16日朝日新聞夕刊に掲載されました!読売新聞ニュースでも16日付で次の様に報じています。アテネ近郊で発生したキプロス・ヘリオス航空旅客機墜落事故で、ギリシャ国防省筋は15日、「機体から運び出された遺体のほとんどが内部まで凍結していた」と語った。墜落原因について、与圧装置や酸素供給装置の故障との関連が指摘されているが、遺体の凍結は、機内で急激な気圧低下があったことを裏付けるものとされている。検視によると、遺体の一部は墜落時の炎で皮膚を焼かれていたが、内部は凍っていたという。調査当局はすでに、墜落前の状況や会話を記録したフライトレコーダー、ボイスレコーダーを回収しており、これらを元に原因究明が進むとみられる。標準の飛行高度1万mでは、大気温度-50℃・大気圧力265hPaですから、与圧装置が正常に働かなければ、冷凍庫以上の極寒世界となってしまいます。与圧装置で機内はほぼ常温・760hPa(約2400m高度相当の気圧)に保たれていますが、故障すると極寒世界に晒されることになります。普通、乗客は身軽な軽装で着席していますので、防寒具も無い状態では10分も持たずに凍死してしまうことは目に見えています。それでも、少なくとも2名は上着など着用して体も強健だったでしょうか、命を保って最後迄操縦を試みたましたのに成功しなかったのが、何ともやり切れません。通常機体に損傷があれば、酸素マスクが下りて乗客・乗員を防護し、飛行高度を緊急に下げて極寒の世界から脱出を試みるのですが、今回はギリシャ空軍パイロットが見た所では、機体そのものに異常は発見出来なかった様で、与圧システム故障が主原因と推定されます。飛行前点検で、システム故障が発見されなかったのは不思議ですが、今までこのような事故は聞いたことが無いので、点検作業の盲点となっていたのかも知れません。死者の方の冥福をお祈りすると共に、このような事故再発を防ぐ点検作業の見直しを航空機製造会社・航空運用会社にお願いしたいと思います。
2005.08.16
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昨夜NHKのニュースで、離陸直後の飛行機でエンジンが炎上している画像が放映されたのには吃驚しましたが、無事着陸と発表されて安堵しました。機体はDC10-40、両翼と垂直尾翼の下に各一基ずつ、計三つのJT-9Dエンジンが搭載されていますが、その左翼エンジンが炎上したのです。JT-9Dは元来ジャンボジェットB747登場時に搭載されたユナイテド・テクノロジー社製のエンジン、今回のDC10搭載エンジンはこの改良型で、推力24トン(馬力換算5万3千HP)、安定していると思っているですが、運転時間を多いのが気に掛かります。エンジン損傷には大きく分けて異物侵入によるものと、内部システム障害によるものに大別されますが、今回は後者が原因の様です。異物には鳥・氷等があり、それらが侵入して、通常はエンジン前部の圧縮機を損傷させますが、エンジン後部のタービン部は無傷では済みませんが破壊されることはありません。鳥侵入は型式承認取得に際し、鶏をエンジン試験中打ち込んで耐久性を確認しますので、怖いのは冬季の大きな硬い氷片です。内部システム障害は、主として冷却システムの不良に起因するものが多く、エンジン後部のタービン部が損傷します。エンジン前部の圧縮機では空気を30倍に圧縮しますので500℃以上となり、燃焼器で燃料を使って加熱し炎温度は2300℃となりますので、その燃焼ガスを高温空気で希釈して1300℃として、タービン部に送り込みます。それでもタービン部の金属羽根(BucketとNozzle)は高温に耐えられませんので、その内部を500℃以上の高温空気で冷却し800℃を越えない様に設計されています。従って冷却が上手く作動しませんと羽根温度は1300℃に達して強度不足で破断してしまいます。今回トラブル対策本部で原因究明中ですが、真夏でもあり異物混入は無さそうで、どうもエンジン整備不良の疑いが濃く、冷却空気通路の目詰まりによる冷却システムの不良と推定しています。それにしても、無事着陸できて幸いでした。今回のニュース、インターネットでは次の様に報じています。12日午後7時50分頃、福岡発ホノルル行きJALウェイズ58便(DC10-40型機、乗員乗客計229人)が離陸直後、左翼の第1エンジンから炎を噴き出し、同8時20分頃、福岡空港に引き返し着陸した。乗員乗客にけがはなかったが、航路の下にあたる福岡市東区の住宅地に、同機の部品の金属片が数十個落下。福岡県警によると、落下した金属片が当たったり、熱い金属片に触ったりした5人が病院で診療を受けた。国土交通省は同日、航空局に対策本部を設置した。 福岡空港事務所によると、同便は午後7時45分に離陸し、同46分頃、高度約150mの上空で第1エンジンに異常が発生。重量を軽くして着陸時の衝撃をやわらげるため、海上で約50トンの燃料を放出し、午後8時20分に福岡空港に着陸した。福岡空港は2度にわたり計10分間、安全確認などのため滑走路を閉鎖した。 日航は午後11時半から福岡空港で会見した。同社によると、離陸直後、エンジンから炎が噴き出したことを地上スタッフが確認。機長が「左翼下の第1エンジンが異常だ」と、空港管制官と日航に無線連絡した。着陸後、同社が調べたところ、第1エンジン後部の排気口付近から、金属片がみつかった。飛行中、第1エンジン内部の空気を押し出す羽根(タービンブレード)が壊れ、吹き飛んだとみている。 事故を起こしたエンジンは、製造から6万599時間使用している。同機に取り付けられたのは2002年7月3日で、1万76時間使用されている。 県警によると、午後8時前、東区の社領スポーツ広場で小中学生がサッカーをしていたところ、金属片が降ってきたとの110番通報があった。県警によると、金属片は3~4cm。落ちてきた金属片が中学生2人に当たり、うち1人が打撲と診断された。また、小学生2人が熱い金属片に触れ、やけどの症状を訴えた。 ほかの場所でも、車のフロントガラスが割れたり、屋根に物が落ちてきたりした。金属片は熱く、触った男性がやけどと診断された。 県警は午後8時10分、原山進・警備部長を長とする航空機事故災害連絡室を設置。現場には機動隊も派遣し、情報収集するとともに、被害の状況を調べている。 国交省が乗客らに死傷者がないトラブルで対策本部を設置したのは極めて異例。同省幹部は「ジャンボ機墜落事故から20年の節目の日に、こうした事態を引き起こしたことを重視している」。 ジェットエンジンでは圧縮機部とタービン部に多くの羽根が植え込まれていますが、圧縮機部羽根は動翼をブレード(Blade)、静翼をベーン(Vane)、タービン部では動翼をバケット(Bucket)、静翼をノズル(Nozzle)と呼んで区別しているのが一般的だと思います。
2005.08.13
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工業製品を系列的に品揃えする場合によく使われる数列で、日本工業規格(JIS Z 8601)、国際規格(ISO 3:1973)で定められています。それは英語で「Preferred Numbers」、日本語で「標準数」となっていますが、「優先数」「標準優先数列」とでも訳すれば良かったのかも知れません。鉄板(鋼板)、電動機(モータ)等はこれに基づいて製品がストックされ、販売されていますが、例えば1mmから10mm迄の厚さの鉄板を10種類作ろうとする時、1mm間隔で作ることも一案ですが、どうも、薄い方は間隔を小さく、厚い方は間隔を広く取ったほうが便利なのです。過去の経験からこの間隔は等比数列が使いやすいことが分かっているのですが、この数列を自分勝手に作らないようにも規格で定めたものが標準数(Preferred Numbers)です。このピッチは荒いものから細かいものまで決められており、R5というのは10までを5段階にし隣り合う数の比率が1.58となっているもので、同様にR10、R20、R40、R80が決められています。広く使われるのはR20(隣り合う数の比率=1.12)の様です。R20標準数は下記の様になっていますので、DIYの店等の汎用製品で確かめてみて下さい。1.00 1.12 1.25 1.40 1.60 1.80 2.00 2.24 2.50 2.80 3.15 3.55 4.00 4.50 5.00 5.60 6.30 7.10 8.00 9.001mmから1000mm迄の製品をストックする場合、1mm毎に製造しますと1000通りにもなってしまいますが、R20標準数を使いますと、1mmから10mm迄20、10mmから100mm迄20、100mmから1000mm迄20通りの僅か合計60通りの製品ストックで客の要望対応をほぼ満足させることが出来、大幅に棚卸資産が減少することが出来る様になります。インターネットでは具体的な例が次の様に紹介されています。まだ標準化がピンとこない方のために具体的事例をあげましょう。プラモの飛行機の縮尺は国際的に決まっていて1/32、1/48、1/72、1/144、1/200です。これはISOが決めたのでなく自然淘汰的に決まってきたデファクトスタンダードです。縮尺率が数種類あるのは飛行機に大小があるのでやむをえません。世界で一番長いボーイング777を32分の1で作れば2m以上となってしまいますし、ゼロ戦を200分の1で作れば4.5cmになってしまいます。そこで実機のサイズに合わせて縮尺を選んでいるわけです。同じ縮尺で作ったもの同士を並べればいろいろな風景(ジオラマ)を作れます。ところで前に述べた縮尺率ですが一部が欠けていますが比率が1.4~1.5の等比数列が採用されていることに気がつきます。標準数の意義がお分かりですね。
2005.06.12
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テクノスーパーライナー(TSL)は1000トンの荷物を積んで、50ノット(時速約93km)のスピードで500海里(約930km)の距離を航行するという構想で、平成元年度(1989年)にスタートした国家プロジェクトとして推進された研究開発で、トラック100台分の貨物を海上輸送することで、安価な輸送費と道路渋滞を解決出来ると言うのがプロジェクトの売りでした。テクノスーパーライナー(TSL)紹介のWebサイトです平成6年度から駿河湾で防災船兼カーフェリー「飛翔」の総合実験が実施され、開発目標がほぼ達成されたとし、現在は小笠原TSLが建造中で、今年11月に実船就航されるとして注目を集めていたのです。しかし近頃の石油価格高騰で、当初予想された経済性が得られず、補助金無しには実船就航が難しい状況となり、事態は暗転してしまった様です。推進主機が軽量小型ガスタービンですのでディーゼルと違って燃料として重油が使用できず、高価な軽油だけしか使えないと言うのが主原因の様です。プロジェクトを始めた時点では石油価格は20ドル/bbl程度、推進中は14~15ドル/bbl迄低下していたのですが、中国経済の躍進で石油需要が一挙に高まり、最近では50ドル/bblを越えてしまい、リスクヘッジの限界を超えてしまった様で、残念な方向となりました。小笠原航路の様な観光主体航路でなく、高価な貨物が多くてトラック輸送代替が考えられる北海道、佐渡航路位でないと商業的には難しいかも知れません。読売インターネットニュースでは以下の様に報じています。国家プロジェクトとして開発され、今年度小笠原航路に就航する世界最高速の大型旅客船「テクノスーパーライナー(TSL)」について、海運会社が年約20億円の赤字が出ると試算し、国や都に早くも経営支援を求めていることが分かった。TSLは一般船舶の約5倍の燃料代を費やすため、最近の原油高騰の波をもろにかぶる恐れが強まっているためだ。TSLは、ホーバークラフトのように船体を空気圧で浮上させるという、大型船では世界初の推進構造を持つ。最高速度約40ノット(時速約70km/h)で、一般旅客船の約2倍。同じ大きさの最高速フェリー(約30ノット)を大きくしのぐ。第1号船は岡山県内のドックで今夏完成を迎え、今年11月小笠原航路(東京―父島)に就航する予定。現在の片道約26時間はTSL導入後、17時間に短縮される。国土交通省が同航路を新型船の“初任地”に選んだのは、年約4万人が利用する「黒字路線」であることに加え、島の空港建設中止を唱えた「石原都政」が強力に誘致を推進したため。小笠原海運はこうした流れの中、政府系企業と18年のリース契約を結び、毎年8億円を支払うことで合意した。ところが、昨年夏以降の原油高騰で、運航コストに重大な懸念が出てきた。一般の船が重油を燃料とするのに対し、TSLはそれより高い軽油を使うため、採算を大きく割り込むことは必至の情勢だ。同社が今春の市場価格で試算したところ、燃料費は往復約2000万円と判明。当初見込みの2倍に上り、満員でも採算が取れないという。さらに、契約当初、就航と同時に現在稼働中の「おがさわら丸」を売却する方針だったが、未知のハイテク船への全面転換はリスクが高いと判断、1年間は代用船として保有することを決めた。この維持費も数億円に上り、同社は出航約70回、旅客約5万人を見込んで収支を試算したところ、年約20億円の赤字は避けられないとの経営見通しを出した。個室使用料などの値上げも検討しているが、島唯一の生活路線のため、基本運賃(往復約4万5千円)の大きな値上げは難しいと見られる。離島航路には国交省と自治体が共同で、赤字を埋める補助金制度がある。事前の届け出が必要で、同社は5月末、同省と都に収支見通しを提出した。しかし、国の予算は年38億円、都は9億円ほど。いずれも全額を他の赤字航路に費やしており、TSL次第で大幅な負担を迫られかねない。国交省は「20億円とは……」と困惑。都も「支援はしたいが、補てん額が多すぎる」としている。この経済計算が正しいか否かを検証してみると、以下の様に5億円程度の赤字となりますが20億円の大幅赤字にはならず、小笠原海運の試算は誤りではないかと推測されます。高騰燃料費補填7億円だけで代用船維持費を考慮しても黒字運行が可能で、経営判断に問題があるのではと思われます。収入 28.1億円乗船客収入 5万人x4.5万円= 22.5億円その他貨物収入 上記の1/4= 5.6億円支出 33.0億円TSLリース料 8.0億円燃料費 2千万円x70回 =14.0億円代用船維持費 4.0億円その他諸経費 燃料費の半分=7.0億円
2005.06.06
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インターネット衛星画像で秀逸なのはGoogle Maps、アメリカ全土を市街地も含めて解像度3m程度の高画質で、Google社が衛星画像を提供するソフトウェア会社を昨年買収したことで、無料提供が開始された様です。Google MapsのWebサイトはこちらですMacintoshではNetscapeブラウザーでないと見られないようです!ナイアガラの滝付近の画像では、右側にアメリカ滝、右上にレインボーブリッジ、下側にカナダ滝、左側にスカイロンタワーが良く見えます。東西南北は地図の通り正確ですので、東南東からの日を受けた影も分かり、午前9時頃の画像の様です。昔、ヒューストンに住んでいた地域を最大解像度で見てみますと、住宅の様子、通路・ロータリー、植栽樹林、プール2個所もハッキリと判別出来ます。右側に見える高速道路を通行する自動車も種類は判然としませんが、大型・小型は識別出来ますので解像度3m程度だと思われます。帰国してから20年余経ちますが、このタウンハウス・コンプレックスはあまり変化が無いようで、懐かしく見てしまいました。上記に較べて軍事衛星画像は0.05m迄判別出来るとされ、夜間赤外線画像も当然存在して四六時中リアルタイムで見張られていますので、人の動く様子までハッキリとチェックされてしまい、屋外での挙動は全世界的に丸見えの状態であることが推断されます。残念ながらGoogle Mapsはアメリカ専用ですので、日本の市街地詳細は見ることが出来ません。日本のインターネットでは無料生活地図サイトMapFan Webがあり愛用しているのですが、道路地図中心で住宅を特定出来る画像はありません。しかし解像度 1mの有料衛星画像は日本でも提供されている様で、次の様な記載があります。平成11年末から、IKONOS衛星画像を一般向けに販売開始。IKONOS衛星とは、軍事偵察衛星技術を応用した世界最高性能の地球観測衛星で、米国ロッキード社・三菱商事株式会社などが出資する日本スペースイメージング株式会社(JSI)が、平成11年9月下旬に打ち上げに成功したものです。IKONOS衛星は、米国の軍事技術をベースに開発された衛星で、解像度 1mという高画質で世界中を撮影することができます。
2005.06.02
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近年、食の安全が叫ばれ、食品の有用・有害に関心を寄せられています。しかし消費者の知らない間に、遺伝子組み換え食品も増えていると懸念されています。この分野での先進国アメリカでは「遺伝子組み換え食品の有害性が科学的に実証されない限り、食料確保には利用して行こう」と言うのが基本姿勢ですから警戒せざるを得ません。しかも、従来その最終判定は実験室での動物実験から臨床判定を経て決定されますので、長い年月を要し、癌の発症判定には20年も掛かると言われて来ましたので、結果が判明した時には遅すぎたともなり兼ねません。ニュートリゲノミクス技術は、迅速かつ簡便にゲノムレベル(個のレベル)で健康評価が出来、又疫学研究にも応用出来ると言うことから脚光を浴びている様です。この技術が遺伝子組み換え食品の有害性判定に有効か否かは、未だ判明していないのが残念です。この件、消費者として甚だ気にはなりますが、全くの門外漢でありますので、月刊「技術士」2005年2月号から引用させて頂きます。著者は東京農大教授の荒井氏です。この科学の誕生の切掛けは、2001年のヒト・ゲノム(遺伝子のDNA解読)の完了であるらしく、「ニュートリ」は栄養、「ゲノミクス」は遺伝子科学を意味する極めて新しい分野です。食品によっては、糖尿病、動脈硬化、高血圧、肥満、癌などの生活習慣病に直結する遺伝子を活性化させてしまうものがあり、逆に病気を抑える遺伝子を活性化してくれるものもあるので、DNA診断によって食品の良し悪しを予測し得ることになります。問題は、DNAチップ(マイクロアレイ)及びその解析装置は特定の米国メーカーが殆ど独占状態で著しく高価で、我が国の様に大部分が中小企業である食品産業界には高嶺の花であることであるとのことで、この様なハイテク分野のインフラ開発を国が助成して、中小企業でも利用可能とする意義」は、既に経団連提言にも取り上げられています。上記のハード面の充実と更に多くのソフト面での貢献が相俟って、我が国の食品産業界が21世紀に飛躍的成長を遂げることを期待したい。
2005.03.02
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本日午後6時25分、RSC(ロケットシステム)と宇宙航空研究開発機構(JAXA)が、H2Aロケット7号機を種子島から打ち上げました。今回打上の主目的は寿命の尽きた「ひまわり5号」の後継である運輸多目的衛星新1号(MTSAT-1R)を周回軌道に乗せることにありましたが、7時15分には多目的衛星切り離しに漕ぎ着け、打上成功となりました。前回切り離しに失敗した固体ブースターも設計変更し、予備実験も重ねて問題無さそうで今回の打ち上げ体制は万全と見ていたのですが、直前に通信システムに不具合が見つかり、1時間遅れの打ち上げでしたから、成功ニュースに快哉を叫ばずにいられません。宇宙ロケットでは中国にも遅れを取った感があり、これで肩を並べたと言う所だと良いのですが、そうは問屋が卸しません。最低連続3回打上成功しないと国際的評価は得られませんので、今後も品質管理・事前検査等怠り無く油断せずに頑張って欲しいと思います。改造前のH2時代には1992年迄打上成功が続きました。その後メインエンジンLE7地上試験中のニッケル基合金(Inco718)配管の破損、打上時でのターボポンプ金属シールリング破損等のトラブルに見舞われました。そこでH2の打上コストが150億円超、国際価格の170%となっていましたこともあり、コストダウンを図って90億円とする改造H2A計画が設定されたのです。今回の打上では、前回の打上失敗に対する改善策とした固体ブースター・ノズル設計変更で10%程コスト増加となってしまった様ですので、今後も地道に信頼性のあるコストダウン努力も欠かせません。中国「長征」ロケットの打上コストが人件費の安さから50億円台と言われていますので、其処までは行かないにせよ、せめてフランスの「アリアン」と同等位と思われる90億円にはダウンさせて欲しいものです。インターネットでは打上前に、次の様に報じられていました。噂のLivedoorのWebサイトではライブ中継がされました。宇宙航空研究開発機構(JAXA)は26日午前、鹿児島県・種子島宇宙センターで、気象衛星「ひまわり5号」の後継、運輸多目的衛星新1号機(MTSAT-1R)を搭載したH-2Aロケット7号機の打ち上げに向け、最終準備に入った。午前4時過ぎに機体を組み立て棟から発射地点に移動。正午前に極低温の液体水素・酸素燃料の注入を終え、午後5時9分に打ち上げる予定です。 H-2A打ち上げは2003年11月の6号機失敗以来1年3ヶ月ぶり。搭載する運輸多目的衛星は運用を終えた気象衛星「ひまわり5号」の後継機で、失敗すれば日本の宇宙開発や気象業務への影響は必至で、失敗は許されない。LivedoorのWebサイトには入って見たのですが、IDとパスワードが無く、残念ながらLive中継は接続出来ませんでした。
2005.02.26
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二酸化炭素削減、廃プラスチック処理等の環境管理を実施しないと地球は末期的症状から脱し得ないとされています。環境管理はReuse=再利用、Reduce=使用削減、Recycle=再商品化、Reject=使用拒否の4原則で進められています。しかし、大量消費時代に使った廃プラスチックは埋め立てられ分解もされず地中環境を悪化させています。焼却処分すれば猛毒のダイオキシンが発生しますし困りものです。又有毒で保管されているPCBも、何とか処理しなくて行けません。次世代への先送りは許されないのです。10年も前から注目され、漸く日の目を浴びている超臨界流体技術は二酸化炭素削減、有機溶媒使用削減、有害有機材分解等への切り札かも知れません。超臨界流体とは、気体と液体が共存できる限界の温度・圧力(臨界点)を超えた状態にある特異な流体。特に注目されますのは私達が通常使っています水・水蒸気、二酸化炭素(炭酸ガス)で、水の場合は22.1MPax374℃、二酸化炭素の場合は7.4MPAx31℃を超えた領域で超臨界状態となります。超臨界流体は、入り込む気体の性質(拡散性)と、成分を溶かす液体の性質(溶解性)を持っていますので、環境/医薬品分野での有機溶媒の代替としても利用でき、環境に優しい技術として注目を浴びています。二酸化炭素の場合は常温・中圧で超臨界を実現出来ますので、実用化が進んでおり、先日テレビニュースでの特集紹介もありました。TLO(技術移転機関)東北テクノアーチは、特許「超・亜臨界流体処理システムおよび装置」をオートランドリータカノ(仙台市)に技術移転し、その製品第一号が2005年春に実用化される。ドライクリーニング企業のオートランドリータカノは、従来の石油系や塩素系溶剤の代わりに二酸化炭素の臨界流体処理を用いるドライクリーニング手法を利用する製品を開発、まもなくクリーニング事業で利用し始めるもの。これで、従来有機溶媒によるドライクリーニングに寄せられた、「費用が高い」「革製品が硬くなる」等の苦情が無くなるものと期待されています。超臨界水利用は1990年代中頃から始まっていますが、高温・高圧でしか実現できず、特有の取り扱い難さを伴って進展はなかなかの様です。使用範囲が広いのですが、特にプラスチック処理・ダイオキシン分解等での実用化開発の進展に期待しています。現在大型化と高温化が進むごみ焼却場ですが二酸化炭素低減対策とはならず、環境にも優しい超臨界水利用が望まれます。環境保全の有利性:燃焼処理とは異なり、ダイオキシンやNOx等は発生しません。無害化への挑戦:PCBやダイオキシンなどの難分解性物質も分解出来ます。しかし、実験室段階を経て、この技術で現在のごみ焼却場のような大型プラントが実現するには相当時間が掛かりそうだと思わざるを得ませんが・・尚、近頃、題になっているウォーターオーブン家庭用調理器ですが、これは超臨界水では無く単なる加熱水蒸気を使ったものですので、技術的難問はありません。
2005.02.14
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2003年10月から、東京都・千葉県・埼玉県・神奈川県の条例で定める粒子状物質(PM)の排出基準を満たさないディーゼル車の走行が禁止されて以来、真っ黒な排煙が少しは軽減された様な気がします。首都圏の大気汚染は深刻な状況にあり、浮遊粉塵(PM)は気管支喘息などの呼吸器系の疾患や肺がんなどの健康への悪影響や、花粉症とも関係があると疑われていますのですから、もっと早く実施すべきでした。それに加えて、硫黄酸化物による大気汚染軽減の為、東京都は石油連盟に対し、低硫黄軽油の早期供給を要請して来ました。現行の軽油のJIS規格では、軽油中に含まれる硫黄分は500ppm(ppm:100万分の1)以下ですが、低硫黄軽油は50ppm以下へと硫黄分を低減させた軽油です。ディーゼルエンジンは貨物輸送には最適のエンジンとされて来ました。ガソリンエンジンに較べ燃料効率が30%良いこと、軽油がガソリンに較べて価格が30%安いこと等が大きな理由でした。トータルで考えますと半分の燃料経費で済むのです。しかし、ディーゼルエンジンでは燃料を自然発火させる為、圧縮比を高くしなければならず(電気火花機関ガソリンエンジンの3倍)、それが振動大、浮遊粉塵(PM)、窒素酸化物(NOx)排出増の要因となっています。それに加えて、坂道での動力増強の為に燃料大量噴射しますので、未燃分による黒煙・臭気が酷く、すっかり悪者扱いとなりました。その為、日本では乗用車でのディーゼル搭載は無くなってしまいましたが、欧米では未だに燃料経済性の面から乗用車でも一定の位置を占めています。ディーゼルエンジンの燃料効率が30%良いと言うことは、二酸化炭素排出が30%少ないと言うことですから、その面から復権を狙っている様です。米国機械学会誌1月号に「ディーゼル代替:The Diesel Alternative-Cleaner, quieter versions may be coming」と言う記事がありましたので、要約紹介致します。貨物輸送の生き血であるディーゼルの技術改善が実施中で、燃料直接噴射と電子制御による二段燃焼改善により振動・粉塵・窒素酸化物問題を改良させていますし、日本と同様に粒子状物質(PM)減少装置も2007年米国でのディーゼル全車モデルから装着されることになりました。硫黄酸化物排出改善の為、米国環境保全局(EPA)では2006年から日本より厳しい15ppm低硫黄軽油を義務づけています。窒素酸化物(NOx)排出に対しては、選択触媒還元装置(SCR: Selective catalytic reduction:尿素噴射による窒素酸化物分解)によって大気汚染規制値適合を目指す方向です。問題は製造コストで、現状では約1500ドル余計に掛かることになりますので、何とか半減以下とし、2008年モデルでは500~600ドル追加程度にしたいとのことです。改良されたディーゼルは温暖化防止の観点から、トラックだけでなく乗用車用エンジンとして復権なるでしょうか? 現状エコカーとして知られるハイブリッド車もガソリンエンジンとの組み合わせよりもディーゼルとの組み合わせの方が二酸化炭素削減には有利になるのですが・・燃料電池車も原料を化石燃料に頼る現状では、二酸化炭素排出率はそれ程改善される訳ではありません。このエンジンの発明者はルドルフ・ディーゼル、普く全世界に使って欲しいとの彼の希望はナチスドイツによって阻害され、殺害されたと言われています。
2005.01.24
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欧州宇宙機関(ESA: European Space Agency)が7年前に打ち上げた土星探査機カッシーニ・ホイヘンス(Cassini- Huygens)計画が作動し始めた。太陽からも遠く、零下180℃の世界なので何も無い暗闇にクレーターの世界が展開されると思っていたのですが、暗に相違して意外に明るく、峡谷の景観が映し出されました。今朝(1月16日)はNASAのWebサイトに入って、合成地表写真を見ますと、モノクロではありますが、まるでグランドキャニオン峡谷の空中写真と見まごう感があります。水は勿論固体の氷状態で、辛うじて窒素・酸素が気体、メタン・エタンが液体で存在する環境です。実際、大気は窒素90%・メタン10%(分圧の関係で気体)で構成されているらしく、生物の存在可能性は無いと思うのですが、メタンの海でも存在して侵食活動でもあったもでしょうか?NASA Cassini-Huygens MissionのWebサイトでご覧下さいタイタンの半径は2575kmで地球の40%強、惑星である水星よりも大きく、衛星の中で唯一濃い大気に包まれていて、衛星表面気圧は地球より高く1496hPaらしいのですが、濃い大気も邪魔してその素顔は分かっていませんでした。今回の発表は、科学成果と共に、宇宙の浪漫をかき立てるものとして注目したいと思います。インターネットニュースには次の様に報じられています。土星(Saturn)最大の衛星タイタン(Titan)に着地した小型探査機ホイヘンス(Huygens)が、タイタンの素顔の撮影に成功した。欧州宇宙機関(ESA)と米航空宇宙局(NASA)は1月 14日、最初に受信した写真を発表した。上空からの写真には、峡谷や湖、岸辺のような地形がとらえられていて、何らかの液体の存在を物語っている。探査機ホイヘンスはタイタンに降下中と着地後に撮影した写真や収集した大気のデータが、土星を周回する親機カッシーニ経由で地球に届き始めた。 上空16.2kmからの写真は、峡谷の様な地形が地表を走り、縦に走る岸辺のような境界線の右側には、液体がたまったようにも見える黒っぽい部分が広がる。 上空8.0kmからの写真には、暗く平らな地形が写り、洪水の跡に似ているという。白っぽい高台の部分と、背後の影のような黒い部分もあって、起伏に富んだ地形の存在をうかがわせる。 NASAは、「表面を液体が流れているのは明らか。地球と同様、地表に液体を抱える珍しい星だ」とAP通信に述べた。タイタンの地表は零下180℃ 前後なので液体の水は存在しない。液化した炭化水素(メタンやエタン)である可能性が高い。 着地後の写真からは、岩のような物体が地平線まで散らばっているのがわかる。ESAとNASAは「氷の塊とみられるが、大きさや距離は詳しく解析しないと分からない」と説明。受信した約350枚の写真の処理と観測データの分析を急いでいる。
2005.01.16
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エネルギー取得時に於けるCO2削減の切り札として、燃料電池が永らく注目を浴びて来ました。燃焼を伴わない、水素と酸素ガスから水にすると言う化学変化によってエネルギーを得る、中学校理科の実験「水の電気分解」を逆にした理屈ということで、発電効率が高いこと、排出されるのは水だけであること等、環境問題とエネルギー問題の同時解決が目論まれていたのです。 種類 作動温度 発電効率 用途リン酸型(PAFC) 約200℃ 45%以下 小規模コージェネ発電、バス・トラック固体高分子型(PEFC) 100℃以下 40%以下 分散電源、自動車、パソコン溶融炭酸塩型(MCFC) 約650℃ 50%以下 大規模コージェネ発電固体電解質型(SOFC) 約1000℃ 50%以上 中・大規模コージェネ発電これで水素製造が太陽、風力、水力などの自然エネルギーによる水の電気分解で出来れば環境問題は解決出来るのですが、エネルギー出力総量が小さくそうは問屋が卸しません。 現在は水素を得る為には炭素を含む化石燃料を原料としますので、改質器の中で二酸化炭素、猛毒の一酸化炭素が発生しますので、除去しなければなりません。特に12%も入っています一酸化炭素は、二酸化炭素変成プロセス過程を経て、排気中に10PPM以下となる様に設定されています。従って、排ガス中には相当量の二酸化炭素(CO2)が含まれていますので、CO2発生率は従来発電方式と殆ど同等となってしまいます。化石燃料を使う限り、その宿命は変わりません! 広告の一方的な「うたい文句」に惑われないことがユーザとしても肝要です。兎に角、新型大型火力発電所の最新型複合サイクル発電効率が最高60%ですが、固体電解質型(SOFC)とガスタービンを組み合わせることで70%効率が達成出来るとされ、米国エネルギー省(DOE)が技術開発に邁進しています。中でも、自動車への適用開発過程から特に固体高分子型燃料電池(PEFC)の技術が進み小型化していますので、波及して家庭用分散電源、パソコン・携帯の電源として期待されていました。但し、上記の目標効率は達成出来ず、熱効率30%程度ですので、分散電源として発電単価が買電単価より高くなってしまう懸念はあります。もっと問題なのは機器コストの高さで、単位kW当たりの価格が通常火力では10万円程度なのですが、燃料電池方式では10倍の100万円になってしまうので、現在開発の主目的は価格低減にあります。通常自動車の出力100kWとすると、エンジンだけで1000万円となりますので、ガソリンエンジン自動車にとても太刀打ち出来ないのです。しかし、昨日将来の価格低減を見越して、東京ガスが家庭用燃料電池の発売を宣言しました。今回は僅か1kW容量ですので家庭需要の半分を賄う程度に過ぎませんが、2007年の電力完全自由化に向けて、ガス会社が電力会社に先駆けて分散電源ビジネス確保に先手を打ったと言えるのでは無いかと思います。しかし「急いてはことを仕損じる」、消費者ユーザは当面様子見をするのが賢明だと思います。電力会社も魅力ある提案をして来る筈です。インターネットニュースでは次の様に報じられています。東京ガスは、松下電器産業、荏原製作所と共同開発を進めてきた家庭用燃料電池を来年2月から一般に貸し出す、と発表した。東ガスは、家庭向けに商品化されるのは世界初、としている。他の都市ガスや石油会社も様々な方式を開発中で今後、商品化が続きそうだ。 燃料電池は、水素を酸素と化合させると、電気・熱と水が発生することを原理にしている。東ガスの装置は熱電併給(コージェネレーション)方式で、都市ガスから取り出した水素を使って発電。排熱も利用してお湯をわかし、給湯や暖房に使う。発電・熱回収の装置(高さ約1m、幅80cm)と貯湯槽(高さ約2m、幅約80cm)の二つからなり、出力は1kWで、4人家族の標準世帯が使う電力の60%をまかなう。 2006年3月までに200台を貸し出し、期間は10年間で使用料は100万円。利用者にはガス料金を3年間3%割り引く。通常のガス・電気利用に比べ、標準世帯で光熱費を年間約6万円節約でき、エネルギー消費量も26%減るという。2009年度には年間1万台の普及を見込んでいる。 東京ガスは「今は採算性を考えず、先行投資のつもりで普及させたい」と話す。今後、1万3千時間(約3年分)程度の電池寿命を4万時間に延ばすことや、販売価格目標(50万円)に見合う製造コスト(現行数百万円)の引き下げが課題だ。 大阪、東邦ガスは東ガスの後を追い、同様の製品を2005年度中に投入する計画だ。大ガスは京セラと共同で、発電効率の高い別タイプも開発中で、2008年度の商品化をめざしている。石油業界では新日本石油と出光興産がそれぞれ2006年度の商品化を目標に、灯油から水素を取り出す方式の燃料電池を開発中。次世代家庭エネルギーの主役の座をめぐる開発競争の中から、さまざまな商品が登場しそうだ。
2004.12.07
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港や空港、発電所等の社会資本整備用地を陸上に求めることは狭い国土で難しくなり、その用地を沿岸に求めることが多くなっていますが、埋め立てに適する海域も、干潟の保全など環境への関心の高まりもあって、用地確保は益々困難となっています。このようなニーズに応える為、沖合を利用したメガフロート(巨大浮体構造物)工法による用地確保を目指して、1995年から3年間基本技術開発、更に1998年から3年間実用レベルの技術開発が行われました。長さ200m×幅100m×深さ2mのメガフロート情報基地が神奈川県横須賀市の実海域に設置されて、浮体上における動揺・振動影響を確認したのです。その結果、次のような特徴が確認され、羽田空港の拡張計画に採用を働きかけました。1. 地震による影響が殆ど無い。 2. 潮の流れを阻害することが少なく、自然環境への影響も少ない。3. 水深や海底地質に関係無く設置することが出来ます。4. 浮体の内部空間の他目的利用可能となる。5. 波が来てもあまり揺れない。しかし、新滑走路には長さ4000mが必要ですので、僅か200mメガフロートの実験では、技術的検証に飛躍があり過ぎ、実績不足と結論づけられ不採用となりました。中部国際空港建設計画でも同様の理由で従来の埋め立て方式となりました。朝日新聞11月23日には次のように掲載されています。この技樹を担当してきた造船工業会が中心となって東南アジアにメガフロートに売り込んでいる。マレーシアでは港湾施設、シンガポールではコンテナ埠頭の拡張に充てる構想で、国土交通省も協力し、11月に実行可能性調査(Feasibility Study)を始めている。造船業界や国交省は、アジアでの実績を重ね、将来日本国内でも採用されることを狙っている。阪神大震災・新潟県中越地震の如くわが国は地震国であり、近い将来東海沖地震も懸念される為、公共性の高い施設は地震フリーの構造が求められますので、次善策としてメガフロートは検討案の一つとして俎上に乗せて欲しいものです。但し、一挙に空港と言った大規模施設でなく、港湾設備などの中規模施設で実績を積み、環境影響を確認して欲しいと思っています。200mx100mの実験設備では分からないメガフロート下部は太陽光線が差さないので生態環境は劇的に変化することも懸念されるからです。メガフロートはブッロク工法で工場の品質管理されたラインで生産され、現場ではブロック連結作業が主となり、施工不良も格段に少なくなりますのでメリットの方が多い様に思われます。但し、従来の公共事業の如く工事現場での労働集約事業ではありませんので、現場での雇用人員がそれ程増やせず、雇用対策の切り札で無いことも欠点かも知れません。メガフロート(巨大浮体構造物)の先駆としては、世界で初めての「洋上石油備蓄基地」長さ400mx幅500mが長崎県五島列島で建設され1988年に完成しました。建設中も地元雇用は少なく、貯蔵設備と言う側面もあってその後も地域雇用拡大にはそれ程貢献していない様です。
2004.11.24
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昨日のインターネットニュースからの抜粋です。米航空宇宙局(NASA)の実験飛行機「X-43A」プロジェクトの立案者達は、来週行なう試験飛行で、音速の10倍近い1万1200km/Hrを達成し、飛行機のスピード記録を塗り変える予定だと述べた。新型の超音速ラムジェット・エンジン(スクラム・エンジン)は回転するファンを使う必要がなく、排出するのは水だけだ。NASAがこのエンジンを無人飛行機に搭載して行なうテストは今回で3回目。2001年に行なわれた第1回目の試験飛行は、小さなX-43Aを飛行高度まで上昇させるブースターロケットが太平洋上でコントロールを失い失敗。今年の3月に行なわれた2回目の試験飛行は順調で、音速の7倍をわずかに上回る時速8000キロメートルという記録的なスピードを達成した。スクラム・エンジンはラムジェットの一種で、エンジン内での燃焼を超音速状態で行わせるもの、即ち Supersonic Combustion Ramjet の頭文字をとってSCRAMエンジンと呼ばれるものです。この作動方式は飛行時に吸入した空気を減速させて生まれる動圧(ラム圧)によって圧力を高め、そこへ燃料(多くの場合水素)を噴射して燃焼させ、その燃焼ガスをノズルから大気中へ膨張・加速させて推進力を発生させることにあります。エンジンの作動状況を確認するには、地上では超音速空気を吹き出す特殊なエンジン試験設備が用いますが模擬マッハ数は8が限度でそれも数分程度、それを越えるマッハ数には衝撃風洞が用いられますが、試験時間は数ミリ秒と極めて短く実作動チェックは困難となりますので、マッハ数8以上での作動実証には飛行試験が不可欠となります。安定したエンジンが出来れば、従来の使い捨て型のスペースシャトルとは異なり、将来的に大気圏内では旅客機と同様に繰り返し使える相対的に安価なロケットを使うことでの航空宇宙産業が育成可能かも知れないと思っています。一挙に打上コストが半減するのではとも考えています。NASAは15日に行なうX-43A 3回目の試験飛行で音速の10倍にあたるマッハ10の新記録を作りたいと望んでいる。X-43Aのプログラム責任者ビンス・ラウシュ氏は記者会見で、15日の試験飛行は成功するだろうと述べた。しかし、プログラムの実験的性格と超高速が予想外の結果につながることもあり得ると「このプログラムにはリスクがある。リスクを極力抑えたつもりだが、絶対だという断言は出来ない」としている。リスクの1つは、X-43Aの先端部分――ノーズや2枚の尾翼の前面――が過熱する可能性があることだ。2回目の試験飛行では、試験機が超音速で空気中を進む際、先端部分がおよそ1400℃になった。主任エンジニアによると、15日に予定されている試験飛行では、先端部分の温度が2000℃近くまで上昇する可能性があるという。プロジェクト・チームは加熱対策として、先端部分に特別な炭化物被膜処理を施し、ノーズの形状も変えたとのこと。又2回目の試験飛行のデータに基づいて、SCRAMエンジンの細部を改良した。長距離の飛行に耐えられる安定したエンジンを設計できれば、より安価なロケットやより高速なミサイルの製造が実現可能かもしれないと、技術者たちは考えている。しかし、今後NASAは超音速エンジンのプログラムから撤退し、新しい人類を月と火星に送り込む宇宙探査構想に予算を振り向ける予定だ。来週行なわれる試験飛行が、2億3000万ドルをかけたこのプログラムの最終飛行となる。X-43Aのこれまでの試験飛行と同様、最初にカリフォルニア州のエドワーズ空軍基地からB-52爆撃機を離陸させる。B-52が太平洋上で高度1万2000mに達すると、X-43Aを切り離して機体搭載のブースターロケットに点火、高度3万3500mまで上昇させ今度はブースター切り離し、X-43A単独飛行とする。計画通りに運んだ場合、この時点でX-43AのSCRAMエンジンが点火し、マッハ10で飛行することになる。X-43Aは搭載された液体水素燃料を、わずか10~11秒間で使い切ってしまう―しかしX-43Aとエンジンがこのような超音速領域でどのように機能するかについてデータを集めるには十分な時間だ。その後、機体は計算どおり太平洋に落下する。NASAによると、機体を回収する計画はない。前回2回目の飛行試験後の日記はこちらです。
2004.11.13
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現在のDVD規格もDVD-R、+R、-RAMと統一されないまま進み、パソコンも全てに対応出来るスーパーマルチドライブ搭載が通常になって来ました。それでも、同一の光学ピックアップで読み取り・保存が出来ますので、そんな対応策で済みますが、次世代DVDの規格争いはその様な対応で妥協出来ない熾烈なものになりそうです。2002年ソニーが先導し、松下、サムスン、日立の他、欧州メーカも参加したブルーレイディスク(BD)規格が次世代DVD規格となると見られていましたが、2003年東芝とNECが現行DVDの延長上に位置するHD-DVDを発表して対抗し、最近サンヨーが加わり混沌として来ました。私自身は、2層でハイビジョン放送が4時間半録画できますので家庭用にはHD-DVD規格で十分と思っています。この競合、果たしてどうなるのでしょうか?朝日新聞に次の様な記事が掲載されています。ブルーレイディスク(BD)もHD-DVDも現行DVDで使う赤色レーザに代わり青色レーザを用い、5倍以上のデータ書き込みが出来る。両陣営ともディスクの大きさは現行と同じ直径12cm、厚さ1.2mm。異なるのは記録層の位置、HD-DVDは現行と同じ厚みの半分0.6mmなので既存の製造装置が活用出来、コストが安いとされる。BDの記録層は0.1mm、高密度に情報を詰め込んで8層の多層化を計ることで現行DVDの50枚に当たる約200GBの記録も可能になるが、製造装置を全て新しくすることが必要だ。パソコン、映画、その他AV製作まで、関連業界を二分する動きは激しく、規格統一は絶望的だ。消費者には今後、どちらを選ぶか、悩ましい状況となりそうだ。微細な技術を利用するには、録音再生環境が十分管理されていることが必須条件となります。今後はモバイル利用が進み、車の中でも屋外でも自由に録音・録画、再生をすることになりましょうが、利用環境は劣悪になり、振動、塵などの粉塵を考えると、余りに高技術適用はエラーが多くなり問題では無いかと想い、私自身は家庭用にはHD-DVD規格で十分と思っています。今後は、見たい時に自由にインターネット配信を利用して映像ソフトを入手することが主流になるでしょうから、BDはポータブル記録メディアより寧ろテラバイト(TB)級の大容量ハードディス(HDD)クへの適用が良いではと思ったりしています。
2004.09.27
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8月9日美浜原子力発電所第3号機タービン復水管が破断、作業員11人が火傷を負い4名が死亡という事故が起きてしまいました。142℃の高圧加熱水が破裂と共に吹き出して、100℃の煮沸水と大量の蒸気が飛散したのですから堪りません。これは原子力発電に留まらず、火力発電所でも使われる配管ですから、日本電気事業全体に共通する問題となりますので、及ぼす影響は計り知れません。新聞に依りますと、次の様に記載されています。破裂したのは、復水器(タービンから排気される蒸気を水に戻す装置)から蒸気発生器(水から高温高圧の蒸気に変換・発生させる装置)に行く炭素鋼製の復水管(直径56cm、肉厚1cm)。2階天井を通る部分で上部が約50cmに亘ってめくれ、穴が開いていた。火傷を負った技術員は約10m離れた場所で作業をしていた。配管には10気圧(1MPa)で142℃の水が流れており、それが蒸気となって噴き出したらしい。破裂個所の約50cm上流には計器があり、流れが乱れたことも影響したのではないかと見られる。関電の内規では、2次系配管の肉厚は10年毎に1/4ずつ点検し、40年で全てを終えることになっていた。解説に依りますと、次の様に書かれています。今回と同様の事故は1986年、米サリー原発2号機で起き、4人が死亡している。配管の肉厚が薄くなったことに気付かずに事故に至った。その教訓から、日本国内でも復水管の点検が強化されたと言う。しかし、関電の内規を見る限り、教訓が生かされたと言い難い。タービンは火力発電所で普通に使われる設備、そうした点で運転や点検に慢心が無かったか真摯に省みるべきだ。新聞に掲載された写真を見ますと、復水管の外面は塗装が殆ど剥げ落ち整備の悪さが指摘出来ます。破裂個所は、内部圧力によって破断されていることは明らかです。当初10 mmあった肉厚は僅か1.4mmに減っているとのことですから、上流50cmの所にある計器からの渦等の乱れが定常的発生して、配管の当該個所内部が予想以上に浸食されたものと推断します。配管必要肉厚はP(圧力)*D(直径)/2*б(許容応力)で簡単に出来ます。10E-2*560/2*11.5=2.4mmとなりますが、安全率が4倍ありますので0.6mmあれば破断には至りません。公表された残最小肉厚1.4mmですから、そのままでは内圧による破断にはならないのですが、浸食された位置が円周方向で、渦による振動荷重が加わったのでしょう! 大根を切った様に円周方向に破断されています。敦賀原発、高速増殖炉「文殊」のナトリウム冷却管破断も計器から発生した乱れが配管破断の原因となりました。配管強度だけで無く、計器も含めた総合システムとしての設計整備が必要です。関電見解は延性破断の可能性が高いとのことですが、どうも疑わしいし、延性破断となれば、原子力に限らず全ての火力発電所の共通する復水管ですので、全ての配管総点検・整備が必要となります。何れにせよ、原因究明、再発防止、安全対策見直しが急務です。
2004.08.10
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近頃、原油価格の高騰が続いて、指標となるWTI(West-Texas Intermediate)価格が遂に42ドル/バレルとなりました。 この3月から石油輸出国機構(OPEC)では3回合計日産350万バレルの増産枠を決めたのですが、中東情勢の不安、ロシア石油会社の経営不安もあって、供給不安を醸し出して、一向に石油価格の安定が得られず、このままでの高止まりが懸念されています。石油の埋蔵量は約20年と言われて久しいのですが、カスピ海等次々と新しい油田が発見され、現在でもそのままの様ですから、本来的には供給不安は無いと思います。一方、天然ガスの埋蔵量は3倍の60年と言われていますが、大陸棚にあるガス・ハイドレード(ガス水化物)の採掘が可能となれば200年は大丈夫とも言われています。しかし、主成分のメタンガスは空気中に放出されますと地球が温暖化して、二酸化炭素以上に甚大な被害があるとされていますので、確実な採掘法が必要です。この豊富と思われる天然ガスから石油製造する「GTL-天然ガスから石油製造技術」の現状はどうなのかインターネットで調べて見ました。下記の記事は昨年のものですが、2000年当時の動向と変わりありません。イラク侵攻が起きるまでは石油価格は15 ドル/バレル程度で安定していましたので、頓挫していたのだと思います。天然ガス等の化石燃料を転換して得られる水素と一酸化炭素の合成ガスから、ドイツ人のFranz FischerとHans Tropshが開発した合成法(FT合成)によって製造される燃料はGTL(Gas to Liquids)と呼ばれます。硫黄分やアロマ分が殆どありませんので、硫黄酸化物(Sox)や粒子状物質(PM)、HC、COの削減を大幅に削減する上に、触媒の働きを良くすることから窒素酸化物(Nox)の排出量も大幅に削減することが期待されています。FT合成法が発明されたのは1923年ですが、世界で実用化されているのは、南アフリカとマレーシアの2カ所に過ぎません。大きな理由は製造コストが高く、通常の石油採掘から精製して得られる軽油・ガソリン価格の倍近いコストとなってしまうからでした。ところが、技術の進展によって、プラント自体のコストが下がり、競合する石油価格が高値で安定していることから、以前よりも経済性が高まり、GTLは大きく注目されるようになりました。費用分岐点は石油価格がバレル18ドル以上であればGTLは競合出来るとされています。現在、世界的に軽油の硫黄分の規制値は厳しくなる方向で進んでおり、石油精製業界は、大幅な追加的投資が必要と見られていることも、GTLの経済性を尚高めることになり、本格的な導入が検討されています。これらの追い風をもとに、産ガス国の多くでは、Royal Dutch/Shell、Exxon Mobilなどの石油大手やSyntroleum、RentechといったGTL技術開発企業が中心となってプラントの建設が計画されています。アフリカ ナイジェリア、カメルーン、南アフリカ、アルジェリア中東 カタール、イラン、オマーン中南米 アルゼンチン、ブラジル、ベネズエラアジア太平洋 インドネシア、オーストラリア、ロシア、米国(アラスカ)日本の石油会社にとっても、カタール等の産ガス国からGTLが大量に安価で供給された場合は、この燃料を輸入し、ブレンドあるいは直接販売する方法もあり、投資戦略に影響を与えるものと見られています。又、世界各地で検討されて大規模GTLプロジェクトは、日本のエンジニアリング会社やプラントメーカーにとっては、大きなビジネスチャンスであり、各社とも受注に力を入れている。一方、国内のエネルギー産業や商社にとっても、LNG事業同様に上流から下流まで参加していくチャンスがあり、戦略を練る段階から行動の段階にシフトしていくと見られています。
2004.07.19
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一見何の関係も無さそうな両者が結びつくのは、よく落語で使われる「風が吹けば桶屋が儲かる」と言った三題噺ではありません。そうした研究があるらしく、現在米国イリノイ大学で行われている様子です。この写真は酪農関係の雑誌でも無く、環境関連のものの表紙でもありません。最近郵送されて来ました、歴とした米国機械学会の副学会誌「Power & Energy」の表紙です。「隠れた資源:新技術は豚一頭一生分の糞尿廃棄物を0.5バレル(80リットル)の石油に変換します」として、記事には下記の様に記載されています。米国での工業農業は巨大な規模で実施されています。毎年1億頭を越える豚が屠殺されて食卓に供されていますが、これは各家庭1頭分に相当します。しかし、豚は同時に相当量の糞尿を生み出しまして、環境汚染の一因ともなって来ました。豚舎の排水、汚泥だけで無く、悪臭汚染が大きな問題となって来たのです。豚酪農の環境に対するこれらの深刻な影響は、政府各局、公共機関、酪農業界の関心事となり、解決策を模索中です。糞尿廃棄物は嘗て価値のある肥料として使われたのですが、大規模酪農の進展によって業界の大きな負担となってしまったのです。イリノイ大学で行われている研究は、逆手を取って、これら大量の糞尿を熱化学変換プロセスでエネルギー源としようとの試みで、再生可能な代替燃料を生産しようとするものです。熱化学変換プロセスは1970年代、主として石炭、泥炭、廃木材を無酸素状態の雰囲気で石油資源にしようとの研究テーマで、技術的には納得出来る結果を得ていたのですが、経済効率が低く、小規模の実験プラントで留まって頓挫してしまいました。今回の研究は、原料が石炭等の燃料では無く、酪農家にとって重荷となっていた廃棄物処理ですので、経済効率が向上し、環境影響の面からも成果が期待されています。実験室的には廃棄物固体の63%がベンジン主体の代替石油に変換され、発熱量は30500kJ/kgで高炉用燃料とほぼ同じという結果が出ています。日本でも酪農農家から出る廃棄物は、肥料として再利用されるだけでは無く、発酵プロセスを使ってメタンガス生産が試みられていますが、工業規模とはなっていないのが現状です。それにガスより液体の方が貯蔵・輸送が断然有利なので、出来れば代替石油を生産する方がベターに思えます。WTO農業交渉の進展次第では、日本でも工業農業の導入が真剣に検討されなければなりませんが、米国のこの様な研究は大きな助けになりそうです。
2004.06.09
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地球温暖化防止には、エネルギーの効率的な利用が望まれますし、化石燃料を大量に消費する従来方式の効率化は不可欠です。従来方式から排熱利用を促進することで10%の効率改善はそれ程困難なことではありません。原子力発電に依存する方法は、廃棄物処理の困難さ、高価格建設コスト、寿命後の解体処理問題から見て、最善とは思われません。20年程前から米国でコジェネレーション(Cogeneration)と呼ばれ、発電用熱機関の排熱を利用して70%以上のエネルギー効率が見込まれるものでした。技術的にはそれ程先進的なものではありませんので、あっと言う間に米国全州に流布することになりました。日本でも1980年代後半から導入が始められ、当初は「熱併給発電」と言う日本語が使われましたが、近頃では「コジェネ」と言うカタカナ米語が使われる様です。ヨーロッパでも日本と同時期に導入が始まり、「熱併給発電」に相当する「CHP(Combined Heat & Powerの略)」が使われ、以来「コジェネ」と言う米語が充てられることはありませんでした。ヨーロッパの誇りかも知れません。カタ仮名英語が多くて辟易もするのですが、Cogenerationは“二つの有益物を生み出す”と言う意味で、CHPに較べてなかなか良い造語だと思います。 Tri-Generationとの表現もあり、“電気出力、蒸気出力、排ガス出力”となれば最善となりますが殆ど使われることはありません。我が家には2ヶ月毎に、ロンドンで発行される「Cogeneration & On-site Power」が郵送されて来ますので、今月号から環境先進国ドイツのCHP協会会員の記事を紹介します。「欧米に於けるCHPの明るい未来」再生可能な風力、太陽電池、水力発電での拡充は、長期的には熱併給発電(CHP)のポテンシャルを大いに減じることになります。しかしながら、中・短期的には情勢は異なりまして、CHP開発は殆どの国々で市場導入が活発になることが予想出来ます。ヨーロッパでは、長い間余裕のある発電容量を享受して来たのですが、現在稼働中の発電所は古くなり性能劣化が顕著になっているのです。2010~20年には、ヨーロッパの大部分の発電所が更新時期を迎えているのです。又、幾つかの国々では、原子力発電所の段階的廃止を決めていることも影響があります。次世代の発電所計画決定には、排出物(二酸化炭素排出)取引が、大きな要素となり、その意味でCHP開発には有利な状況のなっている様に思えます。電力価格の上昇傾向もCHP開発には望ましい方向ですが、化石燃料の天然ガス価格の価格高騰で、一部は相殺されてしまうこともあります。総括的に見ますと、ヨーロッパでの近未来CHP開発は、過去の情勢に較べて明るくなっていると考えられます。日本でも、再生可能な風力、太陽電池の導入が進められ注目を集めてはいますが、如何せん、発電容量が小さすぎて、需要に見合うことはあり得ません。原子力発電の頓挫している現在、現存の火力発電所を熱併給発電方式(コジェネ又はCHP)にて更新、効率アップを図って、二酸化炭素排出抑制に動かなければなりません。
2004.06.08
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「ITER」はInternational Thermonuclear Experimental Reactor(国際熱核融合実験炉)」の略称で「イーター」と呼ばれています。日本、アメリカ、EU(欧州連合)、ロシアの4極が共同で核融合研究をして来ましたが、最近になって中国、韓国が参加し6極合同で建設推進が図られている実験施設のことで、設置場所は青森県六ケ所村とフランス・カダラッシュに絞られ、猛烈な誘致合戦となっています。日本国内では北海道の苫東開発地区が対立候補だったこともありますが、現在では青森県に集約された様です。朝日新聞5月27日記事には次の様に掲載されています。日本とEUが誘致合戦を繰り広げている国際熱核融合実験炉(ITER)について政府は26日、青森県への誘致が実現すれば、建設費の拠出金を大幅に積み増す方向で検討に入った。これまで実験炉本体の建設費の48%を負担する方針を確認しているが、数百億円以上の増額で50%台後半の負担率を軸に調整する。6月にウィーンで開催される6極の次官級会合で表明して支持拡大を目指し、関係5閣僚が話し合った。実験炉本体の建設費は約10年間で5700億円程、この内誘致国が48%に相当する2740億円を負担することで関係国が合意して来た。しかし、EU側が今後、拠出金の積み増しを提案する可能性がある為、日本としても増額の検討を始めた。海水中の重水素抽出での核融合大型発電が実現すれば、エネルギー問題は解決に向かいそうな気がしますし、技術波及効果も大きいので日本への誘致を是非実現して頂きたいものです。しかし、現実的には実験炉でもなかなか実現は難しいとされ、次のステップである実証炉による商用ベースになる迄には幾多の困難が待ち受けています。“環境に優しい”と言う掛け声は良いのですが、ITERに用いられるD-T(重水素-トリチウム)反応方式ではトリチウムに放射性があり、その安全性確保・措置技術には未だ確立されていません。又1億度のプラズマを磁界上に封じ込める為には、ヘリウム極低温100MW級の超電導磁石に寄る強力磁界が必要ですが、極低温が保持出来なくなるクエンチ故障が起きますと大量の熱が発生しまうのでその措置法も大きな課題の一つである等、幾多の困難が待ち受けています。ITERの全体スケジュール等については、以前に書きましたこちらの日記を参照して下さい。
2004.05.27
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昨年8月に打ち上げられたNASAの赤外線宇宙望遠鏡スピッツァーが捉えた画像が公開されていますが、僅か0.85mの口径ですが素晴らしい画像です。スピッツァー望遠鏡の特徴は高感度の赤外線観測で、従来2.4mの光学式宇宙望遠鏡ハッブルが素晴らしい画像を提供して来ていますが、それらより優るかも知れません。デジタル光学技術は日進月歩で改良されている様です。1200万光年の彼方にある「おおぐま座(Ursa Major)」の渦巻き銀河M81(Messier81)も、今までに見せることのなかった光輝く姿は壮大な浪漫を感じさせて呉れます。従来の光学式望遠鏡での画像ではこの様にしか見えません。 それぞれ波長3.6μm、8.0μm、24μmでの「スピッツァー」画像です。 波長70μm、160μmでの「スピッツァー」画像です。これらを総合した画像は下に示す様な画像となります。赤い部分は星形成活動が行われている所、この様に可視光では見ることのできなかった範囲を銀河スケールで捉えることで、星形成などについての研究を進めていくことも可能になる様です。スピッツァー赤外線宇宙望遠鏡は、ハッブル宇宙望遠鏡(スペースシャトルの運休から存続が危惧状態)やガンマ線天文台衛星コンプトン(運用終了)、チャンドラX線望遠鏡に続く、NASAの「宇宙大天文台計画」の最後の宇宙望遠鏡、スピッツァーの運用開始で、ガンマ線、X線、可視光、赤外線までの広い波長域での観測が可能となっています。この望遠鏡、以前はSIRTF(Space Infrared Telescope Facility)と呼ばれていましたが、本画像の公開と同時にスピッツァー望遠鏡と名づけられたことが発表された。1946年に初めて宇宙空間に望遠鏡を設置することを提案した科学者であるスピッツァー博士の名に由来するものだそうです。これらの写真は米国航空宇宙学会誌「Aerospace」2月号の記事をスキャンしたものですが、カリフォルニア工科大のスピッツァー専用HPでも見ることが出来ると記載されています。
2004.04.01
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共同通信提供のインターネットニュースには次の様に記載されています。数時間で地球を一周できる超音速飛行機や宇宙往還機の開発を目指している米航空宇宙局(NASA)が3月 27日、無人実験機によるマッハ数7での飛行に成功した。大気中を飛ぶジェットエンジンによるものとしては最速記録。X43A(通称ハイパーX)と呼ばれる実験機は、全長約3.7メートル。水素を燃料に、超音速飛行でも燃焼させるラムジェットという特殊なエンジン(スクラム・エンジン)を採用している。X43AはB52爆撃機下部に取り付けられて離陸した後、上空で切り離され、補助エンジンでさらに上昇、加速した後、自力で飛行。カリフォルニア州沖の太平洋上空を約10秒間飛行し、最高速度はマッハ数7(時速約8000km)に達した。試験飛行は3年前にも行われたが、補助エンジン点火直後に制御不能になり失敗。NASAは2025年の有人飛行を目指している。宇宙往還機は現在の様な垂直離陸スペースシャトル方式(メイン燃料タンクは使い捨て)でなく、現在の旅客機の様に地上から水平離陸、大気中の加速上昇、宇宙空間飛行にとそのまま行く方式が理想的です。ロケット燃料の大幅節約が実現出来ますし、往還機全てが繰り返し使用出来ますので、宇宙に行く費用が格段に低減出来るからです。その為にはロケットエンジン機能を備えた複合エンジンが必要となりますし、飛行マッハ数4~14で作動するスクラム・エンジンは、大気圏外でのロケット推進にスムーズに移行するのに欠かせないエンジンで、この開発の大きな部分を占めることになります。スクラム・エンジンはラムジェットの一種で、エンジン内での燃焼を超音速状態で行わせるもの、即ち Supersonic Combustion Ramjet の頭文字をとってSCRAMエンジンと呼ばれるものです。この作動方式は飛行時に吸入した空気を減速させて生まれる動圧(ラム圧)によって圧力を高め、そこへ燃料(多くの場合水素)を噴射して燃焼させ、その燃焼ガスをノズルから大気中へ膨張・加速させて推進力を発生させることにあります。エンジンの作動状況を確認するには、地上では超音速空気を吹き出す特殊なエンジン試験設備が用いますが模擬マッハ数は約8が限度でそれも数分程度、それを越えるマッハ数には衝撃風洞が用いられますが、試験時間は数ミリ秒と極めて短く実作動チェックは困難となりますので、マッハ数8以上での作動実証には飛行試験が不可欠となります。このスクラム・エンジン、日本では宇宙航空研究開発機構(JAXA)が次世代に向けた革新航空機として鋭意開発中ですので、地上試験から飛行試験に向けて頑張って欲しいと思います。
2004.03.29
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無尽蔵の太陽エネルギーを使って、水素ガスを製造し、燃料電池で動力・電力を得て、環境を汚さずに生活する、そんな時代が来て欲しいものです。太陽エネルギーは廃棄物を伴わない、環境に優しい無尽蔵の究極のエネルギーと言われていますが、家庭用及び小事業所用太陽電池は、なかなか実用発電規模のものが登場しません。光を照射した時に照射されたものが電気を発生する現象「光起電力(Photovoltaic Effect)」を利用しているのですが、変換効率が低く、理論上は30%可能と言われながら、現状は僅か8~12%にしか達していないのです。米国航空宇宙局(NASA)では、電気接合部を全て裏面にする工夫で20%効率を実験中ですが、未だその規模5kWに過ぎません。太陽電池は分散型電源に留まり、MW級の大規模発電には燃料電池等の発電方式が妥当と思われます。一方エネルギー源を水素とする水素経済時代の到来は、多くの環境保護主義者も賛成し期待する所が大きい様です。確かに水素自動車の排気からは、水蒸気しか排出されません。しかし、現在水素を製造するには、化石燃料を改質した製法が工業的には一般的ですからエネルギー源の枯渇は避けられません。電力を使った水の電気分解によって水素を製造するのであれば良いのですが、水力発電が多く料金の安いカナダ、その他アイスランド以外では、現状の電力料金では経済的に成立しない様です。太陽エネルギーによる水素燃料製造が実現出来てこそ、新時代が到来すると思っているのですが・・それを結びつけて解決しようとする開発努力が米国機械学会の「電力&エネルギー(Power & Energy)」創刊号(March/2004)に記載されていますので紹介します。地球上に降り注ぐ太陽光線は希釈されて弱く、最大で1kW/m2しかありませんし、昼間しか使えない不便さがあります。そこで、砂漠等の人の住まない地域で、その太陽光線を如何に絞って集中させ、貯蔵し、人口の多い工業地域に運搬するかが開発目標となります。絞って集中させる方式は、レンズで光線を絞ると紙等が燃えますが、その昔ながらの方式が採用されます。この直径8mのパラボラ集光器は、スイスに設置されたものですが、5000倍の集光し5MW/m2光源となります。この高エネルギー源を使って、2000℃に達する高温の化学炉を構築し、其処に酸化亜鉛(ZnO2)を投入しますと純金属亜鉛(Zn)となります。現在は分離された酸素ガス(O2)は大気中に放出しています。その金属亜鉛を別設置の反応炉に持ち込み、水と反応させますと水素ガス(H2)を生成し、酸化亜鉛(ZnO2)に戻ります。亜鉛はリサイクルされて高温の化学炉に送られますので、廃棄される副産物は何も出て来ないのが、この開発の最大の利点となります。方式そのものは目新しいことはありませんので、開発の困難さはそれ程大きいと思われませんし、副産物が一切無いのが一番良いと思われます。有望視されている太陽電池も、設置数が格段に多くなると寿命に達した電極が再生リサイクルされること無く廃棄されることになりますので、上記に紹介した方式の方が優ると見ています。
2004.03.19
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「ITER」というのはInternational Thermonuclear Experimental Reactor(国際熱核融合実験炉)」の略称で「イーター」と呼ばれています。日本、アメリカ、EU(欧州連合)、ロシアの4極が共同で核融合の研究を行うために造ろうとしている実験施設のことです。朝日新聞2月23日の記事に“ITER誘致、日仏譲らず”という記事が掲載されました。日本とフランスが誘致を競い、建設地決定を巡る交渉が膠着状態に陥っている「ITER」建設地交渉のため、計画に参加する日本、欧州連合(EU)、米国、ロシア、中国、韓国の6国・地域の次官級会合が2月21日、ウィーンで開かれた。交渉筋によると、日本とフランスが共に自国の優位性を主張して譲らず結論は出なかった。今後は、3月上旬に青森県六ケ所村とフランス・カダラッシュの両候補地の地震や輸送問題などを検討する専門家会合を開き、その後、建設地を決定する閣僚級会合を開催出来る様交渉を続けることになった。資源小国の日本にとっては海水に含まれる無尽蔵にある重水素を使う夢のエネルギーとされる核融合炉、開発計画スケジュールは次の通りでした。1985年 米ソ首脳会談にて核融合協力案決定1988年 米、ソ、日、ECが合意1988~1990年 概念設計活動(CDA)1992年~ 6年間の予定で工学設計活動(EDA)2000年 ITER建設予定2008年 第一期実験開始(10年間)2018年 第二期実験開始(10年間)2030年 原型炉計画(発電炉)2050年 実証炉計画(経済性の実証)現在では、1998年にアメリカ最大の核融合試験炉(TFTR)が閉鎖され事実上の撤退、ロシアもITER誘致を考えていない状態で、日本とフランスだけが誘致に積極的です。日本は早くからITER建設誘致を展開し、候補地として原研のある茨城県那珂町、核処理のある青森県六ヶ所村、広大な工業開発地の北海道苫東地区でお互いに競って来ましたが、現状六ヶ所村に集約されています。計画は、米国の撤退もあって当初計画から5年程遅れ、2013年頃の完成を目指し、日本・欧州連合 (EU)・ロシアの三極により進められています。設計に基づく技術開発は各極が分担して行い、その中心は茨城県那珂町の那珂研究所、ドイツのマックスプランク・プラズマ物理研究所におかれている国際チームとなっています。 ITER誘致は、国策として推進され、日本原子力研究所のHPには次の様に掲載されています。原研は、わが国の核融合研究開発基本計画に沿って 研究開発を具体化して推進を図っています。 1970年代前半までは、第一段階、JT-60の建設開始からが第二段階で、今は第三段階です。基本計画では、炉心プラズマ技術、 炉工学技術、材料、そして安全性と炉システムの研究開発を4つの主要な内容としています。 そしてこれらを進めるための中核装置として、トカマク型の核融合実験炉を建設することとしています。 一方、ITER計画目標はこの第三段階基本計画の実験炉の目標に沿うものであり、原子力委員会において、具体的にはこのITERをわが国の実験炉計画であると位置づけています。しかし、ITERにはさまざまな危険性や問題点が指摘されている様で、ある候補地での誘致反対運動のHPでは次の様に問題提起を掲載しています。核融合は水素のような軽い原子核が衝突して、より重い原子核が出来る反応で、よく「地上の太陽」などと言う表現が使われていますが太陽の表面温度が約6000度、中心部でも約1600万度に対して、ITERに用いられるD-T(重水素-トリチウム)反応と呼ばれる方式では、実に1億~2億度を保持する必要があります。三重水素(トリチウム)と言う放射性物質を使用するため、その危険性も指摘されています。トリチウムは核が非常に小さいため閉じ込めておくことが難しく、日常的に環境に放出されることになり、環境汚染・遺伝子への影響が懸念されます。海水を利用しての水素製造による燃料電池に寄る分散電源、重水素抽出での核融合大型発電が実現すれば、エネルギー問題は解決に向かいそうな気がしますが、なかなか実現は難しいと思われます。“環境に優しい”と言う掛け声は良いのですが、商用ベースになるには幾多の困難が待ち受けています。1億度のプラズマを磁界上に封じ込める為には、ヘリウム極低温100MW級の超電導磁石に寄る強力な磁界が必要ですが、クエンチと呼ばれる極低温が保持出来なくなる故障が起きますと大量の熱が発生しまうので環境影響も大きく、その措置法も大きな課題の一つです。
2004.02.23
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現在開発が進められている燃料電池は水素と酸素を化合させてエネルギーを取り出し、結果として水を創り出すだけですので二酸化炭素排出も無く究極のエンジンと言われています。現在は種々の電解質形式による大規模化、効率向上が押し進められていますが、その他寒冷地対策も問題となっています。又、燃料となります水素の確保が問題で、現在色々な製造方法がありますが、工業的には化石燃料の天然ガスやメタノールから製造せざるを得ないのが難点です。太陽光発電で海水の電気分解で製造出来れば無尽蔵となりますが、工業的に大規模にするには無理なのが現状です。朝日新聞2月13日記事に拠りますと、ミネソタ大がバイオマスによって生産されるエタノールから水素を製造する方法を発表したと言うことです。エタノールは、米国ではトウモロコシ等の植物から年間100億リットル生産、ガソリンに混ぜて使われていますが、ミネソタ大グループは「燃やして使うより、水素に転換して燃料電池に使う方が経済的」と見ている。バイオマス(生物資源燃料)は、空気中の二酸化炭素を取り込み光合成で植物となったものを燃料とすることで、燃焼させても取り込んだ二酸化炭素を排出するだけですので、二酸化炭素増加にはなりません。それをエタノールに転換させガソリンに混ぜて燃焼させることで、オクタン価が上がり窒素酸化物が減少すると言われて来ましたが、今回の研究は更に水素製造によって、より効果的エネルギー変換が可能になる様ですので注目したいと思います。エタノール燃料について、インターネットに調べますと次の様に書かれていました。残念ながら、日本ではハイオクガソリンに混ぜられているか否か判然としていません。アメリカでは現在、全国で販売されているガソリンの12%にエタノールが加えられている。環境と健康への害を減らしエンジンのパフォーマンスを向上するためにエタノールが加えられたガソリンは量にして年間150億ガロン(約567億リットル)使われている。ブラジルでは、年間40億ガロン(約151億リットル)のエタノールを国内で生産し、ブラジルで給油されるガソリンには全て少なくとも20数%のエタノールが加えられている。他にも南アフリカやその他の国でエタノール燃料は使われている。その場合、エタノール燃料はエネルギーを効率的に利用しているかが問題となります。即ち、エタノール燃料が発生するエネルギー量より、原料の作物を栽培したりエタノールを蒸留したりするために消費するエネルギー量の方が多いのではないかという懸念です。米国農務省は「トウモロコシを栽培しエタノールを蒸留するために使われたエネルギー量よりエタノール燃料の方が34%大きなエネルギー量を発揮できる」と結論づけていますし、又、アメリカの或る研究所が行った調査では「最良の農業技術と燃料製造技術を使えば、エタノール燃料は原料のトウモロコシを栽培し燃料を生産するために消費するエネルギー量の2倍以上のエネルギーを生み出すことができる」と述べています。エタノール燃料がガソリンよりずっと害が少ない燃料であり、有毒排ガスの排出を減らし、そして植物を原料とする再生可能なエネルギー源であり、化石燃料のように精製時や燃料時に地球温暖化ガスを一方的に増加させないことがなにより大切です。エタノールはバイオディーゼル燃料を作るうえでも大切な役割があり、エタノールはメタノールの様に有毒ではないし、なにより簡単な器具を使って自分でも蒸留できることが魅力的です。しかしながら、エタノールの原料となるバイオマス(トウモロコシ、サトウキビ)は少なく、日本の最大バイオマス稲藁は強い繊維質を生かして他目的に相当使われていますので、この技術適用は難しいかも知れません。又、エタノールはエチルアルコールそのものであり酒の原料でもありますので、酒税法からの大きな制約も考え、燃料アルコールとしてメタノール並の規制緩和を準備して置く必要がありそうです。
2004.02.14
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開発か自然保護かは何時も論議される問題ですが、環境保全を得つつ発電すると言われる風力発電もその埒外では無い様です。極端な開発も困りますが、極端な自然保護にも付いて行けないものがあります。Yes or Noの結論を簡単に着けるだけで無く、何とか双方で妥協の出来る次善の方法を探って行く必要がありそうです。朝日新聞1月21日朝刊の「天声人語」に次の様に書かれています。国立・国定公園でも風力発電施設を設けやすくする様な基準を作って欲しいと、推進自治団体や発電事業者の団体が政府に要望した。環境省の検討会では、安定して強い風が得られると要望のあった山の尾根への建設を、景観が損なうとして厳しく規制する方針と言う。光や水や風の活用は大事だし、更に広げて行きたい。寧ろ、前向きに考えて、よくよく悩んだ上で折り合いをつけて貰いたい。風は、消えることも減ることも無いのだから。従来は風の強い地域で、僻地や離島での発電確保を目的とした風力発電も東京湾地区にも設置される様になりました。化石燃料も核燃料も使いませんので、CO2削減に最適の様ですが、発電容量が極めて小さく設置コストが高価である為、CO2削減の切り札と考えるには無理があります。政策的な新エネルギー奨励助成が外されますと、従来の火力発電に較べて発電コストが極めて高く、それらと競合出来なくなり経営的には成り立ちません。種々の評価と論議が必要でしょうが、送電コストが高くなってしまう僻地や離島での発電が、風力発電の生かされる道だと考えています。経済産業省資源エネルギー庁HPには次の様に紹介されています。風力エネルギーは、風向・風速の変動により安定したエネルギー供給の難しさはあるものの、潜在的には資源が広範に賦存し、無尽蔵な純国産のエネルギーである。 経済産業省では、1976~2000年までサンシャイン計画において風力発電システムの技術開発、1981~1986年度まで三宅島で100kW級風力発電プラントの研究、1990~1998年度まで大型発電システムの技術開発、1999年度から離島用風力発電システム等の技術開発を実施している。 我が国の風力発電の導入実績は、2001年度で260基超、出力約14万kWとなっている。これまで、そのほとんどは電力会社、地方公共団体、国等が試験研究用あるいはデモンストレーションとして設置したものであったが1992年の電力会社による余剰電力購入制度及び1993年の系統連系技術要件ガイドラインの整備により、近年、発電電力を電力会社に売ることが可能となったため、売電事業を目的として設置されたものも増加している。 世界第1位のドイツにおける風力発電の導入実績は約610万kW、第2位のアメリカは約260万kWで、我が国に比して相当大きな導入量となっており、一層の導入拡大を目指した政策的支援が行われている。 我が国における最大の課題は、普及が進んでいる欧米諸国に比べ大気の乱れが大きく、設備利用率等に起因する高い発電コストである。1995年度から「風力発電フィールドテスト事業」を創設し、風力発電の有望地域において風況精査を実施するとともに風力発電設備を設置・運転を行い、データ収集等の調査研究事業を実施している。又、1997年度から地方公共団体に対する支援制度として「地域新エネルギー導入促進事業」及び民間事業者に対する支援制度として「新エネルギー事業者支援対策事業」により導入経費に対する補助を行っている。
2004.01.21
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日本エアシステム(JAS)の主力機種MD81およびMD87に原因不明のトラブルが発生しました。点検整備には数日を要する様で利用客には不便となりますが、空輸の安全性を確保するには仕方がありません。朝日新聞1月20日には次の様に記載されています。1月6日に福岡空港で、7日には鹿児島空港でMD81型機と同87型機で相次いでエンジンに異常振動が発生した。両機のエンジン2基を取り外し、メーカの米プラット・アンド・ホイットニー(P&W)社に空輸して点検を依頼。同社で分解点検したところ、何れも前から8番目のステータ(固定羽根)部分に破損が発見され、17日にJAS側に通知された。この為、JASでは18日夜から内視鏡を使って緊急点検した所、20日未明迄に7機の内6機のエンジン7基で、同じ個所の羽根に約1.5cmの亀裂が見つかった。欠損や亀裂が見つかったエンジンは、交換に1~3週間掛かると言う。飛行機にとって心臓部であるエンジンは、構造が複雑なこともあり、日々の点検整備でも最重要部位だ。加えて着陸8000回毎(4年前後に1回)に分解検査も行われている。JASによるとステータは分解した時のみ点検していると言う。搭載されているエンジンはユナイテド・テクノロジー傘下のプラット・アンド・ホイットニー(P&W)社製のJT8Dターボファンエンジンで、今までにバージョンアップを含めて14000基以上出荷されている信頼性の高いエンジン・シリーズで知られています。名機と知られるボーイング727型機のエンジンとして1964年搭載され、その後ダグラスDC9にも搭載されて、そのダグラスDC9はダグラス社がマクドネル社に吸収合併されたことによりMD80シリーズに展開されています。およそ40年近く経過している長命なエンジンですが、時代要求に合う様に、原型エンジンからは数多い設計変更が為されています。しかし今回破損した圧縮機部分は、設計寿命が少なくとも10万時間が確保されますので、分解点検でも殆ど欠陥が見つからないのが通常です。但し、薄いチタン製の羽根ですので、飛行中に氷とかの異物侵入によるロータ(回転羽根)破損は報告されていますが、今回の様なステータ(固定羽根)のみの破損は聞いたことがありません。固定部は回転部に較べ、遠心力が掛かりませんので応力的には余裕があるからで尚更です。設計変更でその8番目ステータ部分に、羽根の固有振動と空気流れ振動が一致してしまう共振状態が発生した結果としての疲労破損が疑われます。早急な原因究明と是正策が実施されることが望まれますが、設計変更はなかなか難しい結果を招くことがありますので要注意なのです。
2004.01.20
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やはり明るいニュースは読むだけで楽しくなります。数万年振りの火星大接近を受けて、火星探査計画が日本、欧州、アメリカにて実施されましたが、日本、欧州は失敗、アメリカだけが成功となりました。今回の探査機計画はクッションボールの中に探査車を包み込み、着地の際はゴム鞠の様に何度も弾んで停止させるユニークな計画でした。何故従来通りの軟着陸を選択しなかったのかは定かではありませんが逆噴射ロケットを小規模にすることに焦点を注いだのかも知れません。計画中心となったNASAのジェット推進研究所(JPL)が喜びに沸いている様子がテレビ報道で放映されましたが、インド人、アジア人等の多様な人種が一同に映し出され将に世界の優秀な宇宙開発技術者が集結している感がありました。日本人スタッフだけで閉鎖的に見える日本宇宙開発事業と較べて彼我の差を感じます。ともあれ暗い国際ニュースが続く中、久々に明るい未来を感じられる素晴らしいニュースです。ジェット推進研究所(JPL)のHPにはこの快挙が発表されていましたので、次の様に要約して紹介致します。NASAの無人探査車「魂号(Spirit Rover)」は周囲の検査を開始し、グセフ・クレータでの着陸地点がこのロボットの予期せぬ行動性・科学キットに適した平坦な土地であることが分かって来ました。周囲には行動の邪魔になる岩も見当たらず、漂流者魂号を乗せているプラットフォームは僅か2度の傾きしか無く、前方デッキは地上37cmの位置にあることが判明しました。NASAのジェット推進研究所(カリフォルニア州パサディナ市)の今回の無人探査車魂号の火星探検の責任者であるトロスパー氏は、2月4日「漂流者魂号が健全な状態にある。調査する区域への通路は直ぐ前方に開けている。」と発表しました。無人探査車「魂号(Spirit Rover)」はプラットフォームに9日間程度留まって調査準備、火星表面への駆動開始に備えることになります。送信されて来た映像は調査する地域が期待通りの所だったと、研究者をも興奮させるものでした。今回の科学調査の主任である、コーネル大学(ニューヨーク州イサカ市)スクワイア博士は「我々が望んでいた場所に着陸させてくれた操縦チームには脱帽する。本当にスウィート・スポットであった。塵が厚く積もっている場所で、しかも丁度吹き飛ばされた、しかも邪魔になりそうな大きな岩も見当たらない絶好の調査地点だ。」と述べています。無人探査車「魂号(Spirit Rover)」は7ヶ月の宇宙飛行を経て、米国現地時間1月3日に火星へ到着しました。今回の調査は3ヶ月を掛けて岩石・土壌を調べて、過去の環境がどの様な状態であったのか、水なり生命体が暮らせるのに適していたのかを判定することにあります。「魂号(Spirit Rover)」の双子の弟である無人探査車「好機号(Spirit Opportunity)」は今月25日、グセフ・クレータとは反対側の火星表面に着陸し、同様な調査を予定しています。この火星探査に関する無人探査車プロジェクトはNASAのジェット推進研究所のHPで見ることが出来ます。又研究プロジェクトに就いてはコーネル大学のHPでも見ることが出来ます。NASAニュース広報: 2004-004
2004.01.06
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昨日、日記に書きました東シベリアの石油パイプラインの競合については、東京12チャンネルの午後11時のニュース番組「WBS (World Business Satellite) 」に大々的取り上げられていました。このニュース番組は時宜を得たビジネスニュースを提供する番組として定評がありますので、日本の政財界にも大きなトピックだったのです。ロシアのカシヤノフ首相は財界首脳との会食で、日本との協力を優先したい由の発言がありましたので今後の推移を見守って行きたいと思います。しかし、昨日も書きましたがエネルギー問題を長期的に考えますと、やはり天然ガス供給を安定化させることが、より重要なことだと考えています。しかも、シベリア地区では石油埋蔵量より天然ガス埋蔵量が豊富ですので尚更です。日米露が推進中のサハリン島開発でも、石油資源よりガス資源が多いと言われていますので、東シベリア、極東地域では天然ガス開発が注目されます。近頃、海洋大陸棚に100年分とも200年分とも言われる貯蔵量が埋蔵されているガスハイドレート(天然ガスと水の共晶体で、低温・高圧力下で固体となっています)の開発が話題になっていますが、経済的な採掘には未だ相当期間が必要とされています。やはり、現状では気体の形で産出される天然ガス採掘を優先させる必要がありますが、日本は中東地域を主体として、東南アジア、オーストラリア、そして僅かにアラスカ州の天然ガスを現地で極低温のLNGに変換して、LNG船で輸送し、日本で海水を使ってガス化して消費しています。気体の天然ガスを液体LNGにするには莫大なエネルギーが必要で必然的に価格は高くなってしまいますので、何とか輸送効率の良いガスパイプラインで東シベリアの天然ガスを供給して貰う必要があると思っています。天然ガスは石油に較べて、環境対策上も相当に有利だと思われます。天然ガスの優位性1. 炭酸ガス排出量が少ない2. 硫黄分である硫化水素は井戸元にて除去され、消費時は皆無3. 未燃となる粉塵が全く無い4. 完全燃焼が容易で、窒素酸化物排出が石油燃料の半分以下天然ガスパイプパイプラインの優位性1. 他の輸送法に比べ、効率が良い2. 国際的に実証された高圧条件を使って、効率向上が図れる3. 流送ガスは常温から0℃の間で輸送され、環境影響が少ない4. 陸上での埋設導管による輸送と共に、海底導管輸送も可能 数年前に実施しました天然ガスパイプライン検討結果を私のHPに載せてありますのでご覧下さい!東シベリアガス田からのパイプラインはサハリン島北部でサハリンプロジェクトと合流して、サハリン島沿岸の天然ガスを収集して宗谷海峡を渡る国際パイプラインとして計画したもので、サハリン島での天然ガス資源が衰退方向に向かってもその大きな投資は無駄にならないことが特徴です。石油パイプラインも此処に並設するのが経済的には良いのですが、オイルタンカー輸送はLNG船ほど建造・運行コストは掛かりませんし、地震その他のリスクヘッジを考慮すると「ナホトカルート」も妥当な案かも知れません。
2003.12.17
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今年8月以来、何回も打ち上げを延期していたH2Aロケットが11月29日打ち上げられましたが、補助ブースタ切り離しが出来ずに爆破され、打ち上げ失敗となりました。高価格とトラブルの多かった前主力ロケットH2を、低価格で信頼性を高めたと言われるH2Aロケットが過去5回連続打上成功で宇宙ビジネス軌道に乗ったかに見えたのですが、暗転してしまいました。信頼性の高い品質と適正な価格で、世界の市場を席巻してきた日本の製造業も製造技術の進展が遅れ、高価格体質が染み込んでしまった多くの企業が適正価格維持の為、主力工場を海外に移転する方向が定着してしまいました。企業経営者も経営方針を製造業技術中心から、消費者を意識した販売戦略のみに集中させてしまったのです。その結果、日本の製造業の空洞化が急速に加速し、熟練技術者は不要のものとして伝承されることも無く消え去りつつある状況です。優秀とされる人材も地道な製造部門に投入されることも無くなり、経営戦略・企画部門に集中させることで、企業の存続を計ることが時流となりましたので、数十年前には工学部に殺到した若者も今では違う部門に行ってしまい、工学部は閑散とするに至りました。つまり優秀とされる後継人材が無くなって来ているのです。宇宙技術は純国産技術で海外進出の安易な方向付けが出来ない産業ですので、その製造技術停滞のもろさをさらけ出す結果となりました。補助ロケット切り離しの失敗による打上失敗は、世界でも類例がありません。技術云々を言う以前のチェック体制不備の問題で、日本国内での物作りのモラル低下が、要素及びシステムの融合体産業の象徴である宇宙産業にも波及してしまったのです。先頃成功した中国の有人宇宙飛行のニュースと較べ、落差の目立つ残念な結果となり、日本の製造業の今後が極めて不安となって来ました。技術産業の雄として、株式相場をリードして来たSONYも物作り技術から販売戦略に比重を移した為、魅力の或る製品である液晶・プラズマテレビは他メーカの後塵を拝し今年度は惨憺たる赤字決算となり、大幅なリストラを実施することになりましたのはその象徴で現経営陣の責任は重大です。中国新華社の記事には「H2Aロケットは毎回問題が絶えず、日本は衛星打ち上げ分野で次第に得意先を失っている」と指摘。さらに「今回の失敗でH2A自体の信用の危機が強まっただけでなく、大型ロケット開発にも暗い影を投げかけた」と優越感を持たれてしまいました、事実とは言え残念なことです。宇宙技術の再生は日本製造業の再生に直結する意識で、復活に奮励努力をして頂きたいと思います。覇権と権謀の国「中国」に敗れる訳には行きません。
2003.11.30
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中国が旧ソ連、米国に次ぎ有人宇宙飛行を成功させました。これで宇宙開発技術は日本の停滞もあり、完全に中国に追い越されたことになります。1970年代、日本での技術過信から「H-2」の主力エンジンLE-7に余りに革新的な技術を投入したことが、高すぎるロケット価格・打ち上げ失敗の原因となりました。中国の主力ロケット「長征2号」はロシア技術の複製から独自性は目指さず信頼性重視しましたので日本の主力ロケット「H-2A」(改良型)に較べ、価格的に半値と言う特質を生かして商業衛星の打ち上げ市場でも実績を重ねています。前の日本H-2ロケットは190億円、中国の長征ロケットは50億円余と言われていましたので、当然かも知れません。中国の宇宙開発の陣容は日本とは比較にならない程大きく、「中国航天科技集団」に纏められ従業員10万人と言われていますので、日本の宇宙航空研究開発機構(JAXA)及び関連企業の担当者総数の10倍と考えられます。今年の米国スペースシャトルの事故以来、有人宇宙飛行の是非が論議されている今、何故中国が有人飛行に挑戦したのかは判然としませんが、「国威発揚」が主目的と考えて良いかと思います。中国には日本が1964年オリンピックを招致し、新幹線技術の開発した時期と重なる熱気が感じられます。有人宇宙飛行は地球周回および月往還迄で、火星探査は無人技術とならざるを得ませんので、「無人技術こそ宇宙開発の本道」の判断から日本での関係者には中国の成功に惑わされること無く努力して欲しいと熱望して止みません。日本は高齢化と理工学離れで苦しい状況ですが、逆にこの様な夢でそれらを克服するチャンスかも知れないと思っています。日本でも、1980年代から無人小型スペースシャトル「HOPE (H-2 Orbiting Planeの頭文字を綴ったもの)」が計画されていますが、残念ながらベースとなるH-2ロケット打ち上げの度重なる失敗を受けて、事実上凍結され関連基礎実験の実施に制限されているのが実情です。その現状を打開し宇宙技術の総合力を発揮出来るように、本年10月文部科学省宇宙科学研究所(ISAS)、航空宇宙技術研究所(NAL)、宇宙開発事業団(NASDA)が統合して、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が誕生しました。宇宙往還技術試験機HOPE-X(HOPE Experimental)は無人小型スペースシャトル「HOPE(H-II Orbiting Plane)」の実験機で、「HOPE」を開発するための技術課題を「HOPE」とほぼ同サイズの機体で実証する計画の現状は次の様です。往還技術試験機HOPE-X: HOPE-Xは、宇宙ステーションへの実験資材や器材の補給・回収の手段であるとともに、軌道上での活動手段として様々な実験・観測を実施することを期待されていましたが、2000年に実機製作は凍結し要素技術を研究開発するよう計画は見直されました。 データ取得実験HYFLEX:極超音速飛行実験(HYFLEX:Hypersonic Flight Experiment)は、1995年、種子島宇宙センターからJ-Iロケットで打ち上げられました。機体表面には、耐熱・熱防護材料を使用し、装着されたセンサにより、機体表面への空力加熱や表面圧力等の貴重な技術データを得しました。OREXは大気圏への再突入データを取得 :1994年、H-2ロケット1号機で打上げられたOREXは軌道からの大気圏再突入に耐える飛行体の設計・製作技術の蓄積と、再突入時の各種データ取得が実験の主な目的でした。実験機は、実験データを取得・送信して、中部太平洋上に着水しました。自動着陸技術実験ALFLEX: 小型自動着陸実験ALFLEX(Automatic Landing Flight Experiment)は、自動着陸技術の確立を目的としておこなわれました。1996年、オーストラリアで実施され、小型実験機をヘリコプターで高空から分離・投下し、滑走路へ着陸させる計13回の実験が行われました。
2003.10.17
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バブル崩壊による経済低迷で、日本の基幹産業とされた製造業は更新投資を怠った結果、競争力が低下し、いよいよ物作り日本の危機が迫ってきたようですが、若い次世代の力を活用することで回復して貰いたいものです。本日の朝日新聞に“物作り、揺らぐ足元”という記事がありました。新日鐵とブリジストンと言う大手企業で事故や火災が相次いだことをきっかけに、日本経済の屋台骨である製造業で、生産現場を見つめ直す動きが広がり始めた。大企業が競争に生き残るため必死に進めて来たリストラは、要員面では人減らし、設備面では更新を遅れさせ老朽化を招いた。この結果、競争力の低下や生産効率の下落の呼び水になるだけで無く、安全管理が脆弱になってはいないか-。物作りの原点が問われている。内閣府の調べでは、米国製造業の設備平均年齢が7.9年なのに対し、日本は11.6年。1990年代以降、好況の米国がほぼ横ばいだったのに較べ、日本ではじりじりと老朽化が進んだ。鉄鋼やタイヤ業界を含む素材型では13.1年、比較的好況とされる自動車などの加工型でも10.4年。新規投資が競争力を左右する半導体業界でも、米韓メーカと較べると設備年齢は高い。古くから海外技術の導入を図り、最新鋭の設備・独自の工夫で、1960年代の自動車輸入自由化を乗り切り、1970年代から海外の市場展開で攻め続けて来た日本企業は、1980年代には“米国に学ぶものは無い”と豪語し反映し顰蹙を買う海外投資を続けたのですが、僅か20年で頓挫することになりました。結果として、ここ数年、高卒新規採用数は極端に押さえられ、求職22万人に対し求人11万人と半分しか無くなってしまいました。大きな基幹産業の無い青森県では僅か10%しか求人が無いと報じられています。近年、若者のフリータ生活への否定論議がされていますが、就職しようにも出来ない事情は忘れられている様です。「さあ、社会人として活躍するぞ!」とする若者に「君たちは必要ない!」と冷水をかけているのですから、その社会に対して希望も持てないと思うのです。何とか、この様な情勢を脱却して、暖かく新卒者に対する就職希望に沿う様にしなければ、今の大人世代で日本沈没です。評論家の1人が「攻め続けて来た日本経済がバブル崩壊後、守りに転じて歪みが出てきた。しかし、日本の物作りが全て駄目になった訳では無い。今回の事故を教訓に、あらゆる企業が自らを見直す機会にして欲しい」と言っていますが、それだけでは明るい未来が全く感じられないのは残念な評論です。「構造改革無くして成長無し」と言っている自民党総裁が近日中に再選されそうですが、不良債権処理ばかりが注目され、労働集約の基幹産業の復権に日が当たらないのはどうした事でしょう?中小企業は貸し剥がしで存続が危ぶまれていますが、大企業でもホワイト化が激しく、職人技術の伝承が難しくなり、企業の根幹が揺らいできています。米国流の「製造業から情報産業、マネーゲーム産業への転換」のサクセスストーリは、二番煎じで日本では上手く行かないと思っているのですが・・
2003.09.18
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数年前から「ゴミ問題の救世主」とされた「ゴミ固形燃料(RDF:Refuse Derived Fuel)」が大きな問題となりました。三重県のRDF発電所では、消防士2人が死亡する爆発事故が発生してしまったのです。又静岡県のRDF製造施設では不具合が続いたとして、自治体がメーカを相手に損害賠償の訴訟を起こす等のトラブルが目立って来ています。「夢のゴミ処理」と期待されたRDFですが、現実は厳しい様です。スイス国カトレル社が開発特許を保持する「ゴミ固形燃料(RDF)」をメーカが技術導入し「JカトレルRDF」とすることで、この技術展開が始められました。ゴミを脱水・破砕して直径2cmで長さ7cm程の円筒状に固めた燃料にするのですが、ゴミの多様さ(生ゴミ、紙類、プラスチック、木片etc)から品質の不安定性が、以前から指摘されていました。スイス国でも試験運転の段階で、完成された技術では無かったのですが、メーカが自治体職員共々見学調査して、トラブルで運休中でしたが運用出来るものと判断したのです。静岡県では試験運用が始まった段階で、種々のトラブルが発生し、当初の目論見が外れて、運用に耐えるものでは無いのではないかとの懸念から地元新聞が詳細なレポートを記事にしていたのです。こうした中、日本総研の岩崎上席主任研究員は「採算が合わないRDFは破綻した技術」と決めつけていますが、柏木農工大教授は「自前の焼却炉を持たない小さな市町村にとってはダイオキシン対策上、有効な手段。適正管理と技術開発を目指すべきでは無いか」と述べています。日本では明治時代から導入する技術は完成済みのものとの認識が根強い。しかし環境関連技術は世界的に見ても完成の域に達していません。メーカのみに完成を依存するのでは無く、設備の安全管理を万全にしながら、メーカ・運用者・受益者が試験結果を見ながら検討を加え、三者で完成させるものなのです。そうした地道な努力から、技術の進展が生まれて来ます。メーカも運用者も情報開示し、受益者からの要望を大いに取り入れる必要があります。従って、運用者もメーカの情報を鵜呑みにするのでは無く、判断出来る時限立法の技術評価委員会を設けて、対等に論議出来る立場でなければいけません。広く公募すれば、公平な見識を持つ適材が見つかる筈で、受益者にも役に立つことになりますし、運用する自治体の義務でもあります。技術先進国となった日本にはその責任と義務があり、技術開発結果は世界に通用するビジネスとして構築出来るのです。単なる責任の押しつけと誹謗で否定的になるのでなく、次世代の為の技術革新を目指して前向きに頂きたいと思っています。地元新聞の一部には下記の様に記載されています。静岡新聞平成10年6月6日付: ごみ固形燃料としての販売と不燃物の埋め立て地の延命化を狙って導入に踏み切ったRDF施設だったが、機械設備のトラブルや生成されるRDFの品質の不安定さを考慮すると、私たち受益者が今最も必要なことは何かと真剣に考えざるを得ない。RDFセンターが正常に運転できず、大量のごみが他県に運ばれるという異常事態は、メーカや行政に責任の多くがあるにせよ、住民にも「ごみの在り方」「消費生活の見直し」を考えさせる機会を与える。やはり、「徹底分別と資源化」「リターナブル、リサイクルの推進」を念頭に、ごみの減量を図らなければ、次世代へも高い環境リスクを与えてしまうという結論を引き出してくれる。住民がトラブルと異常事態の責任の所在、明確な説明と納得できる情報開示を求めることは大切だ。しかし、その一方で私たち自身の生活システムを見つめ直す必要にも迫られている。 御殿場市のごみ処理の根本は、減量とリサイクルにあった。ごみの回収有料化に踏み切り、当初は減量に成功した。ところが、ジワジワとごみの量が増え始めている。また、分別変更に際して、不燃ごみの分析をした所、洗剤容器などが混入して3分の2程度は、RDFに回せるという。この実態は今後のごみ処理対策を一層難しくさせている。見込みの狂いは、応急的に設けた最終処分場を脅かす。あと、1年の寿命しかないという。 やはり、住民一人ひとりが、ごみ処理には経費が掛かること、リサイクル、減量の大切さを学んで真剣にごみ問題と取り組まなければならない。昨年、御殿場市の玉穂地区婦人会は2週間ずつ、「ごみの出し放題」と「徹底減量」を実施した。結果は3倍余の差が出た。この実績が物語るように、私たちは自分達の生活全体を見回す必要に迫られている。出すごみはいずれ、膨大な税金で処分しなければならないのだ。
2003.09.09
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米国航空宇宙学会誌4月号の巻頭言は次の様に書かれている。スペースシャトル107計画にて、「コロンビア」とその乗組員を失ったことで米国全体に哀悼の意が表されたのは、それ程時間は経過していない。NASAジョンソン宇宙センターでの乗組員の告別式において、ブッシュ大統領は“米国の宇宙開発プログラムは続行する”と述べて、大国はリスクを克服する決意を示した。唯、"Great nations have always pushed frontiers, and their people have been at the forefront of those explorations. Great nations do not take the easy path, and are not afraid of risks."として大国意識を丸出しにして、ユニ・ラテラリズムが強烈にむき出しになっている所です。しかし、ブッシュ政権になって以来軍需予算は増大したが、宇宙関連のNASAの年間予算はここ数年150億ドル程度(日本円で1.8兆円)で増加はしていない。軍事衛星の需要は米国内で国防省によって実施されるが、商業ベースの人工衛星ビジネスではフランスのアリアンロケットが数歩リードしている。やはり、従来のスペースシャトル計画だけでは今後の様々な需要に対応出来ない。スペースシャトルは「大型トレーラートラックで人も荷物も運ぶ」手段であり、「安く荷物を届ける」「安全に人を届ける」と言う二律背反の目的を満足させるには、最適では無い。実際、NASAではOSP(Orbital Space Plane)と呼ばれる新しいスペースプレーンを模索中で、乗組員専用にて国際宇宙基地(ISS)からの非常避難をも考慮に入れた設計を検討中であるらしい。過去にスペースシャトルで行った、無重力空間での材料・薬品等の新製造方式がビジネス展開にどの程度寄与出来るのか現状定かでは無いが、新しいブレークスルー技術としてのポテンシャルは高い様に思える。それでも宇宙産業は夢を叶える技術的挑戦だけでなく、ビジネスとして発展する可能性はあるのだろうか?学会誌の特集記事として次の様な記事がある。米国の結構な数の州政府が宇宙ビジネスを将来有望と見て、機関を発足させている。Alabama州 Aerospace Development CenterAlaska州 Alaska Aerospace Development Corp.California州 California Space AuthorityColorado州 Colorado Space CouncilDelaware州 Delaware Aerospace Education FoundationFlorida州 Florida Space AuthorityMaryland州 Maryland Depユt of Business DevelopmentNew Mexico州 New Mexico Office for Space CommercializationOklahoma州 Oklahoma Space Industry Development AuthorityTexas州 Texas Aerospace CommissionVirginia州 Virginia Commercial Space Flight AuthorityWisconsin州 Space Explorers各州政府は長期的展望からその政策を続行していくが、投資額も大きくは無くやはり未だビジネス的には幼時段階で、数年の動静を見ずしてはその成否は語れない。各政府は、宇宙ビジネスを安定した大きな経済分野とするべく、実績のあるパートナーとの連携を模索している。時期が熟すれば、連邦政府プロジェクトからユビキタス(どこにでもある)企業として大きく変質するものと見ている。一方日本ではこの10年にNASDA予算倍増したと言っても未だ僅か2000億円程度で、国全体の景気を左右する経済領域にはなっていないのです。夢を売る産業から、食べられる産業に変わるには未だ相当の努力と期間を要する様に思っています。関係者の努力による安全で安い衛星打ち上げビジネスが展開することが当面求められますし、将来に繋がると思っています。
2003.05.03
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燃料電池自動車のニュースが最近テレビでも良く取り上げられています。発端は1993年カナダのバラード社が燃料電池駆動のバスを開発、1998年バンクーバーとシカゴで実用運行に供試し、世界的な競争に進展しました。二酸化炭素を排出しない究極のエンジンとして注目され、政府の買上助成もあり何とかテコ入れをしているが近い将来での急激な需要拡大は難しいと考えています。寒冷地仕様が未だ確立されていないこと、山岳ロード等の耐衝撃性が達成していない等の技術的問題が未解決と思われるからです。技術改善の度合いによっては早く時代が来るかも知れません。一方、従来の火力発電所での適用は大型化が難しく、現在の容量は現在数MWが最大の様で、1000MW級発電所構築は未だ無理なのです。これは将来も難しいと見ています。しかし、大規模発電所は地域住民の理解・承認を得るのが難しくなって、電源分散化が起こっていますので其処に適用するには最適の様に考えられます。ユビキタス社会は何も通信を主にした変革では無く、生活に必要な電気・ガス・熱を自分の身近な所で造り出す時代だと考えられます。従来各家庭に設置されている、ガス給湯器を燃料電池コージェネレーションに置き換えることでこれが実現出来ます。都市ガスが一番良いのですがLPGでも灯油でも使用可能ですので、生活基盤の遅れておる地域での発展も期待出来ます。又、家庭では電気と共に温水なども必要ですのでコージェネレーションで作れますので、都市ガス又はLPGの熱利用は70%に達しますので省エネにも適しています。住環境を守る意味でも、今までのガソリンエンジンを使った移動電源と違い、騒音が少なく排気ガスもありませんので各戸に設置して問題は無さそうです。燃料電池は第一世代のリン酸形(PAFC:熱効率35%)、第二世代の溶融炭酸塩形(MCFC:熱効率40%)が技術確立し、第三世代の固体酸化物形(SOFC:熱効率45%)の開発途上にあります。固体酸化物形は作動温度が1000度となりますので、排ガスをガスタービンで回収すると発電効率70%に達すると言われていますので、日本よりもアメリカが熱心で、米国エネルギー省(DOE)も助成金を出して実現に力を入れています。今後も動向を注意して見て行きたいと思います。
2003.02.18
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ブッシュ大統領は1月28日の一般教書演説で、水素利用の燃料電池の技術開発と社会インフラ整備の研究に5年間に12億ドルを投ずると発表しました。更に2月6日燃料電池車の利用促進イベントに出席し、水素社会の実現に向け水素製造の為の大規模プロジェクトを開始するのに5億ドルの追加投資をすることを「水素は、石炭、天然ガス、バイオマス、原子力エネルギー等の国内資源から生産出来る。エネルギーの国内自給も達成出来る」として宣言し、2020年の燃料電池自動車普及を目指したのです。燃料電池車はカナダが先鞭を付け、日独が先行しているので米国は遅れ気味ですが、石油埋蔵量が将来のカスピ海油田発掘を考えても20年足らずであることを認識し、自動車産業をリードする米国の地位保全に向けてスタートを切る意欲の現れだと判断します。従来米国は国内に良質の石炭が200年使用に相当する埋蔵量があるので、その利用を確実にするべく、二酸化炭素削減に向けた国際協約COP3京都議定書の批准を拒否して来ました。環境よりも経済安定を優先させていますので、今回の決定も石炭での水素製造による水素社会の実現が主題では無いかと見ています。一見、炭素の固まりで水素を含まない石炭から水素を製造するのは奇異に感じられますが、これは合理的なのです。石炭が豊富で石油の無いドイツで、1930年に石炭液化法(石炭から石油製造)と言う技術が確立されています。実証プラントは南アフリカで稼働中ですが、途中過程で水との反応により水素と一酸化炭素が製造されるので、その転用を図れば簡単に水素製造プラントが構築出来るのです。又、ブッシュ大統領は、海水中に豊富に含まれる重水素を燃料とする核融合研究の重要性も力説したようです。米国主導で推進して来た「国際核融合実験炉(ITER)」は米国離脱で、先行きが心配されていたのです。これも重水素からヘリウムを作る際に出てくるエネルギーを取り出すので、核廃棄物の無い「人工太陽」なのですが、これについても先週復帰を決定したのです。中国の参加希望もあって、将来エネルギーの世界戦略上の重要性を再認識したのだと思います。尤も、水素社会に較べて、実現は数十年先と見られているのです。従って、環境団体からは「ブッシュ政権は新たなエネルギー開発より、エネルギー節約に向けた省エネ政策に力を入れるべきだ」とCOP3批准を促すような批判も強いようです。しかし、この様な政策転換を要求するような議論があるのを見ると、民主主義の原点が生きていると感じます。中国、北朝鮮、イラクなどの党・個人独裁の国々では反対意見は全て抹殺されてしまうのです。日本では、マスコミを通じて自由な議論があるようですが、やはり国民の“お上意識”の官僚主導が幅を利かせているようです。やはり、政官の組織構造改革が必要で、真の国民主権の復権がなされ、住民投票による政策転換が容易に出来る社会に変貌して欲しいと思っています。
2003.02.11
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2月7日、環境省、経済産業省、国土交通省合同で自動車の排ガス低減策を公表したと言う。低減数値は確定していませんが、2005年から新車については窒素酸化物(NOx)、浮遊粉塵(PM)について世界で最も厳しい規制を導入することを決めているのですが、それでは不十分では無いかとの懸念もあるので、先ず二年間の調査期間を設けて実態調査を行うらしいのです。現在は新車のみが対象となっている規制を、使用中の自動車約5400万台にも適用することを視野に入れ、使用中に性能が落ち基準を満たさなくなる傾向も調査対象とする様です。この他低減策には、軽油中に含まれる硫黄分の濃度規制導入に向けた調査、ディーゼル微粒子除去装置(DPF)を付ける為の半額助成金を道路特定財源から40億円充当するが盛り込まれたと言うのです。ディーゼルエンジンは、現在のトラック、バスでは主流を占めているのですが、乗用車のガソリンエンジンに較べ燃料コストが半分以下なのが主な理由です。その上、粗悪油も使用出来るので水上輸送の船舶では殆どはディーゼルエンジンを搭載しています。一概にディーゼル排気が良くないので、全てガソリンエンジンに替えることは省エネルギー時代には逆行する方向なので真の解決ではありません。ガソリンエンジンは空気を1/8に圧縮すると300度に高温化するので、其処にガソリンを噴射して電気エネルギーで点火して1800度に更に高温化してエネルギーを取り出します。一方ディーゼルエンジンは空気を1/25に圧縮すると500度になりますので、軽油・粗悪油を噴射すると自然発火して2200度の高温ガスからエネルギーを取り出すのです。従って、エネルギー効率は良いのですが高温下での窒素酸化物(NOx)、自然着火を促す空気の乱れによる未燃燃料による浮遊粉塵(PM)と言うデメリットが出て来てしまうのです。ガソリンエンジンがそれらが皆無と言うことは無いのですが、本田自動車が開発した希薄燃焼エンジンで相当に改善を見ているのですが、ディーゼルでの改善はなかなか為されて来ませんでした。東京大気汚染訴訟で待った無しとなりましたので今回ディーゼル規制を主目的とした低減策が出てきたのでしょう!但し、ディーゼルの排気ガスを除去装置(DPF)で後処理して、粉塵を捕獲する対策的な解決でなく、排気を再循環して窒素酸化物、粉塵を低減させる本質的方法(EGR)の開発が進行中でもあるので、これを助成して完成させることが、ディーゼル再生の本道であり、日本の技術が世界に貢献出来る道と思っていますのに、新聞で見る限り其処に触れられていないのは残念です。
2003.02.10
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2003年2月3日の朝日新聞の「米シャトル事故座談会」を読んで見ました。作家の中野氏、宇宙科学研究所の的川氏、NASDA/OBの宮沢氏の三氏であった。事故原因は昨日の私の推断が主流となって座談が進められたが、中野氏の次の発言が気になった。「スペースシャトルは当初の期待程効率の良いシステムとはなっていない。NASAの技術者は新システムをやりたがって来たが、予算の都合で進んでいない。スペースシャトルは米ソ対立を背景に1981年に元気に登場したのだが、背景が変わり、新システムをもう急ぐ必要は無くなった。」将に進歩を拒否する制度疲労が起きていたのです。それに較べ、NASDA/OBの宮沢氏は「シャトルは技術的にはよく考えられてもので、新システムは、X33等色々やっているが現在の技術では難しい。」と守旧的なのです。的川氏は中立的で「米国ではX33で失敗したとはいえ、開発で蓄積した技術は次世代シャトルで当然生きるはずだ。」と発言しています。各々組織に沿った発言がなされましたが、やはり自由な作家の意見が一番納得出来るものでした。私は現在のスペースシャトルが、垂直発射で最初から高価な液体水素・酸素を大量消費するのが経済的は無いと思っている。現状の我々が利用する、信頼性のある水平離陸でジェットエンジンを使っての成層圏までの飛行、大気が薄くなって来てからのロケット推進で、高価な液体水素・酸素を最小化出来るシステム(例えば、エアターボラム、SCRAM、ロケット統合によるSSTO (Single Stage To Orbit) システム)でないと人類の宇宙進出は本格的にならない。現状を最良の状態とする認識は、既に制度疲労に寄与しているのだと思っています。今回の悲劇的事故を契機に真の技術的議論、組織的議論、宇宙開発の必要性が開始されることを望んでいます。
2003.02.03
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昨晩夜11時からの臨時ニューステロップでスペースシャトル「コロンビア」の事故が報道されてから、深夜のニュース、今朝の新聞記事に注目しています。残念ながら、「コロンビア」の損傷は打ち上げ直後の外部燃料タンクの断熱材がコロンビア左翼に当たり、炭素複合材で作られている断熱パネルを損傷して、既に運命が決まっていたのだと推断しました。勿論事故調査の詳細は、その後逐一報道されることになりましょうが、多分間違いはありません。宇宙に行く場合は空気が薄くなる所を加速して行きますので断熱パネルにはそれ程負荷は掛かりませんし、宇宙での周回軌道上では負荷は殆どありません。地球に戻って来る際には、空気が段々濃くなって来る所をマッハ数20を越える速度で大気圏に再突入して来ますので、加熱温度は2000度になり、断熱パネル無しにはコロンビア本体は焼け溶けてしまいます。今回は再突入のマッハ数20の空気流の力で、断熱パネルがマッハ数20の空気流の力で剥落し、その内側にあった翼の本体金属が焼け溶けてしまい、その後その他の部分も溶融分解してしまったのでしょう。米国NASAの着陸直前の会見では「問題は無い。予定通りの着陸を行う。」と、希望的観測を込めて発表していたのですが内心は心配でたまらなかったと思われます。多分否定的最悪な判断もあったのでしょうが、乗組員にも生還出来る可能性が殆ど無いとはとても言えなかったと思えてなりません。「シャトルの寿命が過ぎていた。」、「予算削減で管理上の問題があった。」など種々言われていますが、有人宇宙飛行計画が中止されることの無いように望みたいものです。人類の夢を実現させる、このプロジェクトにもコスト削減要求が激しく、行政管理予算局から長官がNASAに送り込まれ予算減、人員減で円滑な運営が出来にくくなっていたらしいのです。夢実現に情熱を燃やす人材を再度長官に据えて、体制の再構築を望んで止みません。日本でも構造改革が叫ばれて久しく進展が感じられません。夢も情熱もない天下り官僚が特殊法人の要職を独占し、老害をまき散らして、やる気と情熱を寄生虫の如く吸い取っていることが問題になっているのですが、まさか米国でもそうであったのかと愕然としています。
2003.02.02
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ディーゼルエンジンの生みの親はRudolf Diesel(1858-1913)です。又、その命名は彼の奥さんとのことです。今や大型自動車、舟は100%ディーゼルエンジンで動いていますが、健康に害のある浮遊粉塵、窒素酸化物をまき散らす公害の元凶と化し、東京都では未対策車締め出しを図ろうとしています。しかし、必ずや近未来に粉塵除去、窒素酸化物除去が成功するものと思っています。省エネの観点からは、通常のガソリンエンジンより30%程良好で、炭酸ガス排出量もその分少ないのですから、COP3適合の為に、日本の技術者が培って来た環境技術応用が生かされる筈です。ルドルフ・ディーゼルは1858年生まれで、ミュンヘン工科大学で開びゃく依頼の素晴らしい成績で卒業、若い発明家としてクルップ社とディーゼルエンジンの開発に挑み、1896年完成して特許取得、アウグスブルクで生産を始めました。ドイツは産油国では無かったので、高価なガソリンでなく安価な重油を使用出来、信頼性の低かった電気点火を使用しない本当にドイツ向き(その他経済水準の低い日本等でも)の画期的なエンジンでした。彼が商才にたけていたら、多分ダイナマイト発明で財をなしたノーベル以上の財をなすことも容易だったことでしょう。だが彼は一貫して偏狭な物の見方をきらい、自分の発明が世界の人々の利益になるように、誰でも少額の特許料で新技術の使用を許しました。このことは人類にとっては幸運となり、彼自身にとっては不幸なこととなりました。1900年代初頭はドイツ帝国海軍は、強大な大英帝国海軍に追いつこうと必死の努力をしており、対抗手段としての潜水艦に白羽の矢を立てました。この主機としてディーゼルエンジンが最適と判断されました。しかし英国でも注目したのです。1910年代になりますと独英関係は緊張し、ベルリンの海軍省は彼を呼びつけ、特許全てを国家に帰属させるように要求したのですが、彼は拒絶したのです。チャーチル率いる英国海軍はそのノウハウを使うことが出来そうに思えました。1913年イギリス行きの汽船に乗った後、失踪したのです。2週間後オランダのトロール漁船の網に一つの遺体が掛かりました。それが彼の死体でした。状況から推察出来ることは、英国に特許ノウハウをを渡すことは“利敵行為”と見なし、ディーゼルを“売国奴”としてドイツ秘密警察が同行者に命じて殺害させた、と言うことでした。しかし、確たる証拠は無く同行者は罪に問われることは無かったのです。
2002.11.13
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